前日の宴会では酒を飲んでいないにもかかわらず失態を犯したが、翌日の行事には寝坊せずに済んだ。
女性死神協会新年会。
一日を使って正月遊びの他、餅つき大会を行う行事だ。
今年は瀞霊廷通信にこの行事の様子を載せるため、白哉の反対はあったが強引に押し切り、いつもより豪華に、朽木邸を貸し切って行われることとなった。
餅つきの準備をするから早めに来いと卯ノ花に言われたが、九番隊隊士の協力もあり最初の準備はほとんど何もせずに終わった。
「では餅つきをする際に頑張ってもらいましょう。六車隊長は力持ちですしきっと美味しい餅が出来ると思いますよ。期待してますね。」
「拳西がお餅つくの~~~!?筋肉ゴリラだから道具壊さないでよね!!」
「あぁ!?!?!?だったらテメェ出来んのか!?!?」
この喧嘩もいつもの光景だが、隼人が連れてきた友達数人は完全に圧倒されていた。
「おい・・・九南副隊長っていつもこんな感じなのか?」
「そうだよ?だいたい喧嘩してる。」
「副隊長って隊長に従うモンじゃないのかよ・・・。」
こんな調子じゃ今日も凝り固まった既成概念崩されるだけでコイツら疲れそうだな・・・と相変わらずの彼らにため息をこぼした。
そして珍しい客人に対し強い反応を示したのは、やはり夜一であった。
「何じゃ此奴らは。隼坊の友人か。」
「はい。みんな夜一さんのことは知ってますよ。」
「儂を知らぬと言う奴はとっておきの仕置が必要じゃったがこれなら大丈夫じゃ。・・・・・・ふむふむ・・・ほうほう・・・・・・。」
夜一は興味深そうに男子生徒を近距離で舐めまわすように見ていた。
もちろん美人で巨乳の夜一にじっくりと見られている隼人の友達は顔を赤くして目を逸らし少々興奮気味だ。
年頃の男の子の自分に対する反応を見て楽しんでいるのだ。
ときどきおっぱいが当たった時なんかはひょえ!!と情けない声を上げている。
「儂に見られて恥ずかしいか?照れておるのう・・・。」
「めっ滅相もございません!!!!」
「顔を真っ赤にしおって!!かわいいのう!!」
「なっ・・・・・・!!!!!!!」
今回もしっかりとお付きの砕蜂が目を光らせており、院生にすら歯を食いしばって睨みつけ、もろに嫉妬の怒りをぶつけていた。
「夜一様!あちらで休んでいて下さい!」と夜一を座らせた後に、院生の少年たちがちびりそうになるくらいの剣幕で何かを言っていたが、隼人は聞かないことにした。
最初は凧揚げをすることになった。
何となく高く上げられたらいいかなーと適当に考えたが、女性死神協会の方々は何故か闘志を燃やしていた。
「ウチが一番高く揚げるで・・・!!誰にも負けへん!!」
「アンタみたいなチビが高く揚がる訳ないやろ。黙ってアタシのが上にあるのを見とき!!」
「なっ何やとォ!!!!」
「白も参加する~~!!勝った人がおはぎ食べ放題にしよ~~!!!!」
「そんなん得すんのアンタ(お前)だけやろーがい!!!」
副隊長三人が紅葉狩りの昼食みたいに相変わらず戦いの火蓋を切ろうとしており、危険な香りがしている中、夜一は自分の凧を白哉に揚げさせようとしていた。
「白哉坊が高く揚げてくれたら儂も仕事を頑張れそうなのじゃが・・・。」
「なぜ貴様のために朽木家跡取りの私が無償で働かねばならぬのだ!!場所も貸してやっているのだぞ!!そこまで頼むか貴様は!!」
自由過ぎるだろ・・・。ただでさえ場所の件で相当揉めていたはずなのに、ここまで頼む図太い精神はなかなかのものだ。
ちなみに隼人は拳西からもらった『九』の字が書かれただけの凧をもらって友達と一緒に揚げることになった。周りの女性死神が凝った模様などの中、ローズっぽく言うならシンプルイズベストである。
「それでは、始めましょうか。」
卯ノ花の号令で皆凧揚げを始めた。
ひよ里たちとは距離をとったので争いに巻き込まれることはないだろう。
そよ風が吹いていたため、まあまあの高さまで揚がり、目標達成である。
他の者たちの凧も同じように揚がり、綺麗な眺めとなった。
「おいリサ!ずるしやがったな!喜助自慢の凧より高いトコにおるってどういうこっちゃねん!!」
「アホ!知るか!ひよ里がチビなだけやろ!!」
「ええ加減にせぇよゴルァァァ!!!!!」
うるさい声は眺望の邪魔だが、自分に被害がこないだけマシである。
拳西も上手く写真を撮れたため、凧揚げ大会は何の問題もなく終わった。
「それでは次は餅つき大会を行います。六車隊長が本気でついてくださるので皆さん楽しみにしていて下さいね。」
やっぱり拳西は餅つき用員だった。
そしてついた餅を整えるのは笠城だった。なぜか女装をしている。無駄に綺麗な柄の和服を着させられていた。
最高に似合ってない女装をさせられて衛島や藤堂に笑われているが、見られない東仙が気の毒である。相当面白いのに。
「隊長!準備整いました!」
「おし!やるぞ!ふん!」
「はい!って熱ちぃーーー!!!!」
いや練習しとけよ!!!
どうやら餅の熱さを侮っていた笠城は手を火傷してしまったようだ。
ワハハハハと九番隊隊士や女性死神は笑っていたが、子ども達はやるなら練習しろよ・・・と呆れ気味であった。
結局衛島が整える役をやることとなり、出オチの笠城は女装姿だけ写真で撮っておくことにした。
餅は非常に美味しかった。
やはり拳西自慢の筋肉をフル活用してつかれた餅はしっかり伸びるだけでなく弾力もあるなど、餅のいいとこ尽くしを詰め込んだものだった。
「すげー!俺こんなうめぇ餅初めて食べたぞ!」
「醤油でもきな粉でも合うぞ!いくらでも食えるな!!」
隼人の友達にも好評だったため、餅はかなり上手くいったようだ。
リサなど一部の女性死神は太ると言って遠慮していたが、最初文句を垂れていた白も結局美味しそうに食べていた。というかおそらく一番食べていた。
ちなみに一番の功労者の拳西はまだまだ体力的に余裕があるらしく、余った材料分も九番隊隊士の協力もあり全てついてしまったらしい。
うぉりゃあああ!!!と雄叫びを上げながら餅つきしている様子をキモいと副隊長三人に言われていたのは内緒にしといた。
皆餅を食べ腹を膨らませた後は、かるた大会をすることになっていた。
九番隊特製のかるたを使った大会であり、ある意味本日の目玉イベントである。
「このかるた大会で札を多く取った方から自由に景品を一つずつ選べますよ。皆さん頑張って下さいね。」
所詮お遊びの景品かと言われたらそうではなく、金券や高級化粧品など結構ガチな商品ばかりである。
ちなみに女性死神協会の景品のため、景品ラインナップのせいで今日来た男連中は金券以外に選択の余地は無く、もちろん金券は一番人気なため最も多く札を取らないといけない地獄であった。
ひよ里あたりは八百長でもしそうなくらいこの戦いに賭けていそうだ。
あまりにも男には条件の悪い戦いなので隼人の友達含め全員商品は辞退し、気楽にカルタをやることにした。景品の費用を捻出された白哉を除いて。
読み手は拳西と卯ノ花が交代で務めるそうだ。
「では始めますね。」
静寂。
皆が卯ノ花の放つ最初の言葉に集中し、異様な程静かな闘志の溢れる空間となっていた。
「迎春や 長生き祈る 総隊長」
「はいっ!!!!」
副隊長軍団と白哉が集中していたにもかかわらず、札を取ったのは七緒だった。
「すごーい七緒さん!!メチャクチャカッコよかったですよ!」
「いえ・・・近くにあっただけなので・・・・・・これぐらい取れて同然ですよ。」
最後の一言は副隊長らに向けて放ったものだ。
あの女・・・侮れんな・・・。
後輩として可愛がっとったが今日は容赦せんで・・・・・・!
地味に金券を欲しいと思っていた七緒も戦いの渦に自ら入ることとなり、さらに砕蜂も夜一のために負けられないと奮起し女数人と白哉の仁義なき戦いが繰り広げられた。
「次いくぞ。 凧揚げに 便利な道具 サングラス」
「見つけた!はーーい!!よっしゃーー取れ・・・・・・た・・・。」
近くにあったため隼人が札を取れたが、仁義なき戦いを繰り広げている者達から身の毛もよだつような視線を向けられてしまった。
気楽に楽しもうと思ったのに・・・。
「すっすみませんでした・・・・・・。」
友達からくすくす笑われたが、楽しんじゃ悪いのかよとちょっぴり不満に隼人は思った。
「それでは次いきますね。」
注意しないんかい!!
「
「はーーい!!」
「あぁっ白!!!ウチの札取りやがったな!!!ずっと目付けとったんやでコラ!!!」
「知らないよ~?ひよ里んがぼ~っとしてたのが悪いんでしょ~。」
「このクソ~~~~~!!!!!!」
乱闘騒ぎに発展しそうだったのでさすがに拳西が止めることにした。自隊の副隊長が喧嘩しそうになってたのもあるが。
「喧嘩すんなバカ!次いくぞ。
飾るほど 美しきかな 君と正月」
「はいっ!!」
ローズが渾身の決めポーズをしていたこの札を取ったのもまた七緒だった。
今回は遠くにあったものに目をつけていたのか物凄いスピードで動いて取りに行っていた。
「うえーーー!七緒さん速いですねーー!」
「目を付けていた札だったので・・・。」
「次いきましょうか。
お正月 洋食一旦 お休みだ」
雀部副隊長ががっくりしている札だが、どこを探しても見つからない。
どこだ・・・どこだ・・・!と探していると、まさかの人物が札を持ち出していた。
「何じゃ全然見つからんのう・・・・・・・・・・・・あ。」
「夜一様!何故勝手に札を一枚持ち出しているのですか!!」
かるたには参加せずソファのようなものに座って見ていたが、適当に持ち出してつまんで見ていた札がたまたま拳西が読んだものだったのだ。
相変わらずの奔放っぷりである。
悪びれもせずにいたため砕蜂から怒られていたが、ちゃっかりその札を砕蜂が回収したため彼女も彼女である。
「おらっ。次いくぞ。
・・・餅つきは 自慢の筋肉 大活躍」
自分の札を恥ずかしそうに読んでいる姿に笑いそうになったが、一方でかるたの札は取り合いとなっていた。
七緒とリサの八番隊コンビである。
「七緒!!こればっかりは譲れん!!アタシに譲っとき!!まだアタシ一つも取れてないんや!!!明日読書会でええ本渡すから!!!」
「わっ私も譲れません!金券でたくさん欲しい本を買いたいんです!矢胴丸副隊長でもこれは渡せません!」
自分の札で後輩二人が札を取り合いバトルを繰り広げているのを恥ずかしさと呆れの混じった顔で見ていた拳西が止めに入ったことで何とか事なき事を得た。
結局環でコイントスを行い、七緒が札を手に入れたことで争いは終わった。
「それでは次いきますね。
新年会 おせちの食べ過ぎ 要注意」
「は~~~い!!やった!白の札~~~!!」
食べ過ぎで腹を膨らませ横になっているみっともない自分の姿の札だが、何故か白は喜んでいた。
この札で食べ過ぎを自覚してほしいという九番隊一同の願いは届かなかった。
すでにお餅を食べ過ぎていたが。
「次いくぞ。
年賀状 夜一の足で すぐ届く」
「よっ夜一様!!!すぐに私が「あっ近くにあった!はーい!」
「いやあああああああああ!!!!!!!!!!!!」
また近くにあったため隼人が取ったが、札が札だ、取った瞬間に砕蜂は狂気の叫びをあげた後、完全に戦意喪失してしまった。唯一の絶対取りたかった札を取れなかったからだろう。奪いに行かなかっただけマシだ。
渦中の思われている夜一は「砕蜂も情けないのう。」とまた適当に札をつまんで見ていた。
砕蜂、戦意喪失のため一時退席。
「次いきましょうか。
福笑い 朽木家当主も 大笑い」
「はいっ!」「とうっ!!」
今度は白哉が目を付けていた札だったが、今まで参加していなかった夜一が何故か緊急参戦してきた。
札には二人の手が重なっており、両者互いに譲るつもりはない。
「何故貴様が急に参戦する!貴様はただ座って見ていればいいのだ!」
「白哉坊が悔しがる姿を見とう思うてのう。ずっと目をつけておったわ!ふはははは!!」
「貴様!!許さ・・・なっ!!!」
いつものように熱くなってしまった白哉が手の力を緩めてしまった途端、夜一に奪われてしまった。
「朽木白哉!敗れたり!!!!!」
「許さん!!!今日という今日は決して許さん!!!!」
場外乱闘が始まってしまったため、誰も止める気にはなれなかった。
朽木白哉、場外乱闘のため退席。
その後も熱い戦いが続いた結果、最終勝者はやはり七緒だった。
「ウチの金券が~~!!!あぁ~~・・・高級お菓子買うつもりやったのに・・・。」
「いいな~~。白もたくさんお菓子食べたかったよ~~。ナナちゃんおめでとう!!」
「あっありがとうございます・・・。」
先輩のリサは心底悔しそうにしていたが、一応七緒の健闘を讃えていた。
年上にもかかわらず不満タラタラよりはマシである。
「七緒もアタシに負けんと強うなってきたな。金券で買った本アタシも読んでもええか?」
「はい!!一緒に読んでくれるなんて光栄です!」
「それではかるた大会、そして女性死神協会新年会はこれにて終了です。協力してくれた朽木家の皆さんと九番隊の皆さんはありがとうございました。皆さん楽しめていたようで何よりです。」
かるた大会でちょっと不満はあったが、今日一日は前の紅葉狩り同様楽しく終わらせられた。
隼人の連れた友達も皆色々面白がっていたし、嫌々来ていた拳西も餅つきは筋トレ目的で楽しんでいた。
昨日含め久々に多くの隊長副隊長たちに会えたこともあり、以前の懐かしい感覚が戻ってきたようで嬉しかった。
友達と別れた後、帰り道で隼人はニコニコしつつ感傷に浸っていた。
「皆さんに会えて今日はとても楽しかったですよ。拳西さんも餅つき楽しんでましたよね。」
「うるせぇ。腕とか鍛えるためにやってただけだ。」
「そうなんですか?その割に雄叫びあげてやってたじゃないですか。僕ちょっと引きました。」
「余計なコトをいちいちしつこくほざく口はどの口だ・・・!!!!」
「いひゃい!!!いひゃいれす!!」
また頬を左右に思いっきり引っ張られ激痛が走ったが、餅が美味しかったことを伝えるとまんざらでもなさそうな顔をしていた。
やっぱり楽しんでんじゃん。
「来年も餅つきやって下さい。別に女性死神協会の行事とか関係ナシで。あれは毎年食べたいです。」
「そうか?じゃあまた笠城に女装させっか。」
「あれ瀞霊廷通信に載せて下さいよ。僕が撮った渾身の一枚なので。」
「東仙と衛島次第だな。でも多分載せるだろ。」
一月後。
瀞霊廷通信最新号の表紙は笠城の女装姿になったという。