ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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先輩、頑張るぞ!

六回生になり二月が経った頃。

隼人にとって色々な思いのある行事の時期になった。

 

特進学級一回生の現世魂葬実習の引率。

隼人自身が一回生だった頃は、初めて直接的な嫌がらせを受けたりと散々な目にあったのだ。

 

 

「あの頃は大変じゃったな。おどれが可哀想で可哀想で仕方なかったわい!」

「六年前のことをいちいちほじくり返さないでくれますかね!恥ずかしいよ・・・。」

「ふふふ。あの時私達は連れて行ってもらった立場なのに今は連れていく立場ですよね・・・。大丈夫かなぁ・・・。」

 

 

懐かしい思い出を語りつつ、なんだかんだ言って腐れ縁と化している射場、勇音、隼人の三人は今日の引率を何事もなく終わらせられるよう準備の確認をしていた。

 

最上級生として粗相をしでかさないようにせねば。

いざという時の救護用の道具は揃っているか。

予定を確認し、引率者の持ち物全てしっかり携帯しているか。

 

三者三様でそれぞれ心構えなどは違っていたが、何としてもこの演習を無事に終わらせねばならない。

それに、二月前に京楽が言っていた『物騒』という言葉も何か引っかかるのだ。

今でも覚えているくらいだ。

普段そのような忠告をしない京楽だからこそ何かあるのでは、そう思わずにはいられない。

 

ただ、自分が浮足立ったら後輩たちが心配するので、何とか悟られないように気を配ることにした。

射場と勇音には事前に伝えてあるので有事の際の工程は三人で頭に叩き込んだ。

 

 

「とりあえず何も無いことを祈りましょう。いざとなれば伝令で瀞霊廷に緊急要請が出来るので大丈夫だとは思いますが・・・。」

「まずはとにかくチビどもを逃がさにゃあいけんな。頼むぞ虎徹!」

「はい!射場さんと口囃子さんには苦労かけますが、足止めお願いします。」

「うん。頑張ろう!でもまずは魂葬実習成功するようにしないとね。」

 

 

 

三人が今日の演習に対する思いを確認した後、穿界門のまえにぞろぞろと集まった一回生の前に立ち、射場を中心に今日の演習の説明を始めた。

 

 

「おどれら!!黙って聞かんか!!!簡単に自己紹介するぞ。儂は六回生の射場じゃ。そして・・・」

「口囃子でーす。よろしくね!」

「虎徹です。よろしくお願いします。」

「儂ら三人でおどれらを先導しちゃるけぇはぐれるでないぞ!!!」

 

 

と射場自慢の剣幕で注意したにもかかわらず、その場にいた特進の一回生は皆ザワザワと噂し始めた。

 

 

「こらうるさいよ!!おしゃべりする人置いてくからな!!ほらそこの奴とか!!顔覚えちゃうよーー!!」

 

 

と隼人が言ってもあまり効果は無い。

 

どうやら自分たち三人は知らぬ間に院内でもかなり有名な院生になっていたそうだ。

斬術トップクラスの成績の射場鉄左衛門、院生で最も回道に長け、さらに霊術院のマドンナとして知られる虎徹勇音、そして鬼道の課程を半年で終わらせた伝説の院生、口囃子隼人。

無自覚だったが、字面だけで見ると確かに強そうな三人組だった。

 

 

「よっ予定が狂うので静かにしてください!」

 

 

と勇音が叫ぶと皆静まりかえった。なぜ勇音が叫んだら皆従うのだろうか・・・。結構ショックである。

だが、一回生のザワつき如きに負けるような六回生では決してないので、しっかり威厳を示しつつ説明を進めた。

 

 

「それではここから三人一組で行動してもらいます。教室で引いてもらったくじを見て、書いてある記号と同じ物を持つ人を探して組を作って下さい。書いてある数字が班の番号です。その順番に魂葬の実習を行うのでなるべく番号順になるよう整列してください。」

 

 

やっぱり勇音が指示を出すと皆素直に従うのだ。何か気に喰わん。

しっかり三人一組を皆作り、しっかり班ごとに順番に並んでくれたため手こずることなくここまではこなせた。

 

 

「それじゃあ皆地獄蝶持ったかい?現世にしゅっぱ~~つ!!」

 

 

何となく現世に入る際の号令はかけたかった。射場には申し訳ないが隼人が音頭をとって現世に無事皆入ることができた。

 

 

 

 

 

 

現世の降り立った場所は、人気の少ない夜の集落だった。

そしてこういう所は現世でいうお年寄りが多く、不謹慎だが出来立てホヤホヤの霊がたくさんいる。

 

亡くなった時はお年寄りでも若い姿で霊になったりと多種多様だが、いかんせん霊、それも(プラス)が多いため、魂葬練習にはうってつけの場所に降り立った。

 

 

「それじゃあまずはお手本見せます。射場ちゃんよろしく!」

「おう!!!!!」

 

 

威勢良く返事した射場は近くの霊の額に浅打の頭を当て、『死生』のハンコを押した。

もちろん何度も練習しているので魂魄に何も異常を起こさず成仏させることが出来た。

一回生から拍手こそ巻き起こったものの、漂うオーラからは想像と違うぜって感じのものだ。

 

 

「とまあ正直魂葬はすごく地味なんだよね。でも死神の業務では大事なものだから真面目にやるんだよ!射場ちゃんも勇音さんも最初は魂葬上手く出来なかったけど練習すればできるようになるから大丈夫!頑張ろう!!!オー!!!」

 

 

と勢いよくやってみたが、誰も乗ってくれない。

再度「オー!」と言ったが、前の数人が「オ・・・オー?」と小声で言うくらいだ。

あぁこれは空回りしてしまったかもまずいまずいと考えているところで、またも勇音の助けが来た。

 

 

「皆さん頑張りましょう!!!オー!!!ほら!せーのっ」

「「「「「「「「オーー!!!!!!」」」」」」」

 

 

だから何でお前らは勇音だと従うんだよ!!!

危うく拳西みたいにキレそうになったが、いやここで怒ったら本末転倒と何とか踏みとどまった。

 

そして一班から魂葬の実習を始めたが、なぜか物凄く魂葬の上手い子がいた。

 

 

「へー君上手だね!僕が一回生の頃よりも上手いかもしれないよ!」

「ありがとうございます!私、前に一緒に住んでたギンが死神になったので、私も死神になりたいと思ったんです!一生懸命頑張ります!!」

「ギンって・・・・・・!!!!!あの市丸ギンの知り合い!?へぇーー世間は狭いのかなぁ・・・。」

松本(まつもと)乱菊(らんぎく)っていいます。今日はよろしくお願いします!」

「よ、よろしく~~。」

 

 

これは稀にみる有望株かもしれない・・・。

射場と勇音と三人で慄きの表情を見せた。

そしてしっかり名前に印を付けて担任に報告することにした。

 

各班二回終えた所で一旦尸魂界に戻り、休憩をとることにした。

 

先ほどの稀に見る有望株の松本乱菊はしっかり一回生の担任に報告したが、どうやら入学試験の時から才能の片鱗を見せており、一回生トップの実力であると言われているそうだ。

 

斬拳走鬼バランスの良い成績を残し、軒並み優秀なので、鬼道だけだったり斬術だけな自分たちよりも有用な死神になるかもねと一回生の先生から容赦なく告げられた。

あと一年で卒業なのに凹ませないでくれよ・・・。

 

 

休憩をとった後はまた現世に向かい、今度は擬似虚との戦闘訓練を行うことになった。

 

 

「はい、午後からは擬似虚との戦闘訓練をやります!えーっと、この訓練は六回生の二組から四組までで鬼道に長けた院生達が結界を張ってくれています。戦闘の前後で彼らに感謝の意を伝えること!これ大事だよ!!」

 

 

隼人の指示に未だに気の抜けた生返事しかこないためまたイラっとしたが、今度は射場が場の引き締めにかかった。

 

 

「おどれらええ加減にせえ!!結界を張っとるやつらは命懸けなんじゃ!!そうじゃけぇこがいな気ぃ抜けとる返事する奴は置いてくぞ!!!!わかったらちゃんと返事せぇ!!!!!」

「「「「「「「はいっっっっ!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

 

おぉ射場ちゃんの剣幕さすが~~。でもこのままじゃ自分は舐められたままで終わりそうだな・・・。

とため息をついた所で、大事なことを伝え忘れているのに気付いた。

 

 

「あぁ忘れてた。僕達六回生はあくまでも練習の場を作ることに注力するから、訓練中はほとんど助けないので万が一死んだら自己責任です。よろしく。」

 

 

一瞬にして一回生から怯えの表情を引き出し、しっかり彼らの気を引き締めることが出来た。

その後も自分が指示だしても上手く行動してくれないのは癪に障ったけどね。

 

 

虚との戦闘訓練の際はなるべく霊の少ない安全地帯で行われることとなっていた。

自分たちの代では別日に行われていたが、十二番隊の尽力で霊術院のカリキュラムが改定され、より院生の成長を効率的に促すものへと変貌を遂げていた。

 

そのかわり引率する六回生もかなり大変になったのはどうしようもない話である。不満しかない。

 

 

「全く・・・浦原さんの実験の賜物でたしかに成長は早くなったけど・・・上級生の負担をもうちょっと考えて欲しかったよ!午前中魂葬で午後戦闘訓練って!普通の死神とやること変わらねぇじゃん!!」

「まぁまぁ・・・。私達六回生の実力平均を見て決めていると思われますし、大変ですけど大丈夫ですよ・・・。」

「・・・・・・射場ちゃんと勇音さんがいてくれれば大丈夫か・・・。はぁ~・・・何で誰も僕にはついてこないんだろ・・・。」

 

 

自分の求心力の無さがすさまじく、不甲斐ないばかりだ。

射場は極道者のような剣幕、勇音は長身で美形の顔、それに比べて隼人自身は見た目が地味で何もインパクトが無い。

やっぱり上に立つ者にとって見た目は大事なのか・・・。

拳西さんに頼んで髪型とか変えてもらおうか。

 

などと死神デビューを考えていると、一回生のとある班が擬似虚を連携で倒した後に小競り合いをしている所だった。

 

 

「へっへぇ~~!!やっぱ俺の実力が物を言ったんだな!!」

「ちょっと何よ!あんたトドメの一撃放っただけじゃない!!貴族だからって偉ぶってんじゃないわよデブ!!」

「うるせぇ!俺は『ふくよか』だ!豊かさの象徴なんだよ!!」

「はいはい落ち着いて落ち着いて喧嘩しない!」

 

 

とりあえず二人の頭を引き離し事情を聞いて互いに謝らせることにした。

何でこんな幼児にやるようなことをやらされないといけないんだよ。

 

 

「えーっと君はさっきの松本ちゃんだね、虚の体力を削ぐためになかなかいい動きしてたと思うよ。それと・・・・・・。」

 

男子生徒の方を見ると、誰かにめちゃくちゃそっくりな気がした。

これは・・・二番隊の副隊長だろうか。夜一さんをいつも仕事させようと奮起してるあの人か?

と推測して名前を見ると、案の定二番隊副隊長の息子さんだった。

 

 

「君は・・・大前田(おおまえだ)希千代(まれちよ)くんかな?君の最後の一撃も迷いのない渾身の一撃!って感じで良かったよ!でもお父さんみたいにもうちょっとまともな性格になるといいね!」

「なっ何でそんなこと言われなきゃならないんスか!!!!だいたい俺は」

「あーもううるせぇちょっと黙ってくんない。」

「なぁーーーーー!!!!!!!」

 

 

こんなにあの副隊長の息子がうるさいとは思わなかったので、もうとにかく黙らせることにした。黙ってないけどね。

いちいちうるさい貴族の子どもが何かと厄介だが、適当にいなしてその場は終わらせることができた。

 

それからどんどん擬似虚を使って各班訓練をこなしていき、死者を出さず何とか訓練を終わらせることができた。

これで今日の現世演習は終わり。何とかなりそうだ。

 

 

「皆さんお疲れ様です。今日の演習はこれで終わりなので地獄蝶を準備してください。」

「帰るまでが演習だからね~。気を抜いたらだめだよ。断界に飛ばされたら院生は生きていけません!」

「皆準備せぇ!!開錠じゃあ!!!!!!!!」

 

 

穿界門が開き慣れた手で射場が地獄蝶を操って皆を先導していた。

霊術院の門の前に穿界門は繋がっているので、そのまま帰り、一回生の担任に演習の成績評価用紙を提出する。

これで本当の意味での引率が終わる。長かった、

 

ある程度疲れはあったが、地獄蝶もしっかり操り穿界門を潜り抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた先は見慣れた院の門ではなかった。

 

(!?)

 

自分だけではなく、射場や勇音、そして一回生たちも一緒にいて困惑している様子だ。

辺りを見回すと瀞霊廷の建物が一切無い森。

流魂街に間違って辿り着いたのか?

まずは自分達の正確な居場所を確認し、院に救援要請を出さねば。

 

 

「射場ちゃん!ここがどこか確認して!恐らく流魂街の番号の大きい地区だと思う!確認したら救援要請も出して!」

「おう!」

「勇音さんは一回生の人数の確認!身の安全の確保も出来る限りでよろしく!一回生は勇音さんの指示に従って!」

 

有事の際の指示の出し方は拳西に教わってきた。

求心力のある勇音に一回生を任せ、一人でも十分な戦闘力のある射場に探索を任せる。

これで一先ずは大丈夫。

 

そして隼人は自分の霊圧知覚を使って近くを確認すると、非常に危険な状態であることが分かってしまった。

 

(虚の霊圧が数十体・・・!?まずいこれはいくら自分の鬼道でも対処しきれない!)

 

不安に苛まれている一回生達が明らかに自分達の行動を見て動揺を隠せない中、射場はさらに悪い知らせを届けてきた。

 

 

「近うを探索しとったら看板見つけたぞ。七十九地区の『草鹿』じゃ。瀞霊廷から距離あるがだいじょう「大丈夫じゃねぇよ!!」

「な・・・何じゃ!一体何が・・・」

 

 

このまま大声を出したら一回生を怯えさせてしまうため、勇音を呼んで三人しか聞こえない音量で現状の深刻さを告げた。

 

 

「今霊圧知覚で探ったら虚が数十体近くにいることがわかった。」

「す・・・数十体!?」

「それにここが『草鹿』ってことも分かった。瀞霊廷からは大分距離あるから救援も時間かかると思う。正直耐えられないよ。逃げるしかない。」

「じゃがどがいなことして逃げれば・・・。」

 

 

それを必死に考えているが、こんな逼迫した状況じゃ何も思いつかない。

焦って焦って同じことしか思いつかず、堂々巡りだ。

数十人の一回生を抱えて全員無傷で虚から逃げおおせるなど、いくら自分が鬼道に優れていても今の実力じゃ不可能だ。

 

だが、この中で最も霊力の高い隼人が残り、囮になれば何とか他の皆は逃げ切れるはず。

それに最初から数十体一気に襲い掛かってくるとも限らない。

もちろん自分が何か力を使ったらそれに虚はおびき寄せられるだろう。

 

捨て駒になってやる。

皆を助けられるなら十分だ。

 

 

覚悟を決めた途端、まるで見計らっていたかのように虚が一体こちらの存在に気付きおびき寄せられてしまった。

幸いにも大きくない虚だ。最小限の力で倒せる。

 

 

「皆逃げて!!!とにかくここから遠い場所に!!早く!!射場ちゃんと勇音さんが先導して!」

「何言っとるんじゃ!!おどれも逃げんと「僕が囮になるから!多分僕の力が虚を引き寄せると思う。だから皆はここから逃げれば安全!!早く逃げろ!!!!!お前ら一回生は上級生の命令聞けねぇのか!!!!!」

 

 

必死に叫んだ隼人を見て状況を理解したのだろう。一回生達は皆逃げ出し始め、勇音が先導し、射場が後ろについた。

 

 

「破道の四 白雷!!!」

 

 

本来指先から放つ物だが、あえて掌から放ち攻撃範囲を広げた。

威力もしっかり調整し、虚の力量を見て最小限の力で虚を倒すことが出来たが、鬼道を放ったせいで近くの数十体の虚に隼人の存在を認識させてしまった。

 

(やっぱり来たか・・・ぐんぐんこっちに虚が引き寄せられてるよ・・・!)

 

 

こうなったら六年前に浦原、鉄裁と作り上げた複合技をやるしかない。

 

 

「破道の十二 伏火!!」

「破道の十一 綴雷電!!」

 

 

鬼道の練習のおかげで、さらに屈強な瓦礫の渦を作り上げることが出来るようになったのだ。

そして以前は渦の中から瓦礫を飛ばすことを主な攻撃としたが、闐嵐を合わせて瓦礫を含めた巨大な竜巻に変貌させ、破壊力を高めることに成功した。

 

 

「破道の五十八 闐嵐!!」

 

 

これなら虚も全部とはいかないまでも何体かは倒せるはず。

そう安心していたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近づいてきた数十体全ては巨大虚(ヒュージ・ホロウ)

 

瞬間、隼人の頭には生まれて初めて出会った虚に殺されかけた時の記憶が鮮明に蘇ってしまったのだ。

 

 

「嘘・・・・・・そんな・・・・・・嘘だろ・・・・・・!!」

 

 

数十体もの明確な死。

動揺でさっきまで制御していた竜巻も崩れ去ってしまい、頭が回らなくなってしまった。

頭を駆け巡るのはあの日遭遇した虚。

あの時の身の竦むような極限の恐怖。

今日は助けてくれる拳西(ヒーロー)はいない。

 

完全に孤立無援な中で絶望の淵に立たされてしまい、もう隼人は自慢の鬼道すら放てなくなってしまった。

 

 

「嫌だ・・・死にたくない・・・・・・!!死にたくない・・・!!」

 

 

捨て駒になってやると心の内で宣言しといて結局死にたくないと思ってしまう。

こんな気まぐれで自分勝手な性格の自分にもひどく絶望し、心が悲鳴を上げて叫びそうになったところで、

 

 

 

 

 

 

 

 

「えらいアカン状況やんけ。」

「え??」

 

 

現れたのは五番隊隊長・平子真子だった。

 

 

「惣右介から救援要請が来てるぅ聞いてな。しかも射場って名前の院生からやから何かあったんか思うてオレと惣右介でわざわざこんな辺鄙な場所にめちゃくちゃ急いで来たんや。感謝しろボケ!」

「へ・・・?それで藍染さんは・・・・・・。」

「院生達の保護に向かったで。あと・・・・・・。」

 

 

救援に来た平子は、少し申し訳なさそうな顔をして隼人に、

 

 

「ちょっとしばらく気ぃ失うててもらうわ。」

「ぎゃっ!」

 

 

破道の一 衝を当てて意識を失わせた。

 

 

「こうでもせんとオレの卍解が隼人を巻き込んでしまうさかいな・・・。しっかし何十体もの巨大虚が何でこんなトコおんねん。まぁオレにとっちゃあ好都合やけどな。」

 

 

まるで邪悪な子どもが悪巧みをするかのような笑顔で告げた後、平子はこの状況に最適な自身の卍解を発動した。

 

 

「――卍解――  『逆様(さかしま)(よこしま)八方塞(はっぽうふさがり)』」

 

 

平子が卍解の名を唱えた後、撫子の花を思わせる形の、美しく巨大な台座が生まれ、その中心に平子は立ち止まっていた。

周りの花弁はうねり、見る者によっては非常に美しい卍解だと賞賛するだろう。

 

だが、彼の卍解は味方には誰一人として見せてはいけないものだ。いや、彼の近くにいてはいけないのだ。

 

一定距離内にいる者全員の敵と味方の認識を(さかさま)に流転させる能力のため、多対一の状況下でないとこの卍解は使えない。

それ故、隼人には申し訳ないがしばらくの間意識を失ってもらったのだ。

 

 

「おぉ~~虚もみ~んな倒れたことやしこれでええか。一人でよう頑張ったで隼人も。」

 

 

小脇に抱えていた隼人は意識を失ったままだが、虚を倒しきる前に意識が戻ったら大変なことになっていたため安心した。

もちろん効率重視で卍解を使ったので虚は瞬殺も同然だが。

霊圧を探ってみると藍染含めた院生達も全員無事である。

 

 

「惣右介達も無事みたいやし帰るかぁ・・・。しかし・・・・・・。」

 

 

卍解を解除した平子は、尸魂界の最近のきな臭い状況をかなり不安に思いつつひとりごちた。

 

 

「こんな院生一人アカン状況で・・・何でオレたちしか助けに来ないんや・・・。」

 

 

丁度この頃、流魂街での魂魄消失案件が隊長格の間で話題になっており、演習帰りの院生が流魂街に間違って送られることは大事件といっても過言ではない。

なのに五番隊の隊長副隊長以外誰も動きを見せないことを平子は不審に思っていた。

 

 

「惣右介ぇ・・・。お前何か仕組んでんのとちゃうやろな・・・。」

 

 

その平子の最悪の推測が見事に的中してしまうのが、約一月後のことであった。

 

 

 

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