ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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ずる休み!

平子に救助してもらった後は、精神が不安定だったこともあり大事を取って綜合救護詰所で休むことになった。

 

意識を取り戻した時には既に布団で横になっており、よく本で見た目が覚めると見慣れない天井現象が起きた。

 

 

「えっ・・・うえっ!?これ・・・本で見たやつ・・・!!」

「何が本で見たやつだバカ野郎。」

「拳西さん!!・・・・・・ってあれ?ここどこですか?あれ?」

 

 

何か記憶飛んでる・・・?と思ったが、事情を拳西が教えてくれた。

 

尸魂界側の手違いで本来霊術院に繋がっている穿界門が流魂街に繋がってしまったため、誤った場所に転送されたこと。

そしてその場所に巨大虚が何故か集まっていたこと。

 

この二つについては疑念を抱いた十二番隊が調査をするそうだ。

 

集まった数十体の巨大虚は平子が全て倒したことも教えられた。

 

 

「お前が虚にビビッて気失ったって真子が言ってたぞ。ったく何やってんだよ・・・。」

「えへへ・・・やっぱり僕もまだまだですね。」

「全くだ。心配でならん!」

 

 

自分の記憶では平子によって気絶させられたような気がしていたが、恐怖で錯乱していたのかと思い、深くは考えないことにした。

 

それからは平子が無理矢理四番隊に当てつけ、仕事終わりの拳西が見舞いに来たところで今の状況になっているらしい。

 

そしてこの場に拳西がいたことで、また拾われたあの日のことを思い出したのだ。

 

 

「何か色々思い出してきたんですけど・・・。僕何十体の巨大虚を見た時に初めて流魂街で虚に襲われた時のこと思い出しちゃって。それで思考停止して鬼道も打てなくなって・・・逃げるのも出来なくてただ死にたくないって怖がっちゃって・・・。情けないですよねほんと。こんなんじゃ死神に「うじうじすんなバカ!!!!」

「いった~~!!!!一応病人にすることですか!!!」

「うるせぇ!ケガねぇしいいだろ!」

 

 

相変わらず拳骨はメチャクチャ痛いが、悲観的になっている時はいい薬だ。

四番隊では決して勧められる行為ではないし、下手したらこれでケガが増えるが、いつも通りの拳骨がいつも通りであるからこそ安心することができた。

 

とりあえず布団を引き被り、伝えたくないという思いを全力で込めつつ小声で感謝の意を述べた。

 

 

「・・・ありがとうございます。決してふさわしいとは言えない行動ですけど。」

「八番隊のチビの女みてぇだな。感謝ぐらい素直に伝えやがれ。」

 

 

反論してたまるか。ちょっとむすっとしたが別に喧嘩したいわけでもないし(確実に負けるので)、ましてや怒ってもおらず、ただ子どもながらに強がっているだけなので、もう何も言わずに寝ることにした。

 

 

「俺は帰るぞ。明日も授業行くならしっかりやれよ。」

「行きますよ。あと一年ですし。お休みなさい。」

「おう。無理すんなよ。」

 

 

そんなこと言われたら休みたくなっちゃったよ。

今までずっと皆勤だったし体調を崩すことも六年間全く無かったが、一度くらい張り詰めた心を休めるのもいいかもしれない。

 

京楽みたいにサボり癖が付きそうだと少々懸念したが、ええい一日くらいどうってことないと思い直し、背徳感のあるずる休みを敢行することにした。

 

 

 

翌日。

 

いつもなら七時に起きるが超久々に九時に目が覚めた。

 

入院患者が自分しかいなかったため、朝食は取り置いてもらっていた。貴族待遇で非常に申し訳ない。別に四番隊に差別感情などないため素直にお礼を言ったら何故かお菓子をたくさんくれた。

そんなにあなた達って立場悪いんか・・・。

ご飯を食べた後は、大変望ましくないが、院の制服で外出することにした。

多分見つかったら怒られるだろう。でもそれしか手持ちの服がないので仕方ないのだ。大目に見てくれ。

 

というわけで隼人は軽く隠密活動(スパイ)をしている気分になっていた。ローズ風に言えばスニーキングミッションである。

 

基本的に建物と建物の隙間を縫って歩き、道路に出ざるをえない時は小走りでなるべく存在がバレないようにしていた。

道路に顔だけちょこっと顔を出して右、左と見てサササーーーっと走っていくあたり完全に隠密機動みたいじゃん!と勝手に一人でテンションを上げている。

 

そしてもちろんこういう任務(ミッション)には障害がつきものだ。

 

最初は、お馴染みの八番隊隊長・京楽春水に偶然見つかってしまったことだ。

 

 

「あれ、隼人クン!こんな所で会うなんて珍しいね!」

「こっこんにちは~・・・。」

 

 

昨日のことを平子や拳西から聞いたらしく、大丈夫だったかいと親戚のおじさんみたいな感じで聞かれたため、しっかり元気になりました!と伝えた。もちろんそのせいで弱みを握られてしまったが。

 

 

「あらら、隼人クンもずる休みするなんて、オトナになったねぇ~。六車クンには秘密にしといてあげるよ。条件付きでね。」

「う゛。やっぱりそうなりますよね・・・。」

 

 

ちなみに条件は八番隊の宣伝活動を水面下で院内に行ってほしいとのことだった。

これなら適当にやればいいやと思ったので、渋々承諾し(多分やらない)、とにかくその場を後にした。

 

そして八番隊の近くを通ったということは、近くには九番隊があるというわけで。

自宅までのスニーキングミッション最大の関門が九番隊前であった。

 

そしてその最大の関門に値する人物は、九番隊副隊長・九南白である。

 

理由は、休暇中に九番隊を訪れたときは必ず、何を察知しているのかは知らないが毎回隼人が門の近くに来る度に、猛スピードで自分の元に来て中に連行しようとするからである。

 

一回自宅に帰ってしまえば拳西も怒りはしないだろうが、ここで白にずる休みがバレて連行された場合、確実に怒られて院に強制送還されるに違いない。

霊圧知覚で探ると二人ともいたので細心の注意を払わねばならない。

 

とにかく最小限の霊圧に留めて全力疾走だ!と道に出ようとしたが、また踏みとどまらざるをえなかった。

 

 

よりによって仕事を真面目にやっていた夜一が隊舎前の通りを歩き、書類を持って隊舎に入ろうとしていたからだ。

 

(何故今日に限って真面目に仕事をしているんだ・・・!)

 

と普段は考えないようなことを頭に留め歯を食いしばっていたが、幸いにも夜一の存在は霊圧知覚で気付いたので、こちらが距離をとってしまえば問題ないはずだ。

 

じっと向こうの様子を遠くから見て、隊舎の中に入ったのを確認した後、白にもバレないように何とか走って隊舎前を通り過ぎることができた。

 

 

 

(珍しく仕事をちゃんとやってみると珍しい者に出会ったの・・・。まぁ向こうは下手クソにも程がある隠密をしておったが・・・。何じゃ、ずる休みか。)

 

 

魂胆含め、全てバレバレであった。

 

 

 

最大の関門に最大級の敵も現れたが、何とか昼前には自宅に辿り着くことが出来た。

スニーキングミッション達成である。喜ばしいことこの上ない。

 

二月ぶりの自宅だが、相変わらずの殺風景っぷりにひどく安心させられる。

 

茶の間はちゃぶ台と数個の本棚だけで、縁側から入ってくる風が柔らかくて気持ちいい。

そして茶の間に繋がっている台所にふと視線を向けると、なんと握り飯が笹の葉に包まれて置いてあった。

 

(拳西さん・・・・・・後で弁当忘れたの気付いて焦ってそうだけどありがたいから頂きます。)

 

もちろんこれは隼人がずる休みをするのを見越した拳西が作り置きした握り飯なのだが、そんなことを知らないためうっかり屋さんだな~と思いつつ頭の中で拳西に感謝した。

 

 

いつまでたっても大きさを考えない拳西お手製の握り飯は二つで腹いっぱいになった。

 

腹を満たした後は、自宅に置いてある出来立てホヤホヤの瀞霊廷通信をのんびり見ることにした。

 

実は、霊術院には今、瀞霊廷通信は置かれていない。

 

昔は死神の今を知らせるツールとして置き、院生達も興味を示した者が見る程度だったが、東仙の改革で人気が出て雑誌を見る院生も増えていった。

 

そして何よりも人気に火をつけた要因は、各隊の特集記事だった。

男子生徒は二番隊、四番隊隊長と八番隊副隊長、女子生徒は五番隊副隊長と十二番隊、十三番隊隊長が特集された回を見るために争奪戦となってしまい、浦原の特集回では雑誌を切り取る事件が発生した。

事態を重く見た霊術院と九番隊は当分、院生用の瀞霊廷通信購読を止め、この雑誌は自宅に帰った時しか見られなくなったのだ。

 

(死覇装って夏用に薄い生地のやつ開発されてるんだ・・・。ってこれも十二番隊特製だよすごっ。)

 

来たる夏のためにいかにして涼をとるかが特集されており、十二番隊特製夏用死覇装の宣伝が行われているページを見ていた。かなり割高なため相当な暑がりでないと買わなそうである。

 

そして自宅には過去の瀞霊廷通信もあったため、適当に引っ張り出してみた。

最初に引っ張り出したのは、紅葉狩りに行った時の回だ。

 

(曳舟隊長・・・懐かしいなぁ・・・。元気だろうか。七緒さんこの頃からいたんだ。ひよ里ちゃん苦しそうだな・・・。)

 

色々と思い出すが、全てが幸せな日々だった。

記事を直接見たことはなかったが(忘れているだけかもしれない)、この記事は卯ノ花と曳舟が共同で執筆したものであり、文体が柔らかくまるで紅葉狩りを追体験しているかのような錯覚に陥った。

 

頁をめくると、京楽がボコボコにされている写真もあった。

 

(確か女性陣の怒りを買ってしまったんだっけか・・・。でもあの時の京楽さん幸せそうだったんだよな。)

 

しかしこの写真の掲載許可は取ったのだろうか。京楽はメンツとか気にしないのだろうか・・・。

 

また別の番号のを引っ張り出してみると、今度は新年会をやった時の回だ。

表紙の笠城が異様な程目を引く。

 

 

「あ!あいつらも映ってる!何か若いな~。」

 

 

たった一年ちょい前の話なのにおじさんみたいな感想だ。

凧揚げでの副隊長の死闘や餅つきでの拳西の活躍、かるた大会での役職関係ナシの仁義なき女の戦いなどが面白おかしく述べられていた。

隼人が連れてきた友達もまだ院生なので目立ってはいないが少しだけ映っていた。

 

(というか気付いたら内容大幅に変わってからもうこんなに作ってるんだな・・・。やっぱすげぇや九番隊・・・。)

 

来年から編集作業についていけるかははっきりいって不安だが、ここで編集に参加しない拳西を見返してやるという思いが強いので、今からでもさらに本を読もうと決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら日が暮れている。どうやらまた寝てしまっていたようだ。

 

(これはいかん!長居するつもりなかったのに!急いで寮に帰ろう!)

 

慌てて準備をしたものの、こういう時に限っていつも拳西は早く帰ってくるのだ。

そして今回もガラガラと玄関の開く音がした。

 

素直に怒られにいくか・・・とまるで査問にかけられるかのような顔をして玄関に行ったが、

 

 

「おらっ!飯にするぞ!!」

「は?」

「お前がずる休みすることぐれぇ読めてんだよ。今日は外で食うぞ!早く支度しろ!!」

「はっはい!!」

 

 

何がなんだかと最初は思ったが、結局自分の行動が見抜かれていたのが恥ずかしい。

そして今思うとあの握り飯は自分用に置いていったものだと気付かされた。

何だか凄く悔しい。

 

でも自分が悪いことをしても怒らない拳西が珍しく、何だか新鮮だ。

昨日のこともあったのかこういう形で気を遣ってくれるのはすごくありがたい。

それに拳西と外でご飯を食べるのは超久々でもあったので、素直に従うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それから隼人は院で悩みの種が一つ増えてしまった。

 

 

「今日もまたいるよ・・・・・・。」

 

 

あれから一月。

授業を受けている最中に拳西が視察に行くことが増えたのだ。

噂によると他隊の視察もわざわざ自分が引き受けてやっているらしい。

 

視察の際は二人分の弁当を持ってきて一緒に食べるのだが、いつもダメ出しを喰らってしまう。

もちろん的確な指摘なので参考になるが何回もされると気が滅入る。

 

というわけで今日も霊圧知覚で気付いた隼人は休み時間に拳西の元へ向かった。

 

 

「もう!またですか!!最近多すぎですよ!」

「うるせぇ!いちいちこっち来んな!不安なものは不安なんだよ!」

「もう僕六回生ですよ!そんなに来られたら後輩に笑われますってば!」

「ちゃんと他のヤツらが気付かねぇ場所で見てるからいいだろ!気付くのお前だけだぞ!」

 

 

たしかに拳西に限っていえば霊圧知覚は凄まじいものだと自分でも思う。

院に近づいた瞬間から何故か拳西の霊圧だけすぐに感じ取ってしまう。

ちなみに霊圧知覚を研ぎ澄ませた際、なぜか浅打が震えるような感じをするのが最近気になっているが、それ以上に拳西が来ると面倒なのだ。

 

だが今日は秘策を用意した。

 

 

「そんなに来るなら僕にも考えがあります!」

「は?お前何言って「いいから来てください!!!」

 

 

無理矢理引っ張って連行した先は、六回生のいる武道場。

いきなり羽織を着た隊長が入ってきたため皆かなり驚いていたが、隼人の発言にさらに驚かされることになった。

 

 

「ここで斬術指南を行ってください!」

「はぁ!?!?!?お前俺が先生なんか向いてねぇの知ってんだろ!!」

「大丈夫です!ここにいる院生は僕含めて斬術下手な人ばっかなのでいつも僕と鍛錬する感じでやればいいんです!」

「だから何でこんな大勢のガキ相手に「やってくれたらもう文句言いません!これから好きに院に来て視察してくれて結構です!!!」

 

 

もの凄い剣幕で急き立てたため、拳西ですら引いていたが、これから文句言われずに視察できるのは精神衛生上良いので、嫌々一日講師を引き受けた。

 

 

たった一時間程だが、現役隊長の教えの影響で皆少しはコツを掴んだようだ。

かなり教えるのも適当で、怒号飛び交う場だったのはいかがなものだが。

昼食を取りながら反省会もどきを開いていた。

 

 

「まぁあいつらも継続すれば出来るようになるだろ。」

「あんな適当な指導法でよくそんなこと言えますね・・・。」

「だから言ったろ。俺に先生なんか向いてねぇんだよ。」

 

 

やっぱり開き直っていたので、あんまり意味がなかった。

これを機に子どもを相手にしてもイライラせずに済むようになってほしいという思いがあったが、そんな思いは露も知らない拳西はいつも通りだった。悪い意味で。

 

 

「つーか大変だな。この時期流魂街で演習してたはずだろ?やっぱアレの影響か。」

「はい。魂魄消失案件の影響ですね。瀞霊廷から出ることが許されないので流魂街の演習全部中止になって皆困惑してますよ。」

 

 

流魂街での変死事件。その特徴は、服だけ残して跡形もなく消えること。

卯ノ花はこの件について()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と推測したため、変死事件として扱われるようになった。

ありのままの事実だが、卯ノ花本人も詳細はよくわからないと伝えたため、全隊長格もよくわからないままなのだ。

もちろん拳西から聞かされた隼人もまったく言ってることがわからない。

 

そのため、院生の流魂街、現世への演習は当面見合わせとなり、全て院内で代用していたが、先の見えない不安に苛立つ院生も少なくなかった。

 

 

「やっぱ毎年外での演習を楽しみにしていた人は苛立ってますよ。早く解決してくれるといいんですが・・・。」

「今日俺の隊の先遣隊が調査に出てんだが・・・我慢ならねぇから俺も明日行くつもりだ。」

「そうなんですね。頑張って下さい!皆も解決望んでますし、早く安心したいです。」

「おう。お前も頑張れよ!試験近いんだろ!」

「ぐぉっ!背中叩く力強いんですよ・・・。それじゃあまた今度!」

 

 

何気ないいつも通りの挨拶。

いつも通り手を振って自分の教室に戻っていった。

 

 

明後日、口囃子隼人の生活は一変することになる。

 




ついに隼人の将来を決定づけるあの事件が発生します。
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