ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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ここから尸魂界篇まではかなり展開が早いです。
入隊とか言いつつ丸々っと100年分やります。


護廷十三隊入隊篇
入隊


海燕に頼み十三番隊の浮竹に会いに行き、地獄蝶で呼んでもらった京楽も来てくれた所で、隼人は一生のお願いをするつもりで二人に請願した。

 

 

「昨夜の事件の詳細を教えて下さい。お願いします。」

「・・・・・・何故知りたいのかな。」

「僕はこの事件を()()()()()()()()()()()()()()()と思っています。さっきみたいに錯乱した状態で言っているわけではありません。」

「・・・根拠は?」

「浦原さんの右腕として霊術院で働いていた時に感じました。この人が人の命を愚弄する実験をすることは出来ない。もし出来るなら・・・・・・きっと僕達の知らないうちに何人もの命が失われているはずです。・・・・・・・・・拳西さんたちはすでに死んでいるはずですよ。」

((!))

 

 

隊長二人からしたら隼人が知るはずのない情報を知っていたことに驚きを隠せないが、隣でそっぽを向いて頬をポリポリ掻いている男を見て合点がいった。

 

 

「全く・・・・・・海燕クンも口滑らせちゃダメでしょ・・・・・・。」

「すいまっせん・・・・・・。テヘッ」

「でも・・・いいのかい?()()()()()()()()()()。」

(!!)

 

 

隼人にとって盲点だった。

 

 

「キミを惑わすためにボク達は嘘の情報を教えるかもしれない。そしてキミを危険分子とみなしたらボク達は今すぐ殺すかもしれない。それでも信じるのかい?」

 

 

言われてみれば確かにそうだ。

この人達が黒幕として暗躍している可能性も十分ある。いや、実力を考えるとありすぎる。

京楽の頭脳を使えば並の隊長格を陥れることは可能だ。

隊長になって数年の浦原も、たとえ頭がキレていても経験という圧倒的な差がある。

 

浮竹も皆から慕われている裏で、本心は誰もわからないのかもしれない。

そして彼の霊圧量の高さから、やはりあの人達を陥れることは可能だ。

 

だが、やはり普段接しているのを見ると、彼らがそんな悪事に手を染めているようには見えない。

それに、彼らが暗躍なぞしたら、決して許さないあの方がいるのだ。

 

 

「信じますよ。だって僕は普段の貴方達を信じていますし・・・・・・山本総隊長に見つかったら貴方達はただじゃ済まないと思いますよ?貴方達に()()()()()()で禁忌を犯すことは出来ないと思います。」

 

 

二人は沈黙した後、軽く息を吐いて納得したような表情を見せた。

 

 

「山じいの名前出されちゃあねぇ・・・。」

「全くだ・・・・・・。覚悟はいいかい?」

 

 

朝に学長に言われた時とは全く違う、信念のこもった目で隼人は二人に告げた。

 

 

「はい!!」

 

 

 

 

隊長格しか知ってはいけないことを含めて改めて事件の詳細を聞くと、疑問点が生じた。

 

 

「何故東仙さんだけが生き残ったのでしょうか。」

 

 

その場にいた九番隊席官は東仙以外全員死んでいる。

そして浦原が犯人なら口封じのために確実に東仙を殺すはずだ。生き残らせるメリットが無い。

唯一殺されず、虚化の犠牲にもなってない。この異様な特異さが気になって仕方がない。

 

いや、別の可能性も考えられる。

虚化に何かしら耐性を持っている。だとしたらこちら側に有利に働く。

 

しかしもう一つの可能性を考えた途端、非常に恐ろしい事態に辿り着く。

 

 

()()()()()()()()

 

 

この場合、東仙はこちら側の明確な敵だ。

そして今までずっと全くそれを気付かせない以上、隠密性では圧倒的に向こうの方が先手をとっている。

 

だが、そう考えると浦原が黒幕という可能性も再浮上した。

浦原のスパイとして東仙を尸魂界に残した。

何らかの方法で現世と尸魂界で秘密に通信する技術を浦原が開発している可能性も十分にある。

 

いやそう考えさせることがむしろ向こうの策略じゃ・・・。

と考え始めてしまい堂々巡りに陥り、もう訳がわからなくなってしまった。

 

 

「あーーーーーーーー!もう訳が分かりません・・・。」

「煮詰まるのも仕方ないよ。俺も京楽も謎に思う部分は多いからさ。」

 

 

だが、隼人の煮詰まった考えの中でも、一つの結論は出た。

 

 

 

東仙要は敵。

 

 

 

この結論が出てしまった以上、九番隊に入るのは危険だ。危険すぎる。

ただでさえ拳西と普段一緒にいたのだ、この事件後に九番隊に入れば確実に彼に目を付けられるだろう。

 

そしてもう一つ。

 

 

 

東仙要の裏にさらなる悪が潜んでいること。

 

 

 

五席の人間が一人でこんな完璧かつ大それた事件を起こすことは不可能だ。

東仙が浦原を裏切った可能性などもあるが、おそらく真の黒幕はここ尸魂界にいるはずだ。

 

海燕に言われた、何としても生きること、そのためには九番隊入隊を止めるしかない。

 

 

「九番隊は止めます。僕が生きていく上ではあそこに入るのは危険ですし。あと・・・、」

 

 

静かではあるが並々ならぬ怒りを湛えて隼人は東仙を軽蔑した。

 

 

「上司の拳西さんを裏切った可能性のある男の下にはつきたくないですから。」

 

 

隊長二人と海燕はその怒りを無理に止めることなく、しっかりと受け入れていた。

そのうえで京楽は、少しでも隼人を落ち着けるためにいつも通りのノリで話題を変えることにした。

 

 

「・・・・・・九番隊止めるなら八番隊でも来ない?可愛い女の子連れてきてくれると嬉しいな~~♡」

「たしかに第二希望ですが・・・。今は考えさせてください。」

「それでいいさ。ずっとカリカリするのも良くないよ。」

「何かあったら何でも俺に相談しろよ!俺はオメーの兄貴みてぇなモンだしな!」

「認めませんけどね。」

「うるせぇ!いい加減認めろよ!」

 

 

三人のちょっとした心遣いのおかげで隼人もだいぶ精神が安定してきたようだ。

もちろん今までのような元気な姿はしばらく見られないだろうが。

 

 

「ボクも彼も、傷は癒えるまで時間がかかりそうだね・・・。」

「そうだな・・・。俺達も色々調査するべきだな。」

 

 

魂魄消失事件は犠牲となった者だけでなく、残された者にまで深い傷をもたらした。

 

望まない人体実験に巻き込まれた隊長格。

彼らを信頼していた瀞霊廷の住人。

 

各々の負った傷は深く刻まれ、消えることはないが、何としても乗り越えねばならない。

 

 

事件の解明、そして現世に追われた隊長格が尸魂界に戻れるよう、隼人は行動を移し始めた。

 

 

 

 

院の授業に復帰した際は、いつも喋る仲間も腫れ物に触るかのような扱いだったが、仕方ない。

射場とは喧嘩したわけでもないが、彼自身何と話せばよいのかわからないように見えたので、少し距離をとることにした。

 

そして、やはりあの日負った心の傷が大きかったからだろうか、成績不振に陥ってしまい、夏の試験、そして卒業試験もあまりいい成績は取れず、射場や勇音とは違い入隊時に席官の座を手にすることは出来なかった。

 

 

あれから進路を考えた結果、七番隊に入隊することにした。

 

理由は信頼できる京楽が違う隊でもそれなりに近くにいること。

東仙の友人が隊長になる可能性があるという噂を聞いたこと。

そして、あえて今までの自分との関わりが薄い隊に入りたかった、などがある。

 

七番隊は実はあまり訪れたことがなく、ラブと話すのは外で話すことが多かった。

副隊長の小椿(こつばき)刃右衛門(じんうえもん)も息子の霊術院入学に合わせて休隊するという噂を聞いたので、隊が一新されるなら入るのもアリかと考えた結果だ。

 

 

 

 

霊術院卒業から数年後。

 

 

自分のルーツが特殊だったため何かと難癖をつけてくる人もいたが、とにかく強くなることを目標に奮起した結果、数年で七番隊第三席の座を手に入れることができた。

同時に五番隊隊長に藍染惣右介が就任し、一緒で良かったねと言われた。何が一緒なのかは分からないが。

 

自力で鬼道を鍛錬した結果、八十番台の鬼道を詠唱破棄で制御できるようになり、九十番台も完全詠唱すれば発動できるようになったのだ。

威力は全然ついてこないまだ形だけの鬼道だが、この成果が認められた結果が今の階級である。

 

 

隊長不在でさらに副隊長も休隊したため、実質的に自分が隊長代理を務めることもあった。

 

隊主会には出ないものの、決定事項は隊内に通達する。

毎年霊術院卒業生の受け入れを行い、隊に馴染んでもらう。

 

他にも色々ありすぎたので、困った時は京楽と浮竹にアドバイスを貰い、何とか対処してきたのだ。

 

そして隼人が院を卒業して二十年後。

 

新九番隊隊長に東仙要が。

 

 

そして、新七番隊隊長に狛村(こまむら)左陣(さじん)が就任した。

 

 

「新たに七番隊隊長に就任仕った、狛村左陣と申す。貴公らにはこのような姿で申し訳ないが、このまま接してくれ。」

「よろしくお願いします。」

 

 

虚無僧のような鉄笠を被って顔を隠し、手甲で手を隠しているため、朝礼の際に自己紹介されても皆当惑していたが、自分が率先して挨拶をして皆に馴染んでもらおうと尽力した。

 

 

実際の狛村は固い性格だが気魄であり、十分信頼に値する男だと分かった。

狛村も隼人の複雑な事情はあえて聞こうとせず、お互いに丁度いい立ち位置で関係を築くことができた。

 

 

 

ある日、隼人は狛村に自身のお守りをきっかけにほんの少し自分の過去を話した。

 

 

「貴公の首から下げているものは何だ?」

「えっ?あ、これですか。これは・・・・・・昔貰ったお守りです。」

 

 

首から下げ、死覇装の内側に本体を入れていたお守りを狛村に見せた。

あまり思い出に踏み込むと未だに感情の制御が危うくなるため、いつもお守りについて聞かれると何を言おうか考えてしまうのだ。

顔が見えないため表情が掴めず怒っているかと心配になったが、どうやら単純に興味を抱いただけのようだ。

 

 

「いや、済まぬ。儂が純粋に気になっただけだ。いつも中身は死覇装の中に隠れておる故な。なるほど、お守りだったか。」

「はい。二十年も首から下げているのでボロボロですが、とっても大切な物なんです。」

「ほう。そのお守りはきっと貴公を助けてくれるはずだ。」

 

 

良かった。今回は感情が昂らずに済んだ。

 

護廷に入って以来、隼人は人前に出る際に感情の機微をほとんど見せなくなった。

そのため、院の同期からは心配されることもあったが、先輩からは物静かな奴なのかなという認識になり、院にいる頃に比べると全くといってもいいほど目立たない存在になった。

 

もちろん三席になった際は注目されたが、それ以来は一切昇進してないので話題に上がることもなかった。

 

少し安心した所で、今度はまた別角度の行動について聞かれた。

 

 

「それと・・・・・・貴公はよく斬魄刀の鍔に額を付けて何かしておるが・・・。」

「あぁ、あれですか。」

 

 

今まで誰からも聞かれることの無かったことを初めて聞かれてびっくりしたが、まさか狛村にこれを最初に話すとは思ってもみなかった。

 

 

「祈りを捧げているんです。力を貸してくれ~って。そうやって祈ったら何だかいつもより力が出そうな気がするんですよ。霊圧知覚とか特に。」

「ほう・・・・・・。」

 

 

初めて話すことに対し、鉄笠で顔は見えないが狛村は何だか考え込んでいるように見えた。

 

 

「あ、でも他にも色々祈ってます。今日も仕事上手くいきますように、とか、いいことありますように、とか。いつも誰にも聞こえない声で斬魄刀に祈ってます。ぼそぼそって。」

 

 

これは事実を交えた嘘だ。

 

先ほど口にした内容を祈ることもあるが、本当にいつも祈っているのは、あの日の事件が嘘であってほしい、拳西さんたちと仕事したい、いつも通り話したい、など、到底狛村の前では口に出せる話ではない。

 

そして未だにあの日の事件に囚われている自分に絶望し、涙が止まらなくなることが何度もあった。

今でもそうだ。

毎日隊舎寮に帰り斬魄刀に祈りを捧げる度に、空虚感と絶望感に襲われ、号泣してしまう。

外では何とか普通に振る舞っているが、家に帰ると精神はボロボロだった。

 

 

「ほう。」

 

 

嘘がバレちゃったかな?と心の中で軽く焦ったが、想定外の角度からの言葉が返ってきた。

 

 

「・・・・・・儂(俺)でよければ何でも聞いてやる。無理をするな(無理すんじゃねぇよ)、隼人。」

「あ・・・・・・。」

 

 

何故か狛村の言葉が拳西からの言葉に聞こえてしまったのだ。

隊主室に座っている拳西の姿と今の狛村の姿が異様に重なってしまい動揺を隠せない。

生来の感情表現の強さが出て泣いてしまいそうになったが、左手で斬魄刀の柄を必死に掴んで抑えた。

 

こういう時はあえて今の話題からそらせばいい。

 

 

「狛村隊長から名前で呼ばれるの初めてです。いっつも『貴公』って呼ばれますし・・・。何か新鮮ですね。」

「儂が信頼する部下を名前で呼んではまずいか?」

「そんな。滅相もございません。」

「ならばこれからも名前で呼ばせてもらおう、よろしく頼むぞ、隼人。」

「はい!精進致します。」

 

 

何だか不思議な話だ。

自分の隊に新たに来た隊長が、まるで自分を育ててくれた男に似たように感じるのが。

 

だが、この気魄のこもった無骨な男は心から信頼に値する。

この日から隼人は狛村に全幅の信頼を寄せるようになった。

 

 

拳西さん。僕は凄く恵まれた上司に出会えましたよ。

 

 

 

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