ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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志波海燕の結婚式は、見てるこっちが恥ずかしくなるものであった。

 

いつもの死覇装とは違い、黒紋付羽織袴を着た海燕は、自信に溢れた顔をしており、いかにも幸せそうな顔をしている。

隣を歩く白無垢姿の都さんも清楚で気品のある美しさだ。

 

初めて人の結婚式に参列した隼人は、おぉ・・・画になる・・・。と二人の姿に目を奪われ、狛村にも笑われてしまった。

 

その後の宴会の際に、贈り物として箸を渡した。

夫婦で使えるよう色違いのものだ。

 

 

「おーー!箸か!丁度いいモンだぜ!ありがとな!!」

「それは何よりです。お二人ともお幸せに。」

 

 

幸せの溢れる空間だ。

浮竹は嬉しさのあまり式が始まる前からずっと泣いている。京楽がなだめている光景が非常に珍しい。

 

しかし、問題は宴会の途中に挟んだ海燕の挨拶だった。

 

 

「皆さん・・・聞いて下さい・・・。」

 

 

一体何が始まるのかと思えば、聞いているこっちが恥ずかしくなるほどのクサイ台詞を連発し始めたのだ。

 

 

「都・・・。俺はこの尸魂界で都ほどキレイな人はいないと思っているんだ。俺はもうオメーしか見えねぇんだ。なぁ都・・・。俺は何があってもオメーの味方だ。これからもずっと俺と一緒にいてくれ。俺が護ってやる。」

 

 

正直、絶句してしまった。久々に声を荒げてツッコミを入れそうになるほどだ。

こんな気障でクサイ台詞よく皆の前で言えるな!つーか都さんの愛の気持ちも覚めるんじゃ・・・。と思ったら。

 

 

「海燕さん!!!」

 

 

感動したのか、都さんは海燕に抱き着いていた。

いや奥さんもなかなか変わってるな!

 

もちろん場の盛り上がりは最高潮に達し、皆さらに酒が進み、浮竹はさらに感動して涙を流していた。男泣き待ったなし。

だが、その後も続く海燕のクサイ台詞についていけなくなった隼人は、耐えられなくなり場を後にした。

 

 

 

 

海燕の結婚式から十年。丁度隼人が護廷十三隊に入隊して五十年近くが過ぎた頃だ。

 

狛村からとんでもない知らせを聞いた。

 

 

新たな十一番隊隊長の就任。それに合わせて副隊長も新たに就任。

 

それは、前に隊長を務めていた男が斬り合いで絶命したことを意味する。

 

 

「それって・・・新たな『剣八』が生まれたってことですか?」

「ああ。十一代目になるそうだな。更木というそうだ。更木剣八。」

「へぇ・・・。」

 

 

何となく射場が気になった。

彼は十一番隊で現在席官を務めており、おそらく隊長の決闘を見ているつもりだ。

そして彼は、十一番隊で昇進することを望んでいたのだ。

 

突然の来客により、自ら望んでいた地位を横から掻っ攫われたようなものだ。

心配になった隼人は、どちらかというと足が向かない十一番隊に終業後行ってみることにした。

 

 

実は隼人は十一番隊から相当毛嫌いされている。

十一番隊は『戦闘専門部隊』の異名を持ち、直接攻撃系の斬魄刀を持つ者しかいない。

鬼道系の斬魄刀を持つ者や、鬼道を中心に扱い戦う者は軽蔑されるため、もろに嫌われてしまっているのだ。

 

射場の取り計らいもあり少しは改善されたが、相変わらず向こうの人達は新入りすらタメ口で話してくる。野蛮なことこの上ない。

 

もちろん今日も同じだ。

 

 

「あの・・・。射場ちゃんいますかね?ちょっと話したいんだけど。」

「あぁ?何だテメェ?テメェ如きが射場さんに会うなんざ百年早ぇんだよ!」

 

 

お前が知り合うのより五十年前に同期だったんたんだけどな。

よりによって新入りにかなり舐めた口を叩かれてイラっとしたため、実力行使に出た。

 

 

「縛道の一 塞」

「ひぎゃあ!!!」

 

 

ただ腕を軽く拘束しただけなのに情けない。こんなんで十一番隊に入ったのかよ。

 

 

「もう何でもいいから教えて。時間の無駄。」

「え・・・・・・えっと、四番隊にいます・・・・・・お願いですから殺さないで下さいすみませんでしたすみませんでした!!!!!」

「そうかい、ありがとうじゃあね。」

「ぐぁっ!!!」

 

 

癪に障ったので胸の中心に手を当てて白伏を発動し、一定時間気を失わせといた。メチャクチャ怯えていたがそんなに怖い顔をしていたのだろうか。

十一番隊にいて調子に乗っているクセに命乞いとは呆れて物も言えない。

 

これは射場から指導を入れた方がいいなと考え、先ほどの隊士から教えてもらった四番隊に一先ず向かうことにした。

 

 

四番隊隊士から射場の居所を教えられると、鍛錬でケガをして治療を受けているそうだ。

 

病室に連れて行ってもらうと、射場の他に勇音もいた。

何だか霊術院時代みたいだ。懐かしい。

 

 

「あれ、勇音さんもいたんだ。っていうか射場ちゃん大丈夫なの?」

「心配いらん!虎徹に治してもらったけぇもう帰れるわい!」

「あぁダメですよ射場さん!そんな急に立ち上がったら!」

 

 

 

以前射場とは関係がぎこちないものとなっていたが、飲みに誘われた際にわだかまりは解消できた。

案の定射場は声をかけられない自身の不甲斐なさを大変悔やんでいた。何度も済まんと謝られた。

助けてやりたかったと何度も言われた。

 

その射場の心意気が嬉しかったからこそ、隼人も射場に謝ったのだ。

今まで距離とってごめん、と。また前みたいに話そう、と。

 

丁度京楽達に自身の心の闇を打ち明けられるようになった時だったからこそ、射場の気持ちを素直に受け入れられた。こちらの非を詫びることができた。

きっと自分の心の中であの人達への追憶を燻ぶらせていた時だったら、ただ射場に「気にしなくていいよ。」と突き放す言い方をしてしまっただろう。

 

そして、この日以来悪夢を見ることは無くなった。

あの人達が戻ってきてほしいと斬魄刀に祈ることはあっても、絶望で涙を流すことはなくなった。

 

京楽達に辛い思いを吐きだし、射場とのわだかまりを解消した副次効果だろうか、少しずつあの日の事件の辛い思いを受け入れ、消化していったのだ。

 

四、五十年経ってようやく、ほんの少しずつだが前を向いて歩けるようになった。

 

 

そして今、以前のように普通に会話できる程に関係は戻っていた。

射場は五席、勇音は四席、隼人は三席。

 

霊術院同期の間でも優秀だった三人は、着実にキャリアを積み重ねていた。

 

 

「ふふ。でも何だか懐かしいですね。」

「そうじゃのう!儂ら三人は運命共同体じゃぁ~!!」

「こんな感じでいつも暴走してたよね。一人で。」

「何じゃとぉ!!!!」

 

 

やはり懐かしい。五十年前に戻ったみたいだ。

自分は色々変わってしまったかもしれないが、この二人はあの時のまま。非常に安心した。

そうやって軽口を叩き合ったあと、忘れかけていた本題を射場に斬り込んだ。

 

 

「射場ちゃんってさ・・・・・・。これからどうするの?」

「これからって・・・どういうことじゃ。」

「十一番隊でずっとやっていくのかってこと。副隊長に新しい人就いたでしょ。」

 

 

かなり直接的な斬り込み方だが、長年の付き合いと信頼関係があるためできるのだ。

少し考え込んだ後にその返答が来た。

 

 

「実は・・・・・・。新しい副隊長はぶち小さい女子でのう・・・。」

「それって・・・どうなんでしょう。実力とかわかるんですか?」

「今日つけられた傷は全てその副隊長からつけられたもんじゃ。」

((!!))

 

 

五席の射場を打ち合いで圧倒する程の力。

副隊長でそれほどの腕前だ。恐らく他の席官達とも圧倒的な差があるだろう。

 

 

「すごい・・・射場さんを、ここまで・・・。」

「でも、小さいってどれくらいなの?十三番隊に入った勇音さんの妹さんくらい?」

 

 

小さいの指標として清音を参考にした際勇音はなぜかメチャクチャ落ち込んでいたが、いつものことなので気にしないことにした。

近くにいる小さな女の子が彼女しかいなかったので参考が彼女しかいないが、射場はこちらの予想を覆してきた。

 

 

「いやぁ・・・。あれは・・・完全に幼女じゃのう。」

「えっ!幼女ですか!?っていうか射場さん幼女相手に思いっきり打ち合ったんですか!?」

「なっ何が悪いんじゃ!少々気に喰わんかったけぇ戦ってみたんじゃが・・・圧倒されてしまったわい・・・。」

 

 

珍しく射場も落ち込んでおり、不思議な気分にさらされた。

あんだけ出世だ出世だと騒いでいた射場が、ここまで打ちひしがれるとは。

 

個人的にその幼女に興味がでた。変態的な意味じゃないよ。

多分自分を毛嫌いしたりはしないだろう。新入りで小さな女の子だし。

 

 

「ねぇ。今度その子に会ってみたいな。紹介してよ。」

「私も会ってみたいです!小さな女の子かぁ・・・かわいいだろうなぁ・・・。」

 

 

目を輝かせていた勇音が姿を想像して一人でテンションをあげている中、またも射場は予想外の一言をぶつけた。

 

 

「なら呼んぢゃる。地獄蝶で呼べばすぐ来るじゃろ。」

「えぇっ!?いいんですか!?」

「ってそんな急に来れるものかい?」

「基本的に隊長と一緒におるけぇ大丈夫じゃろ。副隊長が退屈しておったらすぐ来るわ。」

 

 

まさかこんな日没後に小さな女の子一人で大丈夫なんかと不安に思ったが、射場が地獄蝶を放ってから数分後、物凄い速さで四番隊隊舎に渦中の人物は来た。

 

 

「ばーいー!来たよ!!どうしたの?」

「副隊長!儂の同期です。」

「へー。そーなんだ。お友達なんだね!お名前教えて?」

 

 

最初に勇音の方を見ていたので勇音から挨拶した。メチャクチャ首を上に向けていたのが子どもらしくて本当に副隊長なのかと疑わしくなる。

少女に首を上に向けられうっと思った勇音はちゃんとしゃがんでから自分の名前を名乗った。

 

 

「虎徹勇音っていいます。よろしくおねがいします。」

「ふ~~ん。よろしくね!こてこて!!」

「こ、こてこて?」

 

 

何か不思議なあだ名付けるな~。

少女は勇音に抱き着き高い高いをしてもらっており、「背が高いんだね!!」と悪気無く地雷を踏んだ。無邪気さは時に凶器と化す。恐ろしい。

こんどは隼人にお名前は?と聞かれたので、しっかり自己紹介した。

 

 

「口囃子隼人です。よろしくお願いします。」

 

 

勇音の腕から降りたため、しっかりとしゃがみ目線を合わせて挨拶をすると、何だかじーーっと目を見てくる。

「どっどうしたの?」と聞いてもずっと見たままで何だか恥ずかしいが、しばらく経って言われるとも思ってなかったことが少女の口から出てきた。

 

 

「何でそんなに閉じこもってるの?」

「え・・・・・・?」

 

 

こんな小さな子どもに、一瞬にして自分の心の闇が暴かれたような気分になった。

 

少しずつ前を向いてはいるが、昔のことだと完全に振り切れているわけではない。

その不完全さを、初対面の少女に見抜かれてしまった。

 

 

「だって、今も何か抑えてるような顔してるもん!言いたい事も言えないのはよくないよ!はやちん!!」

 

 

ビシッ!と隼人に指をさし、まるで子どもがちょっとしたミスをした大人を注意するかのように真面目な顔で糾弾された。

そして少女が自分につけたあだ名。

 

昔、白がつけたものと全く同じだった。

初めて会った時に苦しいほど強く抱きしめられたことが思い出される。

この少女と話をするだけでこんなにも動揺してしまうとは。

 

十年以上前の隼人なら、斬魄刀の柄を掴んで抑えていただろうが、今はそこまでしなくても大丈夫。

射場は心配そうにこちらを見ていたが、少女の言葉を素直に受け入れることができた。

 

 

「閉じこもってるか・・・。確かにそうだね。でも今はそれでいいんだ。それが一番今の僕にとって都合がいいんだよ。」

「そーなの?」

「うん。だから心配しなくて大丈夫だよ。あと、僕達が名前教えたから、今度は君が名前教えてよ。」

「うん!!あたしはね!草鹿(くさじし)やちるっていうの!十一番隊の副隊長だよ!!えっへん!!」

 

 

小さいながらにえっへんと立派ぶっているのが、いかにも子どもらしくて可愛い。また勇音はかわいいと目をキラキラさせている。

 

正直やちるの発言には非常に驚かされたが、幼いながらに何となく気付いただけかもしれない。

無邪気って怖い・・・・・・。

 

 

勇音がやちるを十一番隊まで送ると言い、彼女がその場から退席した後、隼人は誰にも明かしてこなかった考えを打ち明けることにした。

 

 

「ねぇ射場ちゃん。よかったらでいいんだけどさ・・・。」

「何じゃ?遠慮せず言ってくれ!!」

「えっとね・・・・・・、」

 

 

「七番隊に来ない?副隊長として。」

(!!!)

 

 

やはり射場はサングラスをかけていても分かるほど当惑した顔を見せた。

射場本人が望むのは十一番隊での昇進。

ただ、これ以上の昇進はよくて三席に留まるだろう。

 

現在の霊圧量から見てもこのまま十一番隊で昇進するには厳しい道を歩まねばならない。

今日やちるの霊圧を見ただけでやはり射場とはまだ格が違うのを感じてしまった。

 

 

「・・・・・・少し、考えさせてくれんか。」

「・・・うん。いつでもいいよ。狛村隊長にはまだ射場ちゃんのこと何も言ってないから。」

 

 

相反する考えだが、今すぐ行くと言ったら隼人は真っ先に止めた。

考えさせてくれと言うはずだと思ったので、この話題を振ったのだ。

 

射場の性格は七番隊にこれ以上ないほどピッタリだが、実力を考えると自身が副隊長になることに納得しないはず。

既に始解は習得したと前に聞いたが、それでも自分が納得する実力ではなく、十一番隊で実力をつけた上で七番隊副隊長になると宣言するだろう。

勇音も始解は習得しており、同期の中でも唯一始解を習得していない隼人は、実は少し焦りを感じていた。

 

 

「じゃあ、考えといてね。帰っちゃダメだよ?十一番隊の中で四番隊をちゃんと評価してるの、射場ちゃんと多分やちるちゃんしかいないんだから。」

「四番隊を馬鹿にすな!って何度も言っとるんじゃがのう・・・。なかなか変わってくれんわ・・・。」

「ついでにチビの新入りの子もシメといて。舐めた口きいてきたから白伏しちゃった。」

「それは・・・・・・やりすぎじゃ・・・。」

 

 

決してやり過ぎではないと隼人は考えているが、行き過ぎた鬼道の腕前のせいで感覚が鈍っていることに気付かない以上、是正することは不可能である。

 

 

とりあえず射場に副隊長の誘いをようやく出来ただけで、今日は十分だ。

 

 

 

 

射場を四番隊に置いていき、隊舎寮まで帰っている途中。

 

 

『――丈、―。――――――しを―――援―――――。』

(?)

 

 

一人のはずなのに、何故か脳内に()が聞こえた。

 

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