ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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習得

気付くと、昔拳西と住んでいた家の茶の間にいた。ちゃぶ台に座っているところだ。夏なのにこたつがある。

目の前には、桃色の体操服を着た黒髪の女性。顔を見たのは初めてだった。

気だるげでいて、芯のある眼をした女性だ。

 

 

「貴女が僕の斬魄刀?」

 

 

ただうなずくだけ。それに彼女はちゃぶ台の上に載せたうさぎの人形をいじって遊んでおり、自身に関心を全く示さない。

 

 

「何か・・・言うことあったりしないの?」

 

 

無言。

向かい合ってこたつに入り、ただただ静かな時間を過ごしている。

何だこの時間・・・。と少し困惑していると、彼女に動きがあった。

 

頭をちゃぶ台につけ、ぼーーーーっとしながら、彼女は精神世界で初めて言葉を紡いだ。

 

 

「・・・・・・・・・気持ちいい・・・・・・。」

「は?」

「こばやしはこたつが気持ちよくないの?」

「えっ・・・まぁ、冬なら気持ちいいかなって思うけど、今は夏だし・・・。」

 

 

なっなんだこの脱力しまくった感じ・・・?

まるで自分が霊術院に入る前の冬の過ごし方みたいだ、なんて思っていたら、いつの間にか彼女はみかんを食べ始めていた。さっき無かったみかんのカゴも用意されている。

 

 

「食べないの?」

「えっあ、ああうん。頂きます。」

 

 

精神世界のみかんに味があるのかと思いつつもらったみかんを食べると、しっかり甘いみかんだった。おいしい。

って呑気にみかん食べてぐうたらしている場合じゃねぇ!

彼女のペースに流されそうになった(というか流されていた)隼人は、しっかり本題に入ることにした。

 

 

「力が欲しい。」

 

 

みかんを食べていた彼女は飲み込んで手を止め、じっと隼人の目を見据えていた。

 

 

「単刀直入に言う。貴女の力が欲しい。」

()()()()?」

「何のためって・・・・・・。」

 

 

逡巡したが、入隊試験の面接で言う、テンプレートのような答えを言ってしまった。

 

 

「皆を護ったり、一緒に戦って、死神として力を尽くしたいから。」

 

 

とは言うものの、彼女の目は隼人の嘘を見抜いている。

少し鋭くなった視線が彼女の隼人に対する違和感を明確に示している。

もちろん自分の言った嘘を見抜いていることなど隼人には分かっていた。自分の斬魄刀だし。

 

 

「なんて言えたらいいんだけどな。わかるでしょ、貴女なら。ただ単純に拳西さん達にもう一度会いたい、あの人達を尸魂界に帰れるようにするために力をつけたい、不純な動機だよ。でもそれでいいんだ。」

 

 

彼女はまたうさぎの人形をいじっていたが、ほんの少し微笑んでいるように見えた。

そして彼女は突然こたつから出て歩き始めた。

体操服の上着を脱ぎ、現世のTシャツ姿になって縁側に座る。

「おいで。」と言われたので隼人もこたつから出て彼女の隣に座った。

 

暖かい風が吹いている。

懐かしいあの庭。今は取り壊されて跡形も無くなっているだろう。

隼人と同じように、彼女もどこか懐かしむような表情で庭を見ていた。

 

 

「大丈夫だよ、こばやし。私は今までこばやしが辛い思いをしてきたのを知ってる。」

「そうだよね。いつも祈っては泣いてたし。あの頃は本当にごめん。」

「大丈夫。・・・・・・力、貸してあげる。」

「・・・・・・いいの?」

 

 

こんなすぐ承諾を得られるとは思わなかったが、やはりそれには理由があった。

 

 

「でも・・・・・・、私の力は、皆を護れるものではない。」

「えっ。それって「こばやしが昔から望んでいた、強い力ではない。」

 

 

そっか。そうなのか。

拳西さんみたいに強くてカッコいい能力では・・・ないのか・・・・・・。

 

俯き、少し現実を受け入れるのに時間がかかったが、彼女は隼人の本当の強さを見抜いていた。

 

 

「でもね・・・・・・。こばやしの鬼道を合わせれば、私の力も活用できると思う。」

「・・・・・・、」

「こばやしが今までずっと鬼道を頑張ってきたのも、私は知ってる。だから、こばやしの望む力ではないけれど、こばやしが強くなれる力だと私は思う。こばやしには、この力が一番合っているから、私は今ここにいると思う。」

 

 

斬魄刀を主体にした戦いではなく、鬼道を主体にした戦いに斬魄刀を織り交ぜる。

今まで考えてもみなかった。

それに自分が強くなれると彼女は明確に言い切ってくれた。

この力が今の自分に適しているから、ここにいるよとも言い切ってくれた。

 

ならば、受け入れよう。

本来望んでいたものではないが、この力と共に戦い抜いていこう。

そして、この力で尸魂界をあの人達が帰れる場所にしよう。

 

 

「名前、教えて。」

「うん。私の名前は――――――。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「――読み取れ、

桃明呪(もものみょうじゅ)』――」」

 

 

 

 

 

彼女―――桃明呪(もものみょうじゅ)―――とともに解号を唱えた後、桃明呪は自身の能力について説明してくれた。

 

 

「私の能力は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。今は瀞霊廷の中が限界だけど、鍛錬すれば現世も虚圏も関係ない。始解すればどこにいようといつでも検索・捕捉できる。」

「それって・・・。」

「うん。()()だよ。一度記憶した霊圧の持ち主をいつまでも追い続ける。呪いのように相手につきまとう。縛道の掴趾(かくし)追雀(ついじゃく)なんか比べ物にならない程の呪いの力。」

 

 

力の説明を受けた隼人は、むしろ今までの行いを振り返り、納得していた。

 

 

「斬魄刀への祈りの力が呪いになったのかな・・・。なんか知らないうちにすごい執念持ってたんだ・・・。」

「こばやしのむぐるまに対する思いは私も知ってる。いつだってむぐるまの影を追ってるこばやしを私は一番近くで見てきたよ。大丈夫だよ、こばやし。・・・・・・いつか、むぐるまに会えるよ。」

 

 

最後に桃明呪が綴った言葉は、今まで同じ言葉をかけてくれた誰よりも優しく、誰よりも確信力を示したものだった。

 

 

 

 

 

現実世界に戻ってきた時には、すでに夕方であった。

本来なら演習の場で始解お披露目会になるところだったが、この力を見せるのは止めることにした。

 

東仙から警戒されそうな気がするのだ。

この力を教えた場合、敵なら真っ先に消される。

全くもって戦いには役立たないと思われる力だが、敵の暗躍を防ぐ、などといった目的ならこの力は凄まじいほどの威力を発揮する。

それぐらいは隼人の頭脳でも理解できた。敵がこの力を持っている場合、自分なら真っ先に狙う。

 

それ故、演習の場では習得できなかったと伝え、後で秘密裏に狛村、そして京楽と浮竹に教えるつもりだ。

 

 

 

演習が終わり九番隊が皆帰っていった後、始解を見せるため狛村に時間をとってもらい隊主室に来てもらった。

 

 

「遅れて済まぬ。しかし隼人、わざわざ演習後に儂に何か用でもあるのか?演習中でも構わなかったのだが・・・。」

「始解のことです。実は習得しているんです。」

「何と!!!」

 

 

驚くのも無理はない。さっきはわざと霊力を抑えて無理だったと伝えたからだ。

 

 

「それで、僕の力は秘密にしておいて欲しいんです。京楽隊長と浮竹隊長以外には。」

「・・・・・・そうか。東仙にも秘密にしておいてほしいか。」

「申し訳ございません・・・。」

 

 

鉄笠で表情は相変わらず見えないが、おそらく難色を示しているのだろう。

狛村にとって東仙は友だ。信頼できる部下の話を共有したいに決まっている。

だが、何とか狛村に納得してもらい、隼人は始解を見せることにした。

 

 

「ではいきますね・・・。」

 

 

斬魄刀を握り、精神を集中させる。斬魄刀の名と能力は事前に聞いているが、現実世界で始解するのは初めてだ。

上手くいくか。

 

 

 

「――読み取れ、『桃明呪』」

 

 

解号を唱えた瞬間、斬魄刀は鞘と柄含めて桃色に光り、剣先の方からゆっくりと隼人の体内に吸い込まれるような形で消えた。

 

朽木白哉の千本桜を彷彿とさせるような光景。

初めて見た隼人も驚きを感じていた。

 

 

「斬魄刀が・・・消えた?いや、貴公の体内に入っていったのか・・・?」

「体内に入っていったと思います。僕もまだ力を把握しきれてないので。それで、僕の力なんですが・・・一度でも記憶した霊圧の持ち主を、どこまでも追い続ける能力です。なのでもう狛村隊長の居場所は瀞霊廷内ならばどこにいても検索・捕捉できます。」

「ほう。・・・確かに、この力はあまり人に教えるべきではないな。人によっては忌み嫌うものになろう。」

「呪いみたいなものですからね。無理言ってすみません・・・。」

 

 

数日後、京楽と浮竹にも能力を説明した際にも、隼人は彼らの霊圧を記憶した。

信頼しているからこそ記憶したのだ。

 

 

「これで僕が始解したらお二人の居場所は瀞霊廷内であれば分かります。鍛錬して現世まで及ばせられるようにしたいんですけどね・・・。」

「なるほど。かなり変わった力だな・・・。」

 

 

浮竹は単純に驚いている様子だったが、京楽は真剣に考え込んでいる。

隼人に対し何やら疑問を抱くかのような目を向けているが、「どうかなさったんですか?」と聞くと、いつもの京楽に戻った。

 

 

「あぁいや、どうやってキミの能力を活用できるものか少し考えていただけだよ。ボクは他人の能力を見て自分だったらどう使うかって考えるの好きだからさ。」

「そうですか・・・。鬼道に織り交ぜて戦うといいって彼女からは聞いたんですけどねぇ・・・。僕もイマイチよく分かってないです。」

「習得してからが始まりだからな。頑張れよ。・・・しかし俺がどこに行ってもわかるって・・・恥ずかしいこと出来ないな・・・。」

「あらァ~浮竹。何か疚しいことでもあるの?」

 

 

京楽のツッコミに浮竹が面白いくらい当惑している。このままだと嘘が事実になってしまいそうで怖い。

一先ずこれだけの人物に教えれば、あとは誰にも教える必要はない。

 

こうして隼人は自分の始解の能力だけでなく、始解の習得そのものを隠すことにした。

その上で時々こっそり始解して一人一人霊圧を覚え、十二番隊以外の隊長格全員と、各隊数名の席官の霊圧を記憶することに成功した。

 

十二番隊を避けた理由は、涅マユリの存在。

隊長となったマユリは浦原並みに研究を続けていたが、人体実験を平気で行うマッドサイエンティストだ。未だに解剖の誘い受けるし。

そして彼の頭の良さも、今や浦原に匹敵するほどのものである。本人には決して言えないが。

 

彼の前で始解した場合、わずかな霊圧の誤差などから自分が始解していることを見抜かれて始解の存在が広まってしまう可能性(+解剖される可能性)が大いにあるので、十二番隊の前では決して始解しないようにした。

 

 

また、始解を習得してから鬼道が扱いやすくなったという嬉しい変化があった。

特に八十番台などの威力が高く扱いの難しいものが顕著で、前まで形だけだったものが、一気に戦闘でも実用可能な段階に入った。

 

それ以下の番号の鬼道は、並の隊長格を超え、京楽や卯ノ花に匹敵するやもしれないと言われるほどには実力を上げることが出来た。

 

 

そして、これをきっかけに休日を使って卯ノ花から回道を教わり始めた。

その過程で彼女に自分が始解を習得していることを気付かれてしまったが、能力を話したら事情を理解してくれた。

 

霊術院で習って以来の回道だったためかなり腕が鈍っていて時間はかかったが、二年経ったところで四番隊十番台席官クラスの回道の実力を手にすることができた。

 

勇音から非常に驚かれたが、普通に勇音の方が実力が上なので自分もまだまだだ。

 

 

そして始解習得から五年。

 

秘密の鍛錬を重ねることで、尸魂界全域を桃明呪で探索できるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流魂街某所。

 

東仙要は霊圧遮断外套をまとった状態でその場にやってきた。

 

 

「ずいぶん遅かったじゃないか。要。」

「申し訳ございません、藍染様。少々向こうで手違いが生じまして。」

「東仙サンが手違いなんてえらいこっちゃ。何やまずい事でも起こりはったんですか?」

「この外套を着るのにも注意が必要ということだ。ギン。」 

 

 

藍染様――――藍染惣右介。隼人の心を壊す原因となった真の元凶。

彼と、新三番隊隊長・市丸ギン、そして九番隊隊長・東仙要は流魂街某所に降り立っていた。

 

浦原喜助の技術を模倣して作られたこの外套は着た者の霊圧の外界への放出を完璧に防ぐものだ。

隠密活動をする際には無敵ともいえる程の代物。だが、それすらをも破りかねないほどの人物が尸魂界にはいる。

 

 

 

 

 

「口囃子隼人かな?要。」

「はい。」

「彼の対策は簡単だ。ダミーの霊圧をどこかに置いていけばいい。それとも、僕の力を使わないと、その外套すら身に付けられないのかな?要。」

「もっ・・・申し訳ございません・・・。」

 

 

東仙が隼人に手こずった原因は、隼人の始解が一番の原因だった。

呪いのように霊圧を探査・捕捉する力。その力を出し抜くために東仙は九番隊隊舎などあちこちに()()()()()()()()()()()()()()()()必要があったが、慣れない作業に悪戦苦闘していたのだ。

 

そして藍染は聞いてもいないはずの隼人の始解を知っている。

 

 

「彼も用心深いものだ。自隊の上司と四、八、十三番隊隊長以外誰にも始解を伝えないとは。映像庁の技術をまねた監視体制が無ければ僕達の実験が白日の下に晒されてしまうところだったよ。」

「そんなに厄介なら殺せばいいんじゃないんですか?藍染隊長。」

 

 

至極まともな意見だ。

それほどの障害になりかねない人物なら殺してしまえばいい。

そしてここにいる三人なら誰でも隼人を殺すことができる。

 

だが、そんな陳腐なやり方を藍染は決して認めない。

 

 

「いや、彼の成長は僕にとって最も楽しみな事象の一つでね。

()()()()()()()()()()()()()()。口囃子隼人は僕自身の手で()す必要があるんだ。」

「へぇ~~藍染隊長がそんなこと言いはるなんて、あの子も不幸な男やな~~。」

 

 

ともすれば藍染を小馬鹿にするような発言。しかし中心に立つ藍染は神々しさすら感じるほどの邪悪な微笑みを崩さない。

 

 

「ギン。要。お喋りはここで終わりだ。」

 

「実験を始めよう。」

 

そして彼らはある一体の虚を放つ。

 

 

無慈悲にも選ばれた実験の相手は、十三番隊第三席の志波都を含む十人の死神であった。

 




とある魔術の禁書目録、第三のヒロインの滝壺理后の能力を拝借させてもらいました。

始解の名前、桃明呪(もものみょうじゅ)は、滝壺ちゃんのイメージカラーの桃色、そして禁書における浜面へのヤンデレっぷりと、この作品の主人公が抱く、拳西ら仮面の軍勢に対する強い思いをリンクさせたつもりです。『明呪』は密教用語でまじないのことを指し、ここでは斬魄刀への主人公への祈りを体現させています。

恐らく、科学サイドのキャラの中でBLEACH世界で通用しそうなのは彼女の能力ぐらいしかないと勝手に思っています。第一位はマユリはまだしもザエルアポロにすら負けそうな気が・・・。

そして、卍解はあの能力です。知りたい人はwikiでも何でもいいんで調べてみて下さい。
完全にチート化します。千年血戦篇・訣別譚の前に習得させるつもりです。
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