ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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旅禍

八月三日。

 

隊舎に戻ると、まずは隊主室で始解をして隊長格全員の位置情報、霊圧状況を確認した。

 

 

「全隊長格無事です。霊圧にも変化はありません。」

「分かった。次は席官の確認を頼めるか。」

「承知しました。」

 

 

さらに鍛錬を重ねた結果、ほぼ全隊士の霊圧を記憶し、捕捉出来るようになった。

ちなみに、うっかりヘマをして十二番隊隊長涅マユリに始解の存在がバレてしまったが、彼に能力を話した途端、「始解の存在を秘匿するとは・・・賢明な判断だヨ。」と何故か褒められた。

また、ここ数十年は副隊長ネムの調整に時間を費やしているため、解剖の誘いを受けることは無くなった。非常に安心。

ついでに、射場にも始解の能力を教えた。その方が七番隊で能力を使いやすいから、というのが一番の理由だ。

 

霊圧を調べてみると、波を感じた。

 

 

「誰かが戦闘行為を行っているようですね・・・。これは・・・十一番隊の斑目一角と綾瀬川弓親です。」

「む?誰と戦っておるのだ。」

「おそらく旅禍です。初めて読み取る霊圧ですよ。」

「何じゃとぉ!!!!あいつら抜け駆けしおって!!」

「落ち着いて射場ちゃん。個人的にも気に喰わないけどあの人達()()()()強いから大丈夫だよ。」

 

 

自分の方が先輩なのにタメ口をきいてくるため、護廷の中でも個人的にかなりいけ好かない連中だが、実力は確かだ。

倒されることは無いはず・・・と思ったが、旅禍の霊圧がおかしい。

 

(これは・・・死神の霊圧と・・・虚?何で虚が混じって・・・・・・、!!!!!!)

 

微弱だが、斑目が戦っている相手には、虚の霊圧が混じっている。

まさか、虚化した隊長格の一人!?

だとしたら緊急事態だ。

 

 

「検索対象を変えます。瀞霊廷にいる全死神の霊圧以外の変わった霊圧の持ち主の特定に移ります。」

「な・・・何じゃ!いきなり焦ってどうした口囃子!!」

 

 

血相を変えた隼人に対し射場が何か喋っていたが、それすらも聞こえない程の集中力で探索を行う。

始解の力を本気で使っている最中は瞳孔が開き眼球が震えているらしく、見た者を怯えさせてしまうそうだ。

最初は不気味がっていた射場も慣れたはずだが、どうやらまた怖がらせたらしい。

 

探索をして覚えのない霊圧が8体以上ある場合、覚悟を決めねばならない。

知りたくない事実を知ってしまいたくないと怖くなる。

そして脳内で弾き出される結果は、6体であった。

 

 

「ふぅ・・・・・・よかった・・・。」

「何がよかったんじゃ口囃子。」

「あぁ・・・うん、まぁこっちの問・・・・・・題・・・・・・。」

 

 

いや待て。

夜一と思しき霊圧を含めて6体。だとしたら残りは五人。

その中で、()()()()()()()()()()()()()()1()()()()()

じゃあそれは誰だ?何故虚の霊圧をわずかながら持っているのだ?

あの事件を知っている者かもしれない。

まさかあの事件の解決の糸口になるのではないか。

 

そう考えていると、彼らの霊圧に大きな動きがあった。

 

 

「斑目一角がやられた。」

((!!!))

「行きましょう、狛村隊長。斑目の元に行って旅禍がどこへ行ったか聞き出します。」

「ああ。これは緊急事態だ。」

「そんなら儂も「ごめん、射場ちゃんは隊舎に居てもらってもいい?万が一何かあった時大変だし、僕の方が霊圧知覚あるから、本当にごめん。」

「ああ・・・・・・そんなん言われちゃあ仕方ないのう。」

「じゃあ行ってくる。狛村隊長、無理言ってすみません。」

「構わぬ。席官が旅禍にやられるなど異常事態だ、いずれ他の隊長が止めに入ることもあろう。元柳斎殿が動かれる前に止めるぞ。」

「はい!」

 

 

狛村の行動の動機はほぼ全て総隊長への恩義のためだ。

以前はちょっと頭が固すぎるところがありなかなか行動に移してくれなかったりしたが、最近は柔軟に考えてくれるようになった。

 

特に、射場が入ってから信頼できる部下が増え、より皆も関わりやすくなった部分がある。

今回も総隊長が動く前に止めるという動機で七番隊は動くことになるだろう。

以前なら、命令が無ければ動かないという頑固すぎる性格が見られたので、動きやすくなり隼人は個人的に隊の運営をよりやりやすくなったのだ。

 

移動の最中、また廷内の霊圧に変化が起きた。

 

 

「綾瀬川弓親もどうやらやられたようです。」

「!・・・急いだ方がいいな。」

 

 

狛村の瞬歩のスピードについていき、斑目の霊圧の元に行くと、血を出して倒れている状態のままだった。

伝令神機で四番隊を手配し、来る前に斑目に旅禍についての事情聴取を行おうとしたが。

 

 

「君が戦った旅禍が何者か教えてもらえないかな?」

「・・・・・・俺は何もみてねぇよ。」

「は?」

「俺は何も見てねぇし何も知らねぇ。顔も見てねぇ相手に後ろからいきなりやられたんだ。何も情報は持ってねぇよ。」

 

 

この非常事態に何を言ってるんだこいつは。

霊圧の状態からして戦っていたことは明らかだ。何故嘘をつく。

己の状況を分かってないのか。

まさか旅禍と更木剣八を戦わせるために情報を伝えないのか。

馬鹿馬鹿しくて反吐が出る。

 

 

「事実だとしたら情けないね。旅禍相手に後ろから刺されてのされるなんて。笑えるよ。霊圧量から見てその辺の席官ですらもっと張り合えるはずだよ?更木隊長に進言してあげよっか?こんな情けない男が席官にいますよって。」

「てんめぇ・・・!!!!戦闘補助しか出来ねぇヘタレのクセに俺に盾突きやがって「貴公は旅禍を見てないんだな?」

 

 

小競り合いを始めた二人を見て、時間の無駄だと判断した狛村が割って入った。

 

 

「こっ・・・狛村隊「斑目。貴公は見てないんだな。」

「・・・・・・はい。」

「なら行くぞ、隼人。ここにいても時間の無駄だ。」

「いいんですか?そんな・・・。」

「じきに四番隊が来る。くだらぬ小競り合いをすれば彼らが怯えてしまうと考えろ。」

「・・・・・・すみません・・・。」

 

 

斑目が黙秘するのは信じられないが、狛村の注意は至極当然のものだ。

ただでさえ旅禍の侵入、朽木ルキアの処刑などで今までになくきな臭い状況で、席官同士の小競り合いが生まれれば瀞霊廷がさらなる混乱に陥るだろう。

 

納得いかないが、一旦退くことにした。

 

 

「何故退いたのですか?」

「おそらく旅禍の狙いは殛囚の救出だ。大方友人が助けに来たと儂は推測する。」

「えっ・・・?だとしても懺罪宮までですよ?さすがに旅禍の足では・・・。」

 

 

実力は謎だが、斑目一角を倒す程の旅禍なら厳しい足取りとなるはずだ。

もっとも、その旅禍の実力が隊長格並ならこちらが後手に回る可能性もある。少なくとも今のその旅禍の霊圧を読むと良くて副隊長並かと思われる。

 

 

「厳しいだろうな。奴等の足では。それ故儂らの狙いは疲弊した旅禍を捕らえることだ。」

「なるほど・・・。なら先回り致しましょう。もう一度相手の霊圧を読みますね。」

 

 

一旦止まり再び始解して旅禍の足取りを確認する。

先ほど斑目、綾瀬川と戦った霊圧の持ち主は十一番隊隊士から逃れたようだが、妙な点が増えた。

 

 

「死神が一人彼らに同行していますね。人質にでも取られたのでしょうか。だとしたら厄介ですよ。」

「何・・・?どこの隊の者か分かるか?」

「この霊圧は・・・・・・。四番隊の山田花太郎です。七席が人質に取られるなんて・・・!」

 

 

四番隊ではあるが、席官を人質に取ってしまうとは。

旅禍が十一番隊の席官二人を倒し、更に四番隊席官を人質にとり、事態はさらに悪化している。

急ぎ旅禍達の元へ先回りすることにした。

 

 

正午を過ぎた頃、霊圧を消して偵察していると、丁度旅禍が来るところだった。

 

 

「来ましたね。」

「行くぞ。」

 

 

狛村の合図で旅禍を止めるための戦いが始まった。

 

 

 

「止まって下さい。素直に投降すれば命は奪いませんよ。」

 

 

まずは自分一人が出て相手の戦力を確認。

左の男は何やら流魂街の民の服装かと思ったが、腿に描かれた文様は隼人を驚かせる物だった。

志波家の文様。

何故今志波家の者が旅禍と行動を共にしているのか。

 

 

「お前・・・志波家なのに旅禍風情と組んだのか。」

「ん?何だコイツ?一人でのこのこ出てきやがって。」

 

 

彼が自分の素性を尋ねている者は山田花太郎だ。

人質として捕らえられたものだとみていたが、彼は人質には見えない。

むしろ協力しているのか?

 

 

「あっ・・・あれは・・・口囃子三席!!逃げましょう!!あの人の力は斑目さんとは比べ物になりませんよ!!」

 

 

逃げましょう?何を言ってるんだ。普通自分に助けてくれって言うんじゃないのか。

やはり山田七席は旅禍に協力している。一体何故だ。

 

 

「あぁ?同じ三席なのに比べモンになんねぇってか?」

 

 

そう言ったのは、真ん中で堂々と立っているオレンジ色の髪をした死神。

なるほど、虚の霊圧を僅かながら持っているのは彼か。

 

だが、彼の顔はどこかで見たことがあるような気がする。

しかも、昔の知り合いの顔二つが混じったような顔。

 

 

「つーか三席ってことは恋次よりも下か。さっきの一角よりも弱そうだしな。なら俺一人で余裕だ。お前らは下がってろ。かかってこい!」

 

 

何だこの男。

俺一人で余裕?恋次よりも下?一角よりも弱そう?

ふざけるな。あんな野蛮な奴よりも下だと?

まるで今までの鍛錬全てを馬鹿にされた気分だ。もう我慢ならん。

 

 

「かかってこいって、よく言えるね。というか君、探知下手クソでしょ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「もうひと・・・」

「ぬんっ!!!!!!」

 

 

隼人の言葉を合図に、狛村がオレンジ髪の死神の真上から始解状態の刀を振り下ろした。

 

 

「うぉっ!!!!隠し玉とかせこいんじゃねーの!?」

「・・・・・・ほう。今の儂の斬撃を避けるとは、疲弊していると思っていたが案外骨のある男だな。」

「狛村隊長!」

 

 

すぐに狛村の横に移動し、戦闘態勢を整える。

 

 

「あの死神を狙いましょう。霊圧量から見ておそらく彼を捕らえればこの騒ぎは終わります。」

「わかっておる。隼人は一歩下がっておれ。」

「承知しました。」

 

 

「あっ・・・・・・・あれは!!!!七番隊隊長の狛村隊長!!!無理だ!勝てるわけない!逃げましょう一護さん!!!!!」

 

 

花太郎が一護に向けて叫んでいたが、狛村は構わず距離を詰め一護に斬りかかった。

まずは狛村があの旅禍と戦い、時間を稼ぐ。

その間に隼人が始解をして相手の霊圧を完璧に記憶し、相手を追い詰める準備をする。

 

恐らくこの相手の霊圧を完璧に読み取るのは少し難しいだろう。

今までは死神の霊圧しか読み取ってこなかったが、死神と虚二つの混じった霊圧を読み取ったことは無いため、何が起きるかわからないのだ。

残った二人は何もせず、ただただ二人の戦いを見ているだけだったため、心配する必要もない。相手も迂闊すぎやしないか。

 

 

「――読み取れ――、桃明呪」

 

 

相手の死神は狛村の斬撃を何とか躱しているといった感じだ。

始解状態の狛村の斬撃は一つ一つが凄まじく重たいため、まともに打ち合おうとするとまず相手がやられてしまうだろう。相手の躱す判断は正しい。

後ろや横に飛んだりして、狛村の斬撃が生み出す瓦礫からも何とか避けているといった感じだ。

 

 

「岩鷲!花太郎!一旦逃げるぞ!!」

「おう!」「はい!」

 

 

ただただ躱し続けるのも向こうが疲れるだけだ。懺罪宮とは逆方向に相手の三人は逃げて行った。

 

ここからが隼人の出番である。

 

 

「霊圧の記憶はできたか?」

「はい、何とか。パターンが違うので少し手間取りましたね。」

 

 

まずは隼人が狛村にだけ天挺(てんてい)空羅(くうら)を繋ぐ。

そして、隼人が狛村に相手の位置情報を伝え、相手を追跡させる。

ぶつかった相手が万が一狛村の斬撃を躱した場合、隼人の鬼道で相手の躱した先を追撃する。

 

今回は相手もなかなか実力があるようなので、大地転踊で今の自分の周辺にある瓦礫を飛ばすやり方でいこう。

 

 

「東 三百、北 千四百二十。お願いします。」

 

 

瞬歩で狛村は旅禍達の元へ向かう。

 

 

七番隊屈指の戦闘術が、旅禍三人に襲い掛かる。

 

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