ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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桃明呪(もものみょうじゅ)

「岩鷲!!!花太郎を頼む!」

「はぁ!?一護お前あの隊長と一人で戦う気かよ!?」

「違げぇよ二手に分かれるんだよ!流石に今あんな化け物二人と戦える戦力は俺ら誰も持ってねぇ!後で落ち合うぞ!」

「わかった!気ぃ付けろよ!!」

 

 

二手に分かれた直後、一護の元に先ほどの鉄笠を被った隊長が追い付き、規格外の力の斬撃を放ってきた。

 

 

「貴公の名は何と申す。」

「顔隠してるヤツに教える名なんてねぇよ。アンタが先に名乗るべきなんじゃねぇの?」

「む・・・・・・それもそうか。」

 

 

鉄笠を被っているせいで、何を考えているのか全く分からない。

先ほどの茶髪の三席とは全く違う見た目だ。あの三席は今まで尸魂界で見た死神とは印象が全く違う。直接戦闘を行うよりも、補助に長けた者の雰囲気だった。

この隊長の斬撃を躱している中一瞬三席の様子を見たが、あの眼球、そして霊圧の様子から一目でヤバい相手だと分かった。

それ故あの場から逃げたのだ。

しかし、この隊長は鉄笠を被っているものの朝に戦った一角と似た雰囲気の戦い方だ。

 

あの三席がいなければ逃げ切ることは出来る。

いや、工夫すれば戦えるかもしれない。

 

 

「儂の名は狛村左陣。七番隊隊長だ。貴公の名は何だ。」

「黒崎一護。死神代行。ルキアを助けるために来たぜ!!!そこを通せ!!」

 

 

一瞬で距離を詰め、斬りかかれば一太刀浴びせることが出来る。

瞬歩を使って距離を詰めるも、相手は隊長。そう簡単にいかない。

一護の渾身の斬撃を片手で振り払われてしまった。

(!)

 

 

身の危険を感じ一旦距離を取る。

 

 

「ほう。儂に斬りかかるとは、なかなか面白い男だ。」

「あの三席がいなけりゃ俺もアンタと戦えるはずだ。アンタの剣は確かにメチャクチャな力だが振りは遅いからな。」

「!・・・一瞬にして儂の弱点を見抜くとは。侮れんな。」

「侮ってもらっちゃあ、困るぜ!!」

 

 

この隊長相手にはスピード勝負だ。

単純な話、相手が剣を振った途端に自分は相手の後ろに瞬歩で移動し、隙を打てばいいのだ。

そして案の定止まっている自分に対し上から剣を振るってきた。

能力で剣の力と大きさを増幅させているのだろう。破壊力は凄まじいが、躱すことが出来た。

 

そして瞬歩で相手の後ろに行く。背中の七の数字の目の前に来た。

いける。隊長でも大したことない。これならルキアを助けられる。

自身の斬魄刀、斬月で背中の『七』を切り裂こうとした。

 

しかし、狛村はそれすら見越している。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()。」

(!?)

 

 

その狛村の言葉と同時に、空からいくつもの瓦礫が一護目がけて凄まじい速さで降り注いできた。

何とか避けたものの、少し当たったせいで顔や足に切り傷ができてしまう。

 

 

「ちっ・・・どういう意味だ?」

「儂の弱点を一瞬にして見抜いたのは見事だ。だがその弱点に対策を講じるのは当然だろう。席官でも当たり前に行っているぞ。」

「だからどういう意味だっつってんだ・・・・・・、!!!!」

 

 

あの三席か!!あの三席がどこかで俺を見てやがったのか!

周囲を見回したが、それらしき者の姿は見えない。

だが、何にせよとにかくここにいるのはまずい。

どこから来るか分からない攻撃に警戒しつつこの隊長と戦うのはこちらにとって分が悪すぎる。

 

(あれ使うしかねぇな・・・。)

 

一護は浦原喜助との修行で身につけた必殺技で再び狛村と距離を取った。

 

 

「月牙・・・天衝!!!!!!!」

 

 

この技を使っても、まだあの隊長を倒す程の力では無いだろう。

実際狛村の目を塞ぐ程度の効果は発揮し、何とか逃げることに成功した。

 

 

しかし今度は、雷のエネルギー弾のようなものがまた一護の居場所ピンポイントに飛んできた。

 

 

「またかよっ!!!!何で俺の居場所が正確に分かるんだ!?」

 

 

そこからは術のラッシュが続く。

火の玉や炎、水、雷の塊、風の刃など様々なものが一護の場所目がけて()()()襲い掛かってくる。

 

逃げるだけでもかなりの体力を消費してしまった。

息も絶え絶えの状態で座り込んでいたが、今度は狛村に追いつかれて天から斬撃が降りかかる。

これも躱したが、もうギリギリだ。現に少し傷が増えている。

 

 

「儂らの連携を受けてもここまで生き延びるとは、見直したぞ。」

「はぁっ・・・はぁっ・・・何で・・・俺の居場所が分かるんだよ・・・・・・。」

「いや、まだ分からないの?」

 

 

その場に突然現れたのは三席の男だった。

 

 

 

 

 

正直、あの旅禍は化け物だと思う。

狛村の斬撃を避けることは副隊長クラスの死神なら出来ないことはない。

連続した自分の鬼道を何度か躱すことも出来るはずだ。

 

だが、それを()()()()()()()のは、死神でも前例がない。

気付けば夕暮れ。傷を負ってはいるものの軽傷で済んでいるため、とんでもない実力の持ち主であることは窺い知れる。

 

敢えて普通の調子で話しているが、内心ではこの信じられない体力を持った旅禍を意味の分からない存在として見ていた。

何か虚の力が関係しているのだろうか。

 

 

「いや・・・アンタが俺の居場所を何かの力で見ているのは分かるぜ・・・。」

「まぁそれだけわかれば上出来だね。どうします?狛村隊長。」

「隼人に任せるぞ。」

「分かりました。」

 

 

相手は息も絶え絶えなので完全詠唱をしても恐らく大丈夫。何かあったら狛村が防いでくれる。

 

 

「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ」

 

 

小声で詠唱したため、相手に気付かれていない。

これなら当たる。

 

 

「破道の九十一 千手皎天汰「待ってください!!!!」

 

 

突然後ろから声が聞こえた。

その場にいたのは阿散井恋次。

 

 

「そいつは俺の獲物()っス。俺に戦わせてください。」

「はぁ!?何言ってんだよお前。横から入って戦わせろって何様・・・・・・、」

 

 

鬼道を消して阿散井に返答したが、いつもの阿散井とは様子が少し違う。

よく見たら、彼は副官章を付けていない。

つまりこれは、護廷十三隊の一員としてではなく、一人の男として戦うということか。

 

 

「ありえないよ。こんな旅禍相手に副官章外して戦うなんて。六番隊に置いて来たの?それで負けたらどうするの?自分のやってることわかってんのかよ。」

「わかってます。そういう覚悟で俺はここにいます。」

 

 

何で十一番隊出身者は射場以外はこんなにも変な矜持を持っているんだ。

到底理解できない。

 

 

「だから、この騒ぎは君だけの問題じゃないんだって。()()()()()()()()()()。現に隊長が動き出してるんだよ?君が我儘言って通ると思っているの?バカなの?」

「バカで結構っス!それでも戦わせてください!お願いします!!」

 

 

あぁもう何だよコイツ!いい所で横槍入れやがって!

二十年ぶりに声を荒げそうになったが、狛村によりまた抑えられることとなった。

 

 

「落ち着け隼人!全く・・・お前は冷静に見えるが怒りっぽいのを忘れるな。」

「狛村隊長!ですがこれは「阿散井、お前の望みはよくわかった。」

「えっ狛村隊長・・・?」

 

 

狛村の発言は、隼人を驚愕させるに値する普段からは考えられないものだった。

 

 

「お前に奴の相手を譲ろう。それほどの覚悟を持つなら、お前が倒して見せろ。いいな。」

「ありがとうございます!狛村隊長!!」

「退くぞ、隼人。」

「はぁ・・・。」

 

 

これも納得がいかない。

何故あそこで阿散井に譲ったのか。

明らかに自分がやる方が確実に相手を無力化できる。

隊舎に帰る途中で理由を尋ねると、狛村は告げた。

 

 

「貴公の先ほどの鬼道はあの旅禍を殺してしまう程の力だ。恐らくあの者は人間。生かして捕らえるべきだと儂は思ったのだ。納得いかないだろうが・・・分かってくれ。それに阿散井はあの囚人を捕らえる際にあの男と戦ったと以前聞いたのだ。戦わせてやってくれ。」

 

 

そこまで狛村に言われると、理解できなくとも受け入れるしかなかった。

せっかく数時間戦ったというのに、あっさり退いてしまうのはいかがなものだが。

拳西ならきっと・・・いや、考えたらだめだ。狛村に失礼だ。

 

阿散井は倒してくれるだろう。手負いの獣相手に油断するような男ではない。

一角と戦っていた時のあの男は全力だったはずだ。なら阿散井の方が勝てるはず。

 

 

しかし、日没直前に、三番隊からとんでもない知らせが来た。

 

 

「六番隊阿散井副隊長が何者かによって重傷を負って倒れた状態を発見されました!」

(((!!)))

 

 

まさか、あの状態で旅禍は阿散井を倒したというのか。

とんでもない怪物だ。ひょっとしたら自分でもまともに戦える相手ではないかもしれない。

 

 

「何じゃと・・・!阿散井の野郎が・・・!!!」

「これは非常にまずいよ・・・何でこんなことになってるんだよ・・・!!」

 

 

急いで射場は外に出て迎え打とうとしたが、狛村がまたも止めた。

 

 

「心配せずともよい、鉄左衛門。恐らく相手も手負いだ。攻撃に出ることは無かろう。明日の副隊長の会議のために今日は休め。明日もきっと大変だぞ。」

「・・・・・・すいやせん・・・狛村隊長・・・。」

「隼人も今日は休め。明日もおそらく力をたくさん使うことになるぞ。」

「そうですね・・・今日は休ませて頂きます。」

 

 

それから隊舎寮に帰って普通に過ごしたが、どうも気持ちが立って部屋中をうろうろしてしまう。

まるで前に勇音がかまぼこの怖い夢を見た時の行動と全く同じではないか。

何故か残業中の自分の元に来て恐ろしい夢について事細かに語ってきたのだ。いい迷惑である。

あんな風にははならないぞと思っていたのに、結局自分もなってしまった。ちょっぴり残念。

 

ええい、こうなったら誰か呼んで話し相手になってもらおう。

そしてこういう時呼ぶ男は決まっている。

伝令神機を手に持ち、不安解消のために選ばれた生贄に電話をかけることにした。

 

 

「もしもし修兵、今からちょっと家に・・・はぁ?夜に任務?どうせまつもっちゃんのおっぱいでも考えながら任務してるんでしょ?煩悩にまみれるくらいなら僕の相談相手でもしてろ!夜飯ぐらい出してやっから!」

 

 

面倒事なのは自分でも自覚している。修兵は適当に任務とでも言って逃げようとするだろう。

だから金のない修兵に夜飯という交換条件を出して無理やりにでも来させるようにした。

これもある意味人心掌握である。

 

元々作っていた肉じゃが(拳西秘伝のレシピ)に加え、仕方なく修兵好物のウインナー(ハーブ入りのお高いやつ)を焼いていると、腹を空かせた男が玄関を叩いてきた。

 

 

「来たか、檜佐木修兵。生贄として僕のマシンガントークの餌食に遭うがいいわ!ふはははは!!」

「そんな急に変なコト言われても反応に困りますし俺腹空いたんで早く飯食いたいんスけど。」

「んだよつれないなぁ~。」

 

 

修兵と射場の前でだけだが、少しふざけたことも言えるくらいには素を出せるようになってきた。

相変わらずあっち方面の知識は教えてもらってばっかだが。

しかし冗談を言うとなぜか必ず冷たい反応をされるのだ。特に修兵からは。

折角無いなりに絞ってユーモアを作り出しているというのに面白がってくれないのは非常に残念である。

まぁ昔拳西を怒らせて頭ぐりぐりをされた時のようなやんちゃなことは今でも誰にも言えないけれど。

 

というか作ってあげてるのに早く食べたいって生意気だなオイ。

 

そんなあらゆる感情が頭をぐるぐる駆け巡った中、食いっぱぐれた昼飯の分も含めたご飯を食べることにした。

 

 

「俺こういうハーブのウインナーあんま好きじゃないっス。次から普通のにしてもらっていいっスか?」

「お前よく人に作ってもらってそんなこと言えるな・・・。」

 

 

信じられない強心臓だ。

モグモグ食べながらとんでもない感想を述べてきたが、向こうの好みなど知らないので仕方ない話である。つーか好物ウインナーって前自分で言ってただろ。ウインナーの中の好みなんか知るかよ。何様なんだよコイツ。

 

修兵からしたら信頼出来て気の置けない先輩だからこういう発言が出るのかもしれないが、隼人にとっては複雑な心境である。

 

 

「それで急に俺のこと呼んで何かあったんスか?家にまで呼ぶの初めてですよね?」

「うん・・・あのさぁ・・・。何か今日気が立ってて落ち着かないんだよ。最近白・・・朽木隊長もピリピリしてるし、旅禍入ってきて色々あれだし、今日戦ったけどうやむやで終わっちゃったし・・・。」

「えっ旅禍と戦ったんスか!?」

 

 

何か珍しく強い反応を示してくる。

 

 

「そうなんだけど・・・いい所で阿散井くんが割り込んできて戦わせてくださいってお願いしてきて・・・それでその前から大分追い詰めてたけど狛村隊長が阿散井くんに後始末を任せたんだ。でも手負いの旅禍に阿散井くんは負けた。」

「まじですか!!」

「相手の旅禍は隊長クラスの力がある可能性が高いよ。」

 

 

口を僅かに開いて驚いている。何かこういうところが子どもっぽいというかあざといというか。だから女にモテるのだろうか。

ちょっとその顔が気に喰わないのでおっほんとわざと咳払いして、話を続ける。

 

 

「隊長に聞いたら十三番隊の朽木さんを助けるために動いているらしいよ。もう何かどうすればいいかわからないよ・・・。」

「それは・・・・・・。」

 

 

思い悩んでいる隼人に修兵は後輩ながらのアドバイスをした。

 

 

「あんまり思い詰める必要ないっスよ!俺だったら深く考えずに・・・とりあえず旅禍の討伐に力を入れますね。」

「・・・何か修兵って意外とドライだね。」

「こういうのは考えすぎないでいたら解決するもんっスよ。」

「・・・・・・そっか。それもそうだね。」

 

 

たしかにそうだ。旅禍の侵入だって今まで無かったことだが、今は隊長、副隊長もほとんど揃っている。

101年前とは違うのだ。いざとなれば隊長達が何とかしてくれる。

いくら自分が隊長格の方々と距離が近いといっても、三席の自分が変に思い悩む必要はないのだ。

 

好みじゃないと言いながらハーブのウインナーを半分以上食べた食いしん坊の後輩は、雑ながらも今の隼人に的確なアドバイスをくれた。

 

 

「じゃあ俺も明日会議あるんで帰りますね。今度は普通のウインナーでお願いします。」

「また家でお世話になる気満々じゃん・・・。考えとくよ。」

 

 

後輩を見送った後、いつも通り風呂に入りぐっすり眠ることが出来た。

 

 

 

 

 

まさか明日、あんな悲劇が起こることも知らずに。

 

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