瀞霊廷に引っ越してきた翌日。
今日からしばらくは九番隊に一緒に行って色んな大人と話をしてみろと言われた。
てっきり最初は一人で留守番するものだと思っていたので、退屈にならずに済む。
昨日会ったラブも面白い人だと認識していたので、他にどんな人がいるのか楽しみにしていた。
「今日は俺の部下たちにお前を紹介するからしっかり挨拶しろよ。」
「はい!どんな人がいるのか楽しみです!」
「おーそうかそうか。まぁ俺の隊にはそこまで変なヤツはいねぇから心配すんな。一人ウゼェヤツはいるがな・・・。」
「????」
一抹の不安を感じさせる言い方をされて疑問に思ったものの何とかなるだろうと隼人は思っていたが。
想像以上のクセ者達が集まってくることとなる。
九番隊全隊士が揃って行う朝礼で隼人は挨拶することとなった。
「今日から死神見習いとして九番隊で度々世話んなるガキだ!ほらっ挨拶しろっ。」
「えっああっはいっ!口囃子隼人です!これからよろしくお願いします!」
「まぁしばらくは俺の小間使いみてぇなもんだ!おめぇらも仲良くしてやれよ!」
精一杯隼人は挨拶をしたが、集まった隊士はみなぽかんとしていた。
約2名は笑いをこらえていたが。
場が静寂に包まれている中、第六席、
「隊長・・・。どこで拾って来たんすか、このガキ・・・。」
「流魂街だ。一丁前に死神にしてくれなんてウゼェくらい言いやがるから面白れぇと思ってな。」
「はぁ・・・。ってまさか!隊長の隠しgぐはぁっっっ!!!!!」
豪快な右ストレートが藤堂の顔に当たり、吹き飛ばされた。
「誰の隠し子って言いてぇんだテメェはよぉ・・・!」
「隠し子って何ですか?」
「隼人はまだ知らんでいいぞ・・・。」
そういうオトナな知識を知るのはまだ早いと拳西は考えていると、かなり大きな音で襖が開けられた。
隼人の目の前に突然緑のウェーブヘアーの女性死神が現れた。
「ったくお前は今日も遅刻しやがって・・・!!」
「だぁれ?この子。拳西の知り合い?」
「流魂街で拾ったガキだ。今日から死神見習いでここに置く。」
「ふ~~ん。お名前は?」
「こっ口囃子隼人です・・・。」
ちょっと怖かったが一応挨拶したものの、彼女はしゃがんでじーーーっと隼人の目を見ていた。
しばらくすると、だんだんと口を三日月の形にし、満面の笑みで
「かーーーーーーーーーーーーーーーーーーわいいっっっっっっ!!!!!!!!」
といい、全力で抱きしめた。
「あたしはねっ!
「ふぇ!よろしくお願い・・・ってかちょっと苦しいです・・・。」
「九南副隊長!力込めすぎです!隼人が窒息しそうになってますよ!」
衛島が止めようとしても白は全く言うことを聞かないのだ。
急にあだ名を付けられたり窒息しそうになったりとなかなか大変な思いをしている隼人にさすがに周りの隊士も同情せざるをえなかったが、予期せぬ来客がさらに到来した。
「何や何や~~~!拳西が誘拐したガキはどこにおるんや~~~!」
「おい・・・。何でテメェまで来てやがる・・・!」
「いや~~な~んか風の噂で拳西がガキ連れて人別録管理局の近く歩いてるー聞いて面白そうやと思って来たんや~。」
金髪ストレートロングヘアーの死神、
「ちっ。ラブの仕業か・・・!あいつ勝手にベラベラと言いふらしやがって!」
「けどまた聞いた通り地味なやっちゃなぁ~。見た目の印象薄すぎるやろ。もっと派手な方が女の子に可愛がられるで~~。」
「だからお前もいちいち余計な事言ってんじゃねぇ!完全に隼人が困ってるだろーが!」
よりによってかなりアクの強い死神がもう一人来てしまったため、勢いに押された隼人は完全に気圧されていた。
収集がつかなくなり始めた場に、今度は平子の身体がたまたま作り出した影から笠を被り女物の派手な着物を羽織った死神が現れた。
「わっ!!影から人が!びっくりした!」
「な~~んだ。六車クンがかわいい女の子を連れてきたって噂を聞いたのに男の子かぁ~残念だなァ~~。」
「京楽さんまで来てんのかよ・・・!」
「ボクだけじゃないよ。ほら。」
と京楽が指さした窓枠に、眼鏡をかけた三つ編みの女性死神が外から覗き込んでピースしていた。
「アタシもおるで。ちゃんと把握しとき!」
「リサまで来てやがる・・・。つーか八番隊は隊長副隊長揃って何してんだよ・・・。」
呆れる拳西など構わず八番隊トップ二人は隼人に対して興味津々である。
「何だかフツーの子だね。キミ、元々どこに住んでたの?」
「流魂街で商売してる家にいました!」
「へぇ~じゃあ意外としっかりした子なのかなぁ。ねぇリサちゃんはどう思う?」
京楽の隣にやってきたリサは真剣な顔で隼人の顔を凝視し、
「母親は三番隊のあのカワイイ子やな。」
「なッ・・・!拳西!いつの間に子作りに勤しんでんねん!助平なやっちゃな~!教えてくれてもええやろ!」
「えぇっ!?六車クンの隠し子かい!?硬派に見えて意外と大胆なコトするねぇ~。」
あまりにも容赦のない三名の隊長格のイジリに短気な拳西が我慢できるはずもなく、
「もう我慢ならねぇ!!お前らいい加減帰れーーー!!!!!!!」
「隊長!!!どうか落ち着いてください!!!」
拳西がブチ切れたところでリサと平子は巻き込まれるのを避けるためにそそくさと帰っていき、京楽は、
「あぁ忘れてた。これ今度の合同演習についての書類だからヨロシクね。隼人クンもたまには
などと言い、鼻歌を歌いながら帰っていった。
「書類渡すなら後でもいいだろ・・・。よりによって何で今来るんだよ・・・。」
「でも朝から一生懸命仕事をしているのは素晴らしいと思いますよ!尊敬しますね~!」
未だに白に抱きつかれたままの隼人が言った、少々ズレている感想に、拳西はため息をつきつつ額に手を当てて呆れてしまった。
今日は次の瀞霊廷通信の編集会議の日であった。
当時の瀞霊廷通信はまだ瓦版のようなものであり、時事性、速報性を重視した事件を報道するための印刷物であった。
そのため、どうしても内容に面白さが欠けてしまい、瀞霊廷の一部の住民からはつまらない、あまり見てない、などと言われ、どうテコ入れしようかと考えていた。
拳西は全く瀞霊廷通信に関わっていないのでどうでもよかったが、会議を見たいと隼人が言ったので、良い刺激になりそうだと考え、編集室に連れていくことにした。
「隊長!ようやく編集に協力してくださるのですね!ありがとうございます!」
「俺は何もしねぇぞ。ただ隼人にどんな様子で会議してるか見せるだけだ。あと前に出版したやつを隼人に見せてぇから持ってきてくれ。」
「はっ!(やっぱり協力してくれないか・・・。)」
などと部下が心中で落ち込んでいた横で隼人は見たこともない機械に興味津々であった。
「この文字がたくさん並んだ機械は何ですか?」
「これは活版印刷といってね、まぁ簡単に言うならたくさんのハンコを使って文章を印刷するようなものよ。」
元々墨を使って一つ一つ手書きで発行していたが、版の数を増やすためには作業の簡略化が必要となり、ひとまず当時の現世にあったこの技術が編集室では採用されていた。
「へ~!すごいですね!そんな機械があるんだ~。」
「まぁ現世から霊子化して取り寄せたんだけどね。でもこれのおかげで大分印刷しやすくなったのよ~。」
「現世にはこんな機械がたくさんあるんですね!いつか行ってみたいな~。」
初対面の女性隊士とも難なく会話している隼人を見て安心している最中に、さっきの部下が過去の瀞霊廷通信を持ってきてくれた。
「こちらでよろしいですか?」
「あぁ。すまんな。おい隼人!これが瀞霊廷通信だ。コイツが持ってきてくれたからしっかりお礼言えよ。」
「はい!持ってきてくれてありがとうございます!」
「いいえ~どういたしまして。また何かあったら色々聞いてね。」
「よしっ。ちゃんとお礼言えたな。じゃあ見せてやるぞ。」
「やったーーー!」
かなり嬉しそうにしながら拳西の持っていた瓦版を見たが、屈託のない笑顔で衝撃の一言を放った。
「何て書いてあるんですか?全然読めないんですが・・・。」
瞬時に場の空気が凍った。拳西ですら衝撃を受けていた。
普通に大人たちと会話しているため、字もそれなりに読めるものだと単純に考えていたが、どうやら会話することだけは大人と同じくらいできるだけで、読み書きはほとんど教えられなかったのだろう。
瓦版の中で読めた字は自分の名前に使われている『口』『子』『人』だけであった。
「お前はまず読み書きの練習からしねぇとな・・・。こりゃ霊術院入るまで何十年もかかりそうだぞ・・・。」
「霊術院に入るためには字読めないとダメなんですか?」
「あったりめーだ!試験は筆記もあるからな。それに試験問題は現世のことも問題になるからこれよりも長い文章読むことになるんだぞ。」
「ひぇえええっ!!!これよりも!!??僕ちゃんと読めるようになるかな・・・。」
目ん玉を飛び出すかのような勢いで驚いていて正直不安に思った。霊術院に滞りなく入れるだろうか。しっかり死神にしてあげられるだろうか。
いや、親である以上俺がどうにかしてみせる。投げ出したりするものか。
一念発起した拳西は、時間はかかってもこの際構わないので、色々な方策を練ることにした。
「(まずは貴族たちが読み書きの練習に使う教材買わねぇとな・・・。夜一でもあてにすっか。)」
その後も白がおはぎ食べたいと駄々をこねたり、隼人が厠から戻る最中に隊舎内で軽く迷子になるなどちょっとした事件はあったが、拳西の仕事に大きな支障をきたすこともなく一日を終えることができた。
帰り道、隼人は今日一日の感想を拳西に言うよう求められた。
「今日はどうだ?楽しかったか?」
「それはもうとっても楽しかったです!置いてあるものとかが流魂街にあるものとは全然違いますね!」
「そりゃあ現世から持ってきてるものもあるしな。お前の知らねぇモンもこれからたくさん見ることになるぜ?」
「おぉ・・・!明日からも楽しみですね・・・!」
隼人にとっては二日連続で初めての物にたくさん触れたので、とても興味深い経験ができた。
だが、それ以上に隼人は今日初めて会った人たちとの会話を楽しんでいた。
「あと、今日会った桃色の服のおじさんとか眼鏡のお姉さんとかがとっても面白かったです!」
「おぉそうか。京楽さんはいっつも鼻の下伸ばして女見てるが信頼できるからな。あの人ならいざという時に頼りになるぞ。でも他の隊にはあんま迷惑かけんなよ。」
他にも隼人は金髪の死神などについても楽しそうに拳西に伝えた。
「あと金色の髪の人も面白かったです!何か変わった喋り方してますよね!」
「あぁ真子か。あいつならとびっきり迷惑かけても大丈夫だ。むしろツッコミ待ちしてるから歓迎するだろうな。」
「はぁ~そうなんですか・・・。」
「白はどうだ。アイツ相当お前のこと気に入ってたみたいだが上手くやっていけそうか?」
「まぁ・・・なんとか!でもいい人でしたよ。」
「ならいいんだが・・・。アイツはいつ暴走しだすかわからねぇからな・・・。」
こういった一日の出来事を話すことは、毎日続けるようになった。
隼人は一日の出来事を拳西に話すことが楽しかったし、拳西も隼人が一日で何をしたのかについて把握ができるので、お互いにメリットがあったのだ。
拳西にとっての今日の収穫は、何よりも隼人が九番隊に馴染めたことだ。
この調子なら忙しくないときは留守番させずに九番隊に置いておける。
二日一緒にいて、ちょっと世間知らずでズレたところはあるが、物分かりのいい子だとわかった。
隊内でも大人しくしていられるだろう。
「明日からは勉強するぞ。ちゃんと字読み書きできるようにしねぇとな。」
「難しいんですか?」
「何年もかかるだろうがお前ならできる。こんなんで投げ出すヤツは死神になんかなれねぇよ。」
「うぅ・・・何年も・・・。いや!諦めません!!」
「そうだ!その意気で明日から頑張ろうな。」
「はい!絶対死神になってやる・・・!」
ふぉおおと言い目に炎を宿すかのように闘志を燃やして隼人は明日からの勉強を頑張ることを決意したところで家に着き、初めて九番隊に行った日は終わりを迎えた。
方言ってやっぱり難しいですね・・・。