ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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捻れ

八月四日。

 

早起きをしたため隊舎周りをぶらついていると、同じく早起きをした射場と遭遇した。

 

 

「おはよう。早くない?」

「おう口囃子か!ひとっ走りするつもりじゃけぇ早起きしたんじゃ!おどれも来い!」

「えっあぁいいよ。」

 

 

ひとっ走り。そうは言うものの鍛錬を欠かさない射場のひとっ走りと鍛錬のベクトルが違う隼人のひとっ走りには尋常ではない差があり、酷い思いをした。

 

 

「何やっとるんじゃ!情けないのう!!」

「うるさい・・・射場ちゃん・・・ひとっ走りの意味・・・分かってないでしょ・・・七番隊舎から一番隊舎は・・・ひとっ走りの域・・・超えてるから・・・。」

「おどれが貧弱な体力なのが悪いんじゃ!」

「さすがにその距離は長いっスよ。」

 

 

あれ、何故ここに修兵が?と思えば、射場のひとっ走り=出勤だったらしく、とんだ貧乏くじを引いてしまった。

 

 

「今から七番隊舎は間に合わねぇよ・・・もう・・・今日は遅刻だ遅刻・・・はあっ・・・はあっ・・・。」

「おはようございます・・・ってあれ、何でここに口囃子さんがいるんですか?」

「おぉ吉良か!儂のひとっ走りにこいつを連れてったんじゃ!」

「おはようございまーーって口囃子さんヘロヘロじゃないですか~・・・って何でいるの?」

 

 

副隊長の吉良と松本が至極当然な反応を返す。

ここに居づらいだろうと思い気を遣った射場が全く関係ない話題を振ってくれた。

 

 

「昨日の旅禍は生きとるんか?」

「死んだら情報が出回ってくるんじゃないですか?イケメンだったらいいなぁ~~」

「ダメですよ乱菊さん!油断して倒されたら元も子もないんですよ!」

「旅禍に嫉妬してんじゃないよ修兵・・・。」

「ちっ違いますよ!!!!」

 

 

顔を真っ赤にして怒る修兵はいつも通りの修兵だ。

そして昨日阿散井を発見した吉良が彼の状況を皆に伝えた。

 

 

「阿散井くんはかなり酷い傷を負っていましたよ。僕の力である程度は傷も塞いだので命に別状はないですが・・・。」

「何が恐ろしいって僕と狛村隊長が旅禍を追い詰めた後に阿散井くんと戦ってその旅禍が勝ってることだと思う。弱ってるからこそ阿散井くんに任せたつもりだって狛村隊長は昨日言ってたんだけど・・・。」

「儂ら全員揃って戦うとしても苦戦するじゃろ。恐ろしいやっちゃ・・・。」

「ですが、懺罪宮のあたりには更木隊長の霊圧を感じます。あの人には万が一にも勝てませんよ。」

 

 

あの更木剣八が負けるところなど誰にも想像つかない。

前隊長を斬魄刀の一振りで殺すほどの実力者だ。

さらに戦闘狂で戦いへの執着は一線を画している。

まさか負けるはずはない。

皆が納得しているところで、悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「いやああああああああ!!!!!!!!!!!!」

(((!!!!)))

「この声は・・・雛森くん!!」

「とにかく行ってみるぞ!」

 

 

まさか旅禍か?しかし雛森があんな悲鳴を上げるほどの猛者でもいるのか。

昨日阿散井を倒した男もあの状態ですぐ動けるようになるとは思えない。

一体何が起きたのだ。とにかく急いで声の聞こえた方に向かうと。

 

 

彼女の目線の先には、藍染惣右介の死体。

胸部を斬魄刀で刺されており、即死に近いものだ。

 

 

「いや・・・藍染隊長・・・!藍染隊長!!藍染隊長!!!!嫌です!藍染隊長!!!!!!!」

「藍染隊長が殺された・・・!?」

「嘘でしょ・・・。」

 

 

信じられない光景だ。

現役の隊長が瀞霊廷内で殺害されるなど知る限りでは今まで無かった。

ほぼ暗殺という形で。

しかもこの旅禍侵入騒動と合わせてだ。

旅禍が殺したのか?一体何のために?何故藍染を狙ったのか?

何も分からない。

護廷十三隊内で殺すとすれば誰が?

藍染に敵意を示していた者は今まで見た限りではいない。

 

 

「何や、朝っぱらから騒々しいことやなァ。って、藍染隊長殺されてもうてるやん。早よ下ろしてあげんとアカンとちゃうん?」

 

 

突然現れた市丸ギンにびっくりしたが、尤もな意見だ。

隼人が藍染の死体処理のために動き出そうとした途端、雛森は叫ぶ。

 

 

「お前か!!!!!!」

「えっちょっ!雛森ちゃん!?」

 

 

まさか市丸を疑っているのか。

いくら不気味な男であるとはいえ短絡的すぎやしないか。

斬魄刀に手をかけ抜刀するスピードはいつもの雛森に比べると信じられない程早く、皆藍染の死で当惑したためついていくことも出来ない。

 

このまま隊長に刃を向けるのはまずいと思ったが、唯一反応できた吉良が市丸から雛森の刃を防いだ。

 

 

「僕は三番隊副隊長だ!どんな理由があろうと隊長に剣を向けることは僕が赦さない!」

「どいてよ吉良くん!」「だめだ!」

「どけって言うのがわからないの!!」

「だめだと言うのがわからないのか!!」

 

 

まずい、このままでは副隊長同士の戦闘になってしまう。

何とか抑えようと縛道を練ったとき、違和感を抱いた。

 

(何だこの霊圧・・・?周辺の空間全体が何か普通と違う・・・?)

 

ほんの一瞬だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

その一瞬考え事をした隙に、吉良と雛森は既に始解していた。

 

こうなったら実力行使で止めるしかない。

間に入り縛道で止めることにした。

 

 

「嘴突三閃!」

 

 

まずは最初に行動を起こした雛森を拘束する。隼人の縛道なら副隊長の拘束程度は造作もないので抑え込みに成功した。

 

 

「円閘扇!」

 

 

次は吉良が振るう詫助を縛道が作り出す盾で防いだ。副隊長クラスの死神なら断空を使うまでもない。

これで頭を冷やすことは出来るだろうか。

 

 

「放してください口囃子さん!私は・・・私は!!!!」

「吉良くんに言われただろ、公私混同はダメだよ雛森ちゃん。あと吉良くんも一旦頭冷やそう。こんな場所で私闘なんかしたらそれこそ藍染隊長はどう思うかな?」

 

 

一先ず二人に落ち着くよう声をかけた後、副隊長達に進言(指示)をした。

 

 

「二人を牢に入れてください。罪状はこの際何でもいいです。最悪無くていいです。とにかく二人を落ち着かせるためにお願いします。」

「おう、わかった。」

 

 

真っ先に反応した射場をきっかけに彼らは動き始め、いつ暴れだすか分からない雛森を射場と松本が、一先ず落ち着きを払った吉良を修兵が連れて行った。

 

その様子を遠くから見ていた日番谷(ひつがや)冬獅郎(とうしろう)が遅れて現場にやってきた。

 

 

「済まないな、口囃子。俺が止めるべきだった。」

「いえ、それは別に・・・・・・、」

 

 

日番谷は隼人に声をかけはしたものの、意識は完全に市丸に向けている。

 

 

「てめぇ、今・・・雛森を殺そうとしたな?」

「はて、何のことやら。」

「・・・・・・今のうちに言っとくぞ。」

 

 

この男も、どうやら市丸を警戒しているようだ。

だが、正直もううんざりだ。誰かと誰かがバチバチ火花を散らし、そいつらを落ち着けたら今度は別の誰かと誰かが火花を散らす。

いい加減にしてくれ。

 

 

「雛森に血ィ流させたら「はいもう止めて下さい。貴方達の鍔競り合いまで止めるのは僕も嫌なので。僕の鬼道でも防ぎきれません。」

「おっおい!口囃子!!」

「冬獅郎くんも熱くなりやすいんだからもうダメだよ。」

「こっ子ども扱いすんじゃねぇ!!!!あと日番谷隊長と呼べ口囃子!!」

 

 

自分ポリシーだが、たとえ隊長、副隊長でも自分より後輩ならば敬語は使うつもりはない。その代わり席官、平隊士でも先輩ならば敬語を使うようにしている。

ただ単純に今まで後輩だった者に敬語を使い直すのも面倒だからという理由だが、日番谷みたいに嫌がる者もいる。それでも平然と敬語は使わないが。

 

そしてその次の進言(指示)をまた二人に出す。

 

「とりあえずお二人はここからすぐに離れて下さい。藍染隊長を殺せるほどの人材は旅禍を除いて貴方達隊長か、副隊長の誰かしかありえません。万が一死体を下げる時に貴方達なら裏工作することも可能でしょう。現場保存のために僕が残ります。」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

(!)

 

 

まさか市丸にそんなことを言われるとは考えもしなかった。

だが、そもそも始解しない状態の斬魄刀を自分はお世辞にも上手く扱えるとは言えないので、殺せるはずはない。それに昨日は寝ていたし。

 

 

「まさか。僕は鬼道中心ですよ?死体は刀で一突きですし。藍染隊長ほどの実力者を刀だけで殺すことはできません。それに僕は始解もしてませんし。」

「あぁ~~せやったなァ~。済まん済まん。」

「四番隊が来るまでは僕が()()()ここで待つので、お二人は総隊長への報告をお願いします。」

「ああ。わかった。」

「おおきに。」

 

 

二人が去って行き、霊圧知覚でしっかり一番隊舎へ向かっていったのを感じ取った後、違和感の正体を見つけるため一人行動を始めた。

 

 

「さてと・・・いきますか!――読み取れ、『桃明呪』――」

 

 

今回隼人は探索対象を藍染の殺害現場であるこの場所に限定し、霊圧の調査を始めた。

 

(やっぱり霊圧で空間が捻じ曲がってる。ほんの僅かだけど何故?)

 

そして藍染の死体を下ろした時も、再び違和感を抱いた。

 

(魄動はないけど・・・、これ・・・()()()()()?研究された死体という感じがするな。()()()()()()()()()()()()()()()()・・・?)

 

まさかと思い藍染の霊圧を探ってみたが、もちろんここ以外に存在するはずはない。

しかし、藍染を簡単に死亡したと報告するのもいいのだろうか。

迷っていると、伊江村三席ら四番隊席官組がやってきたため、引き渡しついでに四番隊隊舎へ行き卯ノ花隊長らと共に検死することにした。

 

 

「魄動は止まっている・・・。霊圧も・・・ええ。藍染惣右介五番隊隊長は逝去されました。」

 

 

治療のスペシャリストが断定したため、やはり死亡したのか。

だったらあの霊圧の揺らぎは何だ?

また霊圧を調べた際卯ノ花も少し言葉に詰まっているように思えた。

 

 

「口囃子三席も協力ありがとうございます。本来の職務にお戻りください。」

「あっ・・・はい。」

 

 

卯ノ花に自分が感じた違和感を打ち明けようと思ったが、彼女も阿散井などの治療で忙しいだろうと思い、そのまま四番隊を後にした。

 

 

昨日の旅禍騒動、今日の藍染暗殺、それに関わる副隊長の戦闘行為など、瀞霊廷は酷い状態だ。未曽有の事態でどうすればいいのか分からない状況下で、ある場所に向かっていると、さらに別の場所から爆発音と共に煙が巻き上がってきた。

 

今度は何だと思うと、次は地面から空に向かって何本もの矢が打ち上がっている。

あんな術を使う者は護廷十三隊には存在しない。

そして似たような矢を二十年前に見た記憶があった。

 

(あれは・・・滅却師!)

 

滅却師まで瀞霊廷に侵入していたのか。

まさか二十年前の真咲さんと何か関係があるのか。

というか滅却師の侵入を許すのはいよいよ瀞霊廷の警備体制がまずいのではないか。

ひとまず相手の位置は始解せずともおおよそでわかるため、まずは遠くから相手が見える位置へ向かう。

 

そして滅却師は基本的に弓矢を扱うためタイマンを張るのは自分の能力上厳しい戦いになる。

そのために、隼人は狙撃という形で攻撃をすることにした。

 

しかし、何故滅却師が尸魂界に旅禍として来ているのか。昨日会った旅禍は死覇装を着ていた。もう一人は志波家の人間。そして今日の滅却師。統一感が無さすぎるではないか。

朽木ルキアを助けるという目的のためにこんな有象無象が集まったかのような集団で尸魂界に乗り込んできたのか。無謀にも程がある。

 

ただ、彼らが藍染を殺したのかどうかは正直分からない。そもそも滅却師の矢で殺した形跡は無かった。昨日の旅禍に藍染の暗殺をする動機も何もないはず。

瀞霊廷への警告か?それとも他に何か目的が・・・。

 

と立ち止まって考えていると、まるで101年前の事件について全く調査が進まないことへの状況とひどく似ている気がした。

 

いや、今はとにかく滅却師だ。滅却師を対処せねば。

絶好の狙撃ポイントを見つけ、鬼道の準備を始める。

 

二日連続旅禍と当たるなんて運がいいのか悪いのか。

野蛮な十一番隊なら大喜びしそうだ。

 

 

 

どうやら今日は一人で戦うことになるだろう。

 

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