ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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清浄塔居林

しばし呆気にとられていると、双殛にやってきた阿散井にルキアを投げつけたりなど散々なことをしている。

阿散井はルキアを抱えて双殛から逃げ出したようだ。

皆呆気にとられていると、砕蜂から叱責が飛んできた。

 

 

「何をしているうつけ共!追え!!副隊長全員でだ!口囃子も追え!!!」

「あぁはいいいいい!!!!!」

 

 

悲鳴のような返事をした大前田がとっさに動き出すと、雀部と勇音も隊長の了承を得て阿散井を追う。

隼人は一先ずその場で詠唱を始めた。百歩欄干なら阿散井の足を止めるのに造作もないはず。

 

 

だが、先ほどまで双殛の磔架にいた旅禍の青年は既に副隊長の前に来ていた。

副隊長三人が始解をするも、大前田は始解直後に旅禍の斬魄刀を使わない手の一突きでやられてしまった。

雀部も手の一突きで倒されてしまっている。

一瞬で副隊長を斬魄刀を使わずに倒すなど、並の隊長なら無理な芸当だ。

斬魄刀から氷の刃を発生させようとした勇音も、彼の手の一突きでのされてしまった。

 

 

「縛道の六十二 百歩欄干!!!」

 

 

完全詠唱の百歩欄干なので、おそらく今の実力なら120本くらいの光の棒が旅禍目がけて飛んでいるはず。威力も今までで一番大きいものだ。

これで捕らえられるかと思ったが、そう甘くはない。

 

腕の一振りで揺らめいた霊圧が、全ての棒を吹き飛ばしてしまった。

 

 

「おいおいおい、まじかよ・・・。結構頑張ったの・・・に!!!」

 

 

一瞬の当惑のせいで斬魄刀を持った旅禍に距離を詰められてしまった。

まずい。このまま斬られる。

鬼道も間に合わず、なす術もなく倒されるかと思ったら、右にいた白哉によって防がれ、旅禍の刃を受けることはなかった。

 

 

「び・・・白哉さん・・・。」

「下がっていろ。奴は私の敵だ。私が打ち倒す。」

「・・・わかりました。」

 

 

場所を移した白哉と旅禍は皆を圧倒するほどの霊圧を放出している。

 

 

その様子に呑まれていると、今度は後ろで動きがあった。

 

砕蜂が十三番隊三席の二人を急襲し始めた。

 

 

「待て!砕蜂!!!」

 

 

浮竹が静止にかかるが、彼の行動は総隊長に止められる。

 

 

「動くな!」

「元柳斎・・・殿・・・。」

 

 

自身の危険を顧みず、清音は浮竹を助けるために動き出した。

だが隊長相手に彼女では何も出来ないだろう。よせ、と浮竹に止められてしまった。

 

しかし、さらに予想外の出来事が起こった。

 

 

「よォーーーし!!仕方ない!!そんじゃ一丁、逃げるとしようか、浮竹!」

 

 

浮竹の肩を掴んだ京楽が瞬歩でその場から消えてしまった。

 

この一瞬で信じられない事態がめちゃくちゃ起きているが、何も全く知らない隼人は置いてけぼり状態だ。

こんなんなら狛村達と一緒にいれば良かっただろうか。

 

さらに、砕蜂は残っていた清音へと攻撃を始めた。

 

 

「下衆め・・・!護廷を裏切って双殛を壊すなど、生きて帰れると思うな・・・!!!!」

「がっ・・・あぁぁ・・・!!!!」

「砕蜂隊長!今はそんなことしている場合じゃ・・・、!!!」

 

 

この霊圧。まさか昨日会った夜一さん!?

と感じたと思えば、その一瞬で砕蜂は目の前からいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

一先ず落ち着いたか。

また周りを見ると、総隊長もいなくなっている。

現場に残ったのは卯ノ花と隼人だけ。

 

まさか京楽はこうなることを知っていたのだろうか。

 

 

「結局、残ったのは私達だけですね・・・。」

「あ・・・はい。」

「まずは倒れた皆さんを肉雫唼(みなづき)に取り込みましょう。」

「はい・・・。」

 

 

呆然としていると卯ノ花から大丈夫ですかと聞かれた。

 

 

「京楽隊長から話を聞いています。」

「!やはりそうだったんですね・・・。」

「ついておいでなさい。口囃子三席。私達で答え合わせをいたしましょう。」

「はい。」

 

 

ついに真実が明らかになる時が来た。

 

 

 

 

 

最も軽いケガだった勇音は隼人の回道で処置をし、三人で肉雫唼に乗りまずは双殛の丘から移動を始める。

肉雫唼に乗るのは初めてだった。

 

 

「何か・・・不思議ですね。本に出てきた魔法の絨毯みたいです。」

「気持ちいいですか?乗り物酔いにはお気をつけくださいね。」

「え・・・はい・・・。」

 

 

笑顔でお気楽な調子を見せる卯ノ花は何だか奇妙だ。まぁこの人怒らせたら怖いのは大昔風邪引いたときに知ってるから絶対怒らせないつもりだけど。

 

だがそれも束の間、一瞬で真面目な表情に戻り、彼女は隼人にあることを聞く。

 

 

「昨日、四楓院さんにお会いいたしましたよね?」

「えっ!?い、いえ会っていま「会・い・ま・し・た・よ・ね?」

 

 

ダメだ夜一さん。この人に嘘はつけない。笑顔が恐ろしすぎる。

 

 

「はい・・・。口止めされていたので誰にも言わないで下さいね?」

「ええ。ですが口止めの必要もないかと。そのような事が些末になるほど今回の事態、そしてこれからは瀞霊廷にとって重大なものとなるでしょう。まずは口囃子さんが昨日四楓院さんから伝えられたことを私に教えて下さい。」

 

 

昨日夜一に言われた言葉から、自分でも必死に考えたことを卯ノ花と答え合わせする。

 

 

「夜一さんからは昨日、今までの騒動の黒幕は、護廷十三隊隊長の中にいると聞きました。」

「ええ、恐らくこれ程の事態を裏で操れるのは護廷の隊長しかありえないでしょう。」

「そういうことならばやはり・・・。」

「ええ。彼しかいないでしょう。」

 

 

 

 

 

「「藍染惣右介。」」

 

 

 

 

昨日夜一に言われてから、どうもこの事態を操っているのは彼しか考えられなくなった。

そして恐らくこの策謀に気付けたのは、実際に死体に触れた卯ノ花と隼人、その違和感を伝えた京楽だけだろう。

 

 

「僕が死体現場を調べた時、空間全体が霊圧で捻じ曲がっていました。おそらくそれで何らかの偽装を図っていたと思います。」

「死体にも霊圧による偽装が行われていたのを感じました。あれほど精巧な死体の人形を作り上げるとは・・・。」

「それでどちらに向かうのですか?」

「完全禁踏区域、清浄塔居林へ向かいます。身を隠すならあの場所が一番適しているでしょう。」

「えっ・・・?」

 

 

確かにあそこなら身を隠すのも適しているかもしれない。

だがあそこには中央四十六室がいる。

 

そしてその問いを持ちかけようとした隼人に、卯ノ花は先に答えを示した。

 

 

「中央四十六室は全員殺されている、もしくは何らかの方法で無力化されているでしょう。前者だとは思いますが。」

「そんな・・・!」

「ここ数日の決定は全て彼が出した決定だと推測できます。そして彼の目的は恐らく、朽木ルキアさんの処刑。」

「しかし一体何故・・・。」

「それは本人に直接聞く必要があります。私達では何の手がかりも得られません。」

「・・・・・・。」

 

 

隼人の考えと卯ノ花の考えは一致しているが、正直半信半疑だ。

まず本当に藍染は生きているのか。そもそも霊圧すら感じられないので、清浄塔居林にいるのかすらわからない。

そして彼の能力ではそんな芸当はやはり不可能だ。鬼道の中にもそんな術は存在しない。

何か別の能力を持っているのか。それとも本来の力は別にあるのだろうか。

 

 

「う・・・うう。」

「気が付きましたか、勇音。」

「う、卯ノ花隊長!口囃子さん!私・・・」

 

 

思案していると勇音が目を覚ましたようだ。いきなり動き出すとまた痛む恐れがある。

 

 

「一応僕が治療したけどまだ激しく動いたら危険だよ。」

「あなたは一番優しく衝かれたようですが、まだあまり暴れないようになさい。何かあったら口囃子さんがどうにかしてくれますよ。ねえ?」

「はい!誠心誠意努力いたします!」

 

 

さっきの黒い笑顔でまた脅迫めいたように言われるのも怖いので、とにかく彼女の気分を害さないようにする。

 

 

「降りましょう。肉雫唼。」

 

 

卯ノ花の声と共にエイのような見た目をした肉雫唼から二本足が生えて、ゆっくりと地面に着地した。

近くで有事の際に待機していたであろう四番隊員が駆け寄ってくる。

とりあえず隼人はここまで心優しくも乗せてくれた肉雫唼にお礼を言うことにした。

 

 

「ありがとうね、肉雫唼。」

 

 

のぺーっとした顔のままで反応は何もない。何か残念。

 

 

「肉雫唼は意外と内気なところがあるので、ごめんなさいね。」

「いっいや別に・・・。」

「皆をだして戻りなさい。肉雫唼。」

 

 

ゲプッと口から音を鳴らした後、飲み込んでいた副隊長、三席、術者らを全員吐き出した。

お食事中には到底見せられない光景である。ちょっと気持ち悪くなりそうだ。

 

 

「うっ見なきゃ良かったかも・・・。」

「初めての頃は誰だってそう感じますよ・・・。」

「何の話をしているのですか?」

「「いっいえ!!何でもございません!!!」」

 

 

黒いオーラを纏った卯ノ花の言葉は有無を言わせない恐ろしさだ。やっぱり怖いよ。

当の卯ノ花は一般隊士に肉雫唼で飲み込んでいた副隊長らの処置を任せている。

 

そして、双殛の丘のあたりでは白哉と旅禍の霊圧で埋め尽くされており、現在隼人のいる離れた場所でも伝わってくる程である。

 

 

「何て霊圧・・・あそこにまだ誰か・・・?」

「先ほどの旅禍と朽木隊長が戦いを。」

 

 

少し前まで気を失っていた勇音は状況を聞き驚愕の表情を見せる。

 

 

「あと、狛村隊長と東仙隊長で更木隊長と戦っているよ。京楽隊長と浮竹隊長も総隊長と戦っている。砕蜂隊長も誰かと戦っているみたいだよ。」

 

 

夜一の名前を勇音にも出すのはまだ早い気がしたので黙っておいた。

 

 

「我々だけではとても止めきれません。これほどの事態は瀞霊廷でも初めてです。」

 

 

「ついておいでなさい。勇音。口囃子さん。少し向かいたいところがあります。」

 

 

 

 

向かう先は完全禁踏区域・清浄塔居林。

しかしそこまでの道のりは簡単ではない。

 

 

中央四十六室への入り口には百名以上の隊士が待ち構えていた。

中にいたのは十三隊全ての隊の隊士がざっくばらんにいる他、鬼道衆、隠密機動の者も少なからずいた。

 

 

「まさかこれ程藍染隊長()()()部下がいたとは・・・!」

「えっ・・・ちょっと、どういうことですか!?藍染隊長って、死んだはずじゃ・・・!」

「話は後です。とにかく彼らを倒して前に進みましょう。頼みましたよ、口囃子さん。」

「はい!破道の六十三 雷吼炮!」

 

 

掌から放つ雷のエネルギー弾は、隼人程の実力になれば音速並みの速さで放つことができる。これで入り口に強引に穴を開けることができたほか、雷吼炮の余波で周囲に電撃が迸り、電撃のバリアを形成することが出来た。

 

しかし決して油断しない。()()()()()()()面倒なことになるだろう。

 

 

「破道の七十八 斬華輪!!」

 

 

左側にいる隊士達には何百もの鬼道の刃を生成して無力化する。

右側をやろうとしたが、卯ノ花と勇音によって処理できたようだ。

 

 

「急ぎましょう。中に霊圧を感じます。」

 

 

卯ノ花に言われてようやく分かったが、確かに霊圧を感じる。

中にいるのは藍染、市丸、雛森、日番谷だと分かった。

 

しかし、それ以外の者の霊圧は全く感じない。つまり。

 

 

「中央四十六室は全員殺されたというわけですね・・・!」

「ええ。悪い予感は当たってしまったようです・・・。」

 

 

まず議事堂に向かうと、中央四十六室は卯ノ花の推測通り全員殺されていた。

そしてこの場で隼人は複数名の霊圧の残滓を感じ取った。

 

 

「ここには・・・吉良副隊長、松本副隊長もいたようですね・・・。今は吉良副隊長の霊圧が弱い状態で近くにいます。」

「戦闘をして松本副隊長が勝利したのでしょう。」

「あっ・・・あの!私、全く事態が飲み込めないんですけど・・・。」

 

 

完全に二人でヒートアップしてしまっていた。

状況を整理するためにも一旦勇音に話しておくことが必要だろう。

 

 

 

概略を勇音にも伝えると、やはり彼女も衝撃を隠せないようだ。

 

 

「驚くのも無理はないですよ、勇音。これは事実かどうかすら怪しいものなので。」

「ありえない話だと思うよ。むしろそうであってほしい。でもこの可能性しか今は考えられないんだ。」

「藍染隊長が・・・・・・朽木さんを処刑・・・。」

 

 

勇音が未だ事態を呑み込めていない中、霊圧に動きがあった。

 

 

「雛森副隊長の霊圧が急激に弱まっています!!」

「急ぎましょう。このままでは彼女の命が危ういものとなります。」

 

 

しかしそうは問屋が卸さない。

 

再び百名程度の隊士に囲まれてしまった。

 

 

「ああもうまたかよ!!アンタらの相手してる暇なんか無いっつーの!!」

「口囃子さん、私達三人に曲光を。赤煙遁も同時にお願いします。時間が惜しいのでここは逃げましょう。」

「はい!」

 

 

霊圧は各自で消し、一先ず姿をくらませることができた。

一般隊士には到底見抜けない術だ。

 

現れた一般隊士は何故か他の隊士と雰囲気が違う。

画一の顔をした、無表情の者しかいない。そして、その目は虚ろな目をしている。

彼らの目を見た勇音は一瞬にして怯えを表情に表した。

 

 

「何・・・まるで自殺志願者みたい・・・!」

 

 

そして、再び霊圧の動きが向こうであった。

 

 

「日番谷隊長の霊圧も急激に弱まっています!」

「急ぎましょう!一刻を争う事態です。」

「「はい!」」

 

 

平隊士相手に後れをとるような者はいないので、問題なく包囲網を掻い潜ることができた。

 

完全禁踏区域は初めて入るが、異様な雰囲気だ。

無機質な空間であり、光が入らないせいで薄暗く感じる。

 

 

「ここが・・・清浄塔居林・・・。」

「よそ見してはいけませんよ、口囃子さん。」

「あっす、すみません。」

「お二人とも、最大級の警戒をなさい。私達だけで彼を止めることは不可能です。」

「・・・わかりました。」

 

 

そしてついに目的地に辿り着いた。

現場にいたのは藍染惣右介、市丸ギン。

そして無残にも斬られた、日番谷冬獅郎。

 

 

「・・・やはり此処でしたか。藍染隊長。・・・いえ、最早()()と呼ぶべきではないのでしょうね。大逆の罪人、藍染惣右介。」

 

 

 

 

ついに真実が明らかになる。

 

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