ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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しばらくは修行です!


傍観者

以前夜一が来た時にピンポン玉のような球体を貰った。

 

 

「覚えておるか?おぬしが霊術院に合格した時に喜助が動画で伝言を送っておったじゃろ。」

「えっああ、あれですね。最終的に拳西さんと夜一さん以外皆酔っ払ってたあれですね。」

「喜助はそれに改良を加えて動画で通信できるようになったのじゃ。」

「ええっ!!それって、電話を動画で出来る感じですか!?!?!?」

「そうじゃ!!すごいじゃろ!!」

 

 

また何とも信じられないようなものを開発する男である。

あの時だって相当びっくりしたのだ。

 

 

「二つのレンズのどちらかがおぬしを写すほうでどちらかが向こうの映像を壁に写すレンズじゃ。」

「へぇーって、見た目ではどっちがどっちかわからないですね・・・。」

 

 

小さくしすぎたせいで、そもそもレンズがどこにあるのかすらよく分からない。

何で性能はすごいのにこういう使い手を絶妙にイライラさせる微妙な欠陥があるのだろうか。

 

 

「いずれ喜助が通信をしたいと言っておったから準備しておけ。おぬしの仕事もある故夜になったらやるそうじゃ。」

「そうですか、分かりました。待ってます。」

 

 

 

 

そう言って数日経ったが、未だ何も音沙汰はない。

伝令神機のように着信音が鳴ると聞いたが、毎日準備しているものの何だか拍子抜けだ。

今日出発した日番谷先遣隊の対応に追われているのか。

 

正直、あのメンツに同伴したいとは思えなかった。

最初、()()()()霊圧感知能力の高さから死神代行との合流隊に選ばれていたものの、何故か突然外されることとなったのだ。

夜一に尸魂界から出るなと言われたその日に現世派遣の任務を外されてしまった。

斑目一角と綾瀬川弓親、そして十番隊トップ二人が仲間に入った途端から嫌だったのでぶっちゃけありがたい話である。日番谷は嫌いじゃないが松本とは長い時間一緒にいるとイライラする予感がするのだ。

ルキアと阿散井だけなら行ってもよかった。

 

そして結局今日もかかってこない。

やっぱり現世も大変なのだろうか。まぁいいや、知らね。寝よう!

 

 

と、考えていると、着信音が鳴り出した。

 

()()()()()

 

 

隼人は瀞霊廷の騒動が終わった後、ある者からの着信にだけ音が鳴るように設定している。

 

涅マユリだ。

 

彼から着信が鳴ったということは、現世に破面が到来したということ。

そしてもちろん今回も同じであった。

 

 

「破面ですね。」

「当たり前だヨ。ぐずぐずしてないで早く来い。そして今すぐ始解しろ。」

「は~い。六体ですね。」

「!・・・ホウ・・・始解せずとも認識できるとは。」

「場所と数だけです。それぐらいしか分かりませんよ。」

 

 

隊舎寮から十二番隊に移動している途中で、人目につかない場所で始解をする。

そして移動の最中に破面に動きがあった。

 

 

「破面に動きがありましたが・・・誰を狙っているんですか?」

「恐らく、奴らは僅かでも霊圧のある人間を狙っているのだろう。何とも野蛮な連中だネ。」

 

 

マユリはいたって普通の調子で喋っているが、緊急事態だ。

無作為に霊圧のある人間を狙うなど、魂魄バランスが崩れてしまう。

夜一と話をした日も、空座町の魂魄が大量消失し、危ない状況に陥りかけたのだ。

 

今回はそういう事態にならなければいいと思いつつ、十二番隊に着くと、破面それぞれに死神が迎撃している所であった。

 

ルキアが破面一体を造作もなく倒したが、斑目は防戦一方だ。

 

そして映像には、破面の一体が変化を見せた所であった。

 

 

「何だよあれ・・・。」

刀剣解放(レスレクシオン)だネ。死神でいう所の卍解だ。」

「えっちょっそれってだいぶまずいんじゃ・・・。」

 

 

突然研究室の中の電話から着信が来た。

綾瀬川からだ。

といっても、実際は十二番隊の者が電話を取るわけではなく、別の隊にかけられたものを傍受している。プライバシーの欠片もない。

 

マユリは電話をスピーカーにして彼らの話を傍受する。

現世にいる死神の周囲の空間凍結、魂魄保護、そして、斑目の隊葬用意をするよう伝達してきた。

 

 

「頼んだよ、鵯州、阿近。」

 

 

マユリの一言であっという間に二人は最初二つの任務を完遂する。

その間ずっと、斑目は破面に圧倒されていた。

 

 

「フム・・・映像を切り替えろ。この破面には興味が失せた。」

「もういいんですか?」

「どうせ力で圧倒する奴に私は興味ない。そんな物は力で圧倒し返せばいい話だ。」

 

 

マユリの指示で映像が切り替えられたが、どの死神も防戦一方だ。

隊長である日番谷もだ。

 

 

「日番谷隊長も圧倒されている・・・!?」

「全く・・・情けない話だヨ。限定解除がなされていないとはいえこの有様とはネ。切り替えろ。」

 

 

そこで切り替えた映像は、黒崎一護が戦っている映像。

そしてその相手は、映像で見るだけでも桁違いの力を持っていることがわかった。

 

 

「あの破面・・・!他のとは実力が全然違いますよ!」

「面白い。あの破面に映像を固定しろ。口囃子、あの破面の霊圧を読め。」

「はい!」

 

 

破面の霊圧を読んでいるが、凄まじい力だ。卍解した一護に対し、優勢に立っている。

しかし一護も簡単には倒れない。

月牙天衝は、破面に対してもそれなりの傷をつける威力を持っていた。

 

 

「おおおう・・・。やっぱ一護くんもなかなか強いですね。」

「奴の潜在能力は素晴らしいからネ。是非とも切り刻みたいものだが、更木に怒られるのも面倒なのだヨ。」

「何故切り刻むことしか考えられないんでしょうかね・・・。」

「何か、言ったかネ???」

「いえ、別に・・・。」

 

 

卯ノ花ほどではないが、マユリの発言も怖いものがある。何で隊長はこうも曲者揃いなんだろうか。100年前よりはマシだけどね。

 

 

「そろそろ破面も本気を出してきそうだネ。一体奴はどんな力を・・・!!!!」

 

 

破面が斬魄刀に手をかけてついに刀剣解放をするかと思ったが、思わぬ横槍が入ってしまった。

ある者が仲裁に入り、一護と破面の戦闘は突然終わりを告げた。

 

 

「東仙要・・・!!!」

「やれやれ、水を差されたか。余計な真似をしてくれたヨ。」

「すいません。気付けなくて。」

 

 

破面に注意を払ったせいで東仙の霊圧に気付けなかったのが実に悔やまれる。

霊圧が変化しているのか。

 

 

「まぁいい。先ほどの戦闘だけでも十分な情報を得られそうだヨ。恐らくあの破面はかなり上級の虚から生まれた破面だろう。」

「やっぱりそうですか。ここで探知してても霊圧が凄かったです。」

「そんな陳腐な感想は私は必要としないのだヨ。ぐずぐずしないで早くレポートを書けウスノロ!!!」

「それがちょっと前に寝ようとしていた人に言う言葉ですか・・・急にキレないで下さいよ・・・。」

 

 

今日の破面に関する小レポートを書いている所で、いつの間にか進んでいた戦いは皆終わっていた。

どうやら死人はでなかったようだ。先ほどボコボコにやられていた斑目も何とか相手を倒したのだろうか。よかった。

 

他の者も、限定解除の効果で破面を倒せたようだ。

マユリから話を聞いて安心したが、安心している様子を見て何故か汚物を見るかのような目を向けられた。

 

 

「何を安心しているのかネ?彼らが勝利を手にしたのは()()()()()()()()()()()()()()()()。最初から限定解除していれば敵は油断せず彼らはみすみす殺されていた筈だヨ。」

「えっ・・・卍解持ちでもですか・・・?」

「関係ないヨ。単純にこちらの戦力が足りていないという事実が残るだけだ。」

「うわっ・・・。行かなくてよかった・・・。」

 

 

この感想は七番隊の者の前では言えない。むしろマユリの前だから言えた感想だ。

射場の前で言ったら殴られてしまうだろう。

 

 

「私も君が直接現世に赴くのはあまりオススメしないと考えていたヨ。君が此処に残ったおかげで私の右腕として君が動いてくれて研究が捗る捗る!!総隊長殿に感謝せねば・・・。」

「あぁ・・・そうですか・・・。」

 

 

霊圧の濃い破面を映像越しに見たからか、夜にもかかわらずやけにテンションが高い。

いつもよりレポートを書くのに時間が掛かったが、マユリの機嫌を損ねることはなかった。敵ながら破面に感謝である。

 

 

壷府リンからもらったお菓子をモグモグ食べながら帰り道を歩いていると、先ほど映像で見た男の元部下と出くわした。

 

檜佐木修兵。

あの日以来、彼は隊を纏めるため気丈に振る舞ってきているが、長年仲良くしてきた隼人には分かる。

昔の自分と同じ顔をしているのだ。

辛くて、辛くて、でも何物にもすがれなくて、どうすればいいか分からないような顔をしている。

 

 

「口囃子さん・・・。お疲れ様です。こんな夜まで仕事っすか?」

「うん、まあそんな感じ。」

「大変っすね、俺も今終わったトコっすよ。じゃあお休みなさい。」

 

 

手を振って帰ろうとした修兵は、完全に疲れ切っている。

大変なのはお前だろうが。見ていられない。

 

 

「・・・なぁ修兵。」

「はい?」

「飲もっか!」

「えっちょ、急になんですか!?」

「奢ってやるからつべこべ言わずこい!」

「うえええええ!?!?」

 

 

強引に腕を引っ張り、飲み屋に連れて行く。

基本自分から飲みに誘うのは、年の近い者は射場か修兵だけだ。勇音はさすがに妙齢の女性なので気を遣ってしまうし、七緒を誘ったら問答無用で京楽が同伴するので面倒くさい。

京楽や浮竹は別で誘うこともある。最近は誘われることが多いが。

 

現世の『かくてる』とかいうお酒を頼んで飲ませ、洗いざらいぶちまけさせてやる。

日々の鬱憤が溜まっていたからか、いつもよりかなり酒の進みが早く、ちょっと経っただけで酔っ払っていた。

 

 

「瀞霊廷通信の編集長があんなに大変だとは思わなかったですよ!!印刷所とのやりとりは大変だし、乱菊さんの原稿は来ないし、毎月毎月新しい内容考えないといけないし、乱菊さんの原稿は来ないし!!!!あぁーーー!!!」

「お・・・おお・・・・・・。想像以上だったね。」

 

 

あんな顔をしていた以上、泣き上戸になるかと思ったが、全く逆で少し安心した。

と思ったら、別の意味で困惑することになってしまう。

 

 

「口囃子さん全然飲んでないじゃないですか~~。ほら、ほら、飲んでほしいって酒の声が聞こえないんすか~~~??」

「うわちょっと何だよこいつ!絡んでくるタイプか!面倒くさっ!!」

 

 

 

今までこんなに酔わせたことは無かったため知らなかったが、まさか絡み酒する男だったとは。

首に腕を回してきて変にベタベタひっついてきて厄介なことこの上ない。男相手に何やってんだよ、女にやれ。イケメンだからときめく女ぐらいどっかにいるだろ。

 

 

「ああもう離れろ!暑苦しいぞ~~!」

「なっ!口囃子さんは俺の事嫌いなんですか!?どうなんですか!!!!」

「いやもう何なんだよこいつ!あれか!真面目な奴ほど酔ったら面倒くさくなる奴か!つーかそれ僕に聞くことかよ!まつもっちゃんに聞け!」

「そんな・・・答えてくれないんすね・・・。」

「え・・・ちょっと・・・修兵・・・?」

 

 

まずい、これはまさか・・・と不安に思うのも束の間修兵は隼人の死覇装を掴んで泣き出してしまった。

 

 

「何でこのタイミングで泣くんだよ・・・。死覇装汚れちゃうよ・・・。」

 

 

だが、色々抑えていたのかもしれない。

東仙がいない中、急に一人で隊を纏めなければならず、隊内からも色々陰で言われてきたのかもしれない。

辛い気持ちを一人で抱え込んで抑えられなくなって、まるで昔の自分そっくりだと、隼人は目の前の酔っ払った青年を見て他人事とは思えずにいる。

こういう時は先輩風吹かせてみるか。上手くいくかわからないけど。

 

 

「あのね・・・辛くなったら周りの部下達を頼らないと。頼れないなら先輩の僕に相談しなさい!他にも狛村隊長とかいるでしょ。皆力になってくれるから。」

「そ・・・そうなんれすか・・・?」

 

 

酒を飲み過ぎたからか舌足らずな言葉になっている。どうせ覚えていないだろうけど、ちょっとした昔話を修兵にしてあげた。

 

 

「まだ狛村隊長がウチに来る前はね、僕が三席で事実上一番上だったんだけど、京楽隊長と浮竹隊長が色々手伝ってくれたんだよ。隊主会の内容伝えてくれたり、隊の運営のコツ教えてもらったり。だから僕もちょっとしたアドバイスくらい出来るから。相談すれば誰だって助けてくれるから!だからそんなビービー泣くな修兵!!」

 

 

最後はちょっと拳西っぽく喝を入れてみた。あんま似てないけどね。だってそんな拳西さんみたいに声低くないし。

元気を出してくれるかと思ったら、またまた真逆の反応をされてしまった。

 

 

「口囃子さん・・・・・・口囃子さ~~~~~~ん!!!!!!!!」

「えええっ!逆に泣かせちゃった・・・。」

 

 

胸に顔をぐりぐりと押し当てて涙を擦っている。女にやったらセクハラじゃ済まされないぞ。

ともかく嬉しくて泣いていると思われるので、結果オーライなのかもしれない。

しかし死覇装は修兵の涙で汚れてしまった。クリーニング代を請求してやろうかコラ、と言いたい程だ。

ものすごく感情の起伏が激しくなった修兵であった。

 

 

酔っ払った修兵を置いていくわけにもいかず、隼人は仕方なくおぶって家に連れて帰る羽目になった。

年下のクセに自分よりも身長が高いのが納得いかない。故に、おんぶするのすら大変だった。

実際大半の後輩が自分よりも身長高いが、それも納得いかないのだ。

 

眠っている修兵は寝言を何度か呟いていたが、どれも彼の辛い思いを実感する内容であった。

 

 

「東仙隊長・・・・・・。」

 

 

やはり、残された者が負った傷は深い。

 

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