ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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広いお屋敷で鍛錬!

「ああ!暇じゃ暇じゃ!何か面白いことはないかのう。」

 

 

始業時刻になって早々不満をもらす女性死神がいた。

 

四楓院(しほういん)夜一(よるいち)

 

護廷十三隊二番隊隊長であり、隠密機動総司令官及び、「刑軍」統括軍団長などの仰々しい役職を兼ねている彼女は今日も暇つぶしのネタを探していた。

 

いつも逃げ出した夜一を捕まえる副隊長の大前田(おおまえだ)希ノ進(まれのしん)は昨日から一週間現世出張に赴いているので、今日の夜一はまさしく野良猫のように奔放かつ気まぐれに過ごすつもりでいた。

 

「喜助は蛆虫の巣に行っておるし・・・。かといって砕蜂(ソイフォン)は変に真面目じゃから帰ろうなどと色々うるさいしのう・・・。うーむ・・・。」

 

腕を組み、首を傾げつつしばらく思案していると九番隊の隊士が回覧の書類を届けに来た。

 

「失礼いたします!こちら四楓院隊長宛の書類でございます!確認をどうぞ。」

「おう。そこの机にでも置いといてくれ。次は六番隊に届ければいいんじゃな?」

「はい!よろしくお願いいたします!それでは!」

 

走り去る九番隊の隊士をみて夜一は何かをひらめき、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「お主!待つんじゃ!今日は九番隊に・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

口囃子隼人が拳西と共に暮らし始めて10年が経った。

 

瀞霊廷に来た時の隼人は見た目10歳程であり、現世の子どもであれば10年経てば大人であってもおかしくない。

しかし、尸魂界の住民は老化の速度が非常に遅いため、10年間でもほとんど見た目は変わることはないのだ。

 

なので、端から見ると何も変わってないように見えるが、隼人はこの10年間でだいぶ読み書きの知識を身につけた。

 

 

「はい、これが頼んでた本だよ。人気だから借りる人たくさんいたけどリサちゃんが適当に置いてた図書館の蔵書の中からたまたまもう一冊ボクが見つけたから貸してあげる♡」

「えぇーーっ!!本当ですか!これって今すごい人気の『瀞霊廷探偵』の続編じゃないですか!」

「ボクが見つけなかったら隼人クンは数ヶ月読めなかったと思うよ~。だからさ、『バラ色の小径』、買ってくれると嬉しいな~~。」

 

 

さりげなく京楽は自分の著作のセールスを行っていたが、完全に隼人の関心は人気の本に移っていた。

過剰なリアクションで落胆した後に、京楽は10年の隼人の成長をしみじみと感じていた。

 

 

「しかし10年で死神向けの結構難しい小説をしっかり読めるようになるとはね~。」

「拳西の鬼みたいな教育のおかげやろ。おそがいヤツや。」

「まあ夜一ちゃんから貰った読み書き練習の本をボロボロになるまで使い込んでいたからそりゃあ成長するはずだよ。あとリサちゃん、絵本感覚でそんな過激な春画置かないの!子どもには毒だよ!」

「なんでや!純粋無垢なお子ちゃまを大人の世界に誘うことは大事やろ!絶対隼人これ見たら興奮するで!」

「前にリサちゃんがこっそり本に紛れ込ませた春画を間違って隼人クンが見て顔真っ赤にしてて、六車クンものすごい怒ってたんだよ!」

「な・・・・・・っ!なんでアタシその場におらへんかったんや!もったいなーー!!」

 

 

ちっとも反省していないリサが全くもって的外れな後悔をしていると、とある人物が八番隊隊主室にやってきた。

 

 

「邪魔するの。隼坊はおるか。さっき回覧を届けにきた奴からここにおると聞いたが・・・。」

「はい!ここにいますけどわざわざ僕に何かあるんですか?夜一さん。」

 

 

隼人が返事をした後、夜一は血相を変えて叫んだ。

 

 

「実は六車が大変なんじゃ!」

「えぇっ!急いで戻らないと!京楽さん!矢胴丸さん!すいませんが失礼します!」

「そんな大変ならアタシらも行った方が・・・!」

「いや、お主らは大丈夫じゃ。隼人だけ連れてけば十分じゃ。それじゃあ失礼するの。」

「あぁそうかい。じゃあ頼んだよ。」

「急いで行きましょう!早く戻らないと・・・!」

 

 

最後に夜一が言葉を発した後、ウインクをしたのを見て察した京楽とリサは隼人を見送った。

夜一が隼人を抱え瞬歩で外に出ていった後、

 

 

「あ~あ。取られちゃった~~。」

「ええやろ別に!また本返しに来るんやし!つーかはよ仕事せえ!!」

「痛い!!!リサちゃんもね!!!」

 

 

リサの飛び蹴りが京楽の顔面にクリーンヒットし京楽は渋々仕事を再開した。

 

 

 

「夜一さん!九番隊はあっちですよ!?なんで逆方向に・・・。」

「ふははははははは!!!!お主は本当に騙されやすいの!!」

「えっっ???」

「別に六車には何もないぞ。ただ儂が隼坊を連れ出したかっただけの話よ。」

「何だ・・・・・・。よかったぁ・・・・・・。」

 

 

かなり鬼気迫る表情で夜一がやってきたのだ、隼人は本当に拳西の身にまずいことがあったと心配していた。

なので夜一の嘘だとわかった時には、隊長である拳西に失礼ではあるが、かなり安心したものだ。

 

「というか僕たちどこに行くんですか?」

「朽木の屋敷じゃ。隼坊!今日は思いっきり体を動かして遊ぶぞ!」

「えっ!いいんですか!?仕事あるんじゃ・・・。」

「朽木に回覧届けたら今日の仕事は終わりじゃ。」

「何かすごく強引ですね!!まだ昼前なのに!」

「それぐらい強引でないと隊長など務まらんぞ!儂は今日遊びたくてうずうずしておる!今日の儂は誰にも止められぬぞ!ふははははははは!!!」

「えぇーー・・・。」

 

 

恐らく誰よりも強引で破天荒な方法で夜一は仕事を放り出した。

そして初めて朽木邸を訪れた隼人は、初対面の自分と年の近い者に出会った。

 

 

 

 

「白哉坊!また来たぞ!今日も遊んでもらおうかの!」

「また来やがったな化け猫!私に遊びなど不要だと何度言えばわかるのだ!」

「そうすぐ熱くなるでない!次期当主がそんなものでは将来が危ぶまれるのう。」

 

 

夜一が自らの遊び場としてよく朽木邸を訪れ、次期当主の子どもをおちょくって怒らせているという話は拳西伝いに何となく知っていたが、その子どもが自分と近い年だとは知らなかった。

 

 

「紹介するの。朽木(くちき)白哉(びゃくや)。後々隊長になるかもしれん男じゃ。まあ今の性格じゃ到底無理じゃがのう!」

「黙れ夜一!」

「それとこいつは口囃子隼人じゃ。六車が世話しとる童じゃ。仲良くするのじゃぞ、白哉坊!ほれ、隼坊も挨拶せぇ!」

「あっよろしくお願いします!」

 

 

正直貴族の子弟にはあまりいい印象は無かった。

今まで会った貴族の子弟は、自分の出自を知っている者は露骨に嫌な顔をし、自分の出自を知らない者も、親から聞かされたのか、二回も遊んでくれた者は誰もいなかった。

 

拳西には「そんな奴はぶん殴っちまえ。」などと言われたが、そんなことしたら大問題になるのはさすがに色々死神の世界を知った隼人には分かっていた。

なので、この手の差別はしばらくずっと付き合わないといけないと覚悟していたのだが。

 

 

「よろしくな!隼人!」

「えっ・・・あぁはい。」

「何故そのように畏まっておるのだ?」

「いや・・・。『遊びなぞ不要だ』って言ってたので僕のことも嫌かな~って思って・・・。」

「確かにあの化け猫は嫌だが卿を嫌う理由にはならぬ!」

「でも僕流魂街出身で・・・。」

「なんだ、そんなこと私には関係ない!私は他の貴族とは違って差別などしないぞ!」

「そういう考えじゃから此奴は大丈夫じゃ。」

「はぁ・・・。」

 

 

隼人にとっては経験上あまり信用できなかったが、夜一が大丈夫だと言っているので多分大丈夫なのだろう。強引だがそう結論づけることにした。

 

 

「というわけで今日は遂に『アレ』をお主らに教えるぞ!」

「『アレ』って?」

「そう言われて私は何度貴様に騙されてきたか・・・!」

「いや、今日の儂は本気じゃ!瞬歩を教えてやろう!」

「えっ!あの瞬歩!?拳西さんたちができるやつをですか!?でも何で僕たちに・・・。」

「決まっておろう。鬼ごっこをしたいからじゃーーー!!!ふははははははは!!!」

 

 

本当にこの人は自分の欲望に忠実な生き方をしてるな~と隼人は何度でも思う。

たかが鬼ごっこのために子どもに死神の高等歩法技術を教えているのを知ったら、霊術院の講師にめちゃくちゃ怒られるだろう。まあそれでもこの人は構わずやるだろうが。

 

 

「白哉坊にだけ教えるつもりであったが隼坊も死神になりたいと言っておったしな。いつも勉強ばかりじゃと疲れるじゃろ。今日はいっぱい体を動かすぞ!」

 

 

 

そして『四楓院夜一の瞬歩講習会』が始まった。結果、白哉は元々センスがあるのか一日でそれなりに形にするという偉業を成し遂げていたが、一方隼人は歩法の基礎以前に、体力が足りていなかった。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~しん・・・どい・・・です・・・。」

「お主・・・。体力無さすぎじゃろ・・・。これは六車に言う必要があるのう・・・。」

「そっそれだけは言わないで下さい!!!ただでさえ普段の勉強が厳しいのに・・・。」

「決めたぞ!しばらく儂と二人で猛特訓じゃ!くだらん紙の仕事よりこっちのほうが大事じゃ!」

「え~~~仕事してくださいよ~~~~!」

 

 

そして、白哉にも教えてもらいつつ軽く死にそうになりながら今日の講習会は終わった。

夕方になると、隼人は完全に足が動かなくなっていた。

朽木邸の縁側で三人は座りながら夕焼けを見て、今日一日を振り返っていた。

 

 

「なっさけないのう~~!これぐらいで使い物にならなくなるとは。」

「いや、さすがに私も疲れたから心配しなくていいぞ、隼人・・・。」

 

 

いつもよりも体を使ったからか、日々鍛錬している白哉もかなり疲れていた。

 

 

「まあお主らの実力がわかって儂は満足じゃ!しかしいつになるかのう。お主らが死神として立派になるのは。」

「100年以上は必要な気がします・・・。」

「なら儂もあと100年以上は隊長を続けないとな!お主らが隊長になるのが楽しみじゃ!」

「僕こんな調子じゃなれませんよ・・・死神にもなれるかどうか不安で・・・。」

「それはお主ら次第じゃ。努力すればお主らはきっと卍解できるようになる。隊長にもなれるぞ!まあ儂は天才じゃから隊長になれたんじゃがのう!ふははははは!!!!」

「自分で言うかそれを・・・。」

 

 

と、白哉が呆れていたところで、隼人にお迎えがやってきた。

 

 

「・・・・・・何かスゲェことになってんな。」

「おう六車!今日此奴らに瞬歩を教えておったんじゃが、隼人は全然体力が無くてのう。鍛えてやってくれ。」

「いきなり瞬歩教えてんのかよ!段階ってものを知らねぇのかよ・・・。」

 

 

だが、近い齢と思われる白哉と比べても、隼人の疲れっぷりは相当なものであった。

いつも読み書きの練習や、本を読ませることばかりさせていたため、運動というものをあまり本格的にしてこなかったのである。

 

考えてみれば初めて会った時もすぐ疲れていた。元々体力に乏しいのだろう。

明日から九番隊の隊士と鍛錬でもさせるか、などまた拳西も無理やりな鍛錬方法を考え始めた。

 

 

「じゃあコイツ連れて帰るぞ。挨拶ぐらいできるだろ。」

「今日はありがとうございました。」

「俺に向かって挨拶してんじゃねぇよ・・・。」

「えっ・・・。ああ本当だ。すいません。」

「眠そうじゃから帰して休ませてやれ。楽しかったぞ。」

「あぁ悪りぃな。朽木んトコのガキも付き合ってやってくれてありがとな。」

「いえ!私もとても楽しかったです!」

 

 

こっくりこっくりしており、いつ寝てしまってもおかしくないので、拳西は隼人を背負って帰ることにした。

 

 

「また来てくれ!卿なら歓迎するぞ!」

 

 

最後にそう白哉から言われた瞬間、隼人は急に目を覚まし、

 

 

「はい!また鍛錬しましょう!」

 

 

と拳西の背中の上から嬉しそうにしていた。

 

 

 

「今日は楽しかったか?」

「はい。すごく疲れましたけど・・・。」

 

 

さすがに今日は疲れた。

京楽さんから借りた本を読むつもりであったが、突然の予定変更で鍛錬することになるとは。

夜一の完全自分ペースでの鍛錬についていくのは子どもには至難の業であり、もう歩くのすら辛い。

 

だが、個人的には嬉しいこともあった。

 

白哉と知り合いになれたことだ。

今までの貴族の子弟とは違い、自分の生まれを関係ないと言ってくれた。

その上でまた来てくれと言ってくれた。

初めてできた同年代のまともな知り合いとこれから交流することが楽しみで仕方ないのだ。

 

 

「白哉さんと知り合いになれて嬉しかったです。」

「おぉそうか。年近そうだしな。いい友達になれんじゃねぇか?」

「はい・・・。また来てくれって言ってくれたし・・・Zzz・・・。」

「寝ちまったか・・・。よっぽど疲れてやがる。」

 

 

 

あまりにも疲れた隼人は夕飯も食べずそのまま朝まで寝てしまった。

だが、夢の中では瞬歩を身につけ、白哉と楽しく鍛錬していたという。

 

 

 

 

 

翌日も隼人は夜一に連れられ今度は二人きりで鍛錬したが、その様子を見て呪殺しそうなほど隼人を睨みつけている女性隊士がいたというのはまた別の話である。

 

 

 

 




子どもびゃっくんは分け隔てのない生徒会長タイプかなって思ってます。
しかしここの護廷十三隊はサボってるやつばっかだな・・・。
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