ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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任務

『口囃子サンがこれからすべき事と、決戦の日についてもらう特別任務について。』

 

 

一気に場の雰囲気が変わる。それまでの砕けた雰囲気から、まるでドラマとかで流れているBGMがシリアスな物に変化したかのようだ。

只事ではない話が始まりそう・・・。

 

 

『・・・・・・なーーんて思っちゃってますよね?』

「えっ。」

『そんなに畏まりすぎなくていいっスよ。いやーアタシの予想通りすぎて面白い面白い!!』

「また何で分かるんですか!!悔しいーーーー!!!」

『それぐらいの気持ちで聞いていて下さい。あんまり張り詰めていたら当日まで持ちませんよ?』

「えっ?あ、ああ、はい・・・。」

 

 

そしてついに浦原は話の本筋に入っていく。

 

 

『まずアナタを尸魂界に事実上幽閉している理由は単純です。アナタの力が藍染に目を付けられているからです。』

「えっちょ、ちょっと待って下さい、何で僕の力が・・・?皆目見当つきません。っていうかやっぱりメチャクチャ重大な話じゃないですか・・・。」

『結局そうなっちゃいましたね・・・。アナタの始解は非常に珍しい能力です。藍染が特別な対応を行った程の力ですから。』

 

 

自分の力が珍しい。

そう言われても正直あまり実感が無い。

調査のためには有用であるが、結局それだけだ。

戦闘を行う際も直接戦う斬魄刀じゃないため結局鬼道に頼らざるを得ない。欲を言えば風死とか花天狂骨みたいな斬魄刀が欲しかった。あの時は受け入れるとか言いつつ実際他人の斬魄刀が羨ましい。・・・ってまた同じことを考えてしまったよ。

 

 

「珍しいんですかね・・・?自分の戦闘には一つも役立たないので、実感とか一つもないんですが・・・。」

『尸魂界の歴史から見てもここまで珍しい能力は無いですよ。』

「はぁ・・・。」

 

 

それなら目を付けられても仕方ないか。でも自分はそんな成長するようには思えない。

未だに理解に苦しんでいる中、浦原は考え込んでいる隼人を置いていくかのように話を続ける。

 

 

『実はアタシにとってアナタの成長は藍染と対決する上で不安要素でした。』

「えっ・・・えっ!?!?」

『四十年前でしたっけ・・・。アナタが始解を習得して夜一サンから能力を聞いたときから、アナタが藍染の仲間になる可能性も考えていたんスよ。』

「そんなわけないですよ!あの人達を虚化させた奴らの仲間になんか『何も知らされなかったら?』

「え?」

『六車サン達の虚化の真相を知らないまま、鏡花水月の力で騙されて仲間になっていたら?』

「え・・・・・・まさか・・・・・・そんな、」

『アナタはこの通信が始まってから一度でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と考えましたか?』

「・・・・・・いいえ。考えたこともありません。」

 

 

藍染の鏡花水月はそこまでの力なのか。そうだとしたら何も手の打ちようがないのではないか。

 

 

『甘い。そんなヤワな注意力では藍染を止めるどころか、触れることすら叶いませんよ。』

「・・・・・・・・・、」

 

 

初めて浦原喜助から厳しいことを言われたが、これは純然たる事実だ。

それ程までに油断できない能力。完全催眠の恐ろしさを叩き込まれたような気分だった。

少し落ち込んでしまったが、浦原はむしろ安心しているようにも見えた。

 

 

『それ程に藍染は人心掌握に長けています。アナタが何も知らずに仲間になったりしないでよかった。そして、藍染にアナタの存在を侮らせることが出来たのは、嬉しい誤算です。』

「そうなんですか・・・?」

『はい。ここでアナタが決戦の時についてもらう極秘任務を伝えます。』

 

 

 

 

 

『アナタには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。』

(!!!)

 

 

突然告げられた浦原からの一言は、全くもって理解不可能なものだ。

本物の空座町?たった一人で防衛?訳がわからない。

 

 

『順を追って説明しますね。』

「すみません。全くもって意味が分からないので結構丁寧に説明してもらっていいですか。」

『しょ~~~がないっスね~~。』

 

 

間延びした浦原の声はおどけた様子を見せるが、決して隼人は心の姿勢を崩さない。

 

 

『今現在十二番隊に尸魂界のどこかに空座町の完璧なレプリカを作ってもらっています。』

「あっあれですか!そういうことだったんですね!!」

『まぁ予測が外れたらその仕事も無くなるところだったんですが、アタシの予測通りに事が進んでよかったっス。それで、現世の空座町をレプリカの空座町にすり替えます。』

「えっすごいですね。」

『うそ~~~!!なんてこった~~~~!!!!ぐらい驚いて欲しいっスねぇ・・・。』

「スケールが大きすぎて現実味ないんで驚けないですよ・・・。」

 

 

現世の一つの街を尸魂界にまるっと転送するなんて現実味が無さすぎるのだ。

涅マユリや浦原などの科学者なら出来そうではあるが、前例のないことをそんな簡単にこなせるのだろうか。

 

 

「っていうか、本当に出来るんですか?」

()()()()()()()()。』

「・・・なら大丈夫ですね。」

『納得して頂いて何よりです。』

 

 

昔も色々聞いたりしたことがあったが、しっかり言い切った浦原は必ず有言実行してきた記憶がある。こういう所で胡散臭いけれど信用できる男なのだ。

 

 

「あと、それで、何で僕一人なんですか?」

『隊長格を除いてアタシが信用できる実力を持った護廷十三隊の死神はアナタしかいません。副隊長の方も、雀部サンなら任せられますが、あの人は総隊長の側におつきになるでしょうし、アナタしか信用して任せられる死神はいないんですよ。』

「ちょ・・・ちょっと待って下さい。いくら何でも僕は隊長ほどの実力は無いです。隊長の誰かが代わりにいた方がいいんじゃないでしょうか?」

『大丈夫です。アタシ達が何としても向こうで止めるので。アナタには黒崎サンの友人と家族の保護をお願いしたいんス。』

 

 

そういうことか。それなら安心だ。

だが、束の間の安心はすぐに跡形もなく消える。

 

 

『ですが、崩玉と藍染が融合した場合、もうアタシ達に藍染を止めることは出来ません。殺すことも出来なくなります。』

「え・・・・・・。」

『そうなった場合、アナタは藍染とたった一人で戦うことになります。』

「!!!」

 

 

護廷十三隊全軍、更に浦原喜助ら101年前の元隊長格全員が揃って打ち倒せない敵を、ただの三席が止められるはずがない。

何のつもりで浦原は自分に任せるつもりなのか。

 

 

「む・・・無理ですよ・・・。僕がそんな、一人でなんて、」

『その場合、口囃子サンは藍染の足止めに徹して下さい。どんな手を使っても構わないです。何としても黒崎サンの友人の命を護って下さい。お願いします。』

「でも・・・どうやって・・・。」

『明日からそちらに鉄裁サンを派遣します。もう少し遅くなる予定でしたが、そうも言ってられなくなったので。』

 

 

それは非常に嬉しいが、先ほどの浦原の発言と矛盾している気がする。

自分の成長を不安に思っていたのに、なぜ鉄裁をこちらに送り付けてまで自分を成長ようとするのか。そのことについて聞くと、浦原は『やっぱりそこを突かれましたか・・・。』と呟いた後に答えを示した。

 

 

『結局精神論になってしまいますが・・・。真実を知り藍染と明確に敵対しているなら、もうアナタは向こうにつくことは無いでしょう。だったら、とことん成長させてやろうじゃないかァ!ってことっス!』

「ざっくりしてますね・・・。でもどれぐらいの力をつけさせるつもりなんですか?」

『それは明日鉄裁サンから聞いて下さい。決戦は冬だと思われるので、その間鬼道とアナタの始解に注力して鍛錬を行ってもらいます。』

 

 

早くとも11月。その時にはこの前まで全く技が通用しなかった藍染と再び戦うことになるのだ。

正直な話、何としてでも護廷十三隊全軍によって藍染を止めてもらいたい。自分には無理だ。

 

でも、あの浦原喜助に『アナタしか頼れない。』とはっきり言われたのだ。

藍染が最もと言えるほど警戒、敵視している男にそこまで言われちゃあ断ることは出来ない。

 

それに、101年前の元隊長にここまで信頼されるのは、個人的に非常に嬉しかった。

 

 

「・・・わかりました。やります。そこまで言われて断ることは出来ません。」

『ありがとうございます~!』

「でも、僕は護廷十三隊の皆さんが藍染を止めてくれることを信じていますよ。その前提で行きます。それだけは理解して下さい。」

『ええ。承知しました。』

 

 

何よりも握菱鉄裁から直接鬼道を教えてもらえるのは非常にありがたい。藍染との戦いのために効率よく実力を上げられると思える。

いつも鍛錬に付き合ってもらっている射場には大変申し訳ないが、暫くは他人に相手してもらうしかない。

そしてせっかく浦原と直接二人で話せる機会だったので、どうしても聞きたい情報があった。

 

 

「あの・・・拳西さん達って、今どこにいるんですか?尸魂界でも行方が知れないって言われていて、浦原さんなら知っているかなと思ったんですけど・・・。」

『知ってますよ。』

 

 

尸魂界の総力を挙げても見つからない彼らの居場所を、知っているとあっさりと答えた。

繋がりがあることに安心する一方、隼人は瞬時に正確な居場所を教えてもらうことは出来ないと悟った。

 

浦原にも聞いた死神がいる筈だが、それでも今まで居場所を掴めなかった以上、浦原は彼らに知らないと返答したことと同義だ。隼人にだけ特別に教えるという雰囲気にも見えない。

 

 

「・・・いいえ、これ以上は聞きません。」

『・・・察しがいいですね。ひよ里サンにバレたらアタシが相当怒られてしまうので・・・。大丈夫。もう少しで会えますよ。生き別れたおとーさんと100年越しの感動の再会っスね~!口囃子サンが号泣するところを録画しないと!!』

「泣きませんよ絶対に!僕の成長を拳西さんに見せつけないといけないので!昔みたいに泣いたりしませんから!残念でしたね!!」

『そんなぁ~撮れ高ばっちりっスよ。演技でも是非!』

「余計に無理です!とりあえず明日鉄裁さんのために七番隊の穿界門そちらと繋がせて頂きますね。僕の始解で浦原商店の座標は記憶しているので大丈夫です。あとはよろしくお願いします!失礼します!」

 

 

ブチッ!!と強引に通信を切ってしまったが、浦原の言いたいことは全て聞いたはずなので大丈夫。

だが、戦いまであと二ヶ月から長くても三ヶ月しかない。

この期間でどれだけ自分は力を伸ばせるのだろうか。九十番台も一つしか使えず、それも完全詠唱しないといけない程のレベルだ。藍染と渡り合うにはまずあの時の藍染のレベルに到達しないといけない。

 

通信後、首から下げたお守りを握り、新たに決意を固めた。

 

 

 

翌日。

京楽から浦原喜助の電話番号を教えてもらい、打ち合わせした上で穿界門に行き無事握菱鉄裁を迎え入れることが出来た。

珍しいもの見たさで八番隊の二人と浮竹が同伴していた。

 

 

「久しぶりだね。元大鬼道長さん。」

「これはこれは!お久しぶりです。京楽隊長、浮竹隊長。」

「七緒ちゃん緊張しないの。怖くないから大丈夫大丈夫。」

「べっ別に怖がっていませんよ!」

 

 

101年ぶりに来たからかやはり懐かしそうな目で尸魂界を見ている。

しかし出で立ちは昔よりも派手というか極端な見た目に変化していた。

 

 

「それが現世での服装かい?」

「ええ。今の私はしがない駄菓子屋の店員ですので・・・。」

 

 

しかし、しがない駄菓子屋の店員という言葉を二人は気に入っているのだろうか。やけにそう言いたがる。

見た目は、ピッチピチのTシャツにスラックス、『浦』と中央に記されたエプロンに髪型はおさげで眼鏡をかけているという、出オチ感の強いものに変貌を遂げていた。

 

昔は服で覆われていたため分からなかったが、メチャクチャムキムキだったのか。鬼道を扱うのに何か意外だ。

 

 

「お久しぶりです・・・。」

「口囃子殿、お話は聞き及んでいますよ。貴殿は藍染の死の偽装にお気づきになったとか。六車殿もさぞ喜んでおられましたぞ。」

「えっ。」

 

 

夜一の話では呆然としていたと聞いたため、失望されたかと思っていた。

 

 

「喜んでいたんですか!?」

「勿論です。夜一殿は伝える際に誤解させてしまったと仰っていましたぞ。・・・貴殿に原因があるとも呟いていましたが・・・。」

 

 

最後の呟きは小声だったので隼人には聞こえなかった。それ以外の居合わせた者には聞こえてしまったが。

 

 

「えーー!!!やったーーー!!!!!拳西さんに間接的に褒められた!!!!やったやった!!!!嬉しいなぁ~~!!」

「あれ、ボクが褒めた時そんなに喜ばなかったよね!?残念・・・。」

 

 

七緒が京楽を軽く慰めたが、京楽が七緒に過剰な反応を示す結果となってしまった。

 

 

「まぁ、彼には誰よりも六車さんの言葉が響きますからね。」

「そっか・・・じゃ、七緒ちゃんにはボクの言葉がい・ち・ば・ん・に・響いて欲しいなァ~♡」

「やかましいっ!!」

「痛い!!」

「伊勢副隊長も昔の矢胴丸副隊長に似てきたな・・・。」

 

 

隼人が昔みたいなオーバーリアクションで喜びを表現している一方で、厚めの本で殴られた京楽は哀愁漂わせてしょんぼりしていた。

浮竹の感想も全くもってその通りである。

 

 

「では私はこれで、口囃子殿、行きましょうぞ。」

「はい!よろしくお願いいたします!」

 

 

 

 

 

握菱鉄裁との鬼の(?)鍛錬が今日から始まる。

 

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