ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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修行

強烈な見た目に変貌を遂げた鉄裁に連れて行かれた場所は、双殛の丘の麓にある隠し部屋のような場所であった。

鉄裁が霊圧を込めて地面にある入り口を開き梯子で降りていくと、そこには余りにも広すぎる程の空間が存在していた。

 

 

「こっこんな空間が尸魂界にあったんですか・・・。」

「店長と夜一殿が大昔に創り上げられました。私達があの日ひと時逃げ込んだ場所でもあります。」

「・・・、その日にはまだ尸魂界に居られたのですか?」

「はい。三日後に現世に赴きました。」

 

 

それもこれも全て藍染の策略によるものだ。許しがたい。

拳を握り、怒りの表情を隼人は見せたが、鉄裁がそれを窘める。

 

 

「貴殿が気に病む必要は御座いません。その件は既に解決したことで御座います。今の貴殿が為すべき事は、鬼道の力をつけることです。」

「すみません。藍染が許せないのもあるのですが、何にも知らないでのうのうと生きていた自分自身が一番許せなくて。拳西さん達はあんなに苦しい思いをしてきたのに、今まで散々調べてきたのに、結局自分で突き止めることは出来なかったのです。藍染から知らされて、掌の上で踊らされていたように思えて、悔しくて許せないんです。・・・・・・って貴方にぶつけてもどうしようもないですよね。本当に申し訳ございません。」

 

 

何も言わず聞いていた鉄裁は、若輩者の青年に対し、ある言葉を授けた。

 

 

「百年経っても、貴殿は何も変わりませぬな。」

「・・・それ、夜一さんにも言われました。」

「余程六車殿への信頼の思いが強いのでしょう。御自身でも事件について調べていらしたとは。」

「・・・、」

「信頼する者への強い思い、それが貴殿の強みだと私は思いますな。」

(!)

 

 

前にも言われた。狛村だっただろうか。

先が見えず毎日泣いていた頃に言われて、嬉しいのと同時に自分の成長を見せつけることが出来なくて、悔しかったり寂しかったり色んな気持ちが駆け巡っていた頃だ。

 

あの頃はそう言われてもよく分からず保留していたが、今は素直に受け入れ、嬉しいという気持ちが一番強い。

 

 

「頑張って強くなってまた褒められないと。鉄裁さん、これから暫くよろしくお願いします。」

「承知!!」

 

 

いよいよ本腰を入れることになる。今までの射場との鍛錬とは別格の厳しさになるだろう。

まずはどこまで鍛錬するか、全体の概要を聞く。

 

 

「僕はどこまで力をつければいいのですか?予定とかあれば教えて頂きたいのですが・・・。」

「店長の実力以上、私に匹敵するレベルまで強くするようにと申しつけられております。」

「鉄裁さんに匹敵するレベルまでですか!?」

「同時に始解の能力の強化も行うよう店長は仰っておりましたぞ。」

 

 

浦原の鬼道はたしか当時でさえ護廷十三隊トップクラスの実力を持っていると聞いたことがある。

それと並行して始解の強化もやるのは、厳しいのではないか。どちらか一方の方がいい気がする。

 

 

「片方だけの方がいいんじゃ・・・鬼道だけの方とか!」

「店長の見立てでは、あと数回破面の霊圧を解析するだけで十分とのことです。破面が現世に出現した場合は涅隊長の元へすぐに向かわせます。私がお送りいたします。」

「中途半端になったりしま「よ・ろ・し・い・で・す・か・な?」

「はい・・・。」

 

 

覇気しかない顔で至近距離で見つめられてしまい、たじろぐどころの話ではなかった。

何で実力のある人達はこんなに押しが強いのだろう。正直このやりとり飽きるわ。

鉄裁の場合怖さはあんまりないが、逆らう場合ムキムキの身体で実力行使されそうなので素直に従う方がいい。昔の拳西のお仕置きを思い出してしまいそうだ。

 

 

高い目標を掲げつつ、鉄裁の押しの強い鍛錬は幕を開けた。

 

 

 

一方七番隊では。

 

 

「あぁ~!暇じゃ暇じゃ!!・・・口囃子は人脈があって羨ましいのう・・・。」

 

 

暇を持て余していた射場が鍛錬相手を探すも、誰も相手してくれず手持無沙汰になっていた。

鉄裁との特別訓練の話を聞いた後、まずは修兵の元へ寄ったが、

 

 

「瀞霊廷通信で忙しいんで今は無理っすよ。」

 

 

と断られ、吉良の元へ向かうと、

 

 

「隊長権限代行の仕事があるので暫く僕は無理です。ごめんなさい。」

 

 

と典型的な文章で断られてしまった。

 

 

十一番隊の三席と五席、阿散井は現世出張を続けており、気安く相手してくれる死神はもういない。

大前田はあまりにも系統が違うためダメ、雀部は仕事が多いためダメ、さらに自分の仕事は既に終えてしまったので、本当に何もすることが無くなってしまった。

そのため、いつもなら決して頼まないお願いをすることになってしまう。

 

 

「隊長・・・儂に、仕事を下さい!!お願いしやす!!!」

「済まんが、儂も仕事を終えて少々暇をしておる。鉄左衛門、身体を動かさないか?」

「ありがとうございます!!!!」

 

 

嫌々ながら仕事をやる方がマシだと思っていたが、まさか鍛錬に誘ってもらえるとは有り難い。

隊長と直接戦うなら学習できることもたくさんあるはずだ。

 

と思っていたが。

 

 

「今日の儂は本気でいくぞ!!卍解!!黒縄天譴明王!!!」

「え・・・隊長・・・儂、」

「何、お前は暇そうにしていたからな。これぐらい手応えある方がいいだろう、鉄左衛門!正々堂々かかってこい!!!」

「お・・・・・・押忍!!!!!!」

 

 

もう二度と狛村の前で暇そうにしないことを射場は誓った。

 

 

 

 

「――――破道の九十 黒棺!」

「ふむ・・・。」

 

 

まず発動可能な全ての鬼道を鉄裁に見せ、カリキュラムを決める。

九十番台の鬼道はやはり難しい。

あの旅禍に放とうとした時は珍しく上手くいったが、それも阿散井の介入で止められてしまったため、不完全燃焼で終わってしまっている。

先ほど放った黒棺は、詠唱したにも関わらず発動途中で砕け散ってしまった。

 

 

「では『五龍転滅』は出来ますかな?」

「あーすみません、それはやったこともないです・・・。」

「なるほど、畏まりました。」

 

 

鉄裁は自分の中で結論づけ、隼人にカリキュラムを伝えた。

 

 

「口囃子殿は半月以内に九十番台の鬼道の完成を目標にして下さい。」

「半月以内!マジですか・・・。」

「心配御無用。私の見立てでは実現可能です。詠唱破棄をした上での発動は出来るようになるでしょう。」

「詠唱破棄で九十番台ですか・・・。」

 

 

あの場にいた一護らの話を伝言の形で聞いた話だが、藍染は詠唱破棄の黒棺で狛村を圧倒したそうだ。

要するに、()()()()()()()()()()()()()()()()()ということ。

少し考えはしたが、もう迷いはない。

 

 

「分かりました。やりましょう。」

「全力で貴殿の覚悟にお応え致しましょう!」

「本当に僕みたいな若輩者に・・・ありがとうございます。」

「・・・貴殿が藍染の死体の偽装を見抜いたおかげで、私は今此処で貴殿に私の技術の真髄を伝授出来る。これほど喜ばしいことは御座いません。これは私の感謝、そしてそのお返しだと思ってください。」

 

 

技術の真髄を教える。ということは、鉄裁本人は参加しないという事なのか。

ひょっとしたら技術面のサポートを行うのかもしれない。結界とか張るのだろうか。

というかほんと、そんなに感謝されるようなことしてないのに。浦原も鉄裁も仰々しいことこの上ない。

 

 

「では九十番台に手を付ける前に、まず六十番台から八十番台までの鬼道をたくさん打ち、身体を慣らしていきましょう。最後に九十番台の鬼道を一つ私に向けて打って下さい。私の全力の断空にヒビを入れられることが出来れば目標達成です。宜しいですかな?」

「はい!お願いします。」

「ではまずは結界を張らせて頂きます。ぬん!!!」

 

 

鉄裁が声を上げた途端、五重の結界が二人の周囲を覆う。

 

 

「これほどの結界では、足りませぬかな?」

「十分だと思います。どうせなら『足りねぇな!あと十個かけろ!!』って言いたかったですね・・・。」

「黒崎殿ならそう仰ったでしょうな。では――――」

 

「縛道の八十一 断空!!!!」

 

 

鉄裁の断空は藍染のものに比べると薄いように見えるが、その分密度にこだわっている。

隼人が自分で扱う断空に比べると、きめ細やかな繊維のような模様すら見えてくるほど密度が濃く、非常に完成度の高い鬼道だ。それほどのクオリティの鬼道をを詠唱破棄で扱えるのは今の護廷十三隊に誰もいない。

 

 

「ではまず!!縛道の六十二 百歩欄干!!!」

 

 

ここ数日の鍛錬のおかげで、以前完全詠唱で一護に向けて放ったものと同等の威力のものを詠唱破棄で出せるようになった。

今回は鉄裁が作り出した壁の範囲分を、さらに殺傷力の高い光の棒で当てていく。

副隊長程度なら避けることすら不可能な程の速度と威力だったが、鉄裁の作る壁には傷一つつかず、それどころか光の棒は当たった途端に粉々に砕けてしまった。

 

もちろんそれが想定内だ。

 

(やっぱり想像通りの硬さだな・・・。いや、それ以上か・・・。)

 

次の手を考え、即座に行動に移す。

 

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ」

 

「破道の七十三 双蓮蒼火墜!!」

 

 

完全詠唱で掌から放った炎と同じスピードで前進し、次は至近距離で鬼道を直接叩き込む。

本来遠距離から打つものだが、やはり至近距離だと制御しやすいのでより力を籠めることができる。

 

 

「破道の七十八 斬華輪!!!」

 

 

掌をすり合わせた後左右に手を広げ、今回は一つの大きな刃を生み出して壁に当てる。

本来京楽や浮竹など二刀一対の斬魄刀の持ち主が剣先に霊圧を込めて扱うものだが、手でやればいいじゃんと安直に考えた結果上手くいったため、隼人もこの技を使うようになった。

浮竹曰く、手でこの鬼道を使うのは普通なら非常に危険らしい。一体何故うまく扱えるのかは隼人自身にもよく分かっていない所がある。強力だからいいけど。

 

双蓮蒼火墜と立て続けに放ったため、結界が二つほど耐えられず消えてしまった。

 

 

「やはり結界が少し消えてしまいましたか・・・。しかしまだまだ、口囃子殿!壁には傷一つついておりませぬぞ!!」

「わかっていますよ!破道の八十八 飛竜撃賊震天雷砲!!!!」

 

 

藍染に全く通用しなかった鬼道。悔しくて悔しくて、特に何度も練習をした。紺碧の波動を放ち、結界は全て吹き飛んでしまった。

 

もちろんこれでも壁はびくともしない。

 

 

しかし、鉄裁はタイミングを逃さなかった。

 

 

「今です!!!九十番台の鬼道を!!身体を慣らした貴殿ならば、私の壁を打ち破ることも可能!!」

「分かりました!!」

 

 

黒棺だと鉄裁を巻き込んでしまい本来の目的から逸脱してしまうので、阿散井によって不完全燃焼となってしまったあの技にする。

 

 

「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ!!」

 

「破道の九十一 千手皎天汰炮!!!!」

 

 

無数の光の矢を鉄裁目がけて放つ。鬼道をたくさん使って術を使う身体に慣らしたからか、前の不完全燃焼で終わった時よりもさらに威力が上がっている。これだけで自身の成長を感じることが出来た。

 

既に結界が崩れていたせいで、周りの岩山も霊圧で吹き飛んでしまった。足りないって言えば良かっただろうか。怒られても知らないけれど。

 

肝心の壁だが、鉄裁の読み通りヒビを入れることが出来た。ほんの僅かであったが。

ただ、なぜか眼鏡が割れていた。

 

 

「どうやら私の眼鏡は無事で済まなかったようです・・・。」

「えっ!やばっ!!すみません!!せっかくの眼鏡が・・・。弁償します!」

「心配御無用。替えはたくさん持ってきております。」

「いや、多っ!!」

 

 

鉄裁が持ってきて開いたアタッシュケースの中には、全く同じ眼鏡がズラーーーっと並んでいる。

衣服よりも眼鏡の方が多そうだ。普通逆だろ。何かがズレている。

 

 

「素晴らしい出来栄えです。これなら修行を前倒ししてもよさそうですな。」

「ありがとうございます。でもちょっとしかヒビ入りませんでした・・・。」

 

 

改めて見ると、中心部に僅かに亀裂が入っている程度だ。

だが、それでも鉄裁にとっては十分というか、予想以上だったらしい。

 

 

「いえ、最初にヒビを入れろと私は申しましたが、実は努力目標のつもりだったのです。それがまさか、本当にヒビを入れてしまうとは・・・。」

「でも僕はまだ納得いかないです!もう一回やりましょう!!いいですか?」

「貴殿が望むのであれば!次は黒棺で壁にヒビを入れて下さい。結界も、十五個張らせて頂きます!」

「はい!!」

 

 

鉄裁との鍛錬は、まだまだ続く。

 

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