ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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キャラ崩壊

鉄裁と修行を始めて十日ほど経った。鬼の鍛錬のおかげで何と九十番台全ての鬼道を詠唱破棄で発動できるようになったのだ。

威力が追い付いてないためいつもしっかり詠唱した上で扱っているが、実質護廷十三隊トップクラスの力を持っていることになる。

 

 

「ふひー疲れた・・・。」

「いい調子ですな。これならより濃密な修行を行えましょう。さささ、お昼に致しましょう。お弁当ですぞ。」

「ありがとうございます・・・。」

 

 

このお弁当、美味しいのだが、何故かこのタイミングで鉄裁がピンクのフリル付きエプロンに着替える理由が分からない。

最初の頃は儀式とか言って裸エプロンだったため、それよりはマシである。

あの時は久々にドン引きしてしまった。

今でも引き攣った笑顔で弁当を受け取らざるをえない。

 

奇しくも全く同じエプロンを拳西も愛用しているのを、今の隼人は知る由もない。

 

 

「お味はどうですかな?」

「いつも通り、美味しいです・・・。」

「私も以前現世で花嫁修業を行っておりましたので、家事全般得意になりまして・・・。」

 

 

その顔で花嫁修業とか言わないでくれよ。圧が強すぎるよ。

というか鉄裁を花嫁にするなんて相当な変わり者だ。

 

 

「貴方を花嫁にする人はいらっしゃらないかと・・・?」

「いえ、将来は専業主夫にでもなろうかと。」

「そっちかい!!!って、働くつもりないんですか・・・。」

「家事も立派な仕事ですぞ。イクメンにでもなりましょうか・・・。」

「いっイクメン・・・?」

 

 

鉄裁の言葉は確かに理に適っているので否定するつもりはない。

っていうかイクメンって何だ。また何かカッコいい男の人でも指す言葉なのか。これは修兵案件だ。後で聞きに行こう。

 

 

「午後からはどういった修行をするつもりですか?」

「午後にはある詠唱にまつわる技術を・・・」

 

 

鉄裁が話している途中で、伝令神機に着信が鳴った。

電話を掛けて来たのはもちろん、涅マユリ。

最近あまり破面が出てこなかったが、痺れを切らしたのか久々に現世に到来したと電話が来た。

 

 

「お送りしましょう。」

「よろしくお願いします。」

 

 

久々に始解をすることになる。鈍っていないだろうか不安だ。ずっと鬼道の練習しかしてこなかったので、斬魄刀にしっかり触れることも最近はあまり無かった。

とにかく早く着きたいので鉄裁に送ってもらうが、一体どんな方法か。何か器具でも使うのだろうかと考えていたが。

 

 

「では、失礼。」

「えっ、ちょ、ちょっと!!!」

 

 

非常に恥ずかしい状況に立たされてしまった。

いや、抱えられてしまったと言うべきか。

いい年をした男が、よりによってお姫様抱っこをされるなんて考えもしなかった。

しかも超強面の鉄裁が猛スピードで走り抜けながら十二番隊へ向かっているため、見た者は皆唖然としてしまう始末だ。

瞬歩だったら見られることもなかったのに。狙われたか。

 

数人の副隊長に見られたのが死ぬほど恥ずかしい。穴があったら入りたいとはこういうことだったのか。

 

 

「反応です!反応ありました!」

「限定解除は!?」

「許可済みです!」

「何色だ!!」

「紅色反応・・・十刃です!!」

 

 

十二番隊はいつにも増して忙しそうだ。

いつもよりかなり早めに着いたことはマユリに褒められた。

 

 

「随分と早く来たものだネ。握菱鉄裁がいる以上当然ではあるが。中々滑稽な到着だったヨ。」

「見なかったことにしてください・・・。」

「喜べ口囃子。今回は皆濃い霊圧をもっている。非常に観察のしがいがあるヨ・・・。早く始解して調査を始め給え!」

「わかりましたよ・・・。」

 

 

全くこの人は本当に自分を道具としか考えていない。そこが浦原との決定的な違いだ。

まぁ冷酷だからこそたくさん研究して色々役立てることも出来るのかもしれないが。

 

今日は四体。二体は以前も現世に襲撃しに来たことのある破面であり、最初にちゃちゃっと調査すれば良い。

以前マユリが興味を示した、一護の元へ今まさに向かっていると思われる破面は何故か片腕を失っており、失望したマユリは急速に興味を失っていた。

 

 

「フン、興覚めだ。いつの間にか片腕を失っているとは。東仙要にでも斬られたか。」

「・・・、」

「画面を変えろ。」

「畏まりました、マユリ様。」

 

 

ネムが画面を変えると、日番谷らが戦っている場面に移る。

 

 

「あれも、十刃ですか・・・。」

「フム、それにしては些か迫力に欠けるネ。対策は容易に思いついてしまうヨ。」

「・・・、」

 

 

マユリの洞察力は凄まじく、画面越しに見ているだけでいくつもの敵への対策法を考えている。

隣にいる鉄裁も何も言わず画面を見ているが、自分なら容易に倒せるからか、全く動揺をみせていない。

 

 

「まぁ、それも私の頭脳があるからこそ為せる業であるが、副隊長以下であれば厳しかろう。つまらないものだネ。解析は進んでいるかネ?」

「はい、何とか。日番谷隊長も押されているようですね・・・。」

 

 

他の副隊長や席官は皆破面の生み出した触手のような腕に捕らわれている。

万事休すか。限定解除も既に通っている以上、日番谷がどうにかしないと最悪の事態になりかねない。

中央にある大画面から目を逸らし、別の小さな画面に目を向けると、この緊急事態を察知したのか、実力者が参上した。

 

 

「あ、浦原さんだ!」

「む。」

「ちっまたか・・・。まぁいい。お手並み拝見といこうかネ、浦原喜助・・・!!!!」

 

 

苛立ちで歪みそうなほどの醜悪な笑みでマユリは今回も浦原を敵視している。

 

だが、今回の浦原はかなり劣勢に立たされている。

破面から何度も霊圧の塊のようなものを打ち込まれており、副隊長程度の実力なら死んでいてもおかしくない。

 

しかし、相手はあの浦原喜助。()()()()()()()()()()()()()()

敵はどうやら力任せの脳筋に見えたので、浦原を出し抜くことはまず不可能だ。

映像では何度も浦原が殺られているように見えるが、一体どんな策を使っているのか。

その解答は直ぐにもたらされた。

 

 

『ケータイ用義骸っス!』

 

 

いち早く反応したのはやはりマユリだった。

 

 

「何!?!?!?携帯用の義骸だと!?!?そんなもの使っては著しい魂魄の消耗で戦闘など不可能な筈だ!何度も義骸に出入りすればそれだけリスクが高まる!」

「そうなんですか!?義骸って短い時間に何度も出入りするなとは聞いてましたが・・・。」

「まさかあの男はそのリスクすら克服したとでも言うのか・・・!!!本当に気に喰わない男だヨ・・・!!!!」

 

 

何か、この映像をマユリが観ているのを浦原は知っていてわざと見せびらかしているような気がする。

鉄裁に聞くと、「私は何も知りませぬ・・・。」と黙秘されてしまった。なるほど、そういうことか。

 

 

「映像は録画してあるから奴の技術を私が()()優れた形でリメイク(改良)するのは造作もない。私に見せびらかしたことを後悔するがいい、浦原喜助!私は貴様を超えてみせるぞ!!!」

「はい、マユリ様。」

 

 

最早霊圧の解析どころではなくなってしまった。マユリとネムは研究室に閉じこもってしまい、技術開発局の面々が忙しく機械を動かしている中、鉄裁と隼人は二人ただ座って映像を観ているだけになっている。

その後の浦原は相手の技を相殺して完全に消し、優位に立っていることが分かった。あの破面も非常に相手が悪い。

 

日番谷も卍解を使って饒舌な破面を氷漬けにして倒したようだ。やはり隊長。破面如きに負けるような実力ではない。

もう一体の破面は飛んでいる虫にご執心のようであり、振る舞いからして未発達状態の破面と思われるので、ちゃちゃっと霊圧を解析してあとは気にも留めなかった。

 

黒崎一護の所に映像を変えてもらおうとしたら、隣で何も言わなかった鉄裁が急に動きを見せた。

 

 

「では、私は一旦現世に戻ります。明日には戻ります故、暫し本来の職務に戻って下さいな。特例で貴殿の修行を行わせてもらっておりますが、偶には仕事に戻られるべきです。」

「えっそうですか。しかし何故突然・・・。」

「心配御無用。彼らの治療を行うために現世に戻ります。では御免!!」

 

 

と言った後、やはり今回も瞬歩ではなく猛ダッシュで十二番隊を後にした。

その話を聞いていたなら穿界門も用意してあげたのに・・・。と残念がっていたが画面から意識を逸らしていたせいで戦況の把握を完全に忘れてしまっていた。

 

気付けば、破面は全員いなくなっている。

 

あれっいつの間に!と声を上げたら、阿近に「反膜が出てアイツら撤退したぞ。見てなかったのかよ。注意力無えな。」と中々辛辣な返答が返ってきた。

ついでにお馴染みのレポート用紙を渡され、いつものように空欄を埋めていく。

 

 

「あの・・・これって役立っているんですか?」

「あぁ、隊長は結構参考にしてるぞ。機械には見えない破面の特徴が見えてくるっつってたな。」

 

 

正直参考にしていいのだろうかとこちらが悩んでしまう。

かなりお粗末な文章かつほとんど箇条書きなので、明らかに大人の書く報告書向けの文章ではない。

刺すような霊圧だ、とか、力任せに霊圧を振るっているため、消耗限界を気にする必要がある、など、マユリが考えていてもおかしくない内容ばかりなので、時々ここで解析している意義が掴めなくなる。

参考にしてくれているなら嬉しいが、正直この結果を大々的に隊主会などで皆に伝えられると恥ずかしい。

 

今回も子供じみた文章になってしまったが、阿近に渡すと興味深そうに見ていた。

 

 

「へぇー。お前の視点で破面を見るとこうなるのか。隊長が参考にする理由も理解できるな。」

「えっあの・・・どういう点で参考になるんですか?」

「俺達は()()()()()()()()()()()()()()。数値は裏切らねぇけど、お前らがぱっと数字を見ても分かんねぇだろ。だから、お前はある意味俺達が導き出した数値を分かりやすく他の隊に伝える役割を持っている。このガキ臭ぇ文章もある意味助かってると思うぜ?」

「ガキ臭いって・・・すげぇショックです・・・。」

 

 

最後の阿近の言葉は酷く癪に障りショッキングなものだが、阿近の言う事は確かに合っている。

細かい数字で強さを見ても普通の死神が分かる筈ない。

なるほどそういう使い方で調査に協力していたのかと感心させられた。

だが一つ気になる点がある。

 

 

「皆に伝えるって・・・まさか、隊主会に僕の書いた内容が伝達されているんですか・・・?」

「当然だ。そっくりそのまま引用してるっつってたぞ。優れた()()()の論文は正しい体裁で引用がウチのルールだからな。」

「最悪だ・・・。」

 

 

十数人の隊長相手に教養の無さを晒しているようなものだ。

擬音とか使って表現したりするためイメージは掴みやすいだろうが、公的な場に到底ふさわしいとは言えない。

そういえば前狛村と話をした時に子どもを見るかのような眼差しで顔を見られた気がする。

こうなったらもう現世に共有されていないことだけを祈ろう。

 

書き直すつもりで紙を阿近から奪い返そうとしたが、隊長に渡しとくぞと言われ今回も強制的に持っていかれた。

今回も恥ずかしい作文が広まってしまうのか。これも穴があったら入りたいぐらいに恥ずかしい。

ゾゾっとした、とか、ぐわぁーーっと霊圧が来た、とかいつにも増して酷いので、黒歴史確定。

 

 

「あぁ~あ・・・やっちまった・・・。」

 

 

一人呟き頭を抱えて落ち込んでいると、突然悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「わぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」

「なっ何!!」

 

 

この声は壷府リンだ。別室から聞こえてきたので、急ぎそちらに向かう。

ドアを開けると、彼は探し物をしているように見えた。

 

 

「そんな悲鳴あげてどうしたんだよ?」

「あ、すみません、大したことではなくて・・・。口囃子さんに用意したおやつが無いんです・・・。」

「えっ?」

 

 

何だそんなことか。正直昼飯の後からそんなに時間が経っていないので、別に今回は必要ない。

大事だと思ったのか、マユリまで来てしまった。

 

 

「何だネ、五月蠅いヨ。私の研究の邪魔をするつもりか。」

「あ、えっとですね、ここにおやつが置いてあったみたいなんですが、知らないですか?」

「そんなの私が知る訳ないだろ。(ブゥ。)」

 

 

こ、この音はまさか。

予感的中し、数秒後にはほのかに臭いにおいが隼人まで漂ってきた。

静かな中でオナラの音が響いてしまったので、隠すことは出来ない。

十二番隊の皆はきょろきょろしながら誰だ誰だと犯人捜しを始める。

 

 

「ね、ねえリンくん。おやつってもしかして・・・。」

「焼き芋です。上手くいったと思ったんだけどなぁ・・・。は~残念・・・。」

「早く解散し給え。口囃子、レポートを提出したのか?」

「阿近さんに渡しましたけど・・・。」

「なら今日はもう用はない。は、早く帰ってくれ給え。」

 

 

気持ち速めのスピードで出ていきバレずに済んだマユリは誰にも見えない所でホッと安心していた。

 

ホッとしていた所は見ていないが、隼人は真犯人に気付いてしまった。

いつもと違い言葉尻にわずかながら動揺を見せた犯人は、すぐにその場を立ち去ったあの男。

 

(涅隊長・・・あなたがそれをやっちゃダメだよ・・・。)

 

生理現象なので仕方ないが、キャラに合わないことはするべきじゃない。

 

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