京楽と話をしてから十日が経った。
「じゃあ、始めようか。」
「本っ当にやるんですね・・・。」
「何言ってんの。ボクは有言実行する男だよ。」
「儂の存在を忘れるなよ!喜助からもらったこの道具も慣らさないといかぬ!」
今日は今までの修行とは離れ、実戦を行い戦いの中でどのように立ち回るかの練習を行う。
事前に射場と何度かやっていたが、現役隊長、元隊長とこの練習を出来るのは非常にありがたい。
ただ、相手が強すぎるのではないかという疑問がある。
京楽と夜一は少し厳しいのではないか。
加えて、夜一は手足に謎の装甲をはめている。
「その道具・・・何ですか?」
「対鋼皮用の装甲じゃ。普通の死神を殴れば骨折は免れん!」
「物騒すぎません?」
決戦前に骨が折れたらたまったもんじゃない。
四番隊の実力者は伊江村三席しか今いないので、ここで大怪我なぞすれば向こうの負担も大きくなるだろう。というか、今怪我するのはアホだ。
「何を言う。おぬしが躱せばいい話じゃ。」
「いや、そういう問題じゃ「うじうじ文句を言うな馬鹿者!!」
「聞いてないよ!この人全く話聞くつもりない!!」
鉄裁と京楽は何も言わず、苦笑いしているだけ。意地でも通すつもりか。
「わかりました・・・。じゃあまず、京楽隊長からお願いします。」
「は~い、ヨロシク♡」
と京楽が言った時にはすでに目の前に彼の姿はない。
こういう時は背後を取られているのがお決まりのパターンだ。
京楽が振るう横薙ぎの刃から何とか斬られることは防いだ。
「こういう時、背後を気にするのは当たり前ですよ。」
「
(!!)
瞬時に鍔競り合いしていた刃を払い、距離を取る。
この行動を狙っていたのか。しかし何故。
「ボクが始解していたのは気付いていたでしょ?」
「・・・ええ。」
「ボクの能力は・・・そういや、伝えてなかったね。」
その言葉と共に隼人の服が作り出した影から刃を煌めかせる。
瞬歩を使い刃が身体に当たることは無かったが、死覇装は裾が破れてしまった。
ほんの少しでもタイミングが遅れていたら脚が斬られていた。
「へぇ~!!躱すねぇ~~!!!」
「影から斬魄刀が・・・。」
「呑気に分析するヒマ、無いんじゃない?」
着地しようとした途端、その場に生まれた影から再び刃の輝きを確認する。
(避けられない・・・!こんな時は!)
「縛道の七十九 九曜縛!!」
まさに影から隼人を貫こうとしている刃そのものに縛道をかけ、
京楽程の実力者のため、七十番台の縛道でやっと曲げることが出来た。
斬られることなく着地成功。
「破道で迎撃したら普通なら反鬼相殺されるからね。なかなか考えていると思うよ。」
「いきなり本気ですか・・・。」
そう呟き、隼人は上空へ飛び霊子の足場を作る。
ピンときた京楽は素直に賞賛の声を上げた。
「影鬼の弱点をすぐに見抜くとはねぇ。」
「地面にいなければ影を生み出す可能性は低くなります。だったら空にいればいい話ですよ。なるべく障害物の無いまっさらな空間にいれば、その影を扱う力は効果を引き出せないでしょう。」
「ヒュ~~♡さっすが。
「えっ・・・。」
京楽は影鬼の力を使わずに瞬歩で空中に向かい、相手の隼人と
「影を扱うだけが一隊長の能力なワケないじゃない。」
次の瞬間、霊圧で形成された線が二人の足元に浮かび上がる。
一輪の大きな菊の花の線が足の下に描かれている。
「これは一体・・・。」
「さぁ、何だろうね。敵が能力教えてくれるワケないでしょ。」
「わ、わかってます!!」
とにかく一旦距離を取るために瞬歩を使う。
しかし、
菊の形の線の上から出られなくなてしまった。
「線からはみ出ることが出来ないのか・・・!」
「線鬼。霊術院の頃友達とやったことあるでしょ。キミならこのヒントでどんな能力か分かる筈だよ。」
まさか、移動制限とはいえここまで強力な制限をかけられてしまうとは。
近接戦闘があまり得意では無いため距離をとりたいところだが、道筋が限られるため思い通りにいかない。
「無理矢理線から出ることも出来るよ。出たかったら出てもいいんだよ?」
「そう言うからにはとんでもないリスクが待っているんでしょうね!」
「当ったりぃ~~♡」
曰く、線から強引に出たら負けとなり、しばらくの間一切の力を封じられるらしい。
「まさかお花がこれを選ぶとはね。何、本気でいっちゃう?」などと斬魄刀と対話しているが、こちらは全く余裕が無い。
そして、今まで攻撃されっぱなしでそろそろこちらも攻勢に出たいところだ。
斬魄刀とお喋りしている今がチャンス。油断させる罠かもしれないけど。
「お喋りしている間に鬼道練っちゃいましたよ!!」
「え!!うそーーん!小休憩させてくれてもいいんじゃないの?」
「ダメです!こちらからも攻撃させて下さい!」
「
雷吼砲をアレンジした独自の技。隼人の周囲に四つの電気の球を生み出し、四つそれぞれが任意のタイミングかつ方向に雷のビームを放つことができる技だ。
上二つは京楽の体めがけて放ち、下二つは京楽が躱すと思われる位置に向けてビームを放つ。
手応えは無かったので、外してしまったか。
「中々にいい技だね・・・。危なかったよ。雷吼砲をこんな形にアレンジしちゃうなんて、頭がいいね。」
「全部鉄裁さんのおかげです。それに外しちゃいましたし。」
「何言ってんの。
(!)
桃色の派手な柄の羽織を脱ぎ普通の隊長羽織だけしか死覇装の上に着ていないが、地面に落ちた羽織を見ると大きな穴が開いていた。
「安物だからいいけど、気に入ってたんだよ?」
「えっすみません!!うわ~やっちゃった・・・。そんなお金払えねぇよ・・・。」
「まぁ別にいいんだけど・・・ねっ!!」
(!!)
線の外からの攻撃。
これも躱しはしたが、ギリギリだ。死覇装の右肩だけが切れてしまいベロンと肩だけはだけてしまった。
「あらら、隼人クンったら、セクシー。」
「しっ修行中に馬鹿にしないで下さい!そんなこと言ったら袖なしの拳西さんとかセクシーどころじゃありませんよ!もうモロ出しで卑猥じゃないですか!!」
「いや、キミ、何意味分からない事言ってるのかな・・・。」
実戦の途中で思考回路がおかしくなったのか、普段言わないような訳の分からない理論を正しいと思い込んでしまっている。腕を見せるだけで卑猥とか誰もそんなこと考えないだろ普通。
これも昔みたいに戻ったなら京楽としては嬉しいことだが、実戦の最中ではあまり宜しくない。
気付けば線は消えており、先ほどの技の効果は無くなったようだ。
「さっきの技、もう効果切ったんですね。」
「うん。お花の気まぐれだからね。キミはまだ隠し手があるのかい?」
「ありますよそりゃ。ずっと修行していますし・・・。京楽隊長こそまだまだありますよね。」
「そりゃあ隊長だからあるに決まっているでしょ。キミは何個あるのかい?」
「
そう言った途端、手に力を入れることが出来なくなった。
いや、正確には
「何ですか、これ・・・!!」
「指斬り。一回嘘をつけば指が動かなくなる。二回嘘をつけば全身麻痺、三回嘘をつけば・・・さて、どうなるかな。」
こうなってしまった以上、触れた物の転移をする技を使うことは出来ない。
指で何かに触れても全く感覚が無いのだ。
痛みは一切無いものの、指の骨全てが骨折しているかのようにプラプラと気持ち悪く動いている。
(これじゃ斬魄刀も掴めない・・・!!しばらく雷吼四陣で迎撃するしかないか・・・。)
鬼道主体だと弾幕を張ることが出来ないためその改善策として四つのビームを打つ鬼道にアレンジしたが、やはりそれでも足りない。
京楽から逃げながら一発一発打ち込む、同時に打ち込むなど工夫しているが、どうしても躱されてしまう。
結局防戦一方になってしまった。
一度地面に着地して態勢を立て直す。
「そういえば隼人クン、今でも七緒ちゃんのこと気になってるのかな?」
「えっ?何ですか急に・・・。」
急に脈絡のない話を持ち掛けられて面食らってしまう。だが、京楽の真意は別にあった。
「指斬り、まだ続いているよ。正直に言わないとね。」
(!!!!!)
さっきまでの真剣さと冷酷さを併せ持った顔ではなく完全にいつもの顔に戻っている。
というか、恋愛真っ盛りの年頃(自分で言うな)の青年におじさんが聞くべき話題じゃないだろ。
七緒のことは別に・・・別に・・・。
「・・・好きですよ。」
(!!!)
何故か京楽は物凄い驚いた顔をしている。
えっそんなに残念なの?いや、アンタは本気で七緒のこと好きなの!?
何というか、年の差的にアウトなのではと思わずにいられない。
だが、さらに京楽を安心させる事実を伝えた。
「友人としてですけどね。」
これも事実なので指斬りが発動することはない。
実際の事を言えば、友人として好きなのか、それとも恋愛感情を持っているのか、分かっていない。
どっちでもあってどっちでもないような、よく分からない感情を七緒には抱いている。
だから、真実でもあり嘘でもある『友人として好き』と京楽に伝えることにした。
指斬りが発動しなかったので、これが事実なのだろうか。
隼人の言葉を聞いた京楽は酷く安心しているようだった。
「いやァ~~~よかった~~。七緒ちゃんが取られたらボク一年は仕事出来ないよ・・・。」
「えっ長すぎないですか、本人の前で言ったらドン引きですよ。」
「そんなことないよ。きっと七緒ちゃんもボクの愛をいつか受け入れてくれるさ!あ、指斬りもう効果切れたから大丈夫だよ。指も動く筈だ。」
「あ、ホントだ。」
「はい、ボクとの戦いは終わり!!お疲れ様~~。」
「お、ああ、はい。お疲れ様です・・・。」
初めて京楽と戦ったが、あまりにも多彩な力を使うため非常に対応が大変だった。
一体どんな力なのか。
「あの・・・結局一体どんな力なんですか?」
「子どもの頃にやらなかったかい?鬼ごっことか。」
「夜一さんとやりました。」
「へぇ~捕まえるの大変だったでしょ。」
「儂が小童だった頃の隼坊に捕まるなどありえぬわ!」
しかし鬼ごっこが一体何の関係があるのか。線鬼とか影鬼とか言っていたが、指斬りとかもあった。
「子どもの遊びを現実にする。」
「子どもの遊びを・・・?」
「線の上で戦ったときあったでしょ。あれ、線から出たらダメってやつ。」
「あ、あぁ~~!!なるほど!!理解しました!」
「他にも高鬼とか艶鬼とかもあるよ。やってみるかい?」
「いえ、もう結構です。」
「儂と戦う前に疲れては困るからのう!」
いや、正直ヘトヘトだ。
副隊長と戦うのとは訳が違い過ぎる。こんなに切羽詰まった戦いになってしまうなんて、本当に隊長はすごい。
しかも、こちらは殆ど防御しか出来なかった。攻撃らしい攻撃は一切出来なかった。
悔しい。このままでは藍染に勝てない。
「一旦休憩しましょう。お疲れの状態で夜一殿と戦うのは危険です。」
「何!?大丈夫じゃテッサイ!!これぐらいどうってことない!」
「夜一殿・・・。貴殿の手足にはめている装甲をお忘れですか。危険です。口囃子殿が骨折してしまいますぞ。」
「むぅぅぅぅ~~!!仕方ない!昼飯の後じゃ!!それまでは我慢してやる!」
捨て台詞を吐いた後、夜一は修行場を出て行ってしまった。砕蜂を玩具にして遊ぶつもりでいるのだろう。説得した鉄裁に感謝である。
京楽だった場合、多分無理矢理意見を押し通されてしまった可能性がある。
休憩時間は修行場の温泉に向かい傷を癒すことに注力した。
後は鉄裁お手製の弁当を食べればそれで十分。
今回もエプロンを着替えているが、見ないフリをした。裸エプロンじゃないだけいい。
休憩している隼人と離れた所で、大人二人もお喋りしていた。
「そういえば隼人クン、隠し手あと一つって言って指斬り発動していたけど、まだたくさん隠し玉持っているのかい?」
「ええ。夜一殿との戦いで披露する手筈ですぞ。夜一殿はその術を存じております故、問題御座いません。」
「へぇ~・・・頑張っているんだね、隼人クン。」
「私ですら扱いきれない術を完成させました。素晴らしい才能の持ち主ですな。」
「
「ええ。」
二人の大人が微笑ましく見守る青年は、まだまだ成長し続ける。
線鬼はありそうで今まで原作で出てこなかったのが不思議でした。
やり方によってはかなり優位に立てそうな気がします・・・。
上手く書けただろうか・・・。