ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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浮竹十四郎

本匠千鶴にも分かるよう、尸魂界とは何か、死神とは何か、といった、霊術院一年で学ぶことを、記憶に残っている限り余すことなく現世の高校生四人に伝えた後。

彼らなりに情報を落とし込ませるため、一度隼人はその場からいなくなることにした。

 

そして、尸魂界からの総意として、力を持たない一護の友人達に謝罪をすることにした。

これは、京楽と浦原から頼まれたことだ。

口下手だが、伝わってくれるだろうか。

 

 

「一護くんの家族達の保護に行ってくるね。皆はここで待ってて。」

「はい・・・。」

「・・・ごめん。一護くんを勝手にこっちの問題に巻き込んで。本当なら、人間を巻き込むなんて絶対あってはならないんだけど・・・。まだ二十年も生きていない子どもに、世界の命運なんて重い枷を背負わせた僕達を、君達はいくらでも非難していいと思う。ごめんなさい・・・。」

 

 

頭を下げた隼人に対し、友人の一人、浅野啓吾は怒りを浮かべる。

 

 

「あんたらの勝手に一護を巻き込んで、俺達が平気でいられるとでも思ってんのかよ・・・。」

「思ってないよ。でも、君達に覚悟はしてほしい。一護くんが死ぬこと、そして、君達の誰かが今日死ぬことも、両方とも覚悟してほしい。・・・冷たい世界でごめん。」

 

 

我慢の限界を迎えた啓吾は隼人の胸倉を掴んでそのまま教室の壁に叩きつける。

それでも隼人は表情一つ変えず、それが怒りを増幅させてしまったらしい。

全部聞く覚悟は出来ていただろうが、あまりにも身勝手すぎる尸魂界のやり方には、やはり思うところがあったのだろう。

 

 

「ちょっと、ケイゴ!一回落ち着い――。」

「有沢はいいのかよ!!一護が勝手に得体の知れない奴らの戦いに巻き込まれて、勝手に死んぢまうことが許せるのかよ!!」

「そういう時あいつなら自分で落とし前つけるに決まってんだろ!!」

 

 

たつきの叫びに驚いた啓吾は、隼人の胸倉を掴む力を緩めた。

その緩みを見逃さなかったたつきは、かなり強い力で啓吾の頭を殴りつけた。

 

 

「あたしたちを巻き込んだ以上、一護なら絶対自分でなんとかする!!それぐらい分かるだろケイゴ。」

「痛って!!有沢お前ガチで殴んなよ・・・。」

「口囃子さん。」

 

 

目の前の目まぐるしい光景に少し呆けていた後、たつきから名前を呼ばれたことで正気に戻る。

彼女の目は強い意思を感じさせる、凛とした目をしていた。

 

 

「一護のヤツ、小さいころから何かある度に夏梨ちゃんと遊子ちゃんを護っていたんです。あいつ、護りたいって想いが小さいころから人一倍強いんですよ。それが、たとえこの世界だったとしても。」

 

 

「あいつなら、護り通すとあたしは信じています。」

 

 

少し遅れて水色も、「僕も信じています。」と告げた。「あぁっずるいぞ水色!!」とヤジを飛ばした後、えらくしおらしい様子で啓吾から謝罪の言葉がきた。

千鶴もあまりよく分かっていなさそうだったが、信じると言っていた。

 

まったく、何て一護はこんなにも素晴らしい友人に恵まれているんだ。

何としても彼らを護らねばならないと心を入れ直す。

 

 

「万が一藍染が来たら、僕が必ず君達を護る。絶対に、約束する。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ行ってくるね。食料は机の上の袋に入ってるから、腹減ったら食べていいよ。」

 

 

その場を後にした隼人は、また浦原が強制的に通信を繋いでいたのに気付かなかった。

 

 

「また勝手に繋いで「ありがとうございます。」

「え?」

「謝罪、本来ならアタシか総隊長サンがするべきなんでしょうが・・・。」

「・・・頼まれたからにはもうやりますよ。何とか上手くいったようでよかったですけど。」

 

 

一瞬間が空いたが、そこで浦原が微かな微笑みを浮かべていることは、カメラを繋いでいない通話越しでも分かった気がした。

 

 

「面倒事色々任せちゃって、スミマセン。」

「今更何ですか。指名されたからにはしっかり任務やり遂げますよ。」

「よろしくお願いします。」

 

 

少しヤケっぽく言ってしまったが、苦笑をこぼしつつ浦原から再びよろしく頼まれたので、また集中して任務に戻る。

 

黒崎一護の家に行き、家族が中で眠っているのを確認して結界を張るよう求められた。

浦原曰く、妹だけ家にいれば結界をかけて大丈夫らしい。

 

家に入ると彼女たちは床に倒れ込んでいたため、しっかり布団の上に運んであげた。

軽く回道をかけて、痛みが生まれそうな場所を癒すことも怠らない。

 

 

家全体に大規模な結界をかけている最中に、隼人はふと感じた疑問を浦原にぶつけた。

 

 

「あの、一護くんのお父さんは探さなくていいんですか?」

「ええ、()()()()()。」

「えっいや、あの「()()()()知る必要ないっス。」

 

 

ここで明確に言われたということは、決して伝えるつもりはないという拒否の意思を示されたということだ。

()()()()()()()という言葉からも、複雑な事情があることは理解できた。

深く知り過ぎた場合、一護が生きて、その目で見ている世界を脅かしかねないということだろうか。

 

未だに好奇心旺盛ではあるが、前より空気を読めるようになったため、今回も聞かないことにした。

意外と隠し事されやすいのだろうか。それはそれで複雑な心境だ。

 

 

「力仕事任せといて、隠し事ばっかで申し訳ないです。」

「僕が昔に色々あったのを一護くんとか部外者に知られたくないのと同じ・・・ってことでいいんですよね?知り過ぎることは、良くないですから。」

「・・・そっスね。」

 

 

電話で喋りながらも結界を完成させ、堅牢な盾を作り出すことが出来た。

藍染の力次第では一瞬で粉砕される可能性もあるが、無策よりはマシだ。

 

 

「あの、そういえば現世にいる人の家族って、どうしてるんですか?」

「茶渡サン、井上サンの両親は既に亡くなっています。黒崎サンと石田サンのお母さんもです。ちなみに石田サンのお父さんは今日偶然に学会があったので空座町にはいません。お医者さんも大変なんスよ?」

「いや、まあ四番隊の方を見てたら大変なのはわかりますよ・・・。っていうかお医者さんなんですね。一護くんの家も医院って書いてましたよ。」

「関わりあるみたいっスよ。」

「へぇ~。」

 

 

世間話っぽく話しているが、皆若くして親を失っているのは辛い事だろう。

自分の経験と同じで、他人事とは思えずにいる。

一体彼らはどんな思いをしていたのだろうか。

 

101年前心が壊れたあの日を思い出して心がきゅっと締め付けられたが、再び空座第一高等学校に戻って準備を再開した。

 

 

 

 

 

「待っていろ、吉良副隊長。」

 

「すぐに、終わらせる。」

「う・・・浮竹隊長・・・。」

 

 

しかし二人の注意は直ぐに目の前の怪物に向けられた。

 

 

「おおおおおおオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

獰猛な獣が放つ魂の叫びは空座町中に木霊し、最も離れた場所で戦っていた京楽達にも聞こえるほどの響きだ。

 

 

 

「何だいあれは?すんごい叫び声だねぇ。」

「知らねぇよ。どっかの女共が生み出した獣ってことしか。」

「そうかい。でも、」

 

 

「浮竹が出たからには、あの獣もただでは済まないだろうさ。」

「リリネットの相手してたあの優男か。霊圧みた限りではあんたと同じくらい末恐ろしい実力だってことは分かってたぜ。」

「ちょっとスターク!あたしを縛ってるヤツ切ってよ!ねえ!!聞いてんのスターク!!!」

 

 

締まるのか締まらないのか微妙な空間で、相対する二人の獣に立ち向かった男を評する意見は、完全に一致していた。

 

 

 

「オッ、オッ、オッ、オオオオオオアアアアアアアア!!!!!!!」

 

「そんな・・・あの状態でもまだ死なないのか・・・!」

「・・・仕置きが足りないようだな。」

 

まだ尚も叫び続ける怪物は、自身の出血した血を媒介に、超速再生を行い射場に斬られた右腕を治すどころか、巨大化させて、より異形の度合いを高めていた。

 

ギョロリと開いた目は黄色く、見るだけで吐き気を催すものであった。

それでも浮竹は全く動じない。

 

 

「あの日の虚を、思い出すな。」

 

 

雄叫びを上げて襲い掛かる怪物の速さは、先ほどよりも数倍速い。

握りつぶされ、殴られて肉塊になってもおかしくない。

 

しかし浮竹は、一瞬で怪物の右肩に移動し、肩に手をついていた。

 

 

「届いてないな。」

 

「破道の八十八 飛竜撃賊震天雷砲」

 

 

肩から胴を射抜き、先ほど胸に空けた穴よりもより大きな穴が怪物を貫く。

それでも獣は一向に止まらない。

首を強引に捻じ曲げて浮竹の方に口を向け、大口を開けて虚閃のエネルギーを溜める動作に入った。

 

 

「人を殺すことしか考えられない物の怪か・・・。」

 

 

「哀れだな。」

 

 

「お前には、刀を抜くのも愚かしい。」

 

 

 

「破道の九十三 炎閃(えんせん)

 

 

質量に関係なく触れた物を燃やし尽くす鬼道により、怪物は体組織含め全てが炎で燃やされる。

そしてその質量が大きい程、もちろん炎の威力が大きくなる。

火元は心臓であるため、避けることも出来ない。

相手に触れながらでないと発動不可能というリスクはあるものの、理性を失った怪物には十分な効果を発揮した。

 

雄叫びをあげる怪物はのたうち回り、周りの建物に火が燃え移る。

それも見越した浮竹は、未だ怪物を見て哀れみの視線を向けた。

 

 

「止せ。哀れなお前が暴れるせいで、倒れた隊士にも被害が及ぶ。」

 

 

その言葉を聞いたかどうか、そもそも聴覚を持っているのかすら分からないが、業火で燃えた身体のまま雄叫びを上げ、再度浮竹に襲い掛かった。

 

 

「止せと言うのが、分からないのか。」

 

 

「縛道の九十 深水縛(しんすいばく)

 

 

まさに怪物の燃えた手が浮竹を捕らえようとしたところで、炎とは真逆の水の障壁で防がれてしまい、怪物の手は浮竹には届かない。

 

黒棺のような直方体の水の壁は、囲った内側と周囲に存在する大量の水蒸気を一瞬で全て液体に状態変化させる。

水で埋め尽くされ溺れたまま閉じ込められた怪物は、何度も壁を殴っているが、身体が燃え、重大なダメージを受けて弱くなった力ではどうすることもできない。

 

そして怪物は周囲の変化に全く気付くことなく短い命を終えることとなった。

 

 

「深海の水圧など、いくらお前でも耐えられる筈はない。」

 

 

水圧の中で圧し潰された怪物は、見るも無残な亡骸を残して再び襲い掛かることはなかった。

鬼道を解くことで、ついでに周囲の消火作業も行えて一石二鳥だ。

 

 

「檜佐木副隊長と雛森副隊長の治療を頼む。」

「・・・了解しました。」

「さてと、京楽の元に戻――――!!」

 

 

次の瞬間、三名の女性破面が浮竹に隻腕で襲い掛かった。

 

 

「さっきの怪物も、両手で襲い掛かったんだけどなぁ・・・。」

 

 

「破道の八十九 磁鉄抄(じてつしょう)

 

 

瓦礫、地中から磁力で砂鉄を呼び起こし、超振動で三名の破面を斬りつけて一網打尽にした。

鋼皮を簡単に貫くほどの力は、並外れた霊圧も持つ年長者の隊長や、鬼道のスペシャリストである鉄裁やハッチ、隼人などしか出来ない。

 

 

「があっ・・・。」「く、そっ・・・!」

 

 

三名の破面はなす術もなく倒れてしまった。

やっとの思いで浮竹はホッと一息ついた。

 

 

「ふぅ・・・何とかなったな!」

「浮竹隊長・・・ありがとうございます。」

「何、あの怪物は副隊長には荷が重い。元柳斎殿の足を動かさなかっただけでもよしとしようではないか!」

「はぁ・・・。」

「それじゃあ俺は稽古をつけないといけないから、檜佐木副隊長達の治療を頼む。じゃあな。」

「え、あ、浮竹隊長!!」

 

 

 

「・・・稽古って、破面相手に何やってるんだろう・・・。」

 

 

吉良の頭に1つの気になる疑問を残しつつ、浮竹は京楽の元に向かった。

 

 

「おかえり浮竹。ボク達暫く休戦してずっと浮竹の戦い見てたよ。」

「あんたすげぇな。全く剣抜かずに術だけであの獣をのしちまうなんてよ。」

「何二人とも呑気に戦い見物してんだよ!!つーかスターク!!あたしを縛ってるやつ早く解いてよ!!」

 

 

「お前たちは一体何をやっていたんだ・・・。」

 

 

浮竹の呆れは二人には全く届いておらず、稽古をつけていた少女に同情してしまう程であった。

 




オリジナル鬼道を三つ作りました。
縛道の九十 深水縛(しんすいばく)
これは、黒棺のような直方体で敵を囲い、水圧で敵を圧し潰す封殺型の縛道です。
やろうと思えば超深海層の水圧で圧し潰すこともできます。浮竹はそこまでの力を使うまでもなくアヨンを圧し潰しました。

破道の八十九 磁鉄抄(じてつしょう)
単純に、磁力を扱う鬼道ですが、汎用性と応用力があまりにも高く扱いきるには相当な腕前が必要・・・といった鬼道です。破道なのに縛道としても使えたり、歩法の補助に使用したり、など、何でもござれの鬼道です。浮竹は磁力で地中と瓦礫の中から砂鉄を呼び起こし、超振動でチェーンソーのように震える砂鉄を周囲に展開してアパッチ達を撃退しました。

破道の九十三 炎閃(えんせん)
これは本文中で説明しているのでここでは割愛します。
一刀火葬に近い鬼道であり、別の意味でリスクを負った犠牲破道と言えるかもしれませんね。

浮竹さんはワンダーワイスに刺された後特に出番もなく、千年血戦篇では神掛でグロテスクな死を迎えるというなかなかに残念な立ち位置に見えたので、総隊長のお手を煩わせないようにという名目で参戦させました。総隊長、殆ど戦わなさそうだ・・・。

あと本当にどうでもいいことですが、最初は石田パパも主人公と共闘させようかと考えていました。藍染に「純血統(エヒト)滅却師か。久し振りに見たな。逃げてきた一族が何故ここにいる?」的なことを言わせるためだけに出そうとしていました。石田パパが死神に簡単に協力するのが想像つかなかったのでやめましたが。

むしろ原作であの時石田パパ何やってたんですかね・・・。
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