ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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空座第一高等学校に戻ると、駐在任務についていた死神が目を覚ましたところだった。

 

 

「こっ口囃子三席!!!何故ここにいらっしゃるのでしょうか!!」

「起きたんだ、ボンバーマン。」

「ぼっボンバーマン!?!?イモ山さん以上の蔑称じゃないですか!!」

 

 

何かうるさいので関わるのもイヤになってきた。

昔の自分を棚によけ、彼には適当にどっか行ってもらおう。

 

 

「えーーっと、貴方は第二高校の守備について下さい。何かあったら、現世の人間の保護もお願いします。」

「了解しましたーーーー!!!!!」

 

 

瞬歩で駆けて行った彼を笑顔で見送り、安心して続きの準備を行うことが出来た。

 

(ごめんね・・・そこには、何もないんだ。)

 

 

出オチのボンバーマンが第二高校に向かっている最中に、隼人は体育館に行って、複雑な配線の中心地にある機械に電源を点ける。

 

俗にいう『ぱそこん』という機械だ。

前に編集作業で使っていた修兵が持っており興味を抱いたので、簡単な使い方は教えてもらっていた。

忘れた部分などは電話越しに浦原からも操作法を教えてもらいつつ、目的の画面に辿り着くことが出来た。

 

 

空座町全域の監視カメラを繋ぎ、特定の霊圧を発見すれば反応する仕組みとなっている。

元々ある監視カメラ以外にも録霊蟲をばらまいたことで死角を無くし、完璧な監視体制を作ることが出来た。

 

(全部見れる・・・大丈夫そうだな・・・。)

 

数秒おきに変わる画面は、先ほど見た空座町と何の変化もない。

何故ここまで監視体制を築いたかというと、一つの理由がある。

 

 

鏡花水月は、人間の感覚全てに影響を及ぼすもの。

 

 

言い換えれば、()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 

直接相対すれば藍染によって新たに鏡花水月の力を使われてしまうが、藍染の居場所を遠隔地で確認しつつ現世の人間を護り抜くことは、出来なくはないと考えていた。

 

殺しはせず、止めるだけ。それなら何とかなるかもしれない。

自分が止めている間に誰かが助けにくるかもしれない。ひょっとしたら零番隊でも来るかもしれない。

 

希望的観測であり、何度も祈っているが、本当にそうあってほしいものだ。

藍染を殺すなんてそんな荷が重いことは、実力差的に自分には出来ない。

 

映像を観ていると、音楽室にいた四人の高校生がこちらにやってきた。

 

 

「口囃子さん、何これ?」

「何って、監視カメラだけど・・・。知らないの?」

「いや知ってるけどよ・・・。空からの映像もあってすげーなーって思っただけだよ。」

 

 

確かに普通の監視カメラならせいぜい地面や建物を映す程度のものだが、浦原特製の監視システムでは、空撮映像もあるため、新鮮に映ったようだ。

千鶴とたつきも見入っていた。

 

 

「これも尸魂界が仕込んだんですか?」

「あーーうん。まあ、そんな感じかな。」

「おっ俺の家見つけたぜ水色!!ほらほら!!!」

「そんな未就学児みたいな喜び方しないでくれますか浅野さーん。」

「敬語の上に苗字呼び!?」

「けいごだけに?」

「うまい!!って、そういうことじゃないっすよ口囃子さん!!!」

 

 

一護がいないとここでも俺ツッコミポジションかよ!?と不服そうな啓吾は置いといて、とりあえずシステムは完成させることが出来た。

浦原から再びちゃんとした形で電話が掛かってきたため、高校生達から距離を取って電話に出る。

 

 

「もしもし。とりあえずさっき教えられた通りにやったらうまくいきましたが、何か不都合でもあったのですか?」

『現世での戦況の報告をします。落ち着いて聞いて下さい。』

 

 

改まった様子でいるということは、つまり押されているのだろうか。

その予感は見事に的中することとなった。

 

 

『前線に出ている副隊長では、二番隊の大前田サン以外は皆やられました。』

(!!)

 

 

大前田以外ならば、射場と修兵もやられたことになる。ずっと修行してきたはずだが、それすらも上回る破面達の恐ろしさを改めて実感する。

 

 

『現在吉良サンが五、七、八、九番隊の副隊長の治療を行っています。日番谷サンは十刃の三番(トレス)と、二番隊の二人は二番(セグンダ)と、京楽サンと浮竹サンは一番(プリメーラ)と戦っています。』

 

 

ならまだ藍染本人は行動に移していないということだ。

色々あったが霊圧はずっと読んでいて、その波も殆ど無いので正しいだろう。

だが気になることがあった。

 

 

「どれぐらいの長さ戦っておられるんでしょうか?」

『・・・かなり長期戦っスね。膠着してます。』

「マジですか・・・大丈夫かな・・・。」

 

 

だが、その隼人の言葉と同時に向こうでも大きな動きがあったみたいだ。

鉄裁の「店長!!!」という叫び声が電話越しにも聞こえてきた。

浦原は通信機器を置いて行って鉄裁の元に向かったため、何を喋っているのかは分からなかったが、隼人にとって衝撃的な知らせが来た。

 

 

『アタシもそろそろ出る準備をします。申し訳ありませんがこれが最後の通話になります。』

「はっ!?あの、一体何が・・・。」

『浮竹サンと京楽サンがやられました。』

(!)

 

 

あの二人がやられた。

今空座町にいる戦力で総隊長の次に強い京楽と浮竹がやられたとしたら、かなりのピンチだ。

 

離れていた高校生達もこちらを見て心配そうにしていたため、何とか取り繕うが、ちゃんと説明すべきだろう。

その困惑っぷりを電話口でも感じ取った浦原は、先ほどの声音を変え、平常の能天気な声に戻った。

 

 

『大丈夫っスよ!!京楽サンと浮竹サンが強いのはアナタの方がわかってらっしゃるじゃないですか!』

「そうですけど・・・、あの、これが最後の通話になると言われると急に不安になって・・・。」

『ここからはアナタのやりたいようにやって下さい。だーいじょーうぶ!!アナタの力があれば、藍染を足止めできると思います。』

 

 

『ご武運、祈ってます。』

 

 

その言葉を最後に、浦原との通信は切れてしまった。

 

 

「ごめんなさい、口囃子サン。・・・こんな辛いこと、一人で任せてしまって・・・。」

「はっ!おぬしが頼み込んどいて何を言っとるんじゃ。」

「・・・手厳しいっスね、夜一サンは。行きましょう、夜一サン。一心サン。」

「おう。」「ああ。」

 

 

現世の方の浦原商店であらゆる準備を行っていた彼らは、遂に戦闘に参加することになる。

 

 

一方的に電話を切られてしまった後、隼人は何度電話をかけても浦原とは繋がらず、精神的な支柱を失ったような気がして、一気に不安の渦に陥ることとなった。

 

今更になって気付いたが、空座町に来てからあれだけずっと何回も電話していたからか、ずっと浦原がついてくれるものだと勘違いしていた。

戦いながら電話なんて出来るわけがない。浦原の存在に完全に甘えていた。

 

むしろ、本来の不安定な状況に戻ったと考えればいいのだろうか。

京楽と浮竹がやられたという情報も、不安に拍車をかけていた。

この戦いで隊長格の誰かが死んでしまうのだろうか。

 

一度体育館から外にでて一人になったが、不安は募るばかり。

悪循環だ。

こうなったら皆と話していた方がいいと考え直し、監視カメラの映像に夢中になっている一護の友人達の元へ気を取り直して戻ることにした。

 

 

「口囃子さん。何か向こうであったんですか?さっき焦ってたみたいですけど。」

「いやぁ何でも。大丈夫大丈夫。」

 

 

たつきに尋ねられてしまい、こういう時に取り繕うのはあまり上手いとは言えない方だが、察した水色が関心をパソコンに戻そうとしてくれたみたいで助かった。

現世の高校生の暇つぶしになるようなソフトも浦原の取り計らいで入れてくれたらしい。

 

 

「映画とかゲームも入ってるみたいだね、このパソコン。」

「うわっこれ!名探偵ヘボンの去年の劇場版じゃん!俺去年見逃したんだよなーー!観よーーぜ!!!」

「えっ!!石黒さん主役のやつ!?あたしあの人大好きなんだ~!!」

 

 

啓吾と千鶴が乗っかり、たつきも仕方ないという表情で体育館では高校生四人がプロジェクターを使って中々のスケールで映画鑑賞を行おうとしているようだ。

 

 

「口囃子さんも観ますか?」

「いや、今度現世に行った時にでも見るよ。水入らずの友達で映画観た方が楽しいだろ。」

 

 

たつきに誘われたが、高校生四人の中一緒に会ったばかりの自分が映画を観るのも正直気まずい話だ。

体育館のカーテン全てを一人で猛ダッシュしながら閉めていた啓吾は持ち前のバイタリティでカーテン全てを閉めきった。恐ろしい執念だ。

 

機を見計らい外に出て空座町の巡回を行う。

 

 

結局一人になってしまい、やはり不安を感じずにはいられないが、こうなったらこの不安と付き合っていこう。

たった一日の不安ぐらいどうってことはない。

 

それに、今だけでも一護の友人達には平穏な時を過ごしてほしいと考えていた。

最悪の場合、彼らは命を狙われ、殺されてしまうかもしれない。

惨い話だが、これから訪れる死の恐怖の前に、彼らが一度でも心を落ち着けて映画で笑ったりしてくれるなら、絶対にその方がいい。

 

そんな最悪のシナリオを避けるためにも、巡回と同時に何らかの対策の糸口になるかもしれないと考え、浦原に言われたように藍染の霊圧を絶えず読み続けていた。

 

そして、現世の空座町に向かっている浦原達と同じような集団は、もう一つ存在した。

 

 

 

 

「ねえラヴ、ここ何回通った?」

「・・・4回目だな。」

「ひよ里オマエ何で喜助から入り口聞き忘れとんねんドアホ!!!」

「やかましいハゲが!!浦原の奴がウチにわからん専門用語ばっか言うのが悪いんや!!」

 

 

仮面の軍勢(ヴァイザード)達は今まさに101年越しの復讐のため、空座決戦に乱入しようとしていたが、ひよ里の落ち度でどこから入ればいいのか分からず町の周りを何度もグルグルと徘徊している状態になっていた。

いつものような平子とひよ里の漫才じみた喧嘩が耳をつんざく。

 

だが、騒ぐ連中がいれば、静かな連中もいた。

 

 

「けーーんせーーー!!ベリたんいるかな?」

「虚圏に行ったならまだ来てねぇだろ。」

「じゃあ、はやちん、いるかな?」

 

 

白の問いに拳西は暫し押し黙った後、複雑な心境を口にした。

 

 

「・・・今更アイツにどのツラ下げて会うんだよ。」

「そのままの顔でいーじゃん!リサはどう思う?」

 

 

白の問いに、リサも暫し押し黙ってしまう。

 

 

「・・・何でもええやろ。」

「何か今日二人とも冷たくなーい!?」

「まぁまぁ白サン、お二人にはお二人なりの考えがありマスから。」

 

 

ハッチの仲裁で白はそれ以上追及することはなかったが、護廷十三隊在籍時に強い関わりを持っていた死神がいる二人は、他の仮面の軍勢達とは少し違う思いで空座町に来ている。

 

特に拳西は、その相手に殴られても仕方がないとすら考えていた。

自分の都合で流魂街にいた子どもを拾い、そいつに遠慮するな、信頼しろ、などと言って親のように振る舞っといて、さよならも言わずに突然現世に自分だけ逃亡して子どもの隼人を置いていってしまった。

 

最低な親だと何度も自己批判した。

夢で何度も隼人に非難された。

 

藍染にやられるなんて情けない。今の僕がどんな辛い思いをしているのかあんたにわかる筈がない。あんたが親だったなんて恥でしかない。

 

お前なんか親じゃない。

 

そう叫ぶ夢の中の隼人は、いつも号泣していた。

霊術院の制服を着て肩に浅打を掛けた隼人は、夢の中でいつも一人ぼっちだった。

誰も救いの手を差し伸べず、拳西が話しかけても聞こえないのか、声を上げて泣いたままだった。

 

己が虚化してしまったせいで、大切に育ててきた子どもを101年もの間孤独にしてしまった。

夜一から聞いた話では、あの事件以来隼人はまるっきり性格が変わってしまい、塞ぎ込むようになってしまったという。

何度も辛そうな顔をしていたと聞き、己の不甲斐なさに歯痒い思いをした。

 

感動の再会になるんじゃないとローズに言われたが、そんな訳ない。

殴られ、非難されても甘んじて受け入れよう。

その上で、らしくない謝罪でもするか。

 

他の者とは僅かに違う気持ちを抱き、拳西は空座町までの道のりを歩いていた。

 

 

それからしばらく歩き、ラブがとある死神を発見したことでついに空座町に入る糸口が見つかった。

 

「お、だれか死神がいるぞ?」

「あれは・・・一番隊の雀部さんじゃないかな?」

「お変わりないようデスね。」

「あの人なら話すれば入れてくれるやろ。」

 

 

「護廷十三隊も、大分押されてもうてるみたいやしなァ。」

 

 

平子の一言で、八人全員の気が再び張り詰め、ピンと引き締まる。

 

 

101年越しの復讐のため、突然の来客が空座決戦に介入する。

 

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