ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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少し時は戻ります。


劣勢

日番谷の卍解を見た後に、京楽達の卍解を見たいという理由で、第一十刃(プリメーラ・エスパーダ)であるコヨーテ・スタークは帰刃(レスレクシオン)して京楽を追い詰める。

 

そして、彼の帰刃にリリネットが関わっていたため、浮竹も始解して参戦することとなった。

 

信じられない物量を誇るスタークの虚閃を、浮竹は全て吸収しつつ反射する。

 

 

「あんたの見た目に合わない随分と性悪な力だな。」

「そうか、俺はそんなに性格が良く見えるのか!」

「・・・・・・天然なのか?それとも、すっとぼけたフリ、してるのかねぇ。」

 

 

言葉の落ち着きとは反対に、スタークは自身の拳銃から虚閃を数十発連射する。

先ほどの虚閃とは比べ物にならない程のさらに濃密な虚閃が浮竹に襲い掛かる。

 

 

「力比べか。あいにく俺は、霊圧では誰にも負けないぞ。」

 

 

双魚理の切っ先を虚閃に向け、スターク渾身の一撃を全て吸収した。

これにはスタークも動揺を隠せずにいた。

 

(おいおい!あんなナリして化け物かよ・・・!)

 

 

さらに浮竹は反射した虚閃の速度を緩めて詠唱の隙を作り、鬼道で追撃をかける。

 

 

「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ」

 

「破道の九十一 千手皎天汰炮!!」

 

 

虚閃の速度を下げ、鬼道の矢の速度を限界まで速めた結果、スタークを惑わせることに成功した。

スタークが虚閃を打ち込んでも、()()()()()複数本ある矢全てを打ち消すには時間が無い。

 

 

「ちっ!やっぱあんた、誰よりも狡猾な死神だな!!」

「ボクを忘れてないかい?」

(!)

 

 

味方があれほどの鬼道を打ち込んだ先に向かうなど普通なら自殺行為だ。

京楽の目的は一つ。挟み撃ちしつつ浮竹の放つ鬼道を相殺すること。

単純な戦法だが、一発一発虚閃を撃っていては間に合わない。

 

 

「破道の九十一 千手皎天汰炮」

「あんたもその厄介な術使えるのかよ!」

 

 

鬼道の矢で作られた弾幕に挟まれ逃げ場はない。

二対一だからこそ取ることの出来た戦法だ。

捨て身の攻撃に思わせといて、決して捨て身ではない攻撃をする。

この連携で少しはダメージを与えられるかと思ったが。

 

 

無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)

 

 

二丁拳銃を矢の方へ向けて、片手それぞれから虚閃を千発以上連射する。

いくら実力者の鬼道とはいえども、単純な物量差でスタークの虚閃に軍配は上がる。

それどころか、京楽と浮竹にまで余裕で届き、威力も今までの虚閃とは比較にならないものと二人は瞬時に理解し、最大限の瞬歩で躱すことにした。

 

京楽が浮竹の隣に戻り、態勢を立て直す。

 

 

「とんでもない隠し玉だねぇ。羽織の裾破けちゃったよ。」

「俺の双魚理で吸収しきれるだろうか・・・。」

「無茶はするもんじゃないよ浮竹。」

 

 

それは、浮竹の体調を気遣っている思いもあったが、敵が同じ規模の更なる隠し玉を同時に放ってきた場合二人揃ってお陀仏になってしまいかねないため、ここでの力比べは得策ではないと京楽は読んだ。

 

落ち着きを払うスタークは、先ほどの気怠げな様子ではなく、帰刃してまで二人を追い詰めている。その意図は、卍解であった。

 

 

「今の虚閃に躱すことしかできなかったあんた達は、卍解するしかないんじゃないの?」

「・・・さっきも言ってたけど、そんなにボク達の卍解見たいの?」

「解放してから戦ってみて、よりあんた達の卍解が見たくなった。俺の見立てでは、あんた達はあの氷を使う隊長よりもかなり強い。そのあんた達の卍解がどんな恐ろしい物か、興味が出ないワケないだろ。」

「どうしよっかなーー・・・・・・。」

 

 

率直な意見を述べたにすぎず挑発ともとれない微妙な挑発であったが、浮竹は飄々としたいつも通りの京楽を今回ばかりはしっかりと窘める。

それ程に京楽の卍解は凶悪な性能のものであると、長年の付き合いである浮竹は知っていたからだ。

 

 

「止めておけ。ここで奥の手を使えば、後の戦いに良くない。」

「いやいや、ボクが卍解してサクッと倒したほうが良くない?」

「いや、止せ、京楽。」

 

 

「お前の卍解は、こんな人目につく場所で使うもんじゃない。」

「・・・・・・・・・。」

 

 

一瞬にして京楽の纏う霊圧が変化したが、それは浮竹にしか気付かない程度の僅かな変化であった。

 

 

「それにこの手の敵は、俺の能力の方が上手くやれるさ。」

「・・・そこまで言われちゃ、しょうがないね。」

 

 

今までとは違い、次からは浮竹が前に出る。

 

 

「今度はあんたか。術だけであの化けモン倒しちゃうなら、あんたも同じ化け物だしな。」

 

 

「遠慮はなしで行くぜ。」

 

 

言葉の途中から虚閃を打ち始めて浮竹の動きを攪乱させつつ、すぐに千発の虚閃を打ち込む。

スタークが扱いきれる最高速度で放たれた最初の虚閃は一切の予備動作無しで打ったため、浮竹の構えの動作すら間に合わない。

 

 

無限装弾虚(セロ・メトラジェ)・・・」

 

「だぁ       るま

       さん            が

                            こぉ      ろん」

 

 

「だっ」

(!!)

 

 

先ほどの矢で挟み撃ちされかけた時とは、()()()()()()()()()()でスタークは背後を取られた。

だが、さっきまで京楽は浮竹の隣にいた。というより、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

瞬歩とは全く違う移動術を目の当たりにし、一瞬であるが硬直してしまう。

 

その硬直を二人とも見逃す筈がない。

 

 

背後に立った京楽は横に刀を斬り払い、浮竹はスタークの虚閃を躱しつつ磁力を扱う鬼道を用いてスタークの斬魄刀ともいえる拳銃の金属部分と自身の斬魄刀を繋ぎ、完全に動きを止める。

かなりの遠距離にもかかわらず自身の行動に干渉されたスタークは、先ほど動きを止めてしまったことを恨みつつ、浮竹の力の恐ろしさに慄く。

 

 

戦い初めて暫く経ったが、ようやく一太刀浴びせることができた。

 

 

「ちっ・・・やっぱ、二対一はきついな・・・。」

【何ボーっとしてたんだよスターク!斬られてんじゃん!!】

「お前も動き止められてただろうが。ったく、何で卍解しないでこんなに強いヤツらと当たっちまったんだかねぇ・・・。」

 

 

奇遇ではあるが、口囃子隼人と同じ感想をスタークは呟く。

京楽の変幻自在な術も十分に厄介だが、スタークの目では浮竹の方が厄介に映っていた。

無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)を全て躱しているが、浮竹の群を抜いた霊圧量を見るに、恐らく()()()()()()()()()()()

 

それが出来なかったらこのままの姿でも勝ち目はあるが、最悪奥の手を使うしかないとスタークも半ば覚悟を決めつつあった。

 

 

「あれだけやって、やっと一太刀かい。」

「強いな・・・。」

 

 

京楽が腰のあたりに横一閃で斬りつけ、ダメージを与えることが出来たが、相手の戦闘力、洞察力、戦闘における柔軟性が高すぎて、やっとの思いの一太刀であった。

その傷も、決して大きいとはいえない。

 

平気な様子でリリネットと喋っているので、まだまだ余裕で戦えるだろう。

 

 

「こっちはこんなに力使ってるっていうのに・・・。ボクなんか羽織置いてるんだよ?」

「隊長羽織は着ているだろ。何だ、もう疲れたのか?」

「七緒ちゃんの膝枕が欲しいくらいにはね。」

「何だそうか。なら、まだまだ大丈夫だな。」

 

 

えっちょっと、酷くない!?という京楽のヤジを適当にいなしつつ、浮竹は再び鬼道を練る。

 

 

「動きを止めるぞ。俺が隙を作るからお前が再び斬れ。」

「参ったね・・・。ボクもまだまだ戦わないといけないか。」

「ああ。」

 

 

両手を前に突き出し、術名を唱える。

それに合わせ京楽はスタークの霊覚を惑わせ、更なる太刀で攻撃しようと試みたが。

 

「縛道の七十九 九曜(しば)・・・」

(((!)))

 

 

突然ある気配を感じ、三人とも戦闘を止める。

それは、藍染が尸魂界を離反した際の雰囲気にえらく酷似していた。

 

黒腔が開く気配。大虚の気配。

京楽や浮竹だけではなく、スタークすらも驚いていた。

 

 

「・・・新手か・・・!?」

「十刃頭三人に加勢できるような破面が、まだ居るってのかい・・・。それとも、」

 

「何か別のモノが来るのかい?考えたくないねぇ・・・。」

 

 

そこから現れたのは、未成熟ともいえるような見た目の破面であった。

言葉を発することも出来ず、ただ呻ることしかしない。

不気味な見た目の少年は、目の焦点が存在せず、ただただ虚ろな表情をしている。

 

 

「子どもか・・・?それにしては、さっきの女の子とは雰囲気も霊圧も全く違う・・・。」

「・・・得体の知れないのが出てきたねぇ・・・。」

 

「・・・ワンダーワイス・・・。」

 

 

スタークが呟いた名前を聞いて、前に隼人からこの破面について聞いたことがあったのを思い出した。

現世に来た時も死神には殆ど関心を示さず、虫を追いかけていた未発達の破面だと思われると言っていた。

だが、今ここにいる破面は、決して未発達ではない。

言語や思考は扱いきれていないように見えるが、霊圧量は十刃級のものだ。

むしろ、脳の発達を犠牲にした人間兵器と見るべきか。

皆それぞれの敵にかかりきりの中で、この破面にまで対処することは厳しい。

 

 

「隼人クンの情報に比べると、霊圧量が段違いだね・・・。」

「彼が嘘を伝えるわけはない。以前観測してから今日までの短い期間でそれだけ成長したということだろう。」

「全くだよ。それに、ホラ。」

 

 

京楽が刀で指し示した破面の後ろには、先ほど浮竹が倒したものとは全く違う異形の怪物が姿を現していた。

力の塊のようなさっきの怪物とは違い、()()()()()()怪物に見える。

さっきの怪物とは桁違いの大きさにもかかわらず、霊圧はこの場にいる誰よりも小さなものだ。

 

青みがかったその怪物は、偶然にも先ほどの混獣神・アヨンと全く同じ色の眼をしていた。

その眼を見た狛村は、藍染が離反した日に黒腔からこちらを覗き込んでいた異形を思い出していた。

 

(そろそろ儂も出る必要があるか・・・。しかし、結界の守護とどちらをとるべきか・・・。)

 

護廷十三隊全員、そして破面もその動向を注視していた。

 

 

「あれはあの日の奴か・・・?」

「さぁね。でも何はともあれ警戒する必要は・・・。」

 

 

京楽が瞬きをして目を開けたその瞬間。

 

 

目の前にいた浮竹は、子どもの破面に背後から腹を突かれていた。

 

 

「なっ・・・!!」

(!!!)

 

 

瞬きよりも速い速度で距離を詰め、背後をとって攻撃するなど今まで戦っていた十刃ですら出来ないと思われる。

スタークも驚きの表情を見せた。

思考を失い戦闘能力に特化した兵器になった破面は、少しの油断はあったとはいえ浮竹をも出し抜く程の力だった。

 

 

「浮竹!!!」

「浮竹隊長!まじかよ!!」

 

 

砕蜂ですら反応が遅れた速度に、二番隊の二人も戦慄を覚える。

ワンダーワイスは浮竹の腹を貫通した腕を引き抜いた後、髪を掴んで首を捻ろうとする。

 

浮竹の命の危機を本能で感じた京楽は迷わず、目の前の獲物に執心深い破面の背中に己の斬魄刀を突き刺そうとした。

 

しかし、本来の敵の存在を忘れてしまっていた。

 

背中に拳銃を突き立てられたときは、もう遅かった。

千発の虚閃を背中に浴び、浮竹ほどではないが京楽も深手を負い一時的に戦闘不能になってしまった。

 

 

「仲間がやられて顔色変えちまうなんてあんたらしくないな。呆気ねぇ。悪いが藍染サマはもう待てなくなっちまったようだ。」

 

ワンダーワイス(こいつ)が出てきたからな。」

 

 

ワンダーワイスの叫びと共に、巨大な怪物――フーラーは、口のような穴から息を吹き出して流刃若火の火をかき消す。

 

それは、藍染ら元隊長格の攻勢が始まるということ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()護廷十三隊に、彼らと渡り合うことなど不可能にも等しい。

 

死を司る死神達に、全ての終わりと共に明確な死への恐怖が駆け巡る。

四人の副隊長と二人の隊長が戦闘不能になり、動ける者の残りは決して浅くはない傷を負っている二番隊、霊力の消耗が激しい十番隊隊長。万全の状態であるのは、総隊長と七番隊隊長しかいない。

 

たった一人で治療を行っていた吉良は、絶望の淵に立たされていることを嫌でも実感してしまった。

 

「あ・・・ああああ・・・・・・!!!!終わりだ・・・・・・!!本当にもう・・・終わりだ・・・・・・!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「待てや。」

 

 

突然、馴染みのない声が響き渡った。

動ける者は皆、声の方向へ目を向ける。

彼らを目にした瞬間、総隊長、砕蜂、狛村は驚愕の表情を浮かべて言葉を詰まらせる。

日番谷、大前田、吉良は、訝し気な表情をしながら初めて見る顔の人物に困惑を隠せずにいる。

 

 

「ようやく、来たみたいだね・・・。」

 

 

倒れ込んだまま空を見上げた京楽は、懐かしい顔ぶれの到来に待ち焦がれた思いを呟いた。

 

 

「皆、元気そうでよかった・・・。」

 

 

仮面の軍勢(ヴァイザード)

 

101年前に藍染の計略によって残虐な虚化実験に巻き込まれ、現世に身を潜めざるをえなくなった元死神達。

 

 

「久し振りやなァ。藍染。」

 

 

彼らの乱入により、戦場は再び混迷を極めることとなる。

 

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