ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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救援

駆けつけた一護は藍染の刃から千鶴を護り、意識を失った彼女を安全な場所へ寝かせた。

 

そして一護は、藍染の凶刃によって倒れた隼人に吉報を届ける。

 

 

「口囃子さん。待ってろ・・・。今救けが来る。霊圧を感じるんだ。他にも色んな奴があんたを治療しに来る。だから、あと少し頑張れ。」

 

 

うつ伏せに倒れ込んだ隼人に、意識の有無関係無しに語り掛ける。

返事は無かったのでもう意識は無いのだろう。

 

そして壁に体を凭れかけて寝かせた父親にもお礼を言った。

 

 

「・・・ありがとな・・・親父。」

 

 

一護は再び、藍染へと意識を向ける。

 

 

一方、一護の伸びた髪と身長を見た友人達は、目の前の男が本当に黒崎一護なのか判断に苦しんでいた。

必死の思いで顔を上げた啓吾とたつきは、困惑の目で一護を見つめる。

 

まず一護は、家族の無事を確認する。

霊圧はしっかりと存在し、自宅で眠っていることすらも解った。

そして、その場にいた友人達にも声をかけた。

 

 

「・・・たつき、ケイゴ、水色、観音寺。・・・・・・みんな、そこに居てくれ。そのまま、じっとしててくれ。」

「どういう意味だよ・・・?・・・一護・・・。」

 

 

水色は、立ち尽くす二人の明確な違いに違和感を抱いていた。

 

 

(一護からは・・・何も感じない・・・。藍染からは押し潰される程の力を感じるのに・・・。)

 

 

(何で、何も感じないんだ・・・?)

 

 

それは、藍染も同じであった。

 

 

「もし本当に君が黒崎一護なら、落胆した。今の君からは、霊圧を全く感じない。」

 

 

進化の失敗と嘲り、最後の機会を取り零したと藍染は伝える。

待ち望んでいた結果が、想像とは違った時の科学者の落胆を示す藍染の表情に、水色は変わらず恐れを抱く。

だが、場は動きを見せた。

 

 

「残念だ。黒崎「藍染。」

「場所を移そうぜ。空座町(ここ)では俺は戦いたくねぇ。」

「・・・無意味な提案だな。それは()()()()()()()()()()()()()()()()()口にできる言葉だ。」

 

 

先ほど隼人に腕を斬られた際、向こうの選んだ場所に赴き斬られたことを棚に上げて、藍染は一護の傲慢さを正そうとする。

 

 

「案ずる事は無い。空座町が破壊される迄も無く君は―――――」

 

 

その言葉を待たずに一護は藍染の顔を左手で鷲掴みにし、空座町の外の流魂街に出て戦闘を始めた。

 

 

 

 

 

 

空座町に入った後、七緒と鉄裁は口囃子隼人の許へ向かう途中に、大粒の涙を流した松本が市丸を介抱しているのを発見した。七緒が市丸の様子を見たが、既に事切れていた。

 

 

「わかったわ・・・ありがとう、七緒・・・。」

「いえ・・・。では、失礼します。」

 

 

数分後、二人は隼人の許へ辿り着いた。丁度一護が藍染と共に空座町から出てすぐだった。

 

 

「「・・・・・・・・・!!」」

 

 

言葉が出なかった。

ズタズタに複数の孔をあけられた体、一面に広がる血の海を見て、あまりの凄惨な状態に息が詰まる。

見ただけでわかる。いつ死んでもおかしくない状態だった。

 

 

「急ぎ救護に移ります!伊勢副隊長!」

「は・・・はい!!」

 

 

だが、これ程の重傷患者に対し治療を行ったことなど七緒には無かった。

この二人の力だけでは、この青年は確実に死に至る。

確信した七緒は、更なる救援を呼ぶことにした。

 

 

「虚圏にいる虎徹副隊長と井上さんを呼びます。」

「お願い致します・・・!我々だけでは厳しいでしょう・・・。」

「了解しました!」

 

 

すぐさま虚圏にいる勇音に電話を繋ぎ、救援要請をする。

すぐに向かうと返事があった。他の現世の人間も連れて行くとのことだ。

虚圏での戦いは、どうやら既に終わっていたようだった。

 

うつ伏せに倒れていた体を仰向けにし、二人で必死になって回道を体に循環させていく。

 

藍染の霊圧の影響が無くなった現世の人間達も動き始めた。

 

 

「あたし達も何か出来ることありませんか!?」

「俺達、口囃子さんに何度も助けられたんです!何でもしますから!」

「命の恩人に何か恩返しさせてください。お願いします。」

 

 

三人の後、観音寺もならってお辞儀をしたのを見た七緒は、すぐに指示を出した。

 

 

「近くの店から包帯を持ってきて頂けますか?私たちの持ってきた量では到底足りないのです。お願いします。」

「わかりました!!」

 

 

高校生達はすぐに走って、薬局やコンビニを探しに向かう。

 

観音寺は隼人の左肩に手を置き、涙混じりに声をかけた。

 

 

「ボーイ・・・何としても生き残るのだ・・・。私はユーを助けるヒーローになるぞ・・・!」

 

 

言葉を残し、観音寺も走り出していった。

 

 

 

数十分後。

観音寺がドラッグストアを見つけたことで、大量の包帯や消毒液などの物資を運ぶことが出来た。

バックヤードから段ボールごと持ってきたため、むしろ余る程になった。

 

 

「皆さんありがとうございます!」

「早く口囃子さんを助けないと・・・!」

 

 

啓吾の言葉と同時に、爆風が空座町に伝わってきた。

路地裏にいたため被害を受けずに済んだが、道路上にいたら隼人の身体に悪影響が出ていたかもしれない。

 

その爆風に、意識を失っていた千鶴も目を覚ました。

 

 

「あれ、あたし・・・生きてる?」

「本匠!大丈夫か?」

「あ、うん・・・。って、口囃子さんは?大丈夫なの!?」

「今死神のお姉さん達が治療してくれてるから大丈夫。立てる?」

 

 

たつきの支えで千鶴も立ち上がることが出来た。

一方たつきは、たった一人あの男に立ち向かっていった一護の身を案じていた。

 

 

「一護・・・・・・。」

 

 

路地裏から見上げる空は、体育館で見た空と同じモノなのに、全く違うモノに見えていた。

 

 

 

 

 

爆風が収まった頃に、断界から三人の死神が現世からやってきた。

 

 

「七緒ちゃんは、あっちだね。」

「鉄裁さんも到着しています。」

「二人が同じ場所に留まっているってことはつまり・・・そういうことだね・・・。」

「――――――――・・・。」

 

 

空座町に降り立った瞬間から分かった。

隼人の霊圧は、ほとんど消えている。

 

言葉など要らない。すぐに駆け付けて安心させてやりたかった。

まだ意識はあるのかもしれない。自分が来れば、安心して回復傾向を見せるかもしれない。

 

 

急ぎ七緒と鉄裁の許へ向かった。

 

 

「七緒ちゃん。隼人クンの具合はどうだ――――・・・。」

 

 

そこで三人が見たものは、あまりにも悲惨で残酷な光景であった。

暗く狭い裏路地が、より一層暗い赤色で染め上げられている。

体中に包帯が巻かれているがところどころ空洞になっているのが包帯越しにもわかる。

 

体中に、いくつもの孔をくり抜かれたのだ。証明するように、背後の壁には体の孔と同じ個数の複数の貫通した孔がある。

 

一護の友人達は皆憔悴しきっており、共に行動していた派手な服装のおじさんは隼人を見て涙を流している。

 

回道をかけている七緒と鉄裁も脂汗を流していた。

 

 

「私達だけでは厳しいので、虎徹副隊長と井上さんに救援を頼みました。じきにいらっしゃいます。・・・ですが、それまで持つか・・・。」

「成程・・・こりゃあ覚悟した方がいいね。」

 

 

「六車クン。」

「・・・・・・・・・。」

(!)

 

 

101年前の元隊長が此処にいることに驚きを隠せない。

だが、驚いていても何も事が進むワケでは無いので、七緒は治療に専念した。

 

 

 

 

101年振りに再会した己の養い子が、瀕死の状態など誰が想像できるだろうか。

ひょっとしたら別人であり、今も隼人は瀞霊廷の中にいるのかもしれないと現実逃避しようとした。

 

だが、目の前の男は、101年前の霊術院の制服を着た男の顔と殆ど変わっていなかった。

霊圧も、当時の霊圧を純粋に強化した物へと変化しただけだ。

身長は伸びたが、周りの死神と比べて小さいのが昔と変わらない。

髪型もそうだ。あの当時あのまま。

目を瞑ったその姿は、勉強中に居眠りしていた時の寝顔と殆ど変わらない。

その寝顔を見て何度も叱ったのを昨日の事のように覚えていた。

 

そして、首に提げていた小さな巾着袋は血染めで赤黒くなっていたが、あれを持っている者は一人しかいない。

 

それは、霊術院入学試験の際に、拳西が自ら作った世界でたった一つのお守りであった。

ボロボロで、所々破れたのを修復した箇所がいくつもあった。

 

 

「こんなモン・・・100年もずっと持ってたのかよ・・・。」

 

 

唯一無事だった頭に手を置き、己の弱さを悔いた。

現世で藍染を止められていれば、こんな酷い思いをさせずに済んだのかもしれない。

そもそも101年前に虚化実験に巻き込まれていなければ、隊長のままでいて隼人をどうにかして護ることだって出来た筈だ。

 

 

「悪りぃな、ホント・・・辛い時に駆け付けてやれなくて、最低な親だ・・・。」

 

 

裏路地の開けた空間から黒腔が開き、勇音が現世の人間達を連れてきた。

阿散井とルキアも同伴していた。

 

 

「織姫!チャド!」

「あれ、たつきちゃん!久しぶり!!」

「口囃子さんをお願い!織姫なら助けられるんでしょ!?」

「うん。わかった!」

 

 

隼人から井上の力について分かる範囲で説明を受けていたため、たつきは井上に助けを求める。

対する井上は黒腔から出て直ぐに双天帰盾の準備をしていたらしく、走りながらヘアピンから六花を出現させた。

 

 

「ルキアちゃん。お疲れ様。」

「京楽隊長!・・・って、何故浦原もいるのだ!?」

「えぇ~~!アタシがいて何かおかしいんスか!?ショックだなぁ・・・。」

 

 

そしてルキアと阿散井は、この場に見慣れない人物がいて不思議に思い始める。

双天帰盾の外からじっと隼人を見据えている、現世の服を着た銀髪の男。

霊圧を見た限りでは虚の力が混じっている。

 

 

「京楽隊長。あの方は誰っすか?」

「ああ、彼はね。」

 

 

「流魂街から来た隼人クンに全てを教えた、大切な家族の一人だよ。」

 

 

その言葉に、全く隼人の過去を知らない二人はより一層分からなくなると同時に、驚きの表情を浮かべた。

 

 

「口囃子さんって流魂街出身だったんスか・・・。」

「知らぬのも無理はない。私も知らなかった。兄様は色々ご存じでいらっしゃるようだったがな。口囃子三席はあまり過去を話したがらない方だったからな・・・。」

 

 

いまいちよく分かっていない表情で、二人は顔を見合わせて頭に疑問符を浮かべたままだ。

 

 

「まぁ、彼には色々と複雑な事情があるんだ。そのうち話す気になったら話してくれるよ。」

「はぁ・・・。」

 

 

双天帰盾のおかげで、隼人の体に負った傷は大方回復した。そもそも怪我を負う前から霊力が殆ど尽きていたことが幸いして、隼人の体に残った霊力の干渉を受けることが無かった。

体にあけられた孔は塞がり、外見上は殆ど傷跡も残っていない。

 

 

「ごめんなさい。今のあたしの力じゃこれが限界です。」

「十分です。むしろ貴女のおかげで峠は越えました。」

「良かったぁ・・・・・・。」

 

 

そして空座町の外で戦っていた一護と藍染の戦いも、決着がついたようだ。

 

 

「では、ちょっとアタシは行ってきます。」

「頼んだよ。()()()()。」

「はいっ。」

 

 

浦原を見送った後、京楽は現世の人間達の元へ向かった。

 

 

「こんにちは。八番隊隊長の京楽春水です。」

「こ・・・こんにちは。」

「・・・本当に、ごめんよ。皆には辛い思いさせちゃって。」

 

 

だが、最初に隼人からの謝罪を受け入れた人間達は、もうそこまで気にしていなかった。

 

 

「口囃子さんからもそういった話は聞きました。それに、決着もついたようですし、僕はもう大丈夫です。」

「あたしも大丈夫です。」

「あたし、も・・・。」「俺も大丈夫っす!」

 

 

藍染に殺される恐怖こそさっきまであったものの、ここまで切り替えることができる人間達に尊敬の念すら覚える。

幸いにも、仲間の間で死人がでることはなかった。

一護の妹達も全員無事だ。

 

 

「一護クンに、話しに行くかい?」

 

 

だが、その京楽の問いには皆複雑そうな顔を浮かべた。

話をしたそうにしていたが、同じくらい話しかけづらそうな様子だった。

 

 

「・・・今日は、帰ろうか。また今度、話をするといい。」

「はい・・・。」

 

 

京楽の手引きで、空座町に最初からいた一護の友人達は全員家に帰ることになった。

そこで、阿散井は率直に頭に浮かんだ疑問を述べる。

 

 

「記憶置換、しなくていいんすか?」

「しなくていいよ。むしろ、()()()()()()()()。ここまで来たら、一護クンもきっと、隠さずに全部話した方が楽だ。」

「・・・そっスね・・・。」

 

 

数十分後、藍染の封印架を運ぶための人員が空座町にやってきた。

四番隊を除く各隊高等席官や、鬼道衆の死神が駆けつけて丁寧に運んでゆく。

 

 

一度戻ってきた浦原は、ルキア、阿散井、石田、井上、チャドを連れて再び一護の元へ向かっていった。

 

 

一方隼人は、処置自体は目処がついたものの、一向に目を覚ます気配が無かった。

 

 

「おい・・・何で目を開けねぇんだよ・・・!」

「恐らく、大量に出血したことで意識を取り戻すまでは時間がかかると思います・・・。」

「おい隼人!お前こんな所で倒れる奴じゃねぇだろ!?目ぇ覚ませよ!呑気に寝てんじゃねぇよ!いつもみてぇに起きろよ!」

 

 

拳西の叫びは、全く届かない。

目を開けるどころか、体はぴくりとも動かなかった。

舌打ちして地面を殴るも、それで隼人が目を覚ますことなどない。

 

そこで京楽が出した提案は、101年前のあの時と全く同じであった。

 

「とにかく、十二番隊での手術は必要だ。()()()()()()、時間停止と空間転移、頼んでもいいかい?責任はボクが取るよ。」

「!!・・・承知しました。では、十二番隊舎前に、全員とこの空間を転移させます。暫し目と耳をお塞ぎ下さいな。」

 

 

禁術なので、建前でも見ないよう促す。

101年前は、暗闇の中内密に禁術を行い、その咎を責められて現世に逃亡することとなった。

だが、今回は違う。たった一人の死神を助けるため、今昔問わず尸魂界の隊長格が集結した。

人間達の力も借りたのだ。

 

(絶対に助け出して見せますぞ、口囃子殿・・・。)

 

決心した鉄裁は、101年前とは違う希望を持って、禁術を行使した。

 

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