ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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懐古

「凄い・・・本当に、転移したんですね・・・。」

 

 

さっきまで空座町にいたにもかかわらず、一瞬で十二番隊の前に移動した。禁術を体感した勇音は、驚きを禁じ得ない。

重傷患者の搬送の待機をしていた十二番隊の九南ニコは、拳西の存在にびっくりしていた。

 

 

「えっ!!六車さん!?お久し振りです!」

「お前は・・・白の妹か!相変わらずアイツとは真逆だよな・・・。」

「お姉ちゃん、無事だったんだ・・・良かった・・・。」

「多分すぐこっちに来るから後で顔出すよう伝えとく。」

「はい、よろしくお願いします!」

 

 

そう伝えて拳西は米俵のように抱えていた隼人の体を十二番隊に預けた。

井上織姫の技で大方回復しているが、完全ではない。

それに、かなりの重傷を負っているため、四番隊に預けるよりも先により医学に関しては専門性の強い十二番隊で処置を行うほうが賢明だ。

最初から治療を行っていた鉄裁は経過観察のため同伴する。

何せ、今回の戦いで最も重い傷を負っているのだから。

 

隼人を預けた後に拳西はそれについていこうとしたが、勇音に傷を治すと言われ、渋々四番隊に向かうことにした。

 

 

「久し振りの瀞霊廷でしょ。どうだい?」

 

 

京楽の問いに、あまりにもフランクすぎやしないかと七緒と勇音は心配になったが、気を乱すことは無く答えた。

 

 

「変わんねぇな。俺がいた頃と何も変わってねぇぞ。」

「人はたくさん入れ替わったけどね。あの頃の死神なんて隊長副隊長で残ってる人しかいないよ。」

「海燕も、死んだんだよな・・・。」

 

 

各々が、この百年間に思いを馳せていた。

そして京楽の伝令神機に、着信音が鳴りある知らせが届いた。

 

 

「七緒ちゃん。」

「はい。」

「いますぐ四番隊に行ってらっしゃい。」

「えっ?どういう意味ですか?」

「何って・・・こういう事しかないでしょ。」

 

 

そう言って京楽は拳西の左腕をポンと叩いた。

あぁ、そういうことかと拳西も納得する。

 

何故拳西を示したのか、すぐに七緒は気付いた。

ここに拳西がいるなら、他の101年前の隊長格もいることになる。

 

 

「・・・・・・・・・!」

 

 

「分かったらさっさと行ってらっしゃい。それともボクがお姫様抱っこして連れて行ってあげよっか♡」

「必要・・・ありません。」

 

 

胸に込み上げるものを感じつつ、七緒は瞬歩でその場を後にした。

この中に取り残されるのは居心地が悪かったのか、勇音も七緒についていった。

 

 

「あんたも相変わらずだな。」

「キミの親バカ程じゃないよ。」

「性質が違うだろ。」

「・・・・・・似たようなものさ。」

 

 

見るからに父性とは違うように見えるが、京楽の目は少し沈んでいるようにも見えた。

今はあまり深く突っ込む気になれないし、そもそもそこら辺の事情はどうでもいいので問いかけるような野暮な真似はしない。

 

 

「・・・春水さん。済まねぇ。俺が現世にいた間あんたが隼人の親代わりみたいなモンだったんだろ。」

「ボクは仕事のコツ教えたり悩み聞いたりしてあげただけだよ。浮竹も一緒だった。ただ悩める後輩を助けただけさ。」

「その悩みを作った原因は俺だろ。・・・情けねぇ。」

 

 

その言葉を京楽はしっかり認めた。

 

 

「・・・そうだね。50年以上前の話だけど、彼、夢に出るって言ってたよ。でも夢が覚めたら現実に戻って、辛くて眠れなくなるって泣きながら教えてくれたよ。」

「・・・・・・・・・。」

「だから、意識取り戻したら、一緒にいてあげなさいな。それだけで彼は、101年分の呪縛から救われるから。」

「当たり前だ。時間が許す限りはな。」

 

 

四番隊に到着したら、すぐに隊士がやってきて処置室に案内された。

 

 

 

 

白とリサは四番隊の女性席官から治療してもらった後、別に知り合いもいないので二人で休憩していた。

ひよ里はまだ意識が戻っていないので、それを待つ意味合いもある。

 

だべっていたらバタンとけたたましい音を立ててドアが開いた。

 

 

「わぁっ!びっくりしたぁ~・・・。」

「誰や!!レディの痛々しい姿堂々と見やある奴は・・・・・・。」

 

救護用の道具箱を肩に提げたまま、息を切らせてドアを開けたのは、若い女性死神であった。

 

そしてその顔は、リサにとって見覚えのある顔。

リサ主催の読書会に参加していた、小さな女の子の死神だった。

小さかった少女は、副官章を携えた立派な副隊長へと変貌を遂げていた。

 

 

「七緒・・・!?アンタ、七緒か!!」

「矢胴丸さん・・・!矢胴丸さん!!!」

「ちょ、あたし怪我してるから!」

 

 

凛としたいつもの表情を大きく崩し、我慢できず七緒はリサの許に駆け寄り、その胸の中で大粒の涙を流す。

 

 

「私・・・私・・・!!」

「ああもう落ち着きやぁ!全くもう・・・。」

 

 

頭と背中を撫でて一生懸命宥めようとしたが、普段の冷静な性格とは打って変わり一向に泣き止む気配はない。

 

 

(あいつ・・・やりおったな・・・!あたし、そうゆうのあんま好きやないんやけどな・・・。)

 

 

京楽の差し金に嬉しいような面倒なような、複雑な思いを感じて鼻でため息をつきつつ、リサは暫し七緒のために時間を取ることにした。

 

 

 

 

 

拳西も、気心のしれた仲間たちの元に戻ってきた。

 

 

「拳西!どうだった!?ハヤト、元気にしてたかい!?」

「元気だったらここに連れてきてるに決まってんだろ。」

「アホかローズ。察しろや。」

「今のはローズが馬鹿だな。空気読め。」

「相変わらず酷い!!」

 

 

ガビーンといった擬音が似合いそうな表情でローズは青ざめつつ落胆する。

そんな様子など興味無さげに平子は隼人の容体を尋ねた。

 

 

「どや。厳しいんか。」

「峠は越えた。だが出血量が酷いからな。しばらく意識戻らねぇって虎徹が言ってたぞ。」

「虎徹って、あぁ、隼人の同期の奴か。隊長格も変わったよなー。」

 

 

ラブが当時を思い出しつつ、聞きなれない名前の死神が隊長格になっていることを実感する。

 

 

「出血量が酷いって、そんなにかい?」

「路地裏一面血染めだったぞ。」

「うおっマジか・・・。」

「ショック状態になったんやな・・・。」

 

 

実際は体に孔があいていたりもしたのだが、変に口に出して容体が急変したとかなったらシャレにならないので決して詳細は明かさない。

悟った平子は今後のことに話を変えた。

 

 

「オマエら治療終わったらどうすんねん。」

「どうするって・・・現世に帰るに決まってるでしょ。」

「そりゃそうや。何つーか、その、帰るまでの話や。」

 

 

あぁ、そういうコト、と納得したローズは、自分のプランを雄弁に話し始めた。

 

 

「ボクはちょっと散歩でもしようかな~って思ってるんだ。瀞霊廷にヴァイオリン置いてってたからその様子も気になるし。」

「楽器置いてってたんかい!」

 

 

平子のツッコミの後、ラブも自分の計画を話した。

といっても、自分の計画と言えるのかは分からなかった。

 

 

「俺はひよ里次第だな。あいつなら『こんなとこ嫌や!ウチはすぐ帰るで!!』って言うだろうから俺はすぐ帰るぞ。ジャンプ読めねぇのも辛いしな。」

「さよかぁ。拳西はどうすんねん。」

 

 

話を振られた拳西は、考えつつも大体の予想はついていた。

 

 

「悪りぃ。俺は別行動だ。」

()()()。」

「10日間。それまでに隼人の意識が戻らなかったら一回帰る。」

「ええと思うで。キリええし。意識戻らへんかったら一回現世に戻って、隼人の意識が戻ったらまた尸魂界行けばええんや。」

 

 

拳西なりに予測を立てていた。

10日以内に意識が戻らなければ、おそらく数ヶ月は昏睡状態のまま眠り続けるだろうと考えられた。出血多量で瀕死に陥ったため、このまま意識が回復、なんて都合がよすぎる。

 

あの傷を見た瞬間、最悪隼人があのまま死ぬことも覚悟していた。

命があるだけでも十分だ。

 

それに、尸魂界で直接隼人の眠っている姿を見て待つことだってできる。

今となっては現世で待っていても京楽や、直属の上司である犬の隊長など、誰かが連絡してくれるだろう。

 

 

「気長に待とうや、拳西。」

「そうだな。」

 

 

その言葉を最後に、四人とも無言で各々のやり方で暇つぶしを始めた。

ローズは、部屋の外に出て散歩をし、変わり映えの無い四番隊の様子を見にぶらつく。

平子は、喋っていた部屋にあったベッドにぼんやりと横になっていた。

ラブは、愛読書のジャンプも無いのでただ窓から空を見ていた。

拳西は、待合室に置いてあった瀞霊廷通信のバックナンバーを眺めていた。

 

何とも勝手知ったる振る舞いである。

見慣れない人物の自由な振る舞いに、四番隊士は皆狼狽えていた。

あの人誰?何やってるんだろう・・・。などとヒソヒソ声が聞こえてくる。

 

その少し離れた場所では、同じような現世の服装をした女性二人が号泣している八番隊副隊長を慰めており、非常に不思議なものとして一般隊士の目には映っていた。

 

その当惑した隊士の様子を見て、ある人物が上手い事説明に入った。

 

 

「彼らはね、101年前の隊長格だった人達だよ。」

「う、浮竹隊長!まだお腹の傷は・・・。」

「大丈夫だ!俺は自分でも回道かけられるからな!」

 

 

腹には痛々しくも赤黒く染まった包帯が巻かれていたが、止血されており、他の傷を負った隊長格よりもやけにピンピンしている。

核心を突かない程度に、過去に何があったかを若い隊士達に説明してあげていた。

 

 

「藍染が、そんな昔から暗躍していたとは・・・。」

「許せませんわ・・・。」

「約100年尸魂界に踏み入ることは出来なかったからね。・・・って君達!仕事サボっちゃだめだぞ。」

「すっすみません!」

 

 

浮竹から話しかけたことは忘れていたのか、何故か小言じみたお説教が始まろうとした所で隊士達は戻っていく。

女性隊士はもうちょっと一緒にいたかったなと後ろ髪を引かれる思いでその場を後にする。

 

最強のイケオジ隊長は、衰え知らずの人気ぶりであった。

京楽の嫉妬が目に浮かぶ。

 

そんな人気など露も知らず、浮竹は懐かしい顔に会いに行った。

 

 

「久し振り、()()()()。」

「浮竹サンか。オレ隊長やあらへんのやけど。」

 

 

起き上がろうとした平子に、休んでいてくれと手を前に出して制止する。

 

 

「藍染の封印架は一番隊舎に運ばれたよ。直に四十六室の手で裁判になるだろう。」

「・・・そうやろなァ。って、何でオレにわざわざ伝えんねん。」

「昔は藍染の上司だっただろう?関わりも強いだろうし、因縁も人一倍強い。だから君には伝えるべきだと思ったんだ。」

「・・・相っ変わらず、義理堅いやっちゃなァ。」

 

 

何も変わっていない浮竹に、幾分かやりづらさすら感じる。その浮竹の変わらない姿勢に、むしろ自分達が変化せざるを得なかった現実を実感し、やりきれない思いを抱く。

変わらない浮竹は、突然話を変えた。

 

 

「そうだ!この際だし、隊長にでも復帰してはどうかな!?三、五、九番隊は今も隊長が空位なんだ。昔隊長を務めていた死神が復帰したとなれば、俺は嬉しいんだがなぁ~!」

 

 

確かに空位の場所に自分達が入れば穴も埋まるし、より強靭な体制が整うだろう。

だが、ついこの前まで罪人であり、追われていた身の自分達を、受け入れない一派は必ず現れるだろう。貴族なんかは猛反対しそうだ。

 

 

「アンタは嬉しゅう思うても、オレたち虚の力混じってるんやで?受け入れるワケないやろ。」

「何言ってるんだ!俺は賛成だ。京楽も賛成してくれるだろう。一緒に戦った狛村隊長と砕蜂隊長、日番谷隊長もきっと賛成してくれる筈だ!」

「砕蜂のヤツは嫌がりそうなんやけどなァ・・・。」

 

 

「まァ、考えてみるで。ひよ里の説得は難儀しそうやけどな。」

「あぁ、よろしく頼むよ。」

 

 

ひよ里の説得。

そう聞いた浮竹は、なんだかんだ言って平子自身は乗り気であることを薄々勘づいていた。

あの日から色々気にかけていた仮面の軍勢達も護廷十三隊に戻ってくれば、また昔のような活気が戻ってくるかもしれない。

元三番隊と元九番隊の二人の男にも声をかけようと思った所で、十二番隊からの患者引き渡しのためバタバタしているのを見つけた。

山田花太郎が大声を上げて道を開けるように求めつつ、ストレッチャーが運ばれていた。

 

個室の病室に運ばれ、室内にあったベッドに体を持ち上げ移されていく。

 

眠っているのは、顔から下全身に包帯を巻かれた、口囃子隼人だった。

 

 

「隼人君!!」

 

 

何も知らなかった浮竹が大声を上げて病室に駆けて行き、その声を聞いた仮面の軍勢もなりふり構わず走って病室に入っていった。

 

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