若干R-18気味です。弓親のジジに対する発言で問題ないなら大丈夫だと思われますが、念のため注意書きしておきます。注意書きはしたので、自己責任でご覧ください。
ピシャン!!と襖を開けた時の光景は、あえて描写しない。
それ程までに目の前の男二人が裸で絡み合っている光景は、隼人にはみっともないものにしか見えなかった。
供の少年も新当主の男に勝るとも劣らない美少年であり、画になると騒ぐ女性死神はきっといるだろう。
だが、不倫はいけない。
それも、新当主が身内に近い男との不倫発覚!など、醜聞どころでは済まされない。
「端正な顔立ちのために瀞霊廷通信で何度も特集を組まれ、貴族でも指折りの女性人気を獲得。数々の女性と浮名を流しつつ手に入れたのは元死神の美人妻。」
「な・・・何だ!何者だお前は!」
隠すように供の男を抱き締めた新当主に、軽蔑の視線を向ける。
それと同時に、裸で抱き合っている腰から上の写真を伝令神機で撮り、二人に見せつける。
「夫婦で表紙を飾った瀞霊廷通信は重版出来、奥さんは妊娠6ヶ月・・・。新当主になって順風満帆、公私ともに充実した毎日を送っていた男が、まさか。」
「こーーーーーーーーーーーんな下らない不倫に、現を抜かして猿みたいになってるなんてなーーーー!!!!!!」
狂ったように嗤う死神をみた新当主の桐葉
供の陸は腕の中で涙を流していた。
不倫を嗅ぎつけられた己の落ち度を悔やむと共に、何とかして目の前の男を消す策を考える。
見た所副官章もつけていないので、己の実力なら無力化も出来る。
護廷十三隊には入っていないが、血筋のおかげで斬拳走鬼全て副隊長級の実力を持っている桐葉は、縛道で拘束を図る。
「ばっ、縛道の七十九 九曜縛!!」
だが、目の前の男はあろうことか片手でその縛道をあしらう。
代わりに、術名を発することもなく生み出された六杖光牢によって、ふたりまとめて縛り付けられてしまった。
「二人仲良く縛ってあげるよ。幸せでしょ?ずーーーーーーっと、そのままでいれるんだよ?素っ裸で抱き合ったまま、一生そのまま一緒にいれるんだよ!?あーー幸せだねぇ!!ヤリ放題じゃん!!羨ましいよぉ!!いっそのことその姿のままどっかに飾ってあげよっか?全身精液でべっちゃべちゃにしてさぁ!!そんな姿を護廷十三隊の女たちに見せてさぁ!!どんな反応するだろうね!?!?やっべ、想像したら胸糞悪くなってきたわ。」
ギャッハハハハハハハ!!!!!と嗤い続ける狂気に浸った死神の男に地力で敵わないと悟った桐葉は、金での解決を持ち掛けたが、その瞬間スッと死神の顔色が変わった。
「それ、あんたの奥さんに言えんの?」
頭が真っ白になる。
その瞬間、自分は結婚から一年も経たないうちに妻への愛を無くし、供の男を食い漁っていたことを今更思い知らされた。
「ねぇ言えんの?言えるなら言ってみてよ。金払うから不倫見逃せって、奥さんに言ってみてよ。何なら今から電話かけよっか。不倫してすいませんでした、金払うから見逃して下さい、って、言えるわけないでしょ?だって、」
「テメェ結局奥さんのこと商売道具にしか見てねぇんだろ!?!?!?」
そこから暫くは、顔を殴られる感覚しか感じなかった。
抱き締めていた供の陸はあまりの恐怖で既に気を失っていた。
数分殴られた後、ハタとその動きが止まり、かけられていた縛道も解かれた。
「取引をしよっか。今から言う事を誓ったら、あんたの不倫は公にはならない。奥さんにもばらさないでいてあげるよ。」
「・・・・・・。」
「仮面の軍勢の隊長復帰、来週の会議で賛成してくれるかな?」
己の誇りが、崩されていく。
代々受け継がれてきた、尸魂界の原理を護り通すと誓った家の誇りが、自分のした馬鹿な行いで完膚なきまでに打ち砕かれていく。
どっちが自分の為になるかなど、明白だった。
万が一バレた時に比べれば、秘密にしておく方が己の保身のためにいいに決まってる。
「わかった・・・賛成に、票を入れよう。」
「反対に入れたら、テメェの全部ぶっ壊してあげるからヨロシク♡」
死神の男は手を振りながらバイバ~イと言って部屋を後にした。
富、名声、全てを手に入れた男は、たった一人の男に知られてはならない弱みを握られ、心も身体もすべて掌握されてしまったのだった。
「いいのか?奴の嫁に不倫をばらさないで。バレた方が面白かろうに。」
「ばらすべきではないです。その方があの男の心は僕の意のままになりますから。」
妻に全て暴露した場合、陰で醜聞が広まって家がお取り潰し、なんてことになって変に恨みを持たれたら大変だ。
それならこの場だけの秘密にしておき、自分の存在をいつ爆発するか分からない不発弾のような存在にしてしまえば、彼はこれから一生隼人の顔色を窺って生きていくことになる。
その選択の方が苦しむことになると知らぬまま、貴族の新当主は抜けられない地獄に自ら足を踏み入れたのだった。
花街を出た隼人は、達成感と爽快感で非常にスッキリしていた。
「や~やっぱ、いいですね!勧善懲悪!成敗してやったり~って感じ!!楽しい!!!」
「・・・まさか、最初からあんなにブッ飛ばすとはのう・・・。」
「明日もですよね?どんどん行っちゃいましょう!」
そこからの隼人の動きは、恐ろしさすら感じるものだった。
翌日夜。
貴族街の高級料亭で、とある有力貴族二人が会食をしていた。
「いや~君には色々と感謝しているんだよ。」
「滅相も無い。私こそ貴方様に拾って頂いた御恩を返し切れておらず・・・。」
「気にするでない。ほれ。」
机の下から、老人貴族が菓子折り箱を取り出し、机に置く。
「失礼します。主菜をお持ち致しました。」
「そっちに置いといてくれ。」
「了解しました。」
配膳係の青年が机の隅に色鮮やかな料理を置いていく。
「饅頭、ですか・・・。」
「ああ。受け取ってくれるかね?」
中年の貴族がフタを開けてお菓子の中身を確認する。
何の変哲の無い有名和菓子店の高級饅頭。
平民にとってはこれだけでも身に余る逸品だ。
だが、そんな単純なやりとりを貴族が行う筈はない。
中年の貴族がいくつか箱の中の饅頭を机に置いていく。
箱の下には、札束が敷き詰められていた。
「っおおぉう・・・・・・。」
「受け取ってくれ。」
「ですが・・・。」
「受け取ってくれ。」
「では・・・お言葉に甘えて。」
握手を交わそうとしたその瞬間。
カシャっと室内に音が響き渡った。
音を鳴らした主は、配膳係の青年だった。
伝令神機片手に、二人の握手の様子を饅頭の下にある札束が見える形で写真を撮っていた。
瞬時に貴族達の顔色が変わり、一人は青ざめ、一人は真っ赤になる。
「無礼者!!そのような下賤な真似をして、生きて帰れると思うたか!!」
「やれ!!早くあの下手人をやるのだ!!」
だが、万が一に備えて待機していた人員は、全員白伏で無力化させられていた。
呼びかけても誰も来るはずない。
「闇のお金に毒饅頭・・・。二つの有力貴族が知られてはいけない金でズブズブの関係だと世間に知られてしまったら・・・一体どんな事件になるんでしょうね?」
「そんなもの、私がもみ消してやるわ!!護廷十三隊の九番隊など私の言葉一つで無力化など簡単!隊長が消えてせいせいするわ!!これからも九番隊に隊長など要らぬ!」
「・・・へぇー・・・。」
堪忍袋の緒が切れてしまった。
持ちうる手段で最も強いものを行使することに決めた。
「いけませんねぇ。何にも考えないで喋っちゃうの、良くないですよ?誰かが録音していたりしてーー!」
ポケットに忍ばせていたボイスレコーダーを取り出し、一連の饅頭の件からの音声を再生する。
「貴様ァァァァ!!!許せん!成敗してくれよう!!」
中年の男は無様にも隼人に飛びかかってきた。そんなもので無力化などできる筈ない。
適当にいなし、体術を使って倒れ込ませた。
老人の貴族は実力差を思い知り、ワナワナ震えて座り込んでいた。
ミッションコンプリート。取引も問題なく成立させることが出来た。
さらにその翌日。
今度は、霊術院に子息を裏口入学させた証拠を持って、とある下級貴族の許に赴いた。
「こんな卑劣なことやって、バレないと思いましたか?」
「何だ・・・一体何が欲しいのだ!金ならいくらでもやる!そうか、お前を副隊長にしてやってもいいぞ!」
「そうですね・・・。だったら、」
「永遠に、僕の
「お、仰せのままに!!!!」
下級貴族相手には、かなり強気に出るだけで人心掌握は手っ取り早く済む。
現世の映画に出てきた台詞で、一度言ってみたかった台詞だった。
修兵あたりに言ってみたかったが、もっと面白い結果になった。
ここ数日、今までで一番隼人はノリにノッていた。
貴族街で猫夜一を手に抱えながら、隼人は勝利の喜びを噛みしめていた。
「いいですね~ほんと!貴族に一泡吹かせられるの最高です!家政夫のマエゾノみたいですよね!!」
「ここまでおぬしを変えてしまうとはな・・・六車に何と言うべきか・・・。いや、何も言うべきではないな。」
現世で観たドラマを引き合いに出して、隼人はテンションが上がりっぱなしだ。
仕事先の家庭の秘密を探さずにはいられない家政夫の気持ちが、今では痛いほど共感できる。
そんな隼人を作り上げてしまった夜一は、何度も狂気に身を委ねる隼人の姿に後悔しか感じていなかった。
ギャハハハと嗤った時の顔は完全に目がイってる時が多々あり、そうかと言えば怒りで詰め寄る時の表情は絶望の淵に立たされたかのように全ての色が失われている。
狂った時の言葉遣いも拳西を生き写したかのようにそっくりだ。
現世にいた時に吸収したゲームや漫画、ドラマ、映画などの文化物の影響を相当強く受けていることは容易に推測できた。
現世の怪演俳優真っ青の狂いっぷりに、このままでは護廷十三隊に戻った時に何らかの弊害を起こしかねないと危惧するほどには心配していた。
「大丈夫かの・・・。あっちに戻った時に人の噂を詮索ばっかしそうじゃ。」
「何か言いました?」
「何でもない。ほれ、次いくぞ。」
「はい、次・・・。」
喋ろうとした時、ある貴族の男とすれ違った。
今回の書類の中には纏められてはいるが、時間的に厳しいため人心掌握を諦めていた人物だ。
その男は、まるでこれから自殺でもするかのような雰囲気をまとっているにも関わらず、目にはギラついた野心の炎が灯っているように見えた。
貴族が自殺などそれこそ権力闘争への無様な敗北を示すため、彼が何らかの事件を起こすことは目に見えていた。
「ちょっと、あの貴族今日絶対何かやらかしますよ。尾行しましょう。」
「それで何も無ければタダの時間の無駄になるぞ。」
「いや、あの目は絶対何かやらかします。」
その夜、それは現実となる。
貴族の男が自宅に入っていくと同時に、突如暗くなった室内から男女問わず悲鳴が聞こえてきた。
家の門の前でその様子を伝令神機を使って録画していた隼人は、言葉にならない高揚感を抱いていた。
当主になれず、分家の人間として燻ぶっていた男は、新しく当主になったその男を自身の手によって殺したのだ。
貴族街に激震が走る事件の現場に居合わせたことになる。
これはいい材料だ。
下手人の男は一家皆殺しにした後、返り血を浴びているにも関わらず一目散に逃げてきた。
勿論その様子もしっかり録画しておいた。
「ほら、やっぱりやらかした。超ド級の大事件。」
「わしにとってはくだらん争いの末にしか見えぬわ。」
翌日。しっかりその男に証拠を突きつけて強請り、隊長復帰に賛同することを誓ってもらった。
あまりの恐怖で失禁した貴族は初めて見たが、もはやそれすら面白いと嗤う程には心が穢れていた。
まだまだやりたい気持ちはあったが、これ以上一気にやると却って目を付けられると夜一から進言があり、一旦様子を見ることにした。
綱彌代家などの話をした時は、「おぬしにはまだ早い。死んでも知らぬぞ。」と釘を刺された。それほど危険なのだろうか。っていうか危険すぎでしょ。
休暇が明けた日。
三、五、九番隊の隊長復帰に対する意見が中央四十六室でまとまり、正式に復帰が決まったと狛村から聞かされることになった。