ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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復帰前!

予期せぬ七緒との邂逅の果てに後輩達に七緒への恋慕がバレてから五日後。

今日の午後から隊長復帰する三名が尸魂界入りするとの情報を入手した隼人は、午前中に怒涛の速さで一日分の仕事を終わらせ、強引に午後休をもぎとった。

 

 

「そげな速さで仕事やるなら他の隊士の仕事もやったらどうじゃ!」

「自分の仕事やって欲しいだけでしょ。四日分やってあげたんだから十分でしょ。」

「何じゃと!!儂はそげな量だけじゃ「僕は今日ちゃーんと自分の仕事やってます!じゃあね!失礼!!」

「ああぁぁっ!!儂の話を聞け!!」

 

 

仕事をサボらないだけ全然いいのだが、勝手に早く帰られると狛村への報告だったり書類への書き込みだったり色々大変なのだ。

それを三席の隼人にも分かって欲しいのだが、残念ながら今の隼人に分かってもらえる日は一生来ないだろう。

隼人は狛村にしっかり報告はしているのだが、ちょっぴり増えた仕事に射場はげんなりしていた。

 

 

一度自宅に戻って仕事道具を置き、最低限の荷物をショルダーバックに詰め込んで片手にはある物を丁寧に包んだ風呂敷を持っていく。穿界門の前で待ち構えていると、あの時と変わらない見た目の三人が尸魂界に戻ってきた。

 

 

「お久し振りでーす!!」

「何で隼人がいるんだよ。」

「えーいいじゃないですか!あ、最初に言っておきますが仕事はサボってないので。ちゃんと今日の分終わらせてここにいますから。そこんとこ理解して下さい。」

「お、おう・・・。」

 

 

おことわりをしっかり伝え、入手した(京楽から聞いた)情報の通り四番隊に向かう。

まずは死覇装と隊長羽織の採寸だ。

現世の服でずっと過ごしていたとはいえ、隊長就任の儀の際に死覇装を着ないのはさすがにいけない。

それに彼らは色々あったため死覇装を持っていない。

そのため、かなり異例な措置として死覇装の採寸から行うことになっていた。

 

 

担当は、伊江村(いえむら)八十千和(やそちか)だった。

 

 

「えーでは、貴方が鳳橋隊長ですね。」

「ザッツライッ!!!実は帯向こうで作ったの持ってきたんだけどいいかな!?これこれ、美しいと思わないかい!?」

「は?いやそんな急に言われても「あと死覇装の襟にこれつけようと思うんだけどどうかな!?どうかな!?」

「ど、どうぞ、ご勝手に・・・。」

 

 

しょっぱなから苛立ちMAXの伊江村は、眼鏡の奥の顔が引き攣っている。

三番隊なので番号的に最初とはいえ、最初に訊くのは完全に人選ミスでしかない。

伊江村の班の隊士がローズを案内していたが、彼も美的感覚を求められて困っている様子だった。

 

次は平子だったが、手持ちの袋から何やら取り出しており、嫌な予感しかしない。

 

 

「オレはこのスカーフネクタイみたいにしたいんや。あとこれ死覇装と羽織の間に重ね着してもええか?」

「は?いや、ちょっとそこまで色々着るのは・・・「京楽隊長に比べたらそんなの全然普通ですよ。問題ないですね。」

「え、いや、あの、口囃子三席、貴方が口出しする権利はっていうかそもそも何で貴方ここに「だよなァ!!よっしゃ~!どうせならこっちでもオシャレでいたいしなァ!」

 

 

別の隊士に平子も案内されて採寸に入っていった時には、伊江村はワナワナと苛立ちで震えていた。これほどまでに新隊長はアクが強く奔放だったとは。

この仕事を任されて舞い上がっていたあの頃に戻りたいくらいだ。

 

最後に確認した拳西も、何か持っていた。

 

 

「帯なんてメンドクセェモンじゃなくてベルトにする。あと死覇装も羽織も袖無しだ。それだけならいいだろ。」

「はぁ!?帯じゃないって、貴方何言って―――――・・・。」

 

 

顔を見た瞬間、今にもブチギレそうな拳西の表情を目の当たりにし全身が固まる。

更木剣八の怖さとは別種の怖さがあった。

 

 

「わ・・・分かりました。構いません・・・。ほれ、早く案内しろ!!」

 

 

隊士に後を任せた伊江村は、新隊長の個性の強さに不安しか感じなかった。

 

 

拳西についていった隼人は適当に部屋にあった椅子に座っていると、さっき言っていた拳西のベルトを渡された。

白地に、二つ穴のついたベルトだった。

 

 

「俺のと色違いだ。帯なんかより圧倒的に楽だから使え。」

「えっ、いいんですか?確かにこの前現世にいた時は楽だとは思いましたけど・・・。つーかベルト通すための場所無いのに使えなくないですか?」

「んなモン新たに作ってもらえばいいだろ。前より筋肉ついたからか死覇装キツそうだぞ。お前も採寸してもらえ。」

「えっ。」

 

 

言われてみれば、たしかに五ヵ月前に比べるときつく感じる。

以前感じなかったピチっと張り付いた感は、少しではあるが確かに感じる。

採寸を担当していた隊士からも、やりますか?と言われた。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて・・・ごめんね、仕事増やしちゃって・・・。」

 

 

形だけでも謝りつつ、結局隼人も新たな死覇装を作ってもらうことにした。

 

 

三名の新隊長は長らく義骸に入っていたからか殆ど体格は変わっておらず、以前のままで何とかなりそうだ。

ローズはヒラヒラを自分で付けるためにさっさと新居に帰っていった。

平子は数々持ってきた現世の服と死覇装を合わせて一人ファッションショーをしていた。

ちょっと引き気味ではあるが隊士達がいいと思います!と脳死で叫んでいた。

 

ベルトを通すための部品を袴に付けて貰うため、拳西と隼人は二人待合室でぼけっと待つことにした。

 

 

「長かったですね~ここまで。」

「何急に思い出話じみたことしてんだよ。」

「雰囲気ですよ!!何か、こう、あるじゃないですか!定番の!」

「知るかバカ。」

 

 

実際復帰まで101年かかっているのでいいではないかとは思うのだが、拳西にとってはこの101年はあまりいい思い出とはいえないので隼人相手でもそこまで話をしようとは思わない。

そもそもこんな浪漫を大事にする男だっただろうかと目を細めて怪訝な顔を浮かべていると、構わず勝手に隼人は喋り続けた。

 

 

「僕だって色々あったんですよ。鬼道極めて九十番台使えるようになったりしました!・・・結局斬拳捨てちゃいましたけど。」

「いや、その方が良かったな。じゃねぇと三席にもなれなかったぞオメー。」

「でも、副隊長になれませんよ?全部揃ってないと。」

「それもそうだな。進退窮まってんな。」

「そんなことないですよ!!僕だって――――。」

 

 

言おうとしたが、何だか確証が無くなってしまった。

あの時確かに目の前で見た、()()()()()()()のことだ。

そもそもあの日の記憶自体何だか夢みたいに朧げなのだ。観音寺以外の一護の友人について、ぼんやりとしか思い出せないのだ。

今も普通に声が聞こえ、やろうと思えば具象化出来るのかもしれないが、変に力を消費するのも気が向かなかった。

適当なことを言って誤魔化す。

 

 

「いつか拳西さんをぎゃふんと言わせる男になりますよ!!」

「オメーの言動には何度もぎゃふんと言わされてるぞ。」

「実力で!!実力で言わせます!!!」

 

 

実際あの藍染相手にあそこまで粘ったので実力だけで言えば己よりも優れているやもしれないと拳西は素直に褒められるのだが、いかんせん心がついて来れてないため、本当の意味で強くなるには心の訓練も必要だろうと考えていた。

隊長になって余裕が出来たら、また昔みたいに鍛錬してやろうと決める。もっとハードな鍛錬だ。

 

おしゃべりしながらたまにぼーっとしつつ数十分待っていると、さっき採寸を担当してくれた隊士によって新たな死覇装を渡された。

 

 

「死覇装に着替えて下さい。六車隊長はこれから羽織の試着をするのでお持ちしますね。」

 

 

そう拳西に伝えて下がっていった隊士を見て、ある言葉に隼人は過剰に反応する。

 

 

「あっ!!!」

「びっくりさせんなよ・・・。」

 

 

その言葉を聞いて隼人は片手に持っていた風呂敷の存在を思い出した。

ビクッ!とした拳西にイラついた顔をされるも見ないフリをする。

せっかくあの時数多くの品物から厳選して持ってきたのだ。

ここで渡さねば、一体何のためにあの時こっそり持ち出したのか。

 

 

「これ!!拳西さん!!」

「何だこれ。」

「いいから!開いて下さいっ!」

「急に騒ぎやがって何なんだよ一体・・・。」

 

 

嫌々ながらも風呂敷を手に取って開いた瞬間、拳西の顔色は変わる。

使い古された、新品とはいえない白布。

大きく書かれた『九』の文字。

あの頃使っていた隊長羽織の替えを、隼人はずっと隠し持っていたのだ。

 

もし誰かに見つかれば、タダでは済まないだろう。

形式上虚となった拳西の羽織を隠し持っているなど、危険思想を持った死神として蛆虫の巣に入れられてもおかしくない。

 

 

「これをもう一回拳西さんに着せることが、僕の生きていく原動力だったんです。家が壊されるって浮竹隊長から聞いて、急いで持って行ったんです。」

 

 

あの日を思い出し、再び胸が締め付けられる。

101年越しの最後の念願が叶い、思いが込み上げてきた。

 

 

「嫌なら、いいです。新品の方がいいですよね。」

「誰が嫌っつったよ。」

 

 

古びた羽織に腕を通し、ビシッと服装を整える。

悪戯っぽい笑みを浮かべた拳西は問う。

 

 

「どうだ?似合ってるか?」

「―――――――――。」

 

 

ずっと待っていた光景。ずっと見たかった光景。

一緒に死神として働く、その願いが叶い、これからは毎日お喋りすることだってできるのだ。

仕事の不満を聞いてもらったり、一緒に騒ぐことだって出来る。

泣いてしまうのだろうかとずっと考えていたが、今日は静かな嬉しい気持ちで包まれた。

 

 

「いやーー良かったですね!!復帰出来て!拳西さんより僕が嬉しいです!」

「そうかよ。俺も一応嬉しいんだがな。」

「だって、これからは仕事終わりに一杯とか出来るじゃないですか!後輩達と飲むのも飽きるんですよ!皆面白くないし。」

 

 

完全に喧嘩を売っている発言なのだが、別に隼人の後輩とまともに話したことも無いので特に詮索はしない。

あの檜佐木だかいうこれから部下になる男も隼人は仲良くしてそうなのだが、つまらないのだろうか。

数か月前に話した時の印象は真面目そうだったが、確かに残念感は拭えなかったのでつまらないのかもしれないとぼんやり拳西が考えた所で、仕事終わりの一杯なんて話をしたからか久々に隼人と酒を飲みたくなった。

 

 

 

「じゃあ今日手続き終わったら酒でも飲みに行くか?」

「いいですね!行きましょう!久々に楽しみですね!」

「飲み過ぎんなよ。居酒屋で荒れたら俺が困る。」

 

 

先ほど採寸をした四番隊士が戻ってきた時に拳西が何故か羽織を着ているのにびっくりしていたが、サイズ同じやつ一つ作ってくれと頼み、四番隊でやることは終わった。

 

隊長羽織の費用を見た隼人は、決して安物ではない金額に目を丸くした。

 

 

「そんな金、どっからこしらえてきたんですか?」

「お前の想像に任せる。」

「・・・闇金?」

 

 

現世で余計な知識を蓄えた隼人を思いっきり拳骨してやった。

 

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