ヒーローに助けられた者のお話   作:気まぐれプリンセス

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復帰後!

新隊長就任式が終わった後、三名の新隊長の歓迎の意味合いで、隊長格と高等席官数名が参加する大宴会が催された。

総隊長の長々とした話を京楽と卯ノ花が打ち切る形で宴会が始まり、皆まずは自隊の面々で酒や飯を楽しんだ。

 

だが、実際の所はやっぱり仲のいい面々とお喋りをしたい所。

最初こそ副隊長が対象にお酌をする、なんて構図もみられたが、結局年の近い者達で騒ぐ非常に喧しい宴会へと変化していた。

総隊長は京楽と卯ノ花に話を打ち切られたせいでかなりしょんぼりしており、ちょっと飲んですぐ帰ってしまった。

そのため、完全な無法地帯へと化していた。

 

 

「スゲェなあれ。あんな騒いで疲れねぇのかよ。」

「あの人達はそういう人間です。変に絡むと火傷しますよ。」

「火傷って、中々厳しいこと言うね。」

「色々ありますから。」

 

 

拳西とローズの言葉に、騒いでいる連中とはちょっと距離があることを遠回しに示す形で返答する。

十一番隊の席官コンビが大前田、射場、阿散井、修兵、吉良を巻き込んで何だか大騒ぎしているのを隼人は遠目で見てちょっとだけ呆れていた。

そういうのにはどうしても隼人はついていけない。ノリというものが上手く理解できないのだ。

更木剣八は白哉に何かと噛みついているが、相当イラっとしながらも白哉は冷静に対処しているようだ。

 

 

「やぁみんな、久し振りだね。隼人クンはこの前会ったけど。」

「京楽隊長!そのお顔どうしたんですか?」

「リサちゃんにスキンシップしようと思ったら、逆にスキンシップされちゃったよ~。」

「あぁ・・・。」

 

 

何やらボコボコに殴られたようだが、リサは七緒とは違って容赦がないためボコボコに殴られたのだろう。

 

 

「っていうか、矢胴丸さん、こっちにいるんですか?」

 

 

その言葉に、拳西が伝令神機のメール画面を見せて代わりに理由を教えてやる。

 

 

「YDM書籍販売っつー本と雑誌を売ってる会社だ。リサはその会社やって金儲けに勤しんでるな。」

「ボクも度々頼んでるんだ~。でもいっつも執務室に本置いてくだけだから素気なくてさ。そんなにボクと会いたくないのかな?」

「俺が試しに現世の小説を頼んだ時は本人が来てくれたぞ。」

「えっ。」

 

 

浮竹の言葉に京楽は愕然とする。

あれほど愛情表現をしているにも関わらず、浮竹の許にはしっかり現れるのに自分の許にはただ本を置いていくだけ、なんて塩対応をされれば、京楽のライフに著しいダメージがくるのは避けられない。

昔は朝に弱い京楽を引っ叩いてまで起こしてくれたのに。

 

そんな感じで京楽もかなり落ち込んでいる中、リサは女性死神達に挨拶をし、音速の速さで皆に馴染んでいた。

七緒の働きかけがあったおかげで、女性死神協会にもすぐに加えられた。実際は再加入みたいなものだが。

ちなみに数日後、遅れてきた白も女性死神協会に再加入し、やちると仲良くお菓子を食べることが多くなったという。

 

 

その女性達の群れの中にいた平子が、こちらに戻ってきた。

 

 

「桃に連れられてあっち行ってみたんやが、カワイイ子結構おるんやな今。」

「平子隊長、そんな女好きでしたっけ?」

「・・・何や、隼人に隊長呼ばわりされんのも違和感しかせんわ。今まで通りでええでホンマ。シンジでも構へん。」

「えっ、でも、ダメですよ!」

 

 

そこの線引きは個人的にしっかりしておきたいのだ。

小さい頃は院にいて上司ではなく父親の同僚的側面が強かったのでさん付けで呼んでいたが、今は隊長なのだ。

それに隼人も席官とはいえ三席なので、必然的に隊長格と接することが多い。

周りの目を一応気にして、平子とローズはちゃんと隊長呼びしないといけない、と隼人はあらかじめ決めていた。

 

 

「だって、隊長じゃないですか!ラブさんはそのままですけど、平子隊長と()()()()()はちゃんと外での呼び方をしないとダメですよ。」

「ローズ隊長・・・初めて言われたよ。」

「そのままはアホ丸出しや。」

「逆に変な注目浴びるぞその呼び方。」

「さすがに、それはどうかな・・・。」

「・・・。」

 

 

落ち込んでいた京楽以外のその場にいた隊長四名から総ツッコミをくらい、恥ずかしさで顔を真っ赤に染める。

真新しい白のベルトを掴んで何とか気を取り直す。

 

 

「だって、隊長じゃないですか!平子隊長と鳳橋隊長はちゃんと外での呼び方を徹底します。」

((((無かったことにしたな・・・。))))

 

 

強引なやり口にローズと浮竹は苦笑いし、平子と拳西は目を細めてため息をついた。

 

 

「あ、でも拳西さんは今更なのでそのままです。六車隊長とか噛みそうなので。早口言葉に出てきそうですよね。」

「おい、噛みそうってなんだ。他人の名前なんだと思ってんだよ・・・。」

「相変わらずマイペースやなァ、何も変わっとらんし安心するわホンマ。」

 

 

平子の安心をよそに、逆に拳西は心配し始めた。

これはそろそろ酒が回り始めてきた頃だ。

遠慮のない発言をし始めてからは、飲んだ量関係なしに何故か一気に酒が回るのだ。

数日前に飲んだ時も、最終的には荒れに荒れてわんわん号泣してしまい、仕方なく拳西が慰める羽目になったのだ。

いい年した男を慰める身になってほしい。

今日はそんな風になってほしくなかったのだが、願いは叶わなかったか。

 

 

「何かあっち面白そう!ちょっと行ってきますね!」

「さっき火傷するって言ってたけど、行っちゃったね。やっぱあの子達といる方が楽しいのかな?」

「いや・・・ありゃあそろそろ暴れるぞ。」

「あ~マジか。何で釘刺しておかんねん。」

「アイツ予想以上に酒弱ぇんだよ。未だに酔っ払う境目分かってねぇみてぇだ。」

 

 

既にしゃっくりを数回して酒の影響で顔を真っ赤にしているので、周りから見ても酔っ払っているのは明白だった。

爆撃は向こうで騒いでいた男子諸君に降り注ぐ。

 

 

「射場さんのちょっといい~とこ見てみたい!!」

「そ~れ!イッキ!イッキ!イッキ!イッキ!」

「おらぁぁぁぁ!!まだまだ儂ゃいけるで!」

「さすがっス!射場さん!!」

 

 

 

もう全員フラフラの状態で吉良は完全に潰れている中、立ち上がった射場の許に猛スピードで駆けよってくる者に気付けた者はいなかった。

 

 

「次は檜佐木!!おどれがいぶびゅおぉっ。」

「いっ・・・射場さん!!!」

 

 

ドロップキックを射場の背中にクリーンヒットさせた隼人は、そのまま倒れ込む勢いを使って最も射場の近くにいた阿散井の胸倉を引き寄せ、肘で思いっきり腹を打った。

プロレス技を決めこみ、ち~んと阿散井は意識を失う。

 

 

「ぶぐぉっ!!!」

「あ、阿散井!!おのれぇ!侵入者かぁ!阿散井を倒すなんて許せん!」

 

 

千鳥足で駆けていく修兵に対し、泥酔しているとは思えない程の俊敏さで隼人は移動し、修兵の左脇腹を殴る。

 

 

「ごあっ!!」

「おらよっとぉぉ!!」

 

 

そのまま胸倉を掴み、拳西に教えてもらった渾身の背負い投げをお見舞いしてやった。

頭を打っていないにしても酔っ払っている以上凄まじいダメージになるので、情けなく修兵も気を失ってしまう。投げた先にいた大前田に直撃し、ふたりとも目をぐるぐるに回していた。

 

 

「おい!テメェ急にしゃしゃり出てきて一体何の真ぶぅっ。」

「一角!!ぐぉっ!」

 

 

立ち上がった斑目に対し隼人は至極単純に顔を真正面から殴りつける。

弓親には足払いをしただけだが、頭をしたたかに畳に打ちつけ、二人とも気を失ってしまった。

 

 

最後のターゲットは、既に潰れていた吉良に向かう。

 

 

「おいテメェ、なーに潰れちゃってんだよ。」

「うぇ、口囃子さん?」

 

 

ヒック、としゃっくりをしている吉良は未だに何が起きているのか分かっていない。

 

 

「折角この口囃子様からのありがてぇ一発お見舞いしてやろうと思ってたのによぉ!なーに呑気に寝っ転がってんだ!!!あぁ!?!?」

「いや、ちょっと意味が分からないです・・・。」

「わっかんねぇモンは理解するモンだろぉがよォ!!!テメェの頭に瓶でも打ってやろうか!!」

「ひっ・・・ひぃ・・・!」

「もっとしゃんとしたらどうだ!!副隊長サマがそんなんじゃ情けねぇぞクソチ●コが!!!」

 

 

潰れていた吉良は辛うじて酔いを僅かに覚ましたが、だとしても今起きているカオスな現実が理解出来なかった。

一緒に飲んでいた面子はあっちこっちで伸びており、残っているのは自分しかいない。

そして何故か突然目の前に現れた口囃子隼人によって、意味不明な恫喝を受けていた。

 

しかも恫喝が終わったかと思えば肩を前後に揺すり始めた。

こんなの酔っ払いには一番やってはいけないことだ。

一瞬で吐き気をもよおす。

 

 

「ねえねえ、なーんであの中で一人で伸びてたの?まさか酒弱いの?えっそれは別に否定しないけどさ、雛も「悪りぃ、コイツが邪魔したな。」

 

 

中々恥ずかしいことが皆の前にバレそうになった所で、新隊長の二人が見かねてこちらにやってきた。マジで助かった。

 

 

「大丈夫かい、イヅル。」

「おっ、鳳橋隊長!」

「ちょっとハヤトは酒が弱くてね、飲み過ぎたらすぐ暴れちゃうんだよ。外の風浴びてこようか。」

 

 

ローズに連れられた吉良は一旦外に出て酔いを醒ますことにする。

あんなに酔っ払って暴れる隼人を吉良は見たことが無かった。

いつも飲み会では酒の量をかなり抑えていたが、飲み過ぎるとこうなるからだったのだろうか。

ぼんやり考えながら外を見ていると、気分も徐々によくなっていった。

 

 

一方中では、拳西に首根っこを掴まれた隼人が未だにわーわー暴れていた。

 

 

「放して下さいよ!!情けない奴に根性入れてやんないと!」

「酔っ払って暴れてるオメーの方が情けねぇぞ。」

「はぁっ!?伸びてる奴の方が情けな「暴れんのもいい加減にしろ!!!!!!」

 

 

百年ぶりの本気の怒号に、身を縮こめる。

ここまでガチで怒っているのはひょっとしたら子どもの時でも見たことが無かったかもしれない。

一瞬で酔いが醒めた。

 

 

「この辺で伸びてる奴全部お前がやったんだぞ!!飲み過ぎんなってあれほど言ったよな!?何で理解しねぇんだよ!!」

「だって、いっつも、気付いたら酔っ払ってて、気付いたらこうなってて・・・。」

「二度と酒なんか飲むな。お前が飲んだら迷惑しかかかんねぇ。そんな奴が酒なんか手出すな。」

 

 

突きつけられた言葉に隼人はひどいショックを受けた。

数日前は一緒に酒でも飲むかと誘われたにもかかわらず、今日は二度と酒を飲むなと突き放される。

そりゃあ自分が全て悪いのは分かっている。こんなことして謝っても許してもらえるとは限らない。

しばらく距離を取られてもしょうがない。

でも。

 

 

「・・・楽しいからいいじゃん。」

「・・・今何つったよ。」

「楽しいからいいじゃん!こうやって皆で仕事の事考えないでお喋りして、普通の日常過ごせることがどれだけ幸せか分からないんですか!?ちょっとぐらい羽目外してもいいじゃないですか!」

「んな理由で他人傷付けるバカにお前を育てた覚えは無ぇ!!」

「分かってますよ!でも気付いたらこうなってたんですよ!―――――止められなかったんですよ!!それぐらい仕方ないじゃん!!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

「なっ!ここで泣くかよ!!!」

 

 

結局隼人はいつも通りわんわん泣いてしまった。

目まぐるしすぎる感情の変化に拳西ですらついていけない。

周りのギャラリーは言わずもがな。皆ドン引きしている。

 

ただでさえ以前は静かで大人しい青年だった死神が、今となっては酒に酔った挙句凶暴化して他の集団を引っ掻き回し、自分で始末をつけられずわんわん泣いているのだ。

子どもか!とツッコミたくなる。

毎度の如く拳西は肩を貸してやり背中をさする。甘いと言われるかもしれないが、こうすればいつかは泣き止んでくれるのだ。

 

少し時間はかかったが。

 

 

「帰って説教だ。寝れると思うなよ。」

「ごめんなさい・・・。」

「お前らも騒がせて悪かったな。」

 

 

のされた男連中ではなく見ていた女性死神に拳西が代わりに謝罪した。

彼らには後で隼人に直接謝罪をさせる必要がある。

 

謝罪された女性死神は皆何とも言えない表情をしていた。

そもそも実害は無いし、騒いでいた男連中に辟易していたため、逆に少し静かになったのでちょっとありがたかった。

 

 

「別にいいですよ。あたし達、口囃子さんの面白いトコ見れたので!」

「なんか、凄かったですね。あんなに大暴れして・・・。」

 

 

松本と雛森がそれぞれざっくりした感想を述べているのを見た後、近くにいた七緒を発見する。

心底呆れた顔をしてため息をついていた。

 

(何やってんだよ、カッコ悪りぃとこ見せやがって・・・。)

 

隣で腕を掴まれ、俯いて鼻水を啜っている隼人を見て、こんな調子では上手くいかないだろうと拳西は勝手に息子の恋愛を諦めていた。

 

その日の夜中は九番隊に設えた拳西の私室で、いつも以上に脂の乗った説教を朝まで受けたとか受けなかったとか。

翌日、二日酔いではあるがしっかり関係各所に謝罪に赴き、お許しを得られた。

 

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