私は弱い人間だ。平気で他人に嘘をつくことができる。
自分のエゴのために、自分の名誉のために、プライドのために平気で嘘をつける.そんな人間である。
そんな罪深い私だが、思い人は人並みに存在している。彼女は向かいの家の娘、田中である。彼女の優れた容姿は私の心を癒やし、彼女の暖かい心は俺のこの歪んだ心さえも包んでくれる。そう思わせるような人物である。
ある日のことだ。私は近くの図書館で勉強をしようと思い顔を覗かせたところ、古くからの親友である吉田と遭遇した。
彼とは小学校の頃からの付き合いであり、自他ともに認める親友である。俺は彼にそっと声をかけようとした。だが、少し彼を観察する時間があったからなのかは分からないが、彼の様子の違いに気づいた。普段の彼なら、俺の存在などすぐに気づく、だが今日は気づかない。彼は何かを深く考えているようだ。
俺はしばしの間動きを止めていたが、彼に声をかけることにした。彼は俺の方へ振り向くと、ああ、お前か。丁度よかった。少し悩みを聞いてくれないか? と俺に聞いてきた。どうやら悩みがあったらしい。俺は彼に了承の旨を伝えると、近所の公園へと場所を移した。この相談が悲劇のきっかけになるとも知らず.
彼の放った言葉に俺はしばらく返事ができずにいた。その時の俺の衝撃と言ったら言葉では中々言い表せないだろう。俺は胸を釘で打たれたかのような錯覚を覚えつつ、彼の発言に間違いがあったのではないかと疑いだした。そこで俺は彼にもう一度言ってもらうことにした。できれば聞き間違いであって欲しかった。もしくは彼の気が短期間で変化することを望んだ。だが彼の言葉に変化は無かった。
「実は俺、田中が好きなんだ」
石の様に動かない体と、日に当てられたように働かない脳を自覚。しばらくして、俺は徐々に彼の言葉についての思考を開始していた。俺は今確かに、こいつの恋心の吐露を聞いた。聞いてしまった。しかも、相手は俺の愛してやまない田中である。付き合っているわけではないが。
もしこれが、俺となんの関わりのない普通の女であったのならば、俺は心の底から彼を応援したであろう、そう迷いなく思えるほど彼と私は硬い絆で結ばれいる。すくなくとも私はそう思っている。だが、そうは行かない理由があった。彼女とは俺が結ばれるのだ。彼に奪われるわけにはいかないのだ。
俺は彼になぜ好きになったのか理由を聞いてみることにした。まるで情報を秘密裏に収集するスパイかのように。彼は、俺の心など露も知らないので、赤裸々に語ってくれた。小学校から好きだったこと。彼女の優しい性格が好きだということ。そして、1週間後に彼女に告白しようとしているのだということを。
彼が俺に混じりけのない信頼のもとで俺に語ってくれいることを俺は分かっていた。だからこそ彼の気持ちが本心であることは真実であることを強く実感した。そして、実感した上で弱い私は、どうにかして彼に彼女を奪われない方法がないかを考えていた。