な、なんだ??
ラディッツも大猿化したとき、理性を保てないのか??
目の前で、周りの岩山を殴りまわっているラディッツを見て、わずかに動揺してしまう。
確かに僕も大猿化をしたときは理性が保てなかったが、過去にベジータさんが大猿化をしたとき、理性を保てていたことから、訓練次第で理性を保てるようになるのだと勝手に判断していたがどうも違うらしい、体質的な問題なのだろうか。
「ヤムチャさん、天津飯さん、チャオズさん! では、打ち合わせ通り、僕がラディッツの気を引きますので隙を見て尻尾を切って下さい!」
あのまま暴れられて人の住んでいる場所に気功弾を撃たれる前にラディッツを止めることが何より優先だ。
そのため少し慌てたように3人にそう声をかける。
「よし、まかせとけ! 俺だって役に立てるっていうところを見せてやるぜ!」
ヤムチャさんは口ではそう言ってはいるものの、その顔は緊張に包まれていた。
だが無理もない、今のラディッツとヤムチャさんでは正直強さの次元が違うのだから。
もし今のラディッツから一撃でももらえばヤムチャさんたちの命はないだろう。
天津飯さんとチャオズさんもラディッツとの力差はわかっているのだろう、
「……ああ、悟飯にここまで戦ってもらっているんだ、俺たちだって全力でやるまでだ。」
「う、うん……! 頑張る!」
と、不安を隠し闘う姿勢を見せてくれている。
……絶対にこの3人にラディッツの攻撃を当てさせない。
僕はそんな3人を見て改めてそう心に刻み、ラディッツに向き直った。
しかし一つ嬉しいことがあったとすれば、ヤムチャさんから渡された仙豆の存在だろう。
これで、仮に界王拳を使い切っても回復ができる。しかもパワーアップの特典付きだ。
……よし、この仙豆の存在は大きい。焦らず冷静に対応するんだ。
改めてラディッツに向き直り、そのまま界王拳を発動させ、ラディッツの元へ迫っていく。
近づいていくと向こうもこちらに気付いたのか、ギロリとこちらを睨みつけてきた。
ラディッツはその大きな口を開き、こちらめがけて気功弾を打ち付けてきた。
威力は言わずもがな、しかしそれを難なく避けながらラディッツに迫っていく。
初撃を避けられたことで、ラディッツは気功弾を連射してくるが、そのすべてを避け、逆にこちらから気功弾を数発打ち付ける。それらはすべてラディッツに命中するがダメージはほとんどないようだ、やはり半端な攻撃は通用しないらしい。
構わずそのまま接近していくと、相手は気功弾から肉弾での攻撃に切り替えてきた。
ラディッツは己の腕を力いっぱいに振り回したような攻撃を繰り出してくるが、動作にムラがあるため避けるのは容易い。
そのまま攻撃をかいくぐっていき、右腕に力を込め、相手の額に渾身の右ストレートを放つ。
『ドンッ!』と、攻撃は見事に決まった。ラディッツは少し苦しそうに唸り、僕を払いのけてくる。
やはり大したダメージにはなっていない……か。
その証拠にラディッツは、すぐさま体勢を整え、こちらに攻撃を仕掛けてきた。
いったんラディッツから距離をとり、こちらも体勢を立て直す。
分かっていたことだが、改めて自分とラディッツの戦闘力差には思わず愕然としてしまう。だが、こちらの力を込めた攻撃ならば多少なりともラディッツに通用することは分かった。
後は、このまま攻撃を続け、ラディッツの注意をこちらに引き付けるだけだ。
そう、それでいいはずだ……。
状況を見れば、こちらが有利としか思えない。
しかし胸の内は、そんな状況とは対照的にもやもやとしていた。
というのも、まず大前提として大猿化したラディッツが予想に反して、あまり強いとは思えないのだ。
確かにパワーが圧倒的であることは疑いようもない。
しかし理性を失っていることもあるためか、そのパワーを活かし切れていないのだ。動きは荒い、気功弾も口から吐いてくるため、口を開いた瞬間をしっかり見極めれば躱すことは難しくない。
ベジータさんは大猿化した際、そのパワーと巨体を完全にコントロールし、それを活かす戦いをしていたという記憶があったのでラディッツにも警戒していたが……。
これでは倒すのは難しいが尻尾を切るだけならば、僕一人でもなんとかなったのではないかというレベルだ。
いや……、これまでのラディッツの戦いぶりを見ていれば、これだけで終わるとは思えない。
可能性をいえば、今は理性を失っているフリをしているだけというのも考えられるのだ。こちらが油断するときを伺っているのかもしれない。
不気味ではあるものの、油断をせず対応していこう。
そして僕は冷静に、そして警戒を解かずに着実にラディッツに攻撃を加えていった。
ラディッツは、わずかずつではあるもののダメージを受けていき、しかも自分の攻撃が全て躱され、イライラして僕を倒そうとムキになっているのが分かった。
もはやラディッツの注意は完全にこちらに向いており、今なら尻尾を切るのも容易だろう。それは3人も理解してくれており、それぞれが気を集中させ、尻尾を切るために技を繰り出さんとしているのが確認できた。
界王拳の残り時間はあと十数秒が限界であり、体が悲鳴を上げ始めていたが、なんとか間に合うだろう。
それに仮に時間切れになっても、まだこちらには仙豆がある。
さらに、念には念を入れて仙豆を口に含んでおき、万が一のときにすぐに仙豆を飲み込めるようにしておいた。
だが、この悟飯のラディッツに対する警戒は完全な深読みだった。
ラディッツにとって大猿化は最終手段であり、できれば取りたくない手段であったのだ。
理由は当然、理性を失ってしまうからである。
確かに大猿化はパワーはあるが、それをコントロールしてこそ初めて真価を発揮するのだ。
それをラディッツはしっかり理解していた。
ちなみにラディッツはベジータのように大猿化した際に理性を保つため、人工月の生成とともに、その方法を模索していたが、この一年では習得ができなかったのだ。
今回、その最終手段をとったのは、悟飯の界王拳に対抗できないと判断したからだ。無理なパワーアップをしていることは分かったが、それでも戦いつづければ自分が負けると判断したのだ。
負けることが決まっているのならば、大猿化して勝つという僅かな可能性にかけたというわけだ。もしかしたら悟飯のパワーアップの制限時間がくるまでの時間稼ぎができるかもしれないと考えたのだ。
つまり、この時点で仙豆を持っている悟飯たちの勝利はほぼ決定しており、ラディッツの勝利は絶望的だった。
だからこそ、
これから起こることは完全な偶然であった
僕への攻撃がまったく当たらないことに遂に何かが吹っ切れたのか、ラディッツが腕や足を滅茶苦茶に振り回し、暴れだした。
当然、そんな攻撃が僕に当たるわけもなく、苦も無く躱し、距離をあけていると、ラディッツが暴れだしたのを確認した3人が一斉にそれぞれが攻撃を放ったのが見えた。
そしてラディッツがヤケクソなのか、顔を振り回しながら気功弾を何発も打ちまくったのはそれとまさに同時の出来事だった。
打ち出された気功弾のほとんどがあらぬ方向へ飛んでいく。
しかし、そのうちの一発は僕のところへ
そしてもう一発は東の都の方向へ向かっていることがわかった。
すぐさま自分も、掌を東の都に向かっている気功弾に向け、自らも気功弾を打ち出す。
それは、正確にラディッツが打ち出した気功弾の下側に直撃し、軌道を上側に逸らすことができた。
しかし
自分の元へと迫っている気功弾はまっすぐに自分の目前までに迫っていた。
もはや避けられる距離ではない、かといって、それをまともに受け止められる力もない。
それを理解し、僕は迷わず口に含んでいた仙豆をかみ砕いた。
(ヤジロベーサイド)
「ひ、ひえええ……あいつら、もはや人間じゃにゃー……。」
ヤジロベーは悟飯たちとの戦闘を見て自分との戦闘力差を感じ取り、自分が役に立てないことを確信していた。だからこの場から逃げることは必然であり、当然のことだと自分に言い聞かしていた。
しかし、ともに修行をした身としてこのまま逃げるのも罪悪感に包まれ、戦いの場から少し離れたところをうろうろしてるという状況だった。
「お、おれが逃げるのは、しかたねえことだよなぁ……。」
そう呟きながら岩山をトボトボと歩いている時だった、視界に岩山以外の何かが映ったのは。
ササっと岩陰に隠れ、様子を伺うと、そこにいたのはなぜかロープで縛られて倒れている人だった。おそらくサイヤ人の一人だ。
そのサイヤ人は、唯一動かすことができる口を器用に使いながら何やら瓶のようなものから粒のような何かを取り出しているところだった。
「なにをしとるんだ、あいつは……?」
つづく
第15話読んで頂いてありがとうございます!
ヤジロベーのしゃべり方がよくわからないですね……。
さて、以前から活動報告するといってできていなかった活動報告をようやくしましたのでよければ見てください!
内容は下記2点です。
・ナメック星到着時の悟空の戦闘力を勘違いしていた件について
・悟飯の戦闘力を5万にしたことについて
↓URL
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=240921&uid=223978