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「な、なぜ栽培マンがここに?」
栽培マンの登場に驚いたのはこちらだけではなかったらしい。
ラディッツも状況が飲み込めていないようで、その顔は動揺に包まれている。
たしか栽培マンは、ナッパが元となる種?のようなものを持っていたはずだけど、ナッパが栽培マンをこちらによこしたのだろうか?
「……いや、そうか。ナッパのやつが意識を取り戻して栽培マンだけをこちらに向かわせたのか。くくく、余計なお世話だと言いたいところだが、今回に限っては助かった。悟飯はともかく、カカロットの野郎はまだ動けそうだからな。戦力は多いほうがいい。」
ラディッツもこちらと同じようなことを考えたのか、勝ち誇ったようにそう言ってくる。
確かにこのままではだめだ、元々敗北濃厚だった戦局がより絶望的になってしまう。
僕一人が死ぬならまだいい、だがこのままでは地球が滅んでしまう。
さらにこの状況に畳みかけるように、栽培マンが「ギャー」と耳障りな雄たけびをあげ、こちらに飛び掛かかるべく、構えをとってきた。
ラディッツはそれをニヤニヤとしながら見つめているだけだ。
それに対し、僕は何もできない。
……ここで終わるのか?
僕がそう思うと同時に栽培マンが飛び掛かった。
僕ではなく、ラディッツに
「なっ!? こ、こっちではない!! 敵はあっちだ!」
栽培マンは鋭い爪でいきなりラディッツの喉元を掻き切らんとしたのだ。
当然、ラディッツにとっても予想外だったようだが、ぎりぎりでそれを躱し、敵はあっちだと必死に栽培マンに訴えかけている。
……何が起きているんだ??
目の前で起きたことが信じられなかった。僕が混乱している間も栽培マンはラディッツに追撃の手を緩めようとしない。
前の世界では、栽培マンは僕たちの敵として立ちはだかったのだ。
間違っても味方などではなかったはずだ。
しかし、現に栽培マンは本来の敵であるはずのこちらを見向きもしていない。
懸命に説得を続けるラディッツだが、その言葉は届いていないようで、ラディッツにひたすら攻撃を加え続ける栽培マン。
「ど、どういうことだ……ナッパ以外の誰かが種を植え、栽培マンに命令したのか??」
栽培マンの攻撃をかわし続けるラディッツは、そんなことをぶつぶつ言いながら、何かを考えているようだ。
「……はぁ、はぁっ、くそっ、今の体力だとこいつを倒すのもしんどいというのに。」
しばらく粘ったラディッツだったが、ついに栽培マンを説得するのを諦め、倒すプランに切り替えたようだ。
栽培マンから距離をとり、臨戦態勢をとるラディッツ。
先ほどのラディッツの言葉から考えると、栽培マンは種を植えた人の命令を聞くのだろうか? でも誰が……。
しかしだ、もしこの状況を誰かがこちらが有利になってくれるようにしてくれたことだとしても、あの栽培マン1体では、ラディッツの相手が務まるとは思えない。
ラディッツの体力を削ることはできるだろうが、たちまちのうちに栽培マンはやられてしまい、また状況は振り出しに戻るだろう。
しかし、その時だった。
「「ギャギャーー!!」」
再び耳障りな叫びが別方向から聞こえてきた。
急ぎ、声のしたほうに視線を向けると、そこにはさらに別の栽培マンが2体いた。
新たに登場した二体の栽培マンも最初の栽培マン同様こちらを見もせず、ラディッツの方を睨み付けている、今にも飛び掛かりそうな雰囲気だ。
「くっ!? まだいたのか!?」
ラディッツは新たに登場した栽培マンが己に敵意を向けていることを確認し、本気で焦り始めた。
その顔には大量の冷や汗が伝わっている。
確かに今のラディッツの気を見ても栽培マン3体を相手にするのはしんどそうだ。
……これは、もしかして希望が出てきたのか?
そして間もなく、栽培マンが示し合わしたように一斉にラディッツに飛び掛かった。
突然三方向から攻撃を受けたラディッツは、2体の攻撃を躱わし、いなすことには成功するが、1体が繰り出した、蹴りをモロにくらった。
「ぐっ……!? はぁっ、はあっ……さ、流石にまずい……はぁ。」
その後もスタミナをほとんど使い果たし、防戦一方のラディッツに対し、体力万全な栽培マンは疲れる様子をみせることもなく、徐々にラディッツを追い詰めていく。
誰の目から見てもラディッツが劣勢であることは疑いようもなかった。
僕はそんな戦いを、状況が理解できないまま呆然と見つめていた。
その時だった
「……おい」
「うわっ!?」
突然、真後ろから声をかけられて思わず、ビクッと反応し、大声をあげてしまう。
ラディッツたちの戦いに夢中になりすぎて、接近者に気が付かなかったらしい。
「しっ、大声をだすんじゃにゃー。」
顔を動かすことはできなかったが、声で分かった。ヤジロベーさんだ。
そして気で分かったが、ヤジロベーさんのすぐそばに栽培マンがいるぞ……??
「あ、あの……ヤジロベーさん。な、なぜ栽培マンを連れているんですか?」
「ん? ああ、これか?? 俺の部下だ。」
……ん? 部下? ……もしかして栽培マンの種を植えて、ラディッツを攻撃するように命令したのってヤジロベーさんだったのか?
「ちょいと、ハゲのサイヤ人に口を割らせてな。……ていうかおみゃー、なんでこいつらの名前を知っとるんだ??」
ここで、ヤジロベーさんから痛いところを突かれた。そういえばこの世界では、僕は栽培マンをまだ知らないんだった。
「まあいい、詳しい説明は後だ。こいつらのおかげで悟空の方はもう決着がついた、後はあいつだけだ。といっても、もう時間の問題だけどな。」
そう言われて気付いたが、ベジータさんの気がほとんど消えかかっていた。
完全に消えてはいないことから、おそらく気絶しているのだろう。
まさか、こんな形で決着を迎えることになるなんて……。
ちなみに父さんたちは、ベジータさんとかなり激しい戦いを繰り広げたようで、今は休息に努めているようだ。
そしてその後も、ラディッツに反撃の機会が訪れることもなく、戦いは終着へと確実に向かっていった。
「はぁっ、くそ……まさか栽培マン如きにぃっ……!」
ラディッツの気はもはやほとんど残っておらず、その肉体は傷だらけで、フラフラの状態だ。対する栽培マンにはまだまだ余裕がある。
「終わったな……。」
ヤジロベーさんがつぶやいた言葉通りだ、誰の目から見ても勝敗は明らかだった。
しかし、ラディッツはここで、突然キッと鋭い目つきで僕の方を睨んできたかと思うと、
「孫悟飯っ!! これで終わりだと思うなよっ!!」
どこにそんな大声を出せる元気があったのか、大地が震えるような怒りの咆哮に辺りにいた栽培マン、ヤジロベーさんが一瞬怯んだ隙にラディッツは自身の右手を高く掲げた。
……っ!?
ラディッツが何をしようとしているかを瞬時に理解し、とっさの判断で目を閉じた。
その次の瞬間、目を閉じていても分かるほどの光があたりにまき散らされるのが分かった、太陽拳だ。栽培マンとヤジロベーさんが、突然の閃光に悲鳴をあげる中、光が収まるとすぐに目を開き、状況の把握に移った。
すると、そこにはどこからか取り出した小さなリモコンを操作しているラディッツの姿があった。
……確かあれは、宇宙船のリモコンだったか?
ほどなくして一人用の宇宙船が現れた、栽培マンたちはまだ目が眩んでいるようだ。
ラディッツはそのままこちらを振り返ることなく宇宙船に乗り込み、あっという間に宇宙の彼方に飛びだってしまった。
こうしてサイヤ人達との戦いの最後は何とも意外な形をもって決着を迎えた。
その後のことは記憶にない、どうも気を失ったらしい。
目が覚めた後、説明を聞くと、ピッコロさん達は軽傷であり、父さんは全治2カ月、そして僕は全治3カ月の診断を受けた。(母さんに物凄く心配され、怒られたのは言うまでもない……まあ、主に父さんがだが。)
ちなみに地球に取り残される形になったベジータさんと、ナッパも、治療を受けてもらっている。
この二人には、今後仲間になるよう説得していくつもりだ。
とにかく今回の戦いで己の反省点がたくさん見つかった。いかに自分の考えが甘かったのかもだ。
今回、たまたま犠牲無く勝つことができたが、勝敗はどちらに転んでおかしくなかった。
もうすぐで新たな仙豆ができるそうなので、傷が治り次第、修行を始める。
父さんたちも含め、徹底的に実力を底上げするつもりだ。
~フリーザ船~
「なんですって!? 戦闘力が数十万レベルの反応があったですって!?」
「……は、はい。地球という星からの確かな反応とのことです。」
現在、制圧している星の様子を見て上機嫌だった時から一転、激昂したフリーザを前に報告に来た部下もすっかり委縮してしまっている。
「……それで? その戦闘力の正体は誰なのですか?」
「は、それが、巨大な反応は二つ観測できており、一つはサイヤ人であるラディッツのものです。どうも大猿化していたようです。」
「……ラディッツ、ですって? 確かベジータの周りでちょろちょろしていた者ですね。 大猿化していたとはいえ、カスみたいな戦闘力しかなかったはずですが……本当に間違いないのですね?」
「はっ! 何度も検証しましたが間違いはありません。」
「……ふむ、何があったか知りませんが相変わらず目に障る存在ですね、サイヤ人というのは……。で、もう一つの反応というのは?」
フリーザは何かを考える様子を見せ、さらに確認を重ねてくる。
「ベジータ達の会話から推察するに、どうも地球人とサイヤ人のハーフである、孫悟飯という者のようです。この者は一瞬ではありますが、戦闘力が60万近くまであがったことが確認されています、それも大猿化もせずにです……。」
「またサイヤ人……ですか。しかも大猿化もせずに。孫悟飯……。」
フリーザはそう言うと、顔を伏せ、そのままの状態で固まってしまった。
突然の主の様子に対応に困る部下だったが、報告を続けることに決めた。
「あの……、もう一つ報告することがあり、地球という星にドラゴンボールというなんでも願いを叶えてくれるものがあるようなのです。ベジータは、これで不死身の存在になろうとしたようです。」
「何ですって!? ……くくく、決めました。やはりサイヤ人は滅ぼしてしまいましょう。今までは、コマとして良く働いていたので遊ばせていましたが、ここまで勝手に動かれたり、力をつけてしまっては、鬱陶しいことこの上ないですからねえ。」
ここでフリーザは一息つき、言葉をつづけた。
「なんでも願いを叶えてくれるドラゴンボール……素晴らしい。」
つづく
というわけで、17話にしてようやくサイヤ人編終了です!
次回からフリーザ様との戦いです!