~ベジータたちが地球に襲来してから1カ月後~
「くくく、ようやく到着しましたか……。この時を待っていましたよ!」
宇宙船の窓から見える青く輝く地球を確認し、喜びを隠せないフリーザ。
ドラゴンボールによって、もう少しで永遠の命が手に入るのだから当然の反応だろう。
しかし、そんなフリーザとは対照的に険しい表情を浮かべるのは、美しい緑色の長い髪が特徴的であり、戦闘服とスカウターを身にまとうフリーザの側近、ザーボンである。
「……フリーザ様。報告にあった孫悟飯という者には警戒をしたほうがよいかと。大猿化していない状態で戦闘力が60万近くということは、大猿化した際は、戦闘力は600万近くまで上昇するということになりますので。」
「まったく、ザーボンさんは心配性ですねぇ。仮に戦闘力が600万だろうが私の敵ではありませんよ。……まあ、久しぶりに変身する必要はありますがね。」
「フリーザ様の変身かぁ……前に一回見たことがあるけど、あの時のフリーザ様は半端なかったもんなぁ。」
動じる様子のない主に、そう返事したのはザーボンと同じくフリーザの側近であるドドリアだ。
「……まあ、そうだが。」
バツが悪そうに返事をするザーボンも内心では自らの王であるフリーザが負けるとは微塵も思っていなかった。
ザーボンが心配しているのは、孫悟飯とフリーザが戦う際に流れ弾が来て自分が危険な目に遭わないかを心配しているだけであった。
そんなことを話していると、あっという間に宇宙船は地球に接近し、大気圏を抜け、間もなく地表に降り立った。
「……ここが地球ですか。ふふふ、ここに何でも願いを叶えてくれるドラゴンボールがあるのですね。」
宇宙船から降り、あたりを見渡すとそこは荒れ地に近く、殺風景な景色が広がっていたが、今のフリーザにはそれでさえも辺りが宝の地に見えた。
「フリーザ様。どういたしますか? 戦闘力が高いものを順番に当たっていき、ドラゴンボールの情報を集めていきましょうか?」
そう提案してくるザーボン、そしてドドリア、さらにその後ろに控える部下達がフリーザの指示を待ち、整列している姿を確認し、フリーザは手を顎に当て、少し考えてから
「……ふむ、そうですね。まずは情報集めから「その必要はないっ!!」」
!?
突然の大声に全員がその声のしたほうに振り向く。
「ベ、ベジータ!?」
そこにいたのは、以前まで装着していたスカウターはなく、真新しい戦闘服に身を包み、敵意をむき出しにしているベジータだった。
以前までフリーザに表面上だけは、敬意を示していたベジータの姿からは信じられない姿だった。
突然のベジータの登場に驚く一同だったが、いち早く冷静さを取り戻したフリーザはゆっくりと口を開き、小ばかにしたように言葉を並べていく。
「おやおやベジータさん。久しぶりですね。どこにいったのかと思っていましたが、地球にいたのですね。それにしても、しばらく見ないうちに随分と態度が大きくなったようですね?」
「……ふんっ、貴様は未だにその気持ち悪い猫の皮を被っているんだな? フリーザ。」
「……。」
ベジータのかつての主従関係を無視した振る舞いにフリーザの額に青筋が浮かび、口元もピクピクと痙攣している。
「ベジータ、貴様! フリーザ様になんて口のきき方だ! 敬意の示し方も忘れたのか、この猿め!」
このままフリーザが怒っては、こっちにまでとばっちりが来る可能性があるため、慌てたように止めに入るザーボン。
「けけけ、死んだなあいつ……。」
ドドリアは、そんなベジータとフリーザの様子を面白そうに見物をしている。
ベジータは自分に噛みついてきたザーボンにゆっくりと視線を移すと
「……ザーボン、いいことを教えてやろうか? 俺はとある理由から、ここのところずっとムカついていてな、ストレスが溜まっているんだ。だからお前たちは今からこの俺様のストレス解消道具にしてやる。光栄に思うがいい。」
突然、そんなことを口に出したベジータの言葉にシンと一瞬辺りが静寂に包まれる。
そして
「……くくく、はははっ! ベジータ貴様、地球人に負けてしまって本格的におかしくなったのか?? 相手の力量も測れんようになっているではないか。いや、スカウターがないから当然か、どうした? 一か月前の戦いで大事なスカウターが壊れてしまったのか?? くくく。」
ベジータのあまりにも狂ったような言葉にザーボンをはじめ、周りのフリーザの部下達もつられて笑い出し、下品な笑い声があたりに響き渡る。
先ほどまで怒りに包まれていたフリーザさえも、馬鹿にしたように笑い声を漏らしている。
あたりが緊張感のない緩み切った空気が支配する中
「はははhっ! ……」
ボンッ!
突如の破裂音
同時にザーボンの高らかな笑い声が消失した。
周りにいた者が何事かと視線を向けると、皆が一斉に目を見開き、言葉を失う。
先ほどまでザーボンが立っていたすぐ近くに、いつの間にか移動したのかベジータが立っていた。
しかし問題はそこではなくその隣
そこには首から上を失ったザーボンのものと思われる胴体があったのだ。やがて支えを失ったザーボンの胴体がドサッと地に倒れた。
ベジータは、そんなザーボンの亡骸をごみでも見るかのように一瞥し、そしてその視線を次は、ドドリアに向ける。
何が起きたか分からないドドリアだったが、本能的に恐怖を感じ、先ほどまでの態度とは一変、怯えたようにたじろぎ
「ひっ! ちょ、ちょっとm! ……」
ボンッ!
再びの破裂音の後、ザーボンと同様、首を失ったドドリアの亡骸が地に倒れる。
そしてそこには、またもやいつの間にか移動したベジータの姿があった。
ここまで来ると、周りの者も何が起きたかをだんだん理解してくる。
どうやったかは分からないが、ベジータの手によって自分達よりも遥かに高い戦闘力を誇るザーボンとドドリアが一瞬のうちに殺されたのだ、と。
そこからは恐怖に叫ぶ者、逃げようとする者、様々な反応を示し、一気にあたりは騒がしくなる。
ちなみにベジータがザーボンとドドリアをどうやって倒したのかだが、近づき顔を殴りつけただけという実にシンプルなことしか行っていない。
ただあまりの速さに、常人ではベジータの姿をとらえることが出来なかったというのが真相だ。
そんなザーボンとドドリアに積年の恨みを晴らしたベジータのはずだったが、その顔は怒りに包まれていた。
「……俺はこんな雑魚どもの元で今までのうのうと生きてきたのか。……ちっ、逆にストレスが溜まってきやがった。」
そう言うとベジータは今度はフリーザの部下たちに焦点を合わし、同時に右腕を前に突き出し、掌を正面に向けた。
「……はっ!」
気合の声と共に手のひらから気功波が放たれ、フリーザの部下達を一人も余す来なく飲み込んでいく。
悲鳴もろともかき消した気功波の後には、残りカス一つない荒れ地が広がっているのみだった。
「これで残りはお前だけだ……フリーザ。」
突き出した腕を静かに下ろしながらそういうベジータに対しフリーザはと言うと、部下が殺されているのにも関わらず顔色一つ変えずにじっとベジータの様子を見ていた。
しかしここに来てようやく口を開き
「……ふん、見ない間に何があったのか知らないけれど随分力をつけたようだね? でもねぇ、ベジータ。僕からも一ついいことを教えてあげよう。半端な力を身に付けてしまった者は、かえって早く死ぬんだよ。」
「はっ、その言葉、そっくりそのまま返してやる。」
「口の減らない猿め……、前々から目障りだったんだ。なぶり殺しにしてくれる!」
とうとうベジータの態度に怒りの緒が切れ、口調を荒々しく、怒りをあらわにし、じりじりとベジータに迫るフリーザ。
「ようやく本性を現しやがったな。フリーザ、貴様はあっさり死んでくれるなよ?」
「ほざけえええ!!!」
怒りの咆哮と共に、地面が爆散するほどの勢いで蹴りつけ、目にも止まらぬ速度でベジータに迫り、顔面目掛けて拳を振るう。
しかし、それをベジータは首をひねり難なく避けると、カウンターの要領でフリーザの腹部に思い切り己の拳をねじ込んだ。
ドンッ!!!!
「がっ!!??」
一撃。
ベジータの放った、たったの一撃でフリーザは口から血を吐き、ヨロヨロと立ち続けることすら困難なほどのダメージを負ってしまう。
フリーザ本人としても何が起きたか分からず、信じられないものを見る目でベジータに目を向ける。
ちなみにスカウターに表示されている戦闘力は最初から1万ほどであり、一切変化していない。信じがたいことだが、おそらく攻撃するその瞬間のみ戦闘力を上げているのだろう。
「ま、まさか、孫悟飯以外にこの私にダメージを与えられる人間がいるとは……。」
事前の情報で、孫悟飯だけは変身しなければ厳しい戦いになると考えていたが、まさかベジータ相手にダメージを負わされるとは思っていなかった。
そのため思わず漏らしたといった感じのセリフであったが、ベジータはこれにピクリと反応し、
「孫……悟飯だと? ちっ、どいつもこいつも孫悟飯、孫悟飯と……。」
今日一番の怒りに身を包むベジータは、八つ当たりだとばかりに気功波を打ち、フリーザに命中させる。
この攻撃も見事に決まり、フリーザはさらにダメージを負い、身に付けていたスカウターも破壊されてしまう。
「くっ、こ、このままではまずい第二形態……いや……。」
ベジータのあまりの戦闘力に変身することを決意するフリーザだったが、果たして第二形態で対抗できるだろうかとの疑惑がある。
それほど今のベジータの実力は底が見えず、驚異的な力を隠し持っていることが何となく感じ取れた。
……やはりここは、第3形態に。
いや……。
「ふん、どうした? それで終わりか? 知っているぞ、お前は変身することができる、と。まあ、変身をしたところで、何が変わるというわけでもないがな。」
小馬鹿にしたようにそう言ってくるベジータに対し、フリーザはギロリと圧を感じさせる視線を向け、決意する。
「変身のことを知っていたか! いいだろう、大サービスだ! 俺の最強の姿でお前を宇宙の塵にしてくれるっ!! はああっ!!」
そう叫ぶや否や、フリーザは怪しく輝く光に包まれ、どんどんと気が膨れ上がっていく。
その戦闘力の上昇具合に思わずベジータも、ほう、と感心したようにフリーザを見つめる。
そして光が徐々に収まっていき、やがてすべての光が消え、後には姿を変えたフリーザがいた。
見た目の大きさこそ先ほどまでの姿と大差なかったが、内に秘める気の絶対量が桁違いのものになっていた。
「……中々やるじゃないか? 正直ここまで戦闘力を上げてくるとは思わなかったぞ?」
しかし、戦闘力を何十倍以上にも上げたフリーザを見てもベジータの余裕の態度が崩れることはない。
「はっ、強がりも大概にしろよ? この姿の僕に敵う者なんてこの世に存在するはずがないんだからね。」
対するフリーザも絶対的な自信からか、余裕の態度を崩さない。
そんなフリーザを見て、ベジータはにやりと口元を歪めると、
「……フリーザ、お前も変身したんだ。今度はこっちが変身する番だ。」
「何? まさか大猿化のことを言っているのか? それで勝てると思っているのならとんだ大間抜けだね。」
「……違うな、くくく、ようやく面白くなってきた。楽しみだぜ、お前がどんな反応を見せるのかがな。」
「???」
ベジータの言っている意味が分からず、不思議そうな表情を浮かべるフリーザを前に、ベジータは、全身の気を集中させ、解放させる
「はああああ!!!」
「な、なにっ!!!???」
驚愕の表情を浮かべるフリーザの目に映るのは、金色の髪、緑色の瞳、そして光り輝く金色のオーラを全身に纏ったベジータの姿だった。
つづく