【FGOキャラSS】紡ぐ物語、続くこの時代【総集編】 作:ねぎぼうし
──もともと、ナイチンゲールという偉人が好きだった。
現実と真っ向から向き合い、戦い、医学を大きく進歩させた人。
カッコいいじゃないか。
ただ、実際の……俺が召喚したナイチンゲールは、少し凶化して、知性を失っていたが。
それでも、彼女はカッコよくて。
『すべての命を救いましょう。
すべての命を奪ってでも、私は、必ずそうします。』
その言葉を聞いた時、全身の鳥肌が立った。
コレだ。コレなんだ。俺が憧れたナイチンゲールは。
そう思った。思ったと同時に──
自分が情けなくなった。
今日も、俺は……病みながら生きる。
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「マスター、どうしました?」
「えっ、あっ、ごめん婦長。ボーッとしてた」
「ふむ……こんな真昼にとは不自然ですね。ちゃんと寝ていますか?」
「大丈夫、ぐっすりだよ」
「そうですか。念のため、メディカルチェックをしましょう。第六特異点はすぐそこです。それまでに体調を万全にしましょう」
そう言ってナイチンゲールは俺を引っ張り廊下を歩く。
「大丈夫だって。婦長は心配性だね」
「ええ、健康はなにより優先すべきものです。……失礼します!」
勢いよく扉を開けるので、医療室の中にいた職員が肩を浮かせて驚いていた。
「マスターのメディカルチェックをお願いします」
「立香くんの?いいよ。それじゃ座って」
「まぁここまで来たなら…お願いします」
それから、いくつか職員に質問され、(時々婦長が口を挟みつつ)聴診器などを当てられた。
「うん、健康!元気!大丈夫だよ立香くん」
「ふむ……身体異常なしですね」
「第六特異点近いからね。出来るだけ健康に過ごすようにしてるんだ。うーん、元気ってわかったら体動かしたくなったな!婦長、シュミレーター行こ!」
「いいですね。適度な運動は健康に繋がります。行きましょう」
シュミレーターの詳細は大体婦長決める。
これは、うまく設定することでマスターの俺も走るような内容にする為だ。
ちなみに今日は、
「マスター、木の上に避難を!」
「分かった!」
木登りらしい。
鍛えられた体で1m地点まで登る。
今回のシミュレーションは敵に囲まれた状況。
円形に猛獣が並んでいるので高台が安全というわけだ。
しかし、突破しないといけない。
気に登りながら指示を飛ばす。
「婦長、後ろっ!」
「はぁっ!」
素早く拳銃を捨て素手で猛獣を組み伏せ腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。
猛獣も怒ったのか口から火を……火!?
「マズい!婦長!」
「分かっています!
我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)!」
瞬時に宝具を展開する。
それはあらゆる毒性、攻撃性を無に帰す。
宝具は人の生き様。嗚呼、いつ見てもやはり、この宝具は美しくて……そして……
「マスター!」
「…あっ」
次の瞬間、俺の意識は飛んだ。
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目が覚めると、知らない天井……ではなく、よく見なれた婦長の顔があった。
「目覚めましたか、マスター」
「婦長……?痛ッ…」
「先輩!大丈夫ですか!?」
どうやら今までベッドで寝ていたらしい。
起き上がると頭痛がしたので頭を抑えているとマシュが駆け込んできた。
「ここ……医療室?えっと……」
「先輩は、シュミレーターで強いショックを受けて気絶したと聞きました」
「木から落ちたのですよ。私の失態です。私の宝具は攻撃は弾けますが、自傷や事故は防げません。油断しました」
「いえ、婦長そんな……」
「もっと強くマスターに筋力をつけさせておくべきでした。これは説教ものですね」
「え、えっと、ナイチンゲールさん……?」
「ということでミスマシュ。申し訳ありませんが席を外してください」
「えっ、でも──」
「お願いします」
「はっ、はい!」
物凄い剣幕だ。これは怒ってる。
マシュは慌てて出て行き、扉の前で「また来ますね!」と言い残してから部屋を出た。
「さて……
「は、はい」
「何故、落ちたのですか?」
「うっ……筋力が足りませんでした」
「
「あー確かにそうだったね……」
露骨に目を逸らすと婦長は淡々と語り出した。
「……マスターは戦闘中は油断しない人です。いつでも的確に指示をもらえる。火の奇襲もそれで防げました.しかし……あの時、宝具を展開した時、あなたの指示が途切れた。ハッキリ言って、らしく無いです。どうしました?」
「────ははっ…凄いね……全部お見通しなんだ……。やっぱり凄いよ……婦長は……ナイチンゲールは凄いよ……」
「マスター……?」
「僕は……何も出来ないのに……婦長は全部出来ちゃうんだ……。凄い、凄いよ……!」
言葉にするたび、自分の気持ちが分かっていった。
言葉を紡ぐたび、頬に水滴が流れた。
いつだってあの宝具を見て思う。彼女は根絶を目指し戦った。
故に美しくて……そして、見るたびに劣等感を抱く。
「僕は……落ちこぼれなんです……!Aチームの皆なら…もっと早く特異点を修復していた!補欠なんです!何も出来ない!ソロモンも!何も!倒せるわけない!」
「マスター!!!」
「クリミアの……天使を知っていますか」
「……ナイチンゲール…でしょ?」
「ええ、私です。しかし、私の生活は天使とはかけ離れたものでした。全てが敵で、全てが間違っていた。周りからは病気の根絶は不可能と言われた。けれど、戦いました。そして天使と呼ばれました。ですが……私は天使などではなかった。ただの一看護婦でした。あなたと同じです。────"天使とは、美しい花を振り撒く者ではない"知っていますか?」
「はい……婦長の生前の言葉ですよね。"天使とは、美しい花を振り撒く者ではなく、苦しみあえぐ者のために戦う者のことだ"」
「つまり抗い、戦い、挫なかった先に、私は天使と呼ばれた。人々に感謝され……私は生きることが出来た。だから私は天使の名を自分で認めたのです。そして、天使のなり方を教えた。形は違えど、今はマスター、貴方が、地球上の、人類の天使なのです。不可能?無理?何も出来ない?いいですか、そんなもの、
「婦長、俺……足引っ張るかもですよ…?」
「スクタリの男よりはマシでしょう」
「俺、何も出来ないかもです……」
「それは許しません、何かはしてください」
「出来ますかね?俺でも……」
「特別な人間なんていません。やろうと思えば死ぬまでやろうとしてください。じゃないと殺します」
「……嗚呼、やっぱり……婦長は凄いじゃないですか……!!!」
「えぇ、何度も抗ってきましたから」
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────もともと、ナイチンゲールという偉人が好きだった
『すべての命を救いましょう。
すべての命を奪ってでも、私は、必ずそうします。』
その言葉を聞いた時、全身の鳥肌が立った。
コレだ。コレなんだ。俺が憧れたナイチンゲールは。
そう思った。思ったと同時に──
俺も、抗ってみようと思った。
今は昔より、ナイチンゲールが好きになっていた。
あぁ、今日も俺は──健康で、病はとうに治ったようだ。
随分心が軽くなった気がした。