マインディストピア   作:蒼かえる

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20日目

初めて略奪者を倒してから一夜明けてアルトは未だ体から溢れるグレーの煙のようなものを気にしつつも森林を抜けた。その先にはかなりの年数が経っている家が多く並ぶ住宅街があり、牛や豚が周辺を徘徊していた。

 

「変なところに来ちゃったけど……これ自衛隊のとこに行けるのか?」

 

一度自分がいる場所を確認しようとして辺りを歩いていると現代には似合わない木造の家が並ぶ場所が見えた。

 

「もしかして村か!?」

 

村を見つけたという事実に高揚しながら走って向かうアルト。しかし彼には自身に起こっている変化がどのような結果をもたらすのかを失念していた。

 

村に入ると同時にアルトは村人を見つけた。鼻が大きくハンマーを下げたベルトをしている遭遇した略奪者と少し似た顔立ちの村人に声をかけようとする。

 

しかしアルトが近づいていくと何かに気がついたように村人達が一斉に慌てふためき、自身の家に戻ろうとしていた。突然の行動に驚いたアルトだがすぐに聞こえてきた法螺貝のような音で自分が何をしてしまったのかに思い至った。

 

「襲撃……!!」

 

マインクラフトというゲームにおいて、旗持ちの略奪者を倒した場合にあるデバフを受ける。『凶兆』というそのデバフはマイクラ内の村に入ったという特定の条件でその効果が現れる。

 

入った村に略奪者が大量に襲ってくる『襲撃』というイベントが始まるのだ。このイベントの敗北条件は村の村人全員を殺害されること。そして勝利条件は襲ってくる略奪者を全員倒すこと。

 

現実がマイクラと同様になっている現状で入ってきたばかりの村に襲撃イベントが発生した。アルトは己がしてしまったことを理解し、そして絶望した。

 

 

「最悪だ……最悪だ!!」

「マズイ!マズイ!!」

 

法螺貝の音はもうすぐ近くまで迫ってきていた。慌てふためいていた村人は家に隠れているが略奪者はそんなことは関係なく襲ってくるだろう。

 

「(嫌だ!!また死ぬのは嫌だ!!)」

「(でも3人ですら手こずってた襲撃者を何十人も相手して戦うのなんてほぼ自殺行為だ!)」

 

「死にたくない……死にたくない……!!」

 

ふと、1つの考えが過ぎった。

 

 

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「駄目だ!!」

しかしすぐに頭を振ってその考えを捨てた。

 

「そんなことすればアイツらに、顔向けできない……なにより!!」

「俺が俺を許せなくなる!!」

 

「(罪悪感に苛まれて生きるのはゴメンだ……だから!!)」

 

鉄の剣を取り出しながら現れたクロスボウと鉄の斧を構える略奪者を見据える。

 

「ここで戦って生き延びてやる!!!」

 

 

 

 

 

クロスボウを構えた略奪者達はアルトに向かって矢を放った。アルトは盾を構えてそれを受け止め、略奪者達に迫ろうとする。しかし鉄の斧を持った略奪者、ヴィンディケーターが左から襲いかかってきた。

 

思いのほか強く振り下ろされた鉄の斧であったが日々の経験でしっかり盾で受け止めることができたアルト。無防備になったヴィンディケーターを横から鉄の剣で切り伏せる。追撃でトドメを刺そうと迫るが略奪者のクロスボウの矢がそれを許さなかった。

 

少し後退して矢を避けるアルトだが右腕に矢が掠ってしまう。それに構わず、矢を装填して隙を晒している略奪者に向かっていき、飛び上がって鉄の剣を振り下ろす。

 

肩から大きく斬られて怯んだ略奪者、さらに剣を突き立ててトドメを刺す。倒したことに安心するのも束の間、後ろから瀕死のヴィンディケーターが鉄の斧を振り下ろした。

 

振り下ろされる音で気付いたアルトは盾を構えて受け止める。その衝撃で盾は壊れてしまうが鉄の斧を弾くことができた。鉄の剣を横に切り払いその一撃でヴィンディケーターは消滅した。

 

アルトは他にも居るはずの略奪者達を探すために村の家へ駆けた。

 

 

 

 

 

襲撃が始まってから約30分、家のドアを破壊し中にいる村人を襲おうとしたヴィンディケーターを倒し第3波と思われる襲撃を凌いだアルト。既に5名ほどの村人が被害にあって死亡してしまっているがまだ襲撃は終わらない。

 

「(次で……ラストか……?)」

 

アルト自身も既にボロボロで食料が尽きてしまったため体力の回復も見込めない上、現在の体力も予測だがゲーム換算で半分を切っている。巨大な体と強力な突進をしてくるラヴェンジャーという敵MOBにより、頭から血を流しているせいで片目をつぶっており視界もいいとは言えない。

 

法螺貝がなると同時に現れたのはクロスボウ持ちの略奪者2名、斧を持ったヴィンディケーター2名、そして今まで来たどの襲撃者とも違う格好の敵1名。

 

「(アレは……)」

 

1人だけ違う格好をしたその敵MOBは両手を天へ向けた。瞬間地面から次々と牙が生えてアルトへ向かっていった。足を突き刺されたアルトは体制を崩して転ぶ。

 

「(アレはエヴォーカーか!!)」

 

アルトがエヴォーカーと呼んだ敵MOBは2体の剣を持った透明のような体と羽の生えたMOBを召喚した。

 

「クッ……ソッ!!」

 

足の痛みを誤魔化すために勢いよく立ち上がり迫り来る透明のMOBヴェックスとヴィンディケーターの攻撃から逃れるアルト。木製の家を裏に隠れてヴィンディケーターから逃れる。一息つこうと座りこもうとするが寄りかかっている家の壁からヴェックスがすり抜けてきたかのように現れた。

 

ヴェックスが握っている剣を振り下ろされ咄嗟に左腕を構えてしまう。体制を崩しながら受けたお陰で傷は浅いがそれでも度重なる痛みがアルトを苛んだ。

 

「クソォ!」

 

二体目がアルトに切りかかろうとするがその前に煙を上げて消えてしまった。しかしもう一体は依然としてアルトに襲いかかる。

 

アルトは突き出された剣を持っていた鉄剣で受け流す。アルトの後ろまで飛んでいったヴェックスの背中に鉄剣を振り下ろすアルト。一撃で消滅したヴェックスに一先ず安堵する。

 

「(ヴェックスは30~119秒で消滅する……ゲームの小ネタ集で言ってた通りだ……)」

 

「(そろそろ俺もヤバいな……)」

 

意識がはっきりしなくなってきたアルト。司会も歪み、もはや自分が立っているかどうかすらも判別がつかなかった。しかし今までの激闘もあと少しで終わる、その事実がアルトの意識を現実に留めていた。

 

鉄剣を杖に休むアルト。しかし顔を掠めた矢が休憩の暇を与えなかった。地面から迫り来る牙の数々。ジャンプで避けると同時に斧を持って襲いかかるヴィンディケーター。

 

振り下ろされた斧をアルトは鉄剣を横にしてガードする。地面に足が着いていない状態で行われたため、物理法則に則ってアルトは吹っ飛ぶ。地面を転がりつつ持ち物の中から使えそうなものを考える。

 

ふと、略奪者の持っていたクロスボウが目に入り自身も略奪者を倒した時に拾っていたクロスボウがあることを思い出す。

 

矢を装填された状態で持っていたクロスボウが4つ。引き金を引けば直ぐに矢が発射される状態。弓矢ほど連射性は無いものの威力は身をもって知っている。

 

アルトは近づいてくるヴィンディケーターを待ち構える。自身にもっと近づき、攻撃のために斧を振り上げたタイミングでクロスボウを取り出して引き金を引く。

 

至近距離で撃ち込んだため矢は必中。多少だが体を後ろへ逸らしたヴィンディケーターのその一瞬の隙を狙ってアルトは鉄剣に持ち替えて軽く飛んでから切りかかる。

 

大きく切りつけられたヴィンディケーターは少し逸らしていた体をさらに仰け反らせる。致命的な隙を晒したことでアルトにより再度切りつけられ、地面に倒れて消滅した。

 

しかし続いてやってくるのはクロスボウを持った略奪者2人、その少し後ろにエヴォーカー、走り寄るもう1体のヴィンディケーター。エヴォーカーが両手を上げ、地面から牙を走らせる。

 

アルトは左にローリングで回避し矢を番えたクロスボウを構える。引き金を引くが矢はどの敵にも当たらない。もう1つのクロスボウを構え直してエヴォーカーへ放つ。

 

矢はエヴォーカーの肩へと突き刺さる、追撃を考えるアルトだが迫り来るヴィンディケーターによりそれは中断する。斧を振り下ろそうと腕を大きく振り上げた相手に対してアルトは鉄剣を突いて怯ませる。

 

さらに構えていたクロスボウを頭へと向けて打ち込む。それでも倒れないヴィンディケーター。視界の端でクロスボウを放とうとする略奪者を見て咄嗟にヴィンディケーターを盾にするように回り込む。

 

アルトを追ってクロスボウを放った略奪者は味方であるヴィンディケーターを自分の手で撃ち殺した。少し動揺しているのか動きが鈍くなっているように感じたアルトは残り2つの矢を番えたクロスボウをエヴォーカーへ向ける。

 

両手で一気に放った矢はエヴォーカーの体に突き刺さる。両手を上げて攻撃しようとしていた体制のまま倒れて消滅するエヴォーカー。エヴォーカーを仕留めたことを確認したアルトは鉄剣を略奪者へ投げた。

 

胴体に刺さった剣に怯む略奪者、もう片方は矢を番えている。アルトはエヴォーカーが倒れたら場所へ走りより、落ちていたアイテムを拾い上げる。しかし略奪者に背中を向けてしまった。

 

隙をさらしたアルトへ矢を番えた略奪者はクロスボウの引き金を引く。矢はアルトの背中に突き刺さりアルトの体力は底をついた、筈であった。

 

落雷のような音ともにアルトがエヴォーカーから手にしていた緑目の木製人形は砕けてなくなる。しかしアルトの周囲には金色の膜のようなものが浮かびアルトを守っているようであった。

 

更にアルトの体の節々にあった痛々しい傷はその全てがビデオの巻き戻しのように治っていく。混濁していた意識もハッキリとしだしたアルトは持ち物を確認する。

 

アルトが手にしていたのはエヴォーカーを倒した時にドロップするアイテム『不死のトーテム』

ゲーム内においては死亡時にその場で復活し一定時間追加のハートと超再生、その他強力なバフを付与することが出来るアイテムであり、それは今この場に置いても適用された。

 

アルトは並ぶ略奪者二体のもとへ肉薄する。二体とも矢を番え始めるがクロスボウの引き金を引かれた直後に土を積み上げて即席の防壁を作る。

 

先程投擲した剣が刺さった略奪者に向かうように防壁を逸れていく。刺さった剣の柄を握ると同時に弧を描くように周囲を切り払う。

 

体の内側から切られた略奪者はその場で消滅しクロスボウを落とす。切り払いに巻き込まれたもう一体の略奪者は切られたことで怯む。たった今倒した略奪者のクロスボウを拾い上げたアルトは間髪入れずに略奪者へ向けて引き金を引いた。

 

拾ったクロスボウには紫のオーラのような物が纏わり付いていることには気付かなかった。

 

発射された矢は先程までの他のクロスボウよりも早く強く矢を発射し略奪者の心臓を突き刺した。

 

吹っ飛ぶように後ろへ飛び空中で消滅した略奪者。しばらくなんの音も響かなくなり、アルトはようやく襲撃を凌ぎきったことを理解した。

 

緊張の糸が解れた瞬間、アルトは今までの疲れがどっと押し寄せその場で倒れる。泥のように眠ったアルト、その周囲に集まってくるのは今まで襲われていた村人達。

 

村人達は周囲の他の者と目を配りアルトを数人で担いだ。




大変遅くなり申し訳ない!!
戦闘シーンを練ったり進学なりのごたごたでかなり遅れてしまったことを謝罪致します……。
これからもおそらく亀更新かと思いますが気長に待っていただければ幸いです。
なにぶん見切り発車であったのもあってストックが全くありません……頑張ります……!
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