クリーパーによって怪我人が出た日から4日が経ち、このショッピングモールに新しい生存者が訪れた。
来たのは会社員のようでスーツを来た細身の眼鏡をかけた男性。もう一人はサバイバルナイフを持った20代後半の女性だった。スーツを着た男性は顔色が悪く、身体もとても震えていた。
彼らは自分と同じようにシンヤに案内され、マユの元に向かっていた。自身も少し気になったので2人を後ろから眺めていた。
「ようこそ生存者さんたち!」
自分の時と同じように歓迎していたマユ。そのままシンヤが2人を案内するだろうと思っていたが突然女性の方がサバイバルナイフをマユの首元に押し当てた。
突然の動きにシンヤは反応できておらず、目の前にいたスーツの男性も何が何だか分からないと言った様子だった。
「なんであなたみたいなガキに私が従わなくてはならないの?」
ドスを効かせた声でそういう女性。確かに分からなくもない。マユさんの実年齢は知らないが外見を見れば中学生ほどに見える。本当はもう少し年上らしいが。
そんな中学生ほどに見えるマユさんに従わなくてはならないのが苦痛なのか、或いは相手が子どもに見えるから侮っているのか。
しかしどちらにせよサバイバルナイフを突きつけている時点で見逃す訳にはいかず4人の元にそっと近づいてサバイバルナイフを持つ女性の腕を掴んだ。
「従う従わないにしてもナイフを向けるのは良くないですよ。」
腕を掴んだ自分を睨みつける女性。そのまま睨み合いになるも自分の腕を振り払ってこの場から離れていった。シンヤの案内も無しにここを散策するつもりなのだろうか。
「すみませんアルトさん、ありがとうございます。」
シンヤが頭を下げてお礼を言う。
「いえ……ああいうこと前もあったんですか?」
「反発してくる人はいましたがあれほど酷い人は……。」
やがてスーツの男性も自分の腕を掴んで震えながら去っていった。
「2人とも、ありがとうございます。でも心配しなくても大丈夫ですよ。」
マユが2人にお礼を言いながら心配は無用だと言う。しかしあの女性からはどうしても油断することはできないという説明できない感覚的な何かがあった。
その後は特に何も起きることはなく、夜を迎えた。自身は破壊されてしまった盾の予備をクラフトしているところであったが、外が少し騒がしい。
車の窓を少し開けて様子を見てみる、そこには異常な光景が広がっていた。
夜は真っ暗にならない程度には光があるため、ショッピングモール内ではMOBは発生しないハズである。しかしそこには車の中にいる生存者を攻撃しようとドアを叩いているMOBであるゾンビやスケルトンがいた。
「ッ!?」
更には周辺にもここにいる人数では対応しきれないような数のMOBが襲いかかってきている。すぐに車から飛び出し他の生存者を攻撃しているMOBを鉄の剣で切りつける。
視界の隅で矢を番えているスケルトンが入り、クラフトした盾で放たれた矢を防ぐ。すぐに接近しジャンプして切りつける。大きく仰け反ったスケルトンに更なる追撃の斬撃で消滅させる。
落とした数本の矢を拾い、予想通り現れているクリーパーに自身が新しくクラフトした『弓』を取り出し、拾った矢を番える。弓道部の生徒がやっていた動作を見よう見まねで真似る。
指を離して放たれた矢はあらぬ方向に向かっていってしまった。もう一度、矢を番えてクリーパーに向ける。放たれた矢は直撃するも、接近をやめない。再度矢を番えて放つが今度は外してしまいクリーパーの横を通り過ぎて行った。
誰かに当たっていないことを願いつつ再度矢を番える。今度こそと放った矢を直撃させ、消滅させた。たった数十秒ほどであれだけの攻防をしたにもかかわらず、ここにいるMOBの半分も倒せていない。
このままでは空を飛んで攻撃してくるファントムにも気付かれて手に負えなくなる。そう考えたアルトは他の生存者達にマユさんたちの場所へ向かうように伝える。生存者に近付いてくるMOBは自分が受け持ち攻撃を始める。
10体目を倒した頃から数えるのをやめ、周辺にMOBはいなくなった。しかし今この場にいるMOBを全て倒した訳では無いため気を抜いてはいられない。すぐにマユやシンヤがいる場所へ向かう。
走って向かいながらこんなことになった理由を考える。夜は目で見えないほど暗くなければMOBは発生しない。そしてこのショッピングモールの屋上駐車場は毎日、暗くならない程度のあかりが照らされている。
つまりMOBはここに現れたのではなく招かれたということになる。そんなことをする人物は1人しか思いつかなかった。目の前に2体のゾンビを確認したことで思考を中断し盾と鉄の剣を構えて飛びかかった。
まだ油断はできないが見つけた大体のMOBを倒すことができ、マユさん達とも合流できた。しかしMOB達の攻撃によってマユさんを庇ったシンヤが重症、マユさんも自分も疲労困憊である。
守り切った生存者達も怪我を負った者が多く、全員が忙しなく動いていた。屋上駐車場の中に小さいバリケードを急造して凌いでいる。今いる生存者の中には新しく来た女性とスーツを着た男性がいなかった。
MOBを引き寄せたのは女性と考えているのでなんとも思わないが男性がいないのは不自然に思えた。
「マユさん、スーツを着た男性はどこへ……?」
「分かりません、バリケードへ生存者のみなさんに入るように呼びかけた時から、彼は居ませんでした。」
「それに、なぜMOBがここに出現したのかも分かりません……。」
「十中八九、あの女性が気に入らないからなんて理由で呼び込んだとしか考えられないのですが……。」
「ともかく、ここはもうダメです。MOBが湧いたにしろ呼び込まれたにしろ、ここは使えなくなりました。別の場所に移動する必要があります。」
「では自衛隊の施設の方へ向かった方が宜しいのでは?」
「……それだと移動する距離が、あまりに遠すぎますよ……ッ!」
シンヤが悲鳴をあげる身体にむち打ち近づいてくる。後ろから応急手当をしていた女性を振り払って自分とマユさんの会話に混ざろうとする。
「シンヤ、今は休んでいた方が……。」
「いえ、そんなこと言っている場合では……ッ!」
「移動ならバスを使えばいい、近くに使えそうなのは見つけてます、とにかくシンヤは休んでてください……。」
「いつの間に?」
マユさんが驚いた声を上げる。
「ええ、まぁ想定できることは想定しておかないとなので……。」
「分かりました、すぐにそのバスまで避難しましょう。」
「運転はどうするんですか?」
「自分が運転できます!」
シンヤの手当の手伝いをしていた女性が力強く答える。
「なら次は避難ルートですね、このMOBの数と正面から戦うのは無理です。」
「ルートは避難用の階段を使いましょう、狭いですがその分MOBの数も少ない上、対処も上手くいくハズです!」
「シンヤさん、貴方は安静にしていてくださいね。」
「……分かりました。」
渋々といった感じでマユさんの指示に答えるシンヤ。シンヤ自身も今の自分の怪我の具合で動けないと分かってはいるようである。
「じゃあ移動しましょう!」
全員を見回し生き残るためにバスへ向かった。
更新が遅れて申し訳ないです……失踪から帰ってきました。