マインディストピア   作:蒼かえる

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13日目

バスへ向かうために非常用階段を駆け下りる。自身は後続の人達のために先陣を切って降りる。途中、予想通りゾンビやスケルトンが現れていたが、狭い空間であり尚且つ一方通行で、後ろは安全なため対処にはそれほど手間取ることは無かった。

 

無事に階段を下りきって目的のバスへ向かう。バスの中に入り重症の生存者はシンヤも含め避難させる。近くによってくるゾンビは自分が斬り倒す。もうそろそろ疲労で倒れそうだがなんとか持ち堪える。

 

「アルトさん!生存者の方々は全員乗りました!アルトさんもはやく!」

 

マユさんの声で気がついてバスに乗ろうとする。しかし今回の騒動の原因と思われる女性がこちら歩いてきていた。

 

「あら?もしかして結構生き残ってる?」

 

「貴女は……!?」

 

「アンタが気に食わないから感染寸前だったあのサラリーマンを発症させて、他のゾンビも呼び込んだのに、まさか生き残ってるなんてね。」

 

「もしかして、あそこに居たもう1人とそこにいるガキに守ってもらったの?」

 

シンヤがバスの窓から女性を睨みつける。

 

「アンタが……主犯か……アンタがやったのか!!」

 

「ふふ、ええそうよ?どうだった?楽しかった?」

 

下卑た笑みを浮かべる女性に対し、自分の中で何かが切れた音が聞こえた。

 

「マユさん、先に行ってください。」

 

「何を言ってるんですか!?」

 

「あの人は、僕の逆鱗に触れました。先に行ってください!」

 

周辺にはゾンビの他にスケルトンも迫ってきており、このままではバスが出発できない可能性があり、マユさんもそれは分かっている。

 

「……ッ!バスを出してください!」

 

「アルトさん!」

 

シンヤが呼び掛ける。

 

「あのクソ女、一泡吹かせてやってください!」

 

「……任せてください。」

 

バスのドアが閉まり出発する。自分だけを置いていくこの光景に既視感があるが、あの時と違うのは自分が望んで残る選択をしたことだ。

 

あのクソ女には、1発だけでも殴らなければ気が済まない。

 

「どうしてこんなことをしたんですか?本当にマユさんが気に食わないからなんて理由で安全なあの場所を襲撃したんですか!?」

 

「ええそうよ、今この状況ならどんなことだって許される。世界は変わったのよ。」

 

「なら、今から僕が貴方を攻撃したって文句は言えませんよね。」

 

「やってご覧なさい。」

 

鉄の剣を構えて女性に突撃していく。大きく剣を振り上げて切りかかろうとすると女性は身軽な動作で剣を避けた。その後もこちらがいくら攻めても反撃は来ない。

 

「そろそろ疲れたでしょう、さっきまでずっとゾンビ達と戦ってたもんねぇ?」

 

「ハァ……ハァ……エホッ……。」

 

「若いといってもあれだけ動けば流石に疲れるでしょうねぇ?」

 

女性はサバイバルナイフを取り出しこちらに向かってくる。切りかかってくるが、避けるのは恐らく不可能。更に周りにはMOB達が大量に湧いている。

 

近づいてくる女性に対してどうするか考えていると、どこからか鳴き声が聞こえた。そちらに気を向ける暇もなく女性がサバイバルナイフを向けた。

 

「じゃあね、坊や?」

 

急降下の体制になった見覚えのあるMOBが視界に入るも女性に向かって鉄の剣で切り払う、しかし女性はギリギリで避けてしまった。

 

「危ないわね……。」

 

切り払うと同時に疲労で限界を迎えて倒れる。女性の近づいてくる足音が聞こえるが指一本すらも動かせない。

 

「じゃあ今度こそ……?」

 

ポタポタと何かが滴る音が聞こえる。女性が自身の肩を観るとファントムに食いちぎられていた。

 

「あ、ああ!痛い!痛い痛い!なんで!?」

 

サバイバルナイフを落とし肩を抑えながらよろける。そして女性はたった今気づいた。周りにいる大量のMOBと、空で群がるファントムの群れに。

 

「あ、ああ……。」

 

絶望的とも言える状況で女性は立ち尽くした。疲労で震える足でなんとか立ち上がり、女性に向かって言った。

 

「あの時、あの場にいた戦えない人達も、今のアンタと同じことを思ったと思うよ。」

 

「知らない!そんなの知らないわよ!」

 

急降下で降りてくるファントム、近づいてくるゾンビやクリーパー、向かってくるスケルトンの矢の雨。

 

このどうしようもない状況に女性は恐怖で全く動けなかった。アルトはクリーパーの爆発に備えて盾を構える。

 

「(あと、少し……!)」

 

近づいてくるMOBの攻撃を盾で防ぎながら遂にその時がやってきた。太陽が昇りゾンビやスケルトン、ファントムを炎上する。クリーパーのみに備えていたのはこの為である。

 

クリーパーの爆発に耐えてようやく周辺のMOBは燃え尽きた。爆発に巻き込まれた女性は倒れている。意識はあるようだった。こちらに気が付き手を伸ばす。

 

「…た……助け……て……」

 

「悪いけど、僕は物語の主人公のように聖人ではないから裏切ったアナタを助けるようなことはしない。」

 

「でも昼間までには動けるようになる、と思う。だから死ぬことは無い。」

 

ボロボロになった自身の体を引きずりながらその場から立ち去るアルト。次に向かうべきはどこか考えるもまずは回復を優先することにした。

 

近くのスーパーに入って食べ物を探すがそこでプツンと意識が切れて倒れてしまった。

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