ヒーリングっど❤プリキュア〜新たな伝説の誕生〜 作:ssgss
ズドン! という音を立て、治のいた場所を……彼の姿をメガビョーゲンの腕が覆い隠す。
そして、ゆっくりとその腕が上がる。
「へえ、意外と頑丈だね」
そこには血を流して倒れ、気を失っている治の姿があった。
そしてダルイゼンはその姿を見て笑う。
だが、
「メガッ!?」
メガビョーゲンは青と黄色、二つの波動によって吹き飛ばされる。
その姿を見たダルイゼンは、攻撃が来た方向に視線を移す。
「「許さない!!」」
そこには、怒りを顕にヒーリングステッキを握りしめるフォンテーヌとスパークルの姿があった。
「二人とも、落ち着くペエ!」
「気持ちは分かるけど、エレメントさんまで倒したら意味ないニャ!」
鬼気迫る表情のフォンテーヌとスパークルにパートナーであるペギタンとニャトランが宥める。
「スパークル。あなたは治くんを安全な場所に、ここは私が!」
「分かった! 待っててすぐに戻るから!」
スパークルとフォンテーヌは二手に分かれる。
「メ〜ガ〜…!」
「ハアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
よろよろと起き上がるメガビョーゲンにフォンテーヌが追撃に向かった。
「おさむん、おさむん! しっかりして!」
「無理ニャ! 完全に気を失ってる。下手に動かしたら逆効果ニャ!」
「けど…!」
「とにかく今は、治を避難させないと…! あそこのビニールハウスの中にしようぜ」
ニャトランに諭されながらスパークルは治を支えてビニールハウスに向かう。
「ハッハハ。大変だねプリキュアは。お友達が一人傷ついただけでこれだ」
その様子を見ていたダルイゼンが笑う。
「…………んで」
微かに聞こえる声。
ダルイゼンはその声に反応した。
「何で、こんな事するの…!?」
その声は、グレースだった。
「こんな事って?」
ダルイゼンはグレースの聞いたことに質問で返す。
その最中グレースを気にかけるよりもスパークルが治を避難させて二人でメガビョーゲンに立ち向かっていること。
そしてメガビョーゲンのラッシュに防戦一方を強いられている事の方が彼には気になるようだった。
「こんな酷いことだよ!」
「グレース…」
グレースが叫ぶ。
そしてラビリンは、そんなグレースを心配、恐怖した。
いつもの優しい彼女とは違う、怒りに飲まれそうな表情をする彼女に。
だが、その心が分からないラビリン達でもない。
何故なら彼女たちは、自分達のせいで大切な友人が一人危険な目に……否、その友人が居なければラテすらも危うかったのだから。
それが分からないとしたら、
「酷いこと? 何が?」
ここに居るダルイゼンだけだ。
「地球を病気にして、みんなを傷つけることだよ!」
グレースがダルイゼンに言う。
それでも彼女の足は、蝕まれた露によって動けない状態にあった。
「決まってるじゃん。俺はその方が居心地いいからさ。それに、アイツは自分であの王女さまを守ってああなっただけだろ」
「そんなの、ただの自分勝手じゃない!」
「そうだよ。俺は、俺さえ良ければそれでいいのさ」
ダルイゼンはそう言ってグレースに歩み寄る。
グレースはそんなダルイゼンにヒーリングステッキを構えるも、ダルイゼンは蝕まれた露を手に持つと、それをラビリンに被せた。
そしてそれを受けたラビリンは苦しそうな表情をする。
「……メガビョーゲン!!」
「くっ…、強いわね…!」
「けど、絶対に負けない! おさむんに頼まれたんだもん!」
爆発音を立てて少し離れた場所ではフォンテーヌとスパークルが傷つきながらもメガビョーゲンと戦っていた。
「あ…くっ、あう…!」
それに一瞬目を奪われるグレース。
そんな彼女の頬に、ダルイゼンはまたしても露を当てる。
「ついでだ、このまま片付けちゃうか」
目の前で暗黒のオーラを溜めるダルイゼンに顔を強張らせるグレース。
どうしていいのか分からない彼女に、
「グレース!」
パートナーのラビリンは露を払い除けて声をかけた。
その声にハッとするグレース。
そして彼女は意を決し、ヒーリングステッキからエネルギーを噴出させて自分の足を取る露を払い除け、そのままダルイゼンの手を蹴り飛ばした。
そうして、彼の手から離れたオーラは空中で爆発する。
「へえ、やるじゃん」
ダルイゼンはグレースに言う。
そして、両者は再び構えた。
その時、ダルイゼンは一瞬にして目線をグレースから移す。
その先は、先ほど治が避難させられたビニールハウス。
そのダルイゼンの行動に釣られるようにグレースもそこへ目を移す。
そして、彼女は驚愕した。
そのビニールハウスから、彼女の……彼女たちのよく知る姿が、彩野治という男が何事もなかったかのように姿を現したのだ。
「治くん!」
「えっ…?」
グレースは構えから一転、治に向かっていく。
そして、彼の前に着いた。
「治くん! 大丈夫!?」
「―――――――――」
彼を心配するグレースの声。
だが、彼は答えない。
「ごめんね。わたしが、わたしのせいで……ラテも治くんも危険な目に遭わせちゃって」
「治。そんなにグレースを怒んないであげてほしいラビ。ラビリンも、何もできなかったから、怒るならラビリンもにしてほしいラビ」
「―――――――――」
治に謝るグレース。
グレースを庇うラビリン。
だが、二人はそこでも答えない治に疑問を持つ。
「治、くん…?」
「だ、大丈夫ラビ?」
「―――――――――」
両の腕をだらんと下げて立つ治。
その額から流れる血と、そして垂れ下がった前髪によって彼の表情を上手く確認できないグレースは不安を覚えていた。
「へえ、あれだけやられてまだ立ち上がれるなんてやるじゃん」
そこにダルイゼンが現れる。
そして、グレースは治を庇うようにダルイゼンの前に立つ。
「―――――――――」
ダルイゼンの声を聞いた時。
何も発さない治はほんの少しだけ声の方に向く。
「けど、どうするの? プリキュアに守られながら戦えんの? それに、あの二人だけじゃメガビョーゲンは厳しそうだけど?」
ダルイゼンに言われてグレースは辛い顔をする。
本当なら今すぐにでも、フォンテーヌとスパークルを助けに行きたい。
けどここで自分が離れたらダルイゼンが彼に何をするのか分からない。
そんな二つの葛藤が彼女を襲う。
「―――――――――」
「治く…!?」
「…? っ!!!」
グレースが彼の名を呼ぼうとした時。
彼の顔を見ようとした時。
その時には既に、治はダルイゼンの顔面を殴りつけていた。
「(…! 何だ、この力…!)」
殴りつけられたダルイゼンは驚愕する。
その力は今まで何度か見てきた彼とは違う。
明らかに今までよりも強い力で殴られたダルイゼンはそのまま吹き飛び、メガビョーゲンにぶつかる。
「ぐはっ…!」
「メガ!?」
突如飛んできたダルイゼンに驚くメガビョーゲン。
そしてそれを不審に思ったフォンテーヌとスパークルはそこでようやく立ち上がっている治の姿を見る。
「治くん。良かった、大丈夫!?」
「もう心配したじゃ〜ん!」
そんな彼に二人も駆け寄る。
「―――――――――」
だが、それでも彼は答えない。
いや、それどころか彼女たちの声が聞こえてないのではと思えるほどに彼は動こうとしない。
実際彼が動いたのは、ダルイゼンの声を聞いた時だけだ。
「治くん? どうしたの? 無理はしないで」
フォンテーヌが心配して彼の体に触れようとする。
その時、彼の姿は一同の前から消えた。
『!?』
「……何だ、いきなり…!?」
彼女たちが彼を探す中、その姿はダルイゼンとメガビョーゲンの目の前にあった。
そこでダルイゼンはようやく今の彼の顔を見る。
無機質で、どこを見るともないその目には、何の光も無かった。
「(コイツ…まさか…!)」
そこでダルイゼンはある予想を立てる。
だが、それ以上の速さで彼もろともメガビョーゲンは治の拳を受けていた。
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「凄い、けど何だか怖いよ…。今のおさむん…」
「ええ。まるで、メガビョーゲンと彼以外何も見えてないみたい」
その様子を遠くで見つめるスパークルとフォンテーヌが言う。
「……」
「グレース? どうしたらラビ?」
「行くよラビリン。わたしたちも戦わないと。だって、これ以上治くんを一人にしておけないもん!」
グレースが言う。
彼女も焦っていた。
このままあの治が戦えば勝てるかもしれない。
けどきっとその勝利は、今までと違う。
エレメントさんごとメガビョーゲンを倒してしまう勝利だ。
それではこの蝕まれたいちご農園は戻らない。
その思いがグレースを走らせる。
「―――――――――」
だが、そんな彼女の前に治はダルイゼンの攻撃を躱して降り立った。
そしてダルイゼンが言う。
「ホントにやるじゃん。まさか気絶したまま戦うなんてね」
そのダルイゼンの言葉にグレース達は驚く。
そして、
「治くん。ごめんね」
グレースは先に謝って彼の目を見た。
光の無い目。
しかしその双眼は間違いなく目の前の敵を捉えている。
そして、彼はまた動き出そうとする。
「ラビリン」
「大丈夫ラビ! もしもあとで治に怒られそうになったら、ラビリンもグレースと一緒に謝るラビ!」
グレースの意図を察したラビリンが言う。
こんなパートナーを持てた事に彼女は心から感謝し、そして、彼女はヒーリングステッキを強く振り、治の後頭部を叩く。
まったく予知してなかった攻撃。
いやそもそも目の前の敵しか見ていなかった治には当然それを避けられるはずもなかったため、彼は再び倒れ、目を閉じた。
「……行きましょう。グレース」
「今度は三人でね!」
「うん!」
フォンテーヌとスパークルに言われグレースは返す。
そして三人揃ってようやくメガビョーゲンに向かった。
「ありがとう治くん。守ってくれて」
グレースは倒れる彼に言った。
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「……くん……治…! 治くん!」
誰だ、俺を呼ぶのは…?
俺はゆっくりと目を開ける。
「治くん…。よかった、良かったよー!!」
「……のどか?」
目を開けると、そこは室内。
俺は天井を見上げていて、起き上がるとのどかに抱きつかれたので彼女の名を呼んだ。
「……気がついたみたいで、ホントに良かったわ」
「心配させないでよ〜…」
そしてちゆもひなたも同様に心配していたのか、ちゆは静かに笑い、ひなたは涙をこらえていた。
「ここは…?」
「農家の人のお家よ。私と農家の方が気づいたら、のどか達が居て、あなたが大怪我で倒れてたから運んで手当てをしたの」
やすこさんが静かに言った。
「けど、これ以上のどか達に心配かけたりしちゃ駄目よ!」
その後怒られた。
「いやー、すいません」
俺はそうやすこさんに返す。
「でも、のどかとラテにこんなに良いお友達ができて、お母さん嬉しいわ。治くん、それに皆。これからものどかと仲良くしてあげてね」
「もっちろん!」
「「はい!」」
俺たちはそう言ってやすこさんと別れた。
何でも、もう少しだけ配達の仕事が残ってるんだとか。
そして俺は後であの後の事を色々聞かされた。
「ふーん、実りのエレメントボトルね。……やー、にしても俺もやっぱりまだまだプリキュアの足手まといは変わらねえな。今日だって何にもいいとこなかったし」
俺が言うと、何故かみんなソワソワしだした。
「ん? どうしたんだよみんな…何かあったのか?」
「う、ううん。何でもないのよ気にしないで! それに、何も無いなんて言わないで。治くんが居なきゃ、ラテは救えなかったんだから」
ちゆが俺に言う。
すると、
「ワン! ワンワン!」
ラテは突然俺の方に来た。
「お? どーしたんだラテ? 俺に何かあるのか?」
「わふぅ!!」
ラテを抱きかかえると、何故か顔中をペロペロされた。
「ぷっ、あはははは! くすぐってえよラテ!」
俺はそのくすぐったさに耐えきれず、笑いながらラテに言ったのだった。
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ビョーゲンキングダムにて―――。
「ほう、これはまた手酷くやられた様だな。ダルイゼン」
グアイワルが傷を負ったダルイゼンの顔を見て言う。
「アッハハハハハ! 前よりも男前になったんじゃないの!? まあ、キングビョーゲン様には遠く及ばないけどねぇ」
シンドイーネはそんなダルイゼンの顔を笑っていた。
「別に」
だがそんな二人にダルイゼンは言葉少なく返す。
「プリキュアか? やはり奴らは中々やるようだな」
「違うね。今回はプリキュアじゃない」
「何?」
グアイワルが意外そうな顔をする。
「……確かアイツの名前……オサム、とか言ったけ」
ダルイゼンは自分の顔に傷をつけた男の名―――オサムという名前をしっかりと覚え、その顔を思い浮かべていた。
「なあにアイツ……柄にも無く笑っちゃって?」
「……ダルイゼンにあそこまでさせるとは、あの男。プリキュアの腰巾着では無いという事だな」
グアイワルの言葉にシンドイーネは疑問符を浮かべていたのだった。
ダルイゼンくんが凄くウザいキャラみたいになっちゃってますがそんなに嫌いなキャラじゃなかったりもします