ヒーリングっど❤プリキュア〜新たな伝説の誕生〜 作:ssgss
「うー…。まだ頭が痛え…」
朝―――。
俺はランニングをしながら呟く。
今回は珍しく重力室ではなく外でのランニングだ。
重力室はしばらく使用禁止になったのだ。
「ホントにあれ実装する気なのかな父さん…えらく張り切ってたけど」
俺が最近重力室を多用するのを見ていた父さんが、昨日の夜にご飯を食べていた時に急に、
『すまん治! 重力室なんだが、しばらく使用禁止で頼む!』
『え!? 何で!?』
『いやー、息子の為に何か出来ればと思ってな。そこで重力室の機能拡大を目指そうと』
『機能拡大って……一体何する気なんだよ』
『うーん。重力を最大で100倍に出来るようにするとか?』
『あんた俺を殺す気か!?』
というやり取りがあった。
100倍の重力って、そんな事になったら俺ホントに死ぬぞ?
いや、最初からそこまでする気は無いんだけどさ。
「あ、治くん。珍しいわね」
「ん? おお、ちゆ。まあ確かに久々にここ走るかも」
横からちゆに声をかけられる。
最後にここ走ったのは、のどかと再会したあの日だから結構前か。
「今日はどうしてランニングしてるの?」
「うーん、いつも使ってる場所が使えなくなってな」
俺はちゆと並走しながら話す。
「それにしても、この前の彼には驚かされたわ」
「あー、確か……益子とか言う奴だったっけ?」
そう、このちょっと前にのどかが益子という新聞部の男にメガビョーゲンを呼び寄せているんじゃないのかと疑われる事件があったらしいんだ。
え? 何でらしいなのかって?
実は、俺はあのいちご農園での戦いの後に家に帰ってからまたぶっ倒れたらしい。
気がついたら病院のベッドの上で寝てて、検査入院って形だけでも帰ってくるのに三日もかかったから、それまでに学校で起こった事を知らないんだ。
実際この話も帰ってきてからちゆに聞いたもんだし。
「ああいう事が無いように、私たちももっと気をつけなくちゃいけないわね」
「そうだな。けど、俺を心配してるならもう問題ないぞ!」
と言って俺はちゆに腕時計型のアクセサリーを見せる。
「それは?」
「俺の親父の発明品。この前作ってくれたんだ」
「そう。治くんのお父さんはすごい方なのね」
「父さんだけじゃなくて母さんも凄いんだぜ!」
親を褒められて嬉しくなった俺はちゆに言う。
「ふふ。治くんって、案外子どもっぽいのね」
「…………」
「どうかしたの?」
「いや、別に気にしてなかったしひなたみたいにあだ名で呼んでほしいわけじゃないんだけど…。ちゆものどかもいつになったら俺のことくん付けじゃなく呼んでくれるのかなって」
俺は笑って言うちゆに言ってみた。
「き、気にしてたの…?」
「いやだから気にしてないって」
気まずい顔をして聞くちゆに返す。
そこから俺達は、かれこれ一時間はランニングを続けていた。
「あと、さっきの話だけど。あなたの事、ずっと心配するわよ。正体がバレるよりも、無理してほしくないもの」
「すんません…。今後気をつけまーす」
そんなお叱りをちゆに受けながら。
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翌日の放課後―――。
俺はのどか、ひなたと一緒に陸上部の練習を見学していた。
そこではちゆも、自分の種目であるハイジャンプに挑戦している。
「陸上してるちゆちゃんは、生きてるって感じがするよね」
「分かる〜! 特にハイジャンプの時は、めっちゃ生きてるって感じ!」
「ああ、確か春の大会が近いんだったよな。最近はランニングの方もこっちまで気迫伝わってくるし」
「え? 治くん、最近ちゆちゃんと一緒なの?」
「一緒っつーか、いつも所使えなくて走ってたら会うって感じだけどな」
そんな話をしていると、誰かのお腹がぐう〜っと音を立てた。
「「…………」」
「……あっはは、生きてるからお腹減っちゃった〜…」
ひなたは手を頭の後ろに置いて言う。
「けど、ホントに凄いよねちゆちゃん」
「ああ。確かこの前自己ベスト更新してたみたいだからな」
「このまま行けば大会も余裕じゃ〜ん!」
「それはどうですかね?」
楽観視するひなた……いや、俺たちにその声は言った。
「誰こいつ?」
「あなたが知らなくても僕は知ってますよ。彩野治くん! 僕はこのすこやか中新聞部の編集長である
「あー、お前が話に聞いてたのどかをストーカーしたって言う!」
俺が言うと益子はその場で大きく転けた。
だが、そんな時でもカメラをキッチリ守るのは新聞部のプライドなんだろうか?
「違いますよ! ストーカーではなく、真実を追い求めるジャーナリストです!」
益子は凄い勢いで俺の言葉を否定してきた。
「あれー、おっかしいな。俺の聞いた話ではあの手この手でのどかを執拗に付け回したって聞いてたんだけど」
俺が言うと益子は否定しづらい顔をする。
いやそこはホントなのかよ…。
それほぼストーカーじゃん。
「ご、ゴホン! とにかく話を戻しましょう。さっきの話ですが、実はとっておきの情報を入手したのです」
益子はカメラの画面を見せてくる。
それに対して俺たち三人は同時にその画面を覗き込む。
そこには、すこやか中陸上部とは違う運動着姿の女子が写っていた。
「これは?」
「またストーカー?」
「違うって言ってるじゃないですか! これは我がすこやか中学陸上部の永遠のライバル、西中陸上部。その実力を推し量るべく、この僕自らが取材に赴いたわけです」
益子はメガネをクイッと上げて自慢げに言う。
「で、許可は?」
「取ったら取材させてもらえないかもしれないではないですか」
それは取材じゃなく敵情視察と言うんだ、これで一つ勉強になったな益子。
「そして、これは県大会の最高記録、同時に沢泉さんの自己ベストを超えているんですよ」
そんな俺の心中を露知らず、益子は続ける。
それを聞いてひなたとのどかは不安そうな顔になった。
「何見てるの?」
「あー、ちょっと…………へあっ!?」
突然後ろからちゆに声をかけられる。
そのせいで俺の口からは変な声が出てしまった。
「ナイスタイミング! 僕のスクープ写真を是非!」
「ひなた!」
俺の声に合わせるようにひなたは益子を突き飛ばす。
「やったな」
「イエーイ、息ピッタシ!」
それを見ていたちゆは不審そうに、
「スクープ?」
と聞いてきた。
「な、何でもないよ! か、可愛いクラゲの写真を見てたの!」
のどかがはぐらかす。
「そ、そうそう! クラゲクラゲ! 西中陸上部の写真とか、ぜんっぜん見てないし!」
「あっ…」
だがひなたのフォローはフォローにならず、全てちゆにバレてしまった。
観念した俺たちはさっき益子から見せられた写真をちゆにも見せる。
当然と言えば当然だけど、ちゆの顔も難しい物へと変わった。
「気にならないと言えば嘘になるわね。けど、陸上は自分との戦い。私のライバルは、私だから」
ちゆの素直な気持ちを聞いた。
それだけ言ってちゆは練習に戻る。
しかしその練習中、ちゆはハイジャンプに失敗した。
もちろん、ちゆだって完璧な人間じゃないから失敗することもある。
けど、今の彼女の顔は、そんな当たり前の……たったそれだけの事すら大きかった。
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「ちゆ。大丈夫ペエ?」
「ごめんなさいペギタン。今日は、カッコ悪いところ見せちゃったわね」
その日の夜。
旅館沢泉にてちゆは寝間着に着替えてペギタンと話していた。
「大丈夫ペエ。たった一回の失敗くらいかっこ悪くないペエ! ちゆには、そんなの気にならないくらいカッコいい所がいっぱいあるペエ!」
ペギタンは彼なりにちゆを励ます。
そんなペギタンをちゆはそっと抱き上げ、彼と頬を合わせる。
「ありがとうペギタン。私、頑張るわね」
「ちゆなら大丈夫ペエ…。きっとすぐに跳べるようになるペエ」
自分に勇気をくれた彼女に少しでも勇気をあげたい。
ペギタンは心の中でそう思った。
そして同時に、自分を信じてくれるパートナーに応えたい。
ちゆもまたそう思っていた。
その次の朝―――。
「おっす!」
「「……」」
ちゆがペギタンとランニングに行こうと家を出た時、そこには予想だにしない人物が当然のように待ち受けていた。
「治くん…どうしたの?」
「いやー、最近よくランニングで一緒になるからさ。もうこの際最初から一緒にと思って迎えに来た」
治はさも当然のように言う。
そして、彼と同じようにそこにはもう二つの人影が迫っていた。
「お、おさむん、のどかっち!? どうして〜!?」
「え!? なんで二人も居るの!?」
「いや、俺からしたらお前らが居ることの方が驚きなんだけど」
俺は二人にちゆから少し離れた所に連れて行かれた。
「もしかして二人も?」
「うん。昨日のちゆちゃんの様子が心配で…」
「いや、俺は普通にランニング誘いに来ただけなんだけど?」
え、何でそんな冷たい視線…?
俺ホントの事言っただけじゃん!
「……ありがとう皆。それじゃあ、今日は四人で走りましょうか」
ちゆにそう言われるまま、俺たちは走り出した。
今日はちゆの提案で、舗装された道ではなく、全員で砂浜を走る事になった。
「ほっ、ほっ……こりゃ、意外と来るな」
俺とちゆを先頭に砂浜を走る四人組。
その途中やはり一番に疲れを見せたのどかを心配して俺たちは砂浜に腰を下ろす。
「ん、ん……ぷはぁ〜! ふっかーつ!」
水を勢いよく口に運んだのどかが言う。
そして彼女はそのままの勢いで聞いた。
「いつもここ走ってるの?」
「時々ね。いつもは、あっちの海岸沿いを走ってるけど、たまにこうしてここを走ると、普段は使わない筋肉にいい感じに負荷をかけられるから」
ちゆはのどかに返す。
確かにこれは結構いいトレーニングになるな。
俺はそれを聞いてそう思った。
「ふわぁ〜。陸上の選手ってそんな事にまで気を使って走ってるんだ」
のどかに言われるとちゆは静かに、
「本当のこと言うと、それだけじゃないんだけどね」
そう続けた。
それを聞いて俺たちはえ、と聞いた。
「小さい頃は、泳ぐのが好きだった。ある日、いつもの様に海に出て、夢中で泳いでいたのね。……気がついたら、そこは、青一色の世界だった。空と海が溶け合って、一つになっていて。このまま海を超えて空まで行けそうな。……空を、泳いでみたいと思った」
期せずしてちゆの過去の話を聞いた。
「それがハイジャンプを始めたきっかけ。自分の限界を感じた時、海を見ると、また跳ぼうって思えるの。海と空が溶け合ったあの青い世界にまた近づけるように」
ちゆは楽しそうに言う。
そんな彼女の顔を見ていると、とても今限界なんて感じてないんじゃないかとすら思えてしまう。
「けど、今日は海のおかげじゃなくて、皆のおかげね。ありがとう」
ちゆは最後にそう言った。
そして彼女はまた今日も、練習に向かう。
すこやか中の部活は、後片付けさえしっかりすれば一人でも練習することを許されている。
けど、休みの日に一人で練習するちゆ。
遅くまで一人でハイジャンプを続けていても、失敗続きの友達を見るのは、自分のことみたいでなんだか凄く苦しくなった。
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次の日曜日―――。
「それじゃあ、行ってくるわね」
ちゆはペギタンに告げる。
「ちゆ。今日は日曜日ペエ。今日くらいは休んだほうがいいペエ」
ペギタンはそんなちゆに言葉を返す。
彼はその言葉通り、ちゆに休んでほしかった。
「ありがとう。行ってくるわね」
だがちゆはそんなペギタンの言葉を笑顔で感謝するものの、最初と同じように練習を向かう意志を変えることはしなかった。
「ちゆ…」
ドアの向こうに見えなくなったパートナーの名前を呟くペギタン。
彼はこんな時くらい、自分を頼ってほしかった。
彼女に悩みを打ち明けてほしかった。
けど、彼女はそれをせず、自分の限界と真正面から向き合っている。
「(僕にも何か、できることがあるはずペエ!)」
ペギタンはヒーリングルームバッグに入り、様々な文献の本を漁った。
「きっとこの中に、ちゆの事を治す方法があるはずペエ」
ちゆの為に必死で探すペギタン。
そんな彼の目に、ある文章が飛び込み、彼はそれを読み始める。
「イップス。これまで簡単に出来ていた事が急に出来なくなり、出来なくなった事が気になって更に出来なくなっていく…」
それは正に、今の跳べないちゆと一致していた。
「大変ペエ!」
ペギタンは一目散に家を飛び出す。
向かう先は、花寺家だ。
一方の花寺家―――。
「ラッビ! ラテ様、いかがラビ?」
「わふぅ!」
ラビリンはラテにマッサージをしていた。
それを受けていたラテも気持ち良さそうな顔をする。
「大変ペエ!」
「うわっ!」
いきなり声を上げて飛び込んできたペギタンに驚くラビリンは、ラテのマッサージを中断させて彼と視線を合わせる。
「イップス! イップス! イップスペエ!」
「な、何ラビ!?」
「は、早くみんなでお手当ての方法を考えないと…! のどかは、のどかはどこペエ!?」
「ひなたとお買い物に行ったラビ」
取り付く島もないペギタンにラビリンは言う。
「ええー!? お買い物ー!?」
『お買い物たのし〜!』
『生きてるって感じ〜』
それを聞いたペギタンは衝撃を受ける。
「きっとお買い物も済んだ頃ラビ。これからラビリン達もひなたの家に……ああ、ペギタン!?」
ラビリンの話を最後まで聞かずにひなたの家にペギタンは向かう。
「ひどいペエ! ちゆは一人で悩んでるペエ! なのにこんな時に遊んでるなんてひどいペエ!」
ひなたの家に着くペギタン、
「のどか! ひなた! おさむー!」
彼は三人の名前を叫びながら入っていく。
するとそこには、何かを裁縫しているのどか、ひなた、ニャトランの姿があった。
が、そこには治の姿は無い。
「おお? どうしたんだペギタン、何泣いてんだ?」
涙目で入ってきたペギタンにニャトランが聞く。
「みんな、それは…?」
「応援に使う横断幕を作ってるの」
「ちゆちーには、まだ内緒ね」
二人からそれを聞いたペギタンは誤解に気づく。
「遊んでたわけじゃ…、無かったペエ…」
「んなわけ無いし〜」
「ペギタンは大丈夫? 何かあったの?」
のどかはペギタンを心配して聞く。
「ちゆが、ちゆがイップスかもしれないペエー! なのに今日も練習してるペエ! お願いペエ、二人からも無理しちゃダメって言ってほしいペエ!」
ペギタンは二人に頼む。
が、二人は顔を見合わせたあと、
「……そう言ったんだけどね」
とのどかが言葉をこぼした。
それは、夕方頃まで練習して時の事。
『頑張るのも大事だけど、あんまり無理しないで、ちゆちゃん』
『記録出なくても死なないし! ね!』
『それに、今が駄目でも次があるじゃねえか』
三人はちゆを心配して声をかけた。
『それでも私は跳びたいの。今は無理をしてでも、自分の限界を超えたい。……そういうのって、もう古いのかな』
だがちゆは、その時笑って三人に言ったのだ。
そしてその時のことを思い出してひなたが話しながら再び針を動かす。
「あんな笑顔見せられちゃったらもう……何も言えないよ」
「何が正しいのか、わたしたちには分からない。だからわたしたちに出来るのは、ちゆちゃん本人が決めたやり方を応援すること、それだけだよ」
その横断幕には、【空へ! 限界突波!】と書かれていた。
「のどかー!!」
ペギタンは泣きながらのどかに抱きつく。
その様子をひなたは笑って見つめていた。
「ちなみに字は俺が書いたんだぜ! 上手いだろ!」
ニャトランは自慢げに言う。
それにペギタンも頷く。
「けど、字が間違ってるペエ…」
「「「え…?」」」
そう、ニャトランが書いた字は間違っていた。
【空へ! 限界突破!】と書くはずの文字が【空へ! 限界突
「「「あーーー!!!」」」
それに気づいた三人の絶叫が響く。
「ニャトラン何やってんのも〜!」
「俺か!? いや俺だな!」
「直そう!? まだ間に合うよ!」
そんな三人のやり取りを見ていたペギタンが、
「そう言えば、治はどこペエ…?」
今この場に居ない一人の事を気にかけていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……っ! もう一度…」
ハイジャンプに失敗して再挑戦しようとするちゆ。
そんなちゆの元に声が届く。
「ちょっと休憩しねえか?」
その声は、治の物だった。
「治くん…」
「ちょっとお話に付き合ってくれや…な?」
治に促されるまま、二人は校庭の隅にあるベンチに腰かけた。
「頑張ってんな」
「ううん、まだまだ。もっと頑張らないと…!」
スポーツドリンクの入ったボトルを握りしめてちゆは言う。
それを見ていた治は静かに立ち上がる。
「なあ、俺もアレやってみていいか?」
治はちゆの準備したハイジャンプを指さして言う。
「? ええ、もちろんいいわよ。と言っても、治くんならすぐに出来てしまうかもしれないわね」
ちゆは正直に言った。
彼の身体能力の高さは彼女もよく知るもの。
プリキュアに変身することもせずに変身した彼女たちと同じ場所で戦っている彼なら簡単な事だろうと。
そう思って見守る。
「よーし…!」
そしてハイジャンプを開始する治。
歩幅も勢いもぐちゃぐちゃで、ちゆを真似して背面で跳ぼうとした彼は勢いよく掛けられた棒に頭を直撃させた。
「大丈夫!?」
見かねたちゆが駆け寄る。
すると彼は何事もなかったかの様に起き上がり、
「おー、痛ててやっぱりこういうのは見様見真似じゃダメだな!」
屈託のない笑顔で言った。
「……ふふ。そうかもね。けど、ちゃんとフォームとか正せば、すぐに跳べると思うわ」
「いやーやっぱり、ちゆって凄えよな」
彼はマットの上に寝そべって言う。
そんな彼の姿に釣られてか、ちゆもマットの上に座った。
「こんだけ失敗したら、もうやりたくないって思っても仕方ないはずなのにさ、それでもちゆは限界だから超えたいって思えんだもんな」
「…………」
彼の言葉を黙って聞くちゆ。
自然と彼女もまた、マットの上に寝そべっていた。
そこから二人は数瞬の沈黙を交わす。
「……空、高いな」
「そうね」
視界に広がる青空。
それが彼と彼女が今共有する物だった。
そして治は、何気なく手を上に上げ、そのまま何かを掴み取ろうとする仕草を見せる。
「何してるの?」
ちゆが聞く。
「いや、何かこうやって見上げてるとさ、手で掴めそうな気がしてならなくてな」
「そうね」
微笑みながらちゆは治を肯定した。
「俺もいつか空に届いてみてえもんだな」
「…………」
ちゆは嬉しくなった。
何気なく言ったあの一言、青一色のあの世界に届いてみたい。
そんな子どもの夢みたいな事を肯定された気がしたから。
そして最後に、
「ちゆ」
「何かしら?」
「……頑張れよ。大会、応援しに行くからさ」
「……もちろん。全力で望むわ。任せて」
二人はそんな会話を交わした。
その後、治はこれ以上ちゆに迷惑をかけまいと思いその場を去ったのだった。
あれ? この作品のヒロインってちゆちゃんだっけ?
……←タグ確認中
うん。やっぱりのどかちゃんがヒロインになってる……あれ〜?