ヒーリングっど❤プリキュア〜新たな伝説の誕生〜   作:ssgss

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これは果たしてオリ主回と言っていいのか?

あ、あと今回初めて10000文字超えたりしました。


邪魔するな! 治怒りの咆哮!

 校外学習当日―――。

 のどかはすこやか駅の前に立っていた。

 そこにちゆも到着する。

 

「あ! ちゆちゃん。おはよう!」

 

「おはようのどか。ずいぶん早いのね」

 

 のどかがちゆを見つけて声をかける。

 それに返したちゆは、大分時間に余裕を持って到着したにも関わらずそれよりも早くに着いていたことをのどかに言った。

 

「うん。昨日楽しみであんまり眠れなくて、今日も一時間も早く着いちゃったんだー…」

 

「一時間も!? ……それはちょっと早すぎよ」

 

 恥ずかしそうに言うのどか。

 そんな彼女に驚くちゆ。

 

「うん。けどわたし、電車に乗るのって初めてで、いつもは車だったから。あー! 改札に引っ掛かったらどうしよー!?」

 

 言葉とは裏腹に笑うのどか。

 そんな彼女にちゆは一つ確信した。

 

「引っ掛かってみたいのね…」

 

「おーっす二人とも…ふ、わぁぁぁぁ〜…」

 

 そこに大きく欠伸をしながら治も到着する。

 

「おはよう治。なんだか眠そうね? あなたも寝てないの?」

 

「まあな…楽しみで」

 

「もう、二人ともちゃんとしなさい」

 

 ちゆは多少呆れながらのどかと治に言う。

 すると、

 

「あっはは……ごめんなさい」

 

「気をつけまーす…」

 

 のどかは冷や汗を浮かべ、治はなおも眠そうに謝った。

 

「……とにかく、治は電車の中で少しでも寝たほうがいいわね」

 

「うーっす…」

 

 という治とちゆのやり取りの横を通りかかったおばあさんが小銭やら何やらを大量に落としてしまう。

 

「大丈夫ですか?」

 

 それを拾おうと手助けに向かうのどか。

 だが、おばあさんを助けようとすることに意識を奪われていたのどかは横から出てきた自転車と衝突しそうになる。

 

「すみません! 落とし物です!」

 

 それをいち早く察したちゆが自転車に乗っている人に呼びかけて避けてもらう。

 彼女の咄嗟の判断がなければ危うく事故になっていたところだ。

 

「ちゆちゃん。ありがとう」

 

「危なっかしいのよね、のどかは。早く助けたいのは分かるけど、もう少し周りも見ないとダメよ」

 

「うん…、ごめんね。気をつける」

 

 ちゆから注意を受けるのどか。

 

「おばあさん、落とし物拾うの手伝いますよ」

 

「あー、ありがとうね」

 

 眠気と戦いながら落とし物拾いを手伝うことにした治を見て、慌てて二人も手伝いだす。

 三人は目につく落とし物をすべて拾い尽くした。

 

「これで全部ですか?」

 

 のどかが聞く。

 聞かれたおばあさんはある物が無いことを教えた。

 

「まだお守りが見つかってないの。このくらいの小さな奴なんだけどねえ……大事なものなの」

 

 おばあさんは言う。

 そして三人は言葉を交わすことなく辺りを探し始めた。

 だが、どれだけ探してもお守りが見つからない。

 そこに遅刻ギリギリだと思い走ってきたひなたが合流する。

 

「何してんの、三人とも?」

 

「おばあさんがお守りを落としちゃったのよ。けど、どれだけ探しても見つからないのよ」

 

 ちゆから教えられるひなた。

 するとひなたは排水口を指差し、

 

「ああいうところに落ちてんじゃない?」

 

 と言った。

 そして、ひなたとのどかがそこを覗き込むとそこには確かに小さなお守りがあった。

 こうしておばあさんから感謝されて四人はようやく電車に乗るために駅の中に入ったのである。

 

「さすがに改札に引っ掛かる奴は居なかったな」

 

「うー、残念…。引っ掛かってみたかったのにー…」

 

「え…、のどかっちそれマジ…?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ビョーゲンキングダム―――。

 そこではビョーゲンズの三人が集まっていた。

 そんな中、シンドイーネが口を開く。

 

「はあー…最近キングビョーゲン様にお会いできなくて寂しい…」

 

 そんなシンドイーネの嘆きをグアイワルが一蹴する。

 

「フッ、ちっとも結果を出せないお前の顔なんぞ見たくないんじゃないか?」

 

「ハァッ!? じゃあアンタはあたしよりもキングビョーゲン様の役に立っているわけ!?」

 

「俺は別にキングビョーゲンに会えなくて寂しい思いなんてしていない!」

 

「今は話が違います〜! 地球を蝕めているかどうかの話です〜!」

 

 またしても始まる二人の口喧嘩。

 それを見ていたダルイゼンが、

 

「…めんどくさ。巻き込まれないうちに地球を蝕みに行くか」

 

 と言ってビョーゲンキングダムから姿を消した。

 そしてそこに残った二人は、

 

「だったら、どっちがより多く地球を蝕んでキングビョーゲン様の役に立てるのか決めましょうよ!」

 

「…いいだろう! だが、もしもキングビョーゲンが俺を好きになっても恨むなよ!」

 

 そんな勝負をする事になっていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ビョーゲンズが三人揃って地球を蝕みに来ることなど露知らない四人は電車に乗っている。

 

「ふわぁ〜! 大っきい川! すごーい!」

 

「……zzzz」

 

「おさむん寝ちゃってるね〜」

 

「寝ていないらしいからね。寝かせておいてあげましょう」

 

 窓の外から見える川に感激するのどかと、少しでも睡眠を取る治。

 そして、そんな二人を横目にちゆがひなたに聞いた。

 

「ひなた。さっきはどうして、お守りがあそこにあると思ったの?」

 

「あ~、あたしよく落とし物するからさ。ほら、経験者は語る! みたいな?」

 

「ねえねえ二人とも! 今ね、そこの川でお魚がぴょんって跳ねてたの!」

 

 眠る治をそっとしておきながらそんなやり取りを繰り広げる三人。

 ―――そう、彼女たちはまだ知らない。

 今日がとても辛い戦いになること、そしてその戦いにおいて今眠りに就いている彼の存在が大きな意味を持つ事を。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「どうしてラビリン達はお留守番ラビ!?」

 

 一方の花寺家では、ヒーリングアニマル達が集まっていた。

 今日は校外学習のためラビリン達はお留守番。

 その事に業を煮やしたラビリンが怒る。

 

「仕方ないペエ。今日はみんな遠くの美術館行くってちゆが行ってたペエ」

 

「ひなたはその手の事全然話さねえもんなぁ」

 

 そんな話をしながら地図を取り出すラビリン。

 そしてペギタンがちゆから教えてもらった美術館を指差す。

 

「ここに行くって言ってたペエ」

 

 それを見たラビリンとニャトランは、

 

「……もしビョーゲンズが現れたら危険ラビ」

 

「いつでも変身出来るように準備しないとな」

 

 と言った。

 そしてそれを、ペギタンは不思議そうに見つめるのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「おー! すっげー!」

 

 美術館内に展示されたガラス細工を見て驚く治。

 電車の中で十分な睡眠を取ったことにより彼もすっかり元気を取り戻していた。

 

「ふわぁー! すごーい!」

 

 そして彼と同じような反応をのどかもする。

 否、それは彼女だけではない。

 

「グラス可愛い〜!」

 

「この木のオブジェも幻想的で素敵!」

 

 ちゆ、ひなたもまたガラス細工に夢中である。

 

「ホントに凄えよな。楽しみにしてたから、めっちゃ面白いぜ!」

 

「うん! ガラスなのに、なんか生きてるーって感じがする!」

 

 治とのどかが話す。

 すると、そんな四人のところに一人の人物が近づいてきた。

 

「そんなに私の作品を良く言ってくれて、ありがとう」

 

「? えっと、あなたは?」

 

 治がその人物に聞く。

 

「私は、その作品の作者の長良よ。よろしくね」

 

 長良と紹介した人物に四人もそれぞれ返す。

 そして長良、近くのガラス細工見て言う。

 

「それは私にとって、思い出の品なの」

 

「そうなんですか!」

 

 その言葉にのどかは食いつく。

 だが、それはのどかが一番に食いついているだけで、治も心の中では興味を示していた。

 

 そして長良は自分がガラス細工に興味を持った時のこと、そのためにフランスまで海外留学して可能性を広げて今に至るまでになった事を話した。

 

「じゃあ、このガラス達は長良さんの努力の結晶なんですね」

 

 治が言う。

 

「そうなるわね。けど、あなた達みたいに私の作品で喜んでくれるなら、私ももっともっと頑張らないとね! じゃあみんな、午後の体験学習も、楽しんでね!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 その後、展示されている作品を見た治たちは通路を歩きながら話していた。

 

「体験学習か、楽しみだな」

 

「あたしあんなの作れるかな〜? けど、やるんならめっちゃカワイイ物作りたいよね〜!」

 

「ふふ。そうね、作ったら、みんなで作品を見せ合いましょうか」

 

「……?」

 

 ワイワイと話す治達の横で、のどかが一面ガラスの窓を見る。

 

「のどか?」

 

「どうかしたのか?」

 

「うん…。窓の外に誰か居たような」

 

 のどかが言うまま、他の面々も窓の外を見る。

 だが、そこには静寂と茂みがあるのみ。

 

「誰もいねえぞ?」

 

「おかしいなー…、確かに誰か居たような気がしたんだけど」

 

 それでも窓を見るのどか。

 すると、窓の外に広がる茂みからラビリンが顔を見せた。

 

「え?」

 

 その後にニャトラン、ペギタン、そしてラテも茂みから現れる。

 

「「「「えーーっ!?」」」」

 

 驚いた後、治達は茂みへと場所を移す。

 

「んで、何で来たんだよ?」

 

「ごめんペエ。僕は止めたペエ」

 

 怒られるかとビクビクするペギタン。

 

「だって、何かあった時に遠いとあれだしー」

 

 へらへら笑いながら言うニャトラン。

 

「ラテ様が一緒に居ればビョーゲンズが現れてもすぐに分かるラビ!」

 

「ワン!」

 

 そして自信たっぷりに自分の意見を言うラビリンと、同調するように吠えるラテ。

 

「今日くらいは来てほしくねえもんだけどな」

 

 治は静かに返す。

 

「まあ、バレなきゃいっか!」

 

「そうね。言ってること理に適っているもの」

 

「それじゃあ、皆に見つからないようにね」

 

 のどか、ちゆ、ひなたの三人は笑顔でヒーリングアニマル達の同行を認めたのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 そして、まだ少人数の人間が残る中にグアイワルは居た。

 

「ほう。この場所、キラキラしたものがたくさんあるな。…………進化しろ! ナノビョーゲン!」

 

 グアイワルはガラスの中にナノビョーゲンを寄生させ、メガビョーゲンを誕生させた。

 

 そして、それを察知したラテはくしゃみをする。

 だが、今回はラテを診察するまでもなくビョーゲンズがどこに現れたのか分かった。

 

 何故なら、さっきまで治達が話していた通路を大勢の人が走って逃げていたからだ。

 

「ほら見ろ! 俺たちが来てよかったろ!」

 

 ニャトランがえっへんと胸を張る。

 

「うーん、まあそういう事にしとこっか!」

 

「いいから、とっとと片付けるぞ。……変身」

 

 治は腕時計型のアクセサリーに取り付けられたボタンを押す。

 すると、以前見えたサングラスとバンダナが彼の顔を隠した。

 

「おさむん…やっぱりそれで行くんだ…」

 

「仕方ねえだろ! バレねえためだ。それから、今の俺は彩野治じゃない、正義の味方、グレートサイノマンだ!」

 

 治……もといグレートサイノマンは言う。

 その姿はとてもカッコいい物とは言えないが、そんな事は置いておきのどか達もプリキュアへと変身した。

 

「「「地球をお手当て!」」」

 

「「「ヒーリングっど♥プリキュア!」」」

 

 そして、グレートサイノマン達はグアイワルとメガビョーゲンの前に現れる。

 

「止めなさい、メガビョーゲン!」

 

「何っ!? 早いぞ!」

 

「おい! 早いとか言うな!」

 

「……ちっ! やれ、メガビョーゲン!」

 

 メガビョーゲンはグレートサイノマンに向かう。

 だが、もう何度も繰り広げてきたメガビョーゲンとの戦闘―――。

 それに馴染んできた彼の体は、とっさにメガビョーゲンの攻撃を回避し、お返しと言わんばかりに殴りを浴びせた。

 

「何だと!?」

 

「へっ! 俺だってもう何度も戦ってきて、コツくらい掴んでんだ!」

 

 彼は得意気に言う。

 それを見てスパークルは、

 

「おお! おさむん凄い! あたしたちも負けてられないね、フォンテーヌ!」

 

 と言った。

 

「ええ!」

 

「おい、俺はおさむんじゃなくて! グレートサイノマンだ!」

 

 そして、スパークルに賛同するフォンテーヌと彼女に訂正を求めるグレートサイノマンこと治。

 だが治は、グレースと共に自身の作品を心配する長良の姿を見つけてそちらに向かう。

 

「わ、私の作品が…」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あ、あなた達は…!?」

 

「ここは危険だ。あんたはとっとと逃げてくれ」

 

 治は彼女に正体がバレないよう口調を変える。

 

「けど! まだ私の作品が!」

 

「大丈夫です。あなたの大切な作品は、わたしたちが守ります!」

 

 グレースの言葉でやっと逃げる長良。

 そして、

 

「グレース。絶対に作品は守り通すぞ」

 

「うん。長良さんの思い、壊させない!」

 

 治とグレースもメガビョーゲンに向かって跳ぶ。

 

「今回はなんのエレメントだ?」

 

「今調べてみるよ。キュアスキャン!」

 

「光のエレメントさんラビ!」

 

 メガビョーゲンに支配された光のエレメントさんを助けようと戦う治とプリキュア達、だがそんな中―――

 

「くしゅん! くしゅん!」

 

 ラテが2()()くしゃみをした。

 

「(二回…?)」

 

 ラテの異変にいち早く気づく治。

 そして彼はプリキュア達に言った。

 

「おい、ラテの様子が変だ! 誰か、ここは俺たちに任せてラテを診てくれ!」

 

「分かったわ!」

 

 彼に言われフォンテーヌが離脱してラテを診る。

 

『あっちの方で、大きな川が泣いてるラテ。……あっちの方では黄色い花が泣いてるラテ』

 

「なんてこと!?」

 

「ビョーゲンズが他にも二体ペエ!?」

 

 ラテから告げるられる驚愕の事実。

 それをフォンテーヌはその場の全員に伝える。

 

「みんな大変よ! 他にも二箇所でメガビョーゲンが現れたわ!」

 

「「ええっ!?」」

 

「何だと…? ちっ、考えやがったなテメーら!」

 

 治は鋭くグアイワルを見る。

 

「狙ってやったわけではない。元々あいつらとの協力など要らないからな。……だが、シンドイーネはともかくとしてダルイゼンまで動くとは、運が悪かったな」

 

 そんなグアイワルを置いて集まる四人。

 

「ど、どうしよう!? いきなり他に二体のビョーゲンズって言われても!」

 

 スパークルは見るからに慌てていた。

 そして、グレースが口を開く。

 

「手分けしよう! わたしたち、四人も居るんだもん!」

 

「…………そうだな、それがいい」

 

 一拍の間を置いてグレースに賛同する治。

 彼の頭の中には別の考えも湧いて居たが、不可能だと判断したためそれを言葉に出すことはしなかった。

 

「そうね。それなら、スパークルは川の方をお願い! きっとさっき電車の中から見えたあの川だと思うから」

 

「分かったよ! 気をつけてね」

 

 スパークルはその場から離れる。

 

「私たちは、黄色い花の方に行くわ。だから、グレースとグレートサイノマンは、ここをお願い!」

 

「うん!」

 

「任せろ!」

 

 そうしてバラバラになる四人。

 それを見たグアイワルが言った。

 

「ほう、お前たちも分かれたか。ならば戦いの第二幕と言ったところだな。よかろう、この辺りは大方蝕んだ。場所を変えようではないか。メガビョーゲン!」

 

 グアイワルが指示すると、メガビョーゲンは姿を変えて逃げ出す。

 

「行こう! 治くん!」

 

「…………落ち着いていけよ。グレース」

 

 見るからに慌てるグレース。

 それを見た治は自身の呼び名を訂正させる事よりも彼女を落ち着かせることを優先した。

 

「そんな事言ってる場合じゃないの!」

 

 だが、グレースは強い言葉で返す。

 

「グレース…」

 

 それを見ていたラビリンも怯える。

 そして、彼女達はメガビョーゲンを追った。

 

「(絶対、絶対に守るんだ…! この場所を!)」

 

 グレースは心にそう強く誓い。

 

「くっそ…! 俺がもっと強けりゃ…! あの手だって…」

 

 そして治もまた、自身の弱さを悲観した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 場所を移し、別のガラス細工が展示された広い部屋に辿り着いたグレースと治。

 

「メガビョーゲン!!」

 

 メガビョーゲンのトゲが勢いよく伸びて治を襲う。

 

「ちっ! たあっ!」

 

 だが治はそれを避けるだけのスピードを出せるわけではないため少しでもダメージを軽くしながらメガビョーゲンに反撃する。

 

「…………なるほど、どうやらダルイゼンの言うとおり、本当にただの腰巾着ではないようだ」

 

 それを見たグアイワルも治への評価を改める。

 この男はプリキュア同様、自分達にとって厄介な存在であると―――。

 

「メーガビョーゲン!」

 

「うわっ!」

 

 メガビョーゲンの攻撃を受け、治は後方へ飛ばされる。

 

 そしてその方には、長良の作ったガラス細工。

 このまま飛んで行けば間違いなくあのガラス細工は壊れる。

 

「…………っ! ごめん、治くん!」

 

 苦虫を噛み潰したような顔でグレースはヒーリングステッキからハート型のエネルギー弾を放つ。

 だがその対象は、メガビョーゲンではなく飛ばされた治である。

 

「っ!? うおおおっ!!」

 

 空中に居り、手を掴む所も無い治がその攻撃を回避する事も出来るはずも無いため治はグレースからの攻撃に直撃して方向が変わり、長良の作品は守り抜けた。

 

「グレース! 何やってるラビ! それじゃあ治が傷つくだけラビ!」

 

 ラビリンがグレースを責めた。

 

「……仲間割れか? まあいい、メガビョーゲン! 今のうちにプリキュアをやれ!」

 

「メガビョーゲン!」

 

 メガビョーゲンの標的がグレースに変わる。

 それにグレースも応戦するも、彼女は作品を気にするあまり動きが鈍くなってしまっていた。

 

「ってて…、まったく無茶苦茶してくれるぜ。グレースの奴」

 

 立ち上がる治。

 だが彼の頭にはグレースを責める、等ということは微塵も無かった。

 彼女の気持ちは分かるから、自分もまたこの場所を守りたいと思うから。

 

 彼にあるのは、純粋に自分の弱さと、今日を邪魔したビョーゲンズへの怒りだけだ。

 

「グレース、作品を壊したくないのは分かるラビ! でも、時間が掛かれば掛かるほど浄化するのは難しくなるラビ!」

 

「でも!」

 

 ラビリンに反論しようとするグレースをメガビョーゲンが襲う。

 

「メガ!!」

 

「ふっ!」

 

 だが、そんなメガビョーゲンに治が蹴りを加えたことにより、メガビョーゲンは作品とは関係ない方へと飛ばされた。

 

「ちっ、どうにも戦いづれえな。どうすっか?」

 

 治は構えながら言う。

 

「こうなったら、これ以上メガビョーゲンが育つ前にプリキュアの力を合わせるラビ!」

 

「どういう事だ?」

 

 ラビリンの提案に治が聞く。

 

「発生時間の遅いメガビョーゲンほど浄化するのも簡単ラビ! ここは一旦退()いて、川の方から順にプリキュア三人で浄化するべきラビ!」

 

「……なるほど、確かにその方が確実かもな」

 

 治は苦肉の策とは言え、ラビリンの案を飲む。

 確かにラビリンの言っていることは、他を優先させるためにここを見捨てる。

 そうは言っているが、それでもここで自分達が負けて助けられなくなるよりはマシである。

 彼はそう判断した。

 だが……、

 

「嫌…」

 

 彼女はそうは行かなかった。

 

「グレース?」

 

 ラビリンが彼女の名を呼ぶ。

 

「もし、ここを離れてる間にあのメガビョーゲンがもっと育っちゃって、取り返しがつかなくなっちゃったらどうするの? この素敵な作品たち? 作った人の……長良さんの思いは!?」

 

 グレースは最後に叫ぶ。

 

「グレース…」

 

 治も彼女の名を呼ぶ。

 だがそんな彼の声も、彼女には届かなかった。

 

「私は絶対にここを守りたい! 守れるまで、ここを離れるわけには行かないの!」

 

 グレースは実りのエレメントボトルを取り出す。

 

「実りのエレメント!」

 

 そしてヒーリングステッキに実りのエレメントボトルを装着した時、グレースのステッキの先端からピンク色の光が剣のように伸びた。

 

「グレース!」

 

 ラビリンが叫ぶ。

 

「おい落ち着けって言ったろ! そうならないためにまずはお前たち三人で…」

 

 グレースの肩を掴む治。

 

「邪魔しないで!」

 

「っ!!」

 

 だがグレースは、そんな治に怒鳴り、彼を振り払ってメガビョーゲンに向かった。

 そして、それを受けた治は…、

 

「(邪魔すんな…か。……ハハ、そうだよな。何言ってんだ俺は)」

 

 その場に立ち尽くしていた。

 

「グレース! このまま守りきれなかったら同じラビ!」

 

「ハァッ!」

 

 静止するパートナーの声も聞かず、グレースはメガビョーゲンに斬りつける。

 

「メーガー!!!」

 

 そんなグレースの攻撃を躱して反撃に出るメガビョーゲン。

 だが、それに対してグレースも回避の選択をする。

 

「ハァ!」

 

 そして続いて彼女はメガビョーゲンを蹴りつける。

 今度の攻撃は見事メガビョーゲンを捉えて直撃する。

 

「あ、駄目!」

 

 だが今の周りが見えていない彼女の目には攻撃を受けたメガビョーゲンの倒れた先に何があるのかすら見えていなかった。

 それが、彼女の守りたい作品であったにも関わらずだ。

 

 その事をメガビョーゲンを攻撃してから理解した彼女は途端に倒れそうなメガビョーゲンを助け出す。

 作品を守るために敵も守る。

 なんとも皮肉な事である。

 

「メガビョーゲンを助けてくれるとは、感謝するぞプリキュア!」

 

 そんなグレースをグアイワルが笑う。

 

「メガ!」

 

「きゃあっ!」

 

 そしてメガビョーゲンもまた、守った彼女に感謝などするはずもなくグレースを投げ飛ばす。

 そんな彼女の目に映るのは、自身が守りたい作品。

 今ここでステッキからエネルギーを放出すればグレースは無傷で立て直すことが出来る。

 だが、それをすれば間違いなく作品は壊れる。

 しかし反対に、このまま何もしなくても作品に傷がつき、グレースもダメージを追うことは見えていた。

 

「…………っ!!!」

 

 グレースは唇をギュッと噛み、目を閉じる。

 ―――どうか長良さんの作品が傷つかない様にと。

 

「グレース!」

 

 その時、部屋の中に風が吹いた。

 そしてその風と共に駆け抜けた男は、作品に落ちる前にグレースを抱きかかえて助け出す。

 

「……治、くん…?」

 

「ナイスキャッチラビ、治!」

 

 その男は、先程グレースに邪魔しないでとはねのけられた男、現在はグレートサイノマンとして変装している男、彩野治である。

 

「守りたい事にばっか拘って、結局何にも出来てないんじゃ意味ねえだろ」

 

「……ごめん、なさい」

 

 静かに言う治。

 そんな彼の纏う今の雰囲気が、グレースに冷静さを取り戻させる。

 

「けど、お前がどうしてもこの作品を守りたい。それだけはめっちゃ伝わってきたぜ」

 

「え…?」

 

 治は立ち上がってメガビョーゲンの方を向く。

 

「……ふん! やはりただの仲間割れか、何かの作戦かと少しは期待したものだがメガビョーゲン! 目標変更だ、あの男から片付けてしまえ!」

 

「メガビョーゲンーーーーーーー!!!!!!」

 

 メガビョーゲンはトゲを全開にさせる。

 そしてそこへ、回転の力まで加えて治へと向かった。

 だが、それを見ても治は避けない。

 それどころか、ガードの構えすらしない。

 ただ彼がしたのは、自身の横に居るグレースと後ろにある作品を見る事だけ。

 そして―――

 

『楽しみだなー、今度はどんな事があるんだろう?』

 

 先日ののどかとの通話

 

『それは私にとって、思い出の品なの』

 

 長良の言葉

 

『やるんならめっちゃカワイイ物作りたいよね〜!』

 

『作ったら、みんなで作品を見せあいましょうか』

 

 みんなでした約束

 それらを思い出す事、ただそれだけだ。

 

「メガビョーゲン!!」

 

 そんな彼の顔面にメガビョーゲンの体が直撃した。

 そして、治が顔に着けていたサングラスの破片が床にパラパラと落ちた。

 ……彼の顔からであろう赤い鮮血と共に。

 

「ああ…!」

 

 それを見てグレースの顔が反対に青くなる。

 自分の無鉄砲さが招いたから、また彼が危険な目に遭う。

 

『これからもわたしと一緒にビョーゲンズと戦ってくれる?』

 

 自分が前にそんな事を聞いたからまた彼が傷つく。

 グレースは今の自分を責める気持ちで一杯だった。

 

 けれど、

 

「……あ! グレース、見るラビ!」

 

「…?」

 

 ラビリンの言葉で前を見るグレース。

 そして彼女の目に、光が戻り、同時に驚愕した。

 

「め、メガ…!?」

 

 目の前で、メガビョーゲンの体を必死に引き剥がそうとする彩野治が居ることに―――。

 そして彼の顔が、見るからに怒りで満ちている事に。

 

「……何なのだ、あの男は!?」

 

 それは、グアイワルも同様である。

 

「……ここにはな、お前らにも、俺たちにも分からねえくらいデカい思いをかけて作品を作ってきた人の気持ちが籠もってんだ…! それだけじゃねえ、この日を俺も他の奴らも楽しみにしてきた、そんな皆の気持ちが詰まってんだ…! それを分かってるから、グレースだって必死に、俺たちを無視してまで守ろうって頑張ってんだ…!」

 

 治はメガビョーゲンを引き剥がし、投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたメガビョーゲンは彼に向かうよりも警戒していた。

 

 そして、治は言葉を続ける。

 

「そんな皆の気持ちを……長良さんの思いを……グレースの努力を……何も知らねえテメーらが…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――邪魔すんじゃねーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 

 

 全員の鼓膜を突き破らんばかりの怒号。

 普段の彼からは考えらないほどの大声が館内を揺らす。

 そして、彼を中心に突如として発生する暴風に全員が目を閉じる。

 

 

「うおっ!?」

 

「メガっ!?」

 

「うぅっ…!」

 

 かろうじて彼の近くに居たグレースはぷにシールドの遠く離れたグアイワルはその距離の影響で大した効果は無かったが、メガビョーゲンだけはその暴風によって壁に叩きつけられた。

 

 そして、全員が再び目を開けた時―――。

 彼はそこに立っていた―――。

 

「さあ、第三ラウンドだ!」

 

 全身から白いオーラを噴き出し、そのオーラによって普段の顔が見えた男は、最後にそう叫んだ。

 

 彩野治―――始まりの覚醒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやくオリ主が気の解放をしました。

記念に、ちょっとドッカンバトル風の物でもあとがきに書いてみようと思います。

【怒りの咆哮】彩野治

レアリティ:SSR→UR

レベル:80→100

入手法:イベント産

ステータス(潜在解放無し状態)

HP:9036

ATK:10254

DEF:4066

リーダースキル:怒り爆発カテゴリの味方の気力+2HPとATKとDEF30%UP

パッシブスキル

名前:怒りの解放

効果:自身のATKとDEF50%UP

必殺技:解放

効果:1ターン自身のATK大幅上昇、相手に特大ダメージを与える

リンクスキル

勇気

臨戦態勢








今どきリンクスキルが2つってどういう事よ…弱すぎ


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