ヒーリングっど❤プリキュア〜新たな伝説の誕生〜 作:ssgss
「ハァァァァァァッ…!!」
静かな声―――。
しかし対照的に全身に込める力をより強く。
治の気持ちに呼応するかのように彼の全身を覆うオーラは激しさを増していく。
「メ…、メ、ガ…」
メガビョーゲンは、さっきまでの勢いが嘘のように怯えていた。
その理由もまた、自身をにらみつける目の前の男からの鋭い眼光によるものである。
そして、キュアグレース―――。
彼女もまた静かに目の前の男を見る。
自分の思いを受け取り、作品を守ろうとしてくれている男を―――。
だがそれ故に、彼女は男の放つ空気に怯えていた。
何故なら今、その男の放つ空気はかつて一度だけ見せたあの気絶時の彼と酷似しているからだ。
「お、治、くん…」
グレースは静かに口を開き、彼に語りかける。
治はそれに反応し、ゆっくりと彼女に目を向ける。
そして、彼は優しい笑みを浮かべながら彼女を手招きする。
「…………あ」
体を強張らせ、それでもなんとか彼の側に行ったグレースの頭を治は優しく撫でる。
「お前はそのままでいろ、グレース」
彼はグレースに言う。
そしてグレースからの返事を待つ前に、言葉を続けた。
「今すぐ無理に自分を変えなくていい。……お前が周り見えなくなって突っ走りそうになったら、俺たちが全力で止めてやる」
グレースは治の顔を見る。
そこには、確かに彼女の知る治が居た。
それを見て、彼女は涙を零す。
「おい泣くなよ。まだ、戦いは終わってねえんだからよ。……ラビリン、グレースの事、しっかり頼んだぜ。こいつすぐ無茶しようとするんだから」
「……任せるラビ!」
グレースを置いて話す治とラビリン。
そして、彼に強く返したラビリンの言葉を最後に―――彼の目は、再び強いモノに変わった。
「お前らにできねえ事は、俺がやるからよ」
片足を一歩前に進める。
彼のしたそんな事が、場の空気をあるべき姿に戻す。
「…ハッ! ええい! メガビョーゲン!」
「……め、メガビョーーーゲン!」
その空気を真っ先に取り戻したグアイワルがメガビョーゲンに指示し、メガビョーゲンは再び目の前の戦士に向かっていく。
「これ以上ここで戦うのは、俺も窮屈だ。……場所を変えさせてもらうぞ」
襲いくるメガビョーゲンを前に彼は言う。
「何を馬鹿なことを、これ以上貴様らの好きにさせるものか!」
グアイワルが息を荒くして返す。
「…いい加減にしろ、好き勝手してんのは、テメーらだろうが!」
メガビョーゲンの攻撃を紙一重で治は躱す。
そしてそれだけに留まらず、彼は今まで一番力強くメガビョーゲンを蹴りつけた。
「め、メ〜ガ〜……」
メガビョーゲンは天井に激突、さらにそこから突き抜けて外へと弾き出された。
「メガビョーゲン! ……くっ!」
その様を見ていたグアイワルが治を睨む。
だが彼は、付いてこいと言わんばかりに首をクイッと動かしてメガビョーゲンが突き抜けることによってできた穴へと跳んでいく。
そんな治を追うようにグアイワルも姿を消す。
「……ラビリン、わたしたちも行こう!」
「分かったラビ!」
そしてその場に取り残されたグレースも彼を追う。
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「メガ!」
「……」
臨戦態勢を取るメガビョーゲン。
それに無言で構える治。
だが、治はそこからさらに目を閉じていた。
「治何やってるラビ!? そんな事したらメガビョーゲンの攻撃が分からないラビ!」
それを見たラビリンが治に言う。
そして彼は静かに目を開く。
そして、
「……分かった」
何かを理解して治は呟いた。
その瞬間、治から動き出す。
「……そう何度もさせるか! メガビョーゲン!」
再びメガビョーゲンの腹部に潜り込もうとする治。
しかし、思い通りにはやられまいとグアイワルがメガビョーゲンを呼び、メガビョーゲンは全身から棘を展開する。
「ハァッ!」
しかし、グアイワルは彼の変化に忘れていた。
この場にはあの戦士の他にもう一人、プリキュアである彼女が居ることを―――。
「プリキュア…! くそ、あの男に目をやりすぎたか!」
「ナイスだ、グレース」
悔しそうに言うグアイワルと、対照的に笑う治。
そしてグレースのサポートによって体勢を崩したメガビョーゲンの棘を一本、治は強く握った。
「おおおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
大地を強く踏みつけ、治はメガビョーゲンを宙に飛ばし、自身もその後を追う。
「たあああああああっ!!!」
「め、メガガガガガガガガガガ……メガ〜〜〜!!!」
空中でメガビョーゲンに追いついた治は、メガビョーゲンの足を一本取ってその体を高速で回して何処かに向けて投げ飛ばす。
そして彼は、次にグレースへ向けて大声で叫ぶ。
「グレースッ! 今メガビョーゲンをぶっ飛ばした方向に多分、スパークルかフォンテーヌのどっちかが居る! お前は先に行っててくれ!」
「え? お、治くんは!?」
「俺ももう片方と合流したらすぐ向かう!」
「…………そういう事か、奴らとの協力は好かんが、あの男がこうも力を付けては仕方あるまい」
治の考えをいち早く察知したグアイワルがまたしても姿を消す。
そして地面に降りた治にグレースが駆け寄った。
「治、一体どういう事ラビ?」
ラビリンが治に聞く。
「プリキュアが三人バラバラで戦うよりも、一箇所に固まった方が良い。けど、それじゃあ他のどこかを一度見捨てる事になる。……だったら、それぞれのメガビョーゲンを一箇所に固めちまえばいい。もっともさっきまでは、俺の力不足で提案できなかった案だけどな」
治はラビリンたちに説明した。
そして自身から溢れ出るオーラを見て、
「けど今の俺なら、それができる。さ、早く行ってくれ。どっちか分からねえけどいきなりメガビョーゲンが二体になったらマズいからな」
とだけ告げて次に自分の向かわなければいけない方へ向いて歩き出す。
「治くん!」
そんな治をグレースは呼び止める。
「お? どうしたグレース?」
「……ありがとう!」
グレースからの感謝の言葉。
それを受けた治は何も言葉を返さない。
ただ、背中を向けながらサムズアップをして走り出したのだった。
それを見たグレースもメガビョーゲンが投げ飛ばされた方に向けて走り出す。
その道中、
「ごめんなさいラビリン」
「ラビ?」
グレースはラビリンに謝った。
「やっぱりラビリンの言うとおりだった…。もし、治くんが居てくれなかったら、わたし一人だったら、きっと長良さんの作品も守れなくて、もっと大変なことになってた…」
グレースは自分の選択を責める。
「ちゃんと周りも見なきゃダメだって、朝ちゆちゃんも言ってくれたのに…」
彼女の言葉は重いものだった。
しかし、
「けどそれも、グレースの良いところラビ! だからあんまり思い詰めないで欲しいラビ…。きっと、それ以上落ち込んだら治も悲しむラビ!」
ラビリンはグレースを元気づける。
目の前の事に一生懸命努力する。
それがグレースの良いところ、だからこそ先ほど彼はそのままでいろと、それを変える必要は無いと言ったのだ。
「……ありがとうラビリン。けど、本当に助けたいなら目の前の事だけじゃダメなんだよね」
「今回はたまたま上手く行かなかっただけラビ。次はきっと、上手く行くラビ!」
ラビリンの笑顔にグレースは救われる。
そして今この場に居ない、けどこの状況を作ってくれた彼に感謝しながら彼女は前を向き、言葉を紡ぐ。
「ラビリン。もしまたわたしが間違えそうになったら、その時はまた、ちゃんと止めてね」
「勿論ラビ!」
ラビリンの返事にまた心が救われるグレース。
そして彼女がようやく着いた先では、フォンテーヌが二体のメガビョーゲンに囲まれており、その内の一体はとても大きな物に変貌していた。
「フォンテーヌ! 大丈夫!?」
「グレース!? どうしてここに!?」
突如現れたグレースに驚くフォンテーヌ。
「治と一緒に居たはずペエ…」
「治が助けてくれたの」
「治が…? ……なんだか色々あったみたいだけど、やっぱり彼と一緒にさせたのは正解みたいね」
今のグレースを見て微笑むフォンテーヌ。
「えっ? こうなるって分かってたの!?」
「分かってたわけじゃないけど、グレースを任せるなら治以外に適任は居ないでしょ」
フォンテーヌが言うとグレースはガクッと肩を落とす。
「グレース! それどころじゃないラビ!」
ラビリンの言葉でハッとするグレース。
そして彼女は自身とフォンテーヌを囲むメガビョーゲンへと向く。
「こっちにフォンテーヌが居るってことは、治はこれからスパークルと一緒に来てくれるはずラビ! だからそれまでは」
「うん! わたしたちが頑張る番!」
グレースはステッキを握り、彼同様強い目つきになった。
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「到着っと……、こっちのメガビョーゲンは随分でけえな」
もう一方のメガビョーゲンが現れた場所。
そこに辿り着いた治は、スパークルに声をかけられる。
「うえ〜! おさむん何そのギラギラ!? めちゃカッコいいんだけど〜!」
「ひなたそれどころじゃないだろ! メガビョーゲンを何とかしないと!」
治の放つオーラに意識を奪われそうになるスパークルを宥めるニャトラン。
「あっ! そうだった、ごめんごめん〜」
「苦戦中みたいだな」
「あ〜ら、誰が来たのかと思ったらプリキュアじゃなくて坊やなのね。けど残念、アンタ一人じゃこのメガビョーゲンは倒せないと思うわよ?」
状況を把握しようとする治にシンドイーネが言う。
そして治は、大きく育ったメガビョーゲンを見て笑いながら言った。
「……俺一人で倒す気なんてねえよ。目的は別にあっからな」
「「「?」」」
彼の言葉が理解できない三者。
そんな彼女らを置いて治はメガビョーゲンの足元、汚染された川の中へと勢いよくダイブした。
「おさむん何やってんの!?」
「蝕まれた川に飛び込むなんて無茶すぎるニャ!」
あまりの衝撃に語尾が戻るニャトラン。
だが、そんな二人の心配は無用な物だった。
「め、メガァッ…!?」
「ふんっ! ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
水を押しのけ、メガビョーゲンを足元から浮かせるために両足を地面に固定させる治。
美術館のメガビョーゲンよりも大きく育ったせいでかなりの重量になったためか彼の額にも青筋が浮き出ている。
「これくらいぃぃぃぃぃっ!!」
が、それでも今の彼のパワーは桁違い。
先同様にメガビョーゲンを宙に投げ、グレースとフォンテーヌの居る方へとメガビョーゲンを投げ飛ばした。
「ちょ、ちょっと何すんのよ!? ちっ! 可愛げの無い坊やね!」
そしてグアイワルと同じ様に、シンドイーネもメガビョーゲンを追って姿を消した。
「……ハァ、ハァ…さすがに重いな」
「おさむん! め〜っちゃ凄いじゃん!」
さずかに疲れを見せる治にスパークルが言う。
だが治は、
「嬉しい言葉だけど、今は後にしようぜ。急ぐぞ、二人も待ってる」
とだけ言い、フォンテーヌ、グレースの待つ方に向けて歩き出す。
「あ、うん! 待ってよ〜!」
そしてスパークルが追いついた所で、二人は走り出したのだった。
実はこの展開は前々から考えてました