ヒーリングっど❤プリキュア〜新たな伝説の誕生〜 作:ssgss
その様子に気づいたのは、戦っていないダルイゼン達ではなく、プリキュア達だった。
「おさむん? 何やってんの?」
「あんな無防備な状態じゃ、攻撃されたらおしまいよ…。止めさせないと…!」
「フォンテーヌ、待って!」
両手を挙げ、その場に立ち尽くす治に寄ろうとしたフォンテーヌをグレースが静止する。
「治くんが何をしようとしてるのか…わたしには分からない。でも、今は治くんを信じて…わたしたちが治を守るべきだと思うの!」
グレースは彼を信じていた。
彼が自分なら、きっと信じて敵に立ち向かうから。
「でも…」
スパークルが不安そうに治を見る。
そう……プリキュアの中で一番最初に変化に気づいたのは、スパークルだった。
彼の全身から先の白いオーラと違う、蒼白いオーラが溢れ出す。
さらに、変化はそれだけではない。
汚染された彼の周りにある大地……ほんの一部分でこそあるが、でも確かにその大地は色を取り戻し、活気づいていた。
「あれは、何…?」
「治から、凄いパワーを感じるペエ」
その様子を見たフォンテーヌもようやく、彼を信じ、そしてメガビョーゲンに向き直る。
「……信じてるわよ、治」
フォンテーヌは彼に言う。
だが、そんな彼女の声……いや、今の彼にはどんな言葉や物音すら届いていなかった。
「(……まだだ、まだ足りねえ。もっと、もっと元気をくれ!)」
今の彼は、ただ純粋に、一心に想いを込めていた。
「ふーん、何かするみたいだね」
それに気づいたダルイゼンが言う。
最後までバレてほしくは無かったが、とうとうビョーゲンズも治の変化に気づいてしまった。
「ちょっと、アレ……マズいんじゃないの?」
「ふむ、おそらくパワーを溜めて、最大の一撃をメガビョーゲンに放つつもりのようだな。だが、そうはさせん! メガビョーゲン!」
グアイワルが叫ぶ。
それに気づいたメガビョーゲンは、治目掛けて高く跳んだ。
『メガビョーゲン!!』
メガビョーゲンの腕が迫る。
だが、じっと目を閉じている治はそれを避けることはしなかった。
きっと今目を開けると、雑念が混じる。
そうしたら今、エレメント達の貸してくれた力が無駄になる。
それになにより、
「「「ハアアアアアッ!」」」
彼には、信じられる仲間がいる。
治と合体メガビョーゲン、その間を遮ってプリキュアの三人がぷにシールドを展開させ、彼の身をメガビョーゲンから守っていた。
「…うっ、重い…。これ、いつまでも保たないよ…」
「頑張れスパークル…! 今は治に賭けるしかないニャ!」
弱気なスパークルにニャトランが言う。
「どうするの? そのままソイツを庇って全員やられる?」
三人にダルイゼンが問う。
「やられない…。わたしたちも、治くんも、絶対に負けないっ!」
だが、ダルイゼンの言葉をグレースは正面から否定した。
「そうラビ! 治は絶対、エレメントさん達を助ける道を見つけてくれるラビ!」
そしてグレースのパートナーでラビリンも言う。
そんな彼女達の強い意志を目の当たりにするビョーゲンズの三人、
「……もう! 本当に小賢しいガキンチョ達! もういいからやっちゃいなさい、メガビョーゲン!」
『メガビョーゲン!!!』
メガビョーゲンは一度腕を離す。
そして上に高く挙げ、それを勢いよくプリキュア達目掛けて振り下ろそうとしていた。
「マズいわね…、流石にアレは防げないわ」
「……でも、負けるわけにはいかないペエ…!」
「ペギタン……。ええ、そうね!」
いつものペギタンからは感じられない勇気溢れる言葉を受け、フォンテーヌも攻撃を仕掛けようとするメガビョーゲンを見る。
「―――待たせちまった。皆、ありがとよ」
そんな彼女達の耳に届く優しい声。
その声の持ち主の方を彼女達は見た。
「治くん…!」
「おさむん…!」
「治…!」
全身から溢れていた蒼白いオーラは、彼の右手に集中しており、そしてそれを支える彼の脚も微かに、だが確実に震えていたが、それでも彼はメガビョーゲンを見た。
「決めてやるぜ…!」
『メッ…メガ、ビョーゲン…!!』
構える治を見たメガビョーゲンは距離を取った。
三体のメガビョーゲンを合わせた一体。
その一体にとって一番恐怖の対象であった彼が、さらに得体の知れない物を宿している。
それが、メガビョーゲンに距離を取らせる原因だった。
「……やっぱ、図体に似合わず素早い奴だな。三人とも、ボロボロなとこ悪いが、頼みがある。近くに寄ってくれ」
治に言われ、彼の近くによるプリキュア達。
メガビョーゲンは、まだ治を警戒して近づかない。
「どうしたの、治?」
「俺のこの技は、たった一度しか撃てない。だから絶対に外すわけにはいかねえんだ」
「うん。そうだよね、それは分かってるよ…」
「でも、安全に距離を取って撃つようじゃあのメガビョーゲンには躱されるかもしれない。だから俺は奴にギリギリまで近づいてそこで撃つ。お前らには、そのためにサポートしてほしいんだ」
「どういう事…?」
「つまり、俺が技を確実に当てるまで俺を守ってくれ。んで、そこからはバトンタッチだ」
治がバトンタッチというと、三人は首を傾げた。
「つまり、俺ができるのは、あのメガビョーゲンを弱らせる事まで……中にいるエレメント助けるのは、プリキュアの役目、だろ?」
治は笑う。
明らかに痩せ我慢で、震える足を抑えている。
だがそれでも、彼は今の自分にできる精一杯をしようと必死に努力していた。
「任せて。あなたは絶対、私たちが守るわ」
そんな治を見て強く返すフォンテーヌ。
そしてグレース、スパークルもまた彼に頷いた。
「……おっし! んじゃあ、いっちょやりますか!」
治の言葉と同時に、四人は走り出した。
「「「メガビョーゲン!」」」
『メガビョーゲン!!!』
それを見たビョーゲンズ達の言葉、その言葉に反応し、メガビョーゲンも攻撃を開始する。
標的はもちろん、治である。
「やらせないわっ! ペギタン!」
「ぷにシールド!」
一度目の攻撃。
それをフォンテーヌとペギタンがぷにシールドでガードする。
「先に行って! 私はここで食い止める!」
「分かった。気をつけてね、フォンテーヌ!」
フォンテーヌにグレースが返し、三人は再び前へ走る。
ただただ前線へ、確実に切り札が当たるように。
『メガビョーゲン!!』
二度目のメガビョーゲンの攻撃は、サボテンの棘を射出してくる物であった。
「ニャトラン!」
「おうよ!」
スパークルとニャトランが前に出る。
「ハアアアアア!!!」
スパークルは射出された棘をエネルギー波で相殺。
が、数の多さに圧倒されその場を動けなくなる。
「ごめん! ここからは任せた!」
「ああ! 無理だけはしなくていい!」
スパークルには治が返す。
そして、グレースと治の二人は、スパークルとフォンテーヌの支援を受け、ようやくメガビョーゲンをあと一歩というところまで追い詰めた。
『メガビョーゲーーーーーーン!!!!!』
しかし、追い詰められたメガビョーゲンも特大の棘を飛ばし出す。
「絶対にやらせない! 実りのエレメント!」
最後に残ったグレース。
彼女は、実りのエレメントボトルを装着し、剣となったヒーリングステッキでその棘を迎え討つ。
「くうっ…! 治くん!」
一瞬後退するグレース。
そんな彼女の横を通り抜け、最後まで彼女達が守り抜いた一人がメガビョーゲンの目前に迫った。
「サンキュー。三人とも!」
治は高く跳ぶ。
『メガビョーゲン!!!』
その直前―――メガビョーゲンは口から何か飛び出させる。
「……っ!! うおおおおおおおおおおっ!!!」
だが、治はその何かをギリギリ頬を掠める程度の動きで回避し、右手に収束した蒼白いオーラを一気に掌の上に集め、そのオーラは、玉として彼の手に収まった。
『私達の元気を分けることが出来るはずです』
その時彼の脳裏に浮かぶエレメントの言葉。
そこからヒントを得た技の名前を、治は叫んだ。
「元気玉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
治の放った元気玉。
それは、直撃したメガビョーゲンと、その目の前にいた治すらも弾き飛ばすほどの威力を出した。
『メ、メメメメメメメメメ…!!! メガ、ビョー、ゲン…!!!』
元気玉の衝撃から脱することのできないメガビョーゲン。
「ぐあっ、うっ……!」
そして、そのあまりの衝撃に弾き飛ばされ地面に激突する治。
「「「治(くん)(おさむん)!!」」」
彼を心配し、プリキュア達は彼に駆け寄る。
「俺は大丈夫だ…! それよりも、とっとと決めろよ。三人とも…!」
だが彼は変わらず笑顔で三人に言う。
そんな彼の笑顔に救われたように、プリキュア達が前を向くと、奇跡は終わっていなかった。
なんと、治の放った元気玉から溢れたエネルギーが三人のプリキュアのボトルへと集まり、それは新たな一つのエレメントボトルを生み出した。
「これは…!?」
「俺たちも初めて見るボトルニャ…」
「でも、凄いエレメントパワーを感じるラビ!」
そのエレメントボトルを握りしめ、グレースが言う。
「きっと、みんなが力を貸してくれたんだ。地球の病気と戦おうって!」
彼が新たな技を生み出すの同時に、彼女達にも新たな技が生まれた。
『トリプルハートチャージ!』
「「届け!」」
「「癒やしの!」」
「「パワー!」」
「「「プリキュア! ヒーリング・オアシス!」」」
三人の連携技。
それに撃ち抜かれたメガビョーゲンの中から、ピンクの腕が光のエレメントを、黄色の腕が水のエレメントを、そして青の腕が花のエレメントを救い出した。
『ヒーリングッバイ…!』
そして最後の決め台詞の時、グレースは治を抱える。
「今回一番頑張ってくれたのは治くんだから、一緒に!」
「……はあ、分かったよ」
『お大事に!』
治を含めた7名により、この激闘は終わった。
「きーーーっ!! 折角こんな奴らと力を合わせたってのに!」
「……くっ、この借りは必ず返すぞ!」
「…………ま、収穫はあったかな」
悔しそうな顔をするシンドイーネとグアイワルに対し、ダルイゼンだけはある方向を見て呟いた。
……それは、メガビョーゲンが最後の時、治に対して何かを吐き出した方向であったのである。
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「エレメントさん。お加減いかがですか?」
『ありがとうございます。プリキュアの皆さん。それから、グレートサイノマンさん』
光のエレメントがそう返す。
その時エレメントは、あえて治のことを彼が呼称していたグレートサイノマンという名前で呼んでくれたので、治は少し嬉しくなっていた。
「けど……大分助けるのが遅れちまったな」
『大丈夫です。あなたが、仲間達が分けてくれた元気のおかげで、あまり時間をかけずに元通りにできるはずです』
花のエレメントが返す。
それを聞いた四人は少しホッとした。
「けど、ラテがまだ……」
そんな中、ちゆは未だに蒼い顔をするラテを心配する。
『大丈夫です! 先ほど生まれたエレメントボトルを差し上げてください!』
「分かった」
のどかが水のエレメントに促されるままラテに生まれたばかりのエレメントボトルをあげると、ラテはすぐさま元気を取り戻した。
「凄い! さっきまであんなに元気が無かったのに、一気に治るなんて!」
「ミラクルなヒーリングボトルだ!」
「そうラビ! これは、ミラクルヒーリングボトルと名付けるラビ!」
ラビリンがそう言うと、ラテも賛成と言わんばかりに吠えたのだった。
『それでは、私達は元の場所に帰ります』
『プリキュアの皆さん、グレートサイノマン。どうかこれからも、地球をよろしくお願いします』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その帰り道―――。
治はのどかとちゆに肩を貸されながら歩いていた。
「イッチチチ…」
「だ、大丈夫、治くん?」
のどかが心配して聞く。
そんな彼女の彼を見る顔は、夕日のせいか、それとも別の理由があるかもしれないが紅潮していた。
「ああ、ありがとな。けど、これくらいどうってことない……痛て」
「もう…、今は無理しないでちょうだい」
「はい…。すいません…」
「けど、ホントに凄かったよね! 今日のおさむん!」
「けど、僕としては新種のエレメントボトルが生まれた方がびっくりペエ」
ひっきりなしに話題が飛び交う中、
「おーい! 沢泉! 花寺! 平光! 彩野!」
四人を呼ぶ担任の声と共に、その担任は息を切らして走って来ていた。
「お前達ー! 探してたんだぞー、どこ行ってたんだー!? 彩野!? お前なんだその傷!?」
担任は次々に驚く。
それに動揺する三人に変わり、治が言った。
「えーっと、怪物に驚いて走り回ったらこんな遠くまで来ちゃって…。俺はその途中に道から外れて転げ落ちました」
「そ、そうなのか…? けど、お前らが見つかって良かった……うー、良かったー!!!」
自分の生徒が見つかった事に感動する担任。
その担任を宥めるのに、彼らが時間を要したのは言うまでもない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『今日は本当に大変だったな。お互い、お疲れさん』
「うん。お疲れさま」
―――その夜。
のどかは治に電話をかけていた。
『けど、さすがに疲れたから……俺ももう寝てえや』
「あっ…………う、うん! そうだよね! ごめんね。今日は治くんが一番頑張ってくれたのに…無理に電話しちゃって…」
のどかは治に謝る。
『気にすんな。それじゃ、そろそろ切るぞ』
「まっ、待って治くん!」
電話を切ろうとする治。
だがそんな彼をのどかは呼び止める。
『…? どうかしたのか?』
「あ、あのね治くん……明日ってその、お休み、だよね…?」
『あー、確か今日の校外学習の疲れを取るための臨時休校だったな』
電話越しに言う治。
そんな彼の声を聞きながらのどかは深呼吸をした。
「あの、もしよかったら、なんだけど…。明日お出かけしない?」
『別にいいぜ? 何時にどこ集合にする?』
のどかが緊張して言ったのに対し、治はすぐ返した。
『けどその話、ひなたとちゆにはしたのか?』
そこでのどかは治がしている勘違いに気づいた。
彼は、いつものように皆でお出かけだと思っていると。
そしてその勘違いは、すぐに正さなければならない物であると。
「そ、そうじゃなくて…ね」
『そうじゃない……じゃあ、どうなんだ?』
「あの、その……だから、わたしと、治くんの二人で、お出かけしない…?」
のどかは途切れ途切れ、だが確かに言葉を伝えた。
『……おう、分かった。それでも俺は問題ないぞ』
「ほ、本当に!?」
ひと呼吸の間を置いて返ってきた彼からの返答を信じきれないのどかは、聞き返してしまう。
『ここで嘘言ってもしょうがねえだろ。……じゃあ、明日の十時くらいに集合にするか? 飯とかも食いてえし』
「う、うん! 行く場所はこっちで決めておくね!」
『おう、楽しみにしてるぜ。じゃあな』
「うん! また明日!」
そう言って電話は切れた。
その後のどかは、
「えへへ…明日が楽しみだなぁ」
とても楽しそうな女の子の顔をしていた。
そして、電話の向こうにいる今日の戦い最大の功労者はその日、年相応に少年の顔をして眠りについていた。
「……こ、これは一大事ラビ…!」
だが、彼らを取り巻く騒動。
それは、まだまだ終わらないのである。
ここで元気玉を出すのは前々から決めていました。
ようやく出せたって感じですね。
そして、次回はかなり気合入れて書けるといいなぁ…