ヒーリングっど❤プリキュア〜新たな伝説の誕生〜 作:ssgss
「ふぅぅぅーーーーー」
いつもの日課。
朝のトレーニングに、俺は一つ新しいメニューを加えてみた。
それは、何もしないというメニューだ。
全力で立っているだけ、重力を上げることも無ければあのオーラを出す事もしない。
ただ、全神経を集中させて気配を探る。
ただ、それだけだ。
「……ふぅ。これすげえ便利なんだけど、動けねえし体力使うのが難点だよな」
俺はタオルで汗を拭きながら言う。
戦いながら気配を探れれば、もっとビョーゲンズとの戦いで有利になれると思ったんだけど…。
ま、それはこれからのトレーニング次第だな。
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場所は変わり、平光アニマルクリニック。
今日はラテの定期検診に来ている。
「……。うん、どこも問題なし! 健康そのものだね!」
ひなたの父、照彦さんがそう教えてくれる。
「お父さん。トリミング終わったから、車出しちゃうね」
「ああ、分かったよ」
ラテの健康を喜ぶのどかとちゆ。
何気ない日常の会話を交わす照彦さんとめいさん。
だが、俺の目はその誰よりもひなたを見ていた。
「ひなた。元気が無えみたいだが、どうかしたのか?」
「え? そう、かな? ……うん、そうかもね」
いつもならラテの状態を聞くと誰よりも先に喜んでくれるはずのひなた。
その彼女がどこか上の空というか、心ここに在らずというのが気になり、俺が声をかけると、彼女は続けて言った。
「家はさ、お父もお姉もなんでも出来るんだよね…。あたしなんて、プリキュアも辞めそうなのにさ…」
プリキュアを辞める。
「「ええええええええええええええええええええっ!?」」
流石にその言葉を他二人が聞き逃す事は無く、のどかとちゆも驚いた。
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「初仕事は楽しめた様だな。バテテモーダよ」
「ハイ。それもこれも、キングビョーゲン様のおかげっスよ」
一方のビョーゲンキングダムでは、バテテモーダの初仕事の話をしていた。
そして、彼は続けた。
「いやー、それにしてもプリキュアってチョロい奴らっスねー。これなら、先輩方のお手を煩わせなくても、自分一人で片付けられそうなもんっスわ」
バテテモーダの発言にシンドイーネが言う。
「ちょっと! バテテモーダ、キングビョーゲン様の前だからって調子に乗るんじゃないわよ!」
「い、いやいやチョーシに乗ってなんかないっスよ! 自分お三方の事はちゃんと尊敬してますんで!」
「それが嘘っぽいって言ってんのよ!」
バテテモーダに怒りを顕にするシンドイーネ。
だが、そこにダルイゼンが口を挟んだ。
「まあ、なんにしろメガビョーゲンを生み出せる奴が増えたんだから、地球を蝕むのが捗りそうで良いじゃん」
「ふ、そういう事だ。よし、バテテモーダよ、あの小うるさいのは放っておいて、今回は俺と共に来い。先輩の働きをよおく見ておけ!」
シンドイーネを他所に、グアイワルがバテテモーダを連れて向かった。
だが、バテテモーダはこの時、治の事は話さなかった。
それは、彼との戦いを他の誰かに取られてたまるものかという、彼独自の欲望である。
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「ひ、ひひひひひひなた! プリキュア辞めるってどういうことニャ!」
当たり前だが、ひなたの辞める発言に一番反応したのはニャトランだ。
「近い近い! ってか辞めるとは言ってないし…!」
ひなたはそう言ってニャトランを制止する。
「じゃあ何ラビ!?」
「説明してほしいペエ」
ラビリン、ペギタンもまたひなたに問う。
確かに事は重要だ。
これにはさすがの俺達も説明が欲しい。
「なんか、理由があるのか? この前のバテテモーダとの事で」
俺はひなたに言った。
あの時からひなたの様子が少しおかしいのは感じていたけど、まさかプリキュアを辞めるかもしれないほどとは。
「それもあるって言うか……ちょっと考えちゃってさ。だってさ、あーんなめっちゃめっちゃ苦労して、やーっと強いメガビョーゲン浄化して、やったーって思ったのに。バテテモーダみたいなめっちゃ強いの増えちゃうし…。なんか、頑張る意味あるのかなーって」
「あるに決まってんだろ! オレはひなたがいないとお手当できないんだぜ!?」
「別に辞めたいってわけじゃないけど…。ねえ、そのジュースどお?」
ひなたが目の前にあるジュースを指差す。
俺達は一度顔を見合わせたが、全員同時にジュースを口にした。
うん、いつもと少し味は違う感じがするがこれはこれでまた新鮮味があって美味い。
「美味いぞ」
「うん。美味しいよ?」
「そうね。いつもとは少し違う味だけど」
ちゆが口に出した瞬間、ひなたはまたベッドに倒れ込んだ。
「ほらねほらねー! お姉の味には届かないんだよあたしが作ったのじゃー!」
「これ、ひなたちゃんが作ったの!?」
ひなたの言葉にのどかが驚く。
まあ、こんだけ似た見た目で作れてたらそりゃ驚くわ。
「……あたし、小っちゃい頃から水泳も体操もピアノもダンスも、お兄やお姉の真似してもちっとも上手くならなく、そういうのってテンション下がるじゃん…?」
いや、軽く言ってるけど真似してみるでそれだけ色々手を出せのは普通に才能では…?
「だからプリキュアも辞めちゃうかもってこと?」
のどかが聞く。
「……分かんない」
ひなたは天井を見つめながらそう返した。
「ちょっと待てよ! オレはひなたがダメだなんて思った事ないぜ!」
「結果が伴わないと自分のやってる事に迷いが生じる。そういうのちょっと分かる気がするわ」
今でも慌てるニャトランに続けてちゆが言う。
「え、ちゆちーも!?」
しかし、ひなたはこれにいたく驚いた。
だがその気持ちは、むしろちゆだからこそ分かるのだ。
高跳びで失敗が続くことはちゆにもあるからこそ、ひなたの気持ちは分かる。
「こういう事は理屈じゃないから。周りが何か言ってもどうにもならないのよ」
「確かに、誰かと自分を比べちまうってのは、俺も分かるな」
「おさむんも!?」
俺の言葉にもひなたは驚く。
けど誰かと自分を比べて、自分の劣っている部分だけを見てしまう気持ちは分かる。
このお手当を初めてすぐの頃、浄化できるのどか達とそれが出来ない自分を比べちまってた頃の俺と。
「けど、ひなたに何か言える事があるとすれば、辞めたいなら辞めればいいさ」
「治!? 何を言ってるラビ!?」
「そうだぜ! ひなたが居ないとヒーリングオアシスもできないんだぜ!?」
ラビリンとニャトランが俺に迫る。
しかし、そこにペギタンが返す。
「僕は治に賛成ペエ。お手当は危険なことペエ、無理に続けさせるべきじゃないペエ」
「……じゃあさじゃあさ、おさむんは何のためにビョーゲンズと戦うの?」
不意にひなたが聞いてきた。
何のために戦うのか…か。
これを言ったら、のどか達はどう思うんだろう。
俺はその事だけが疑問だったが、それでも正直に話した。
「分かんねえけど。多分、戦いたいから」
俺の言葉で場に緊張が走る。
もちろん他にも理由はある。
けど、きっとこれが一番の理由だ。
「戦いたいから…」
「ビックリだろ? 俺もそうだからな。それに、ラテを母親に会わせるって約束してるし。なあラテ」
「わふぅ?」
俺はラテを抱きかかえて言う。
「ま、そんなわけで俺は俺が戦いたいから戦ってるし、これからもそうするつもりだ。だからひなたも自分のやりたいようにやればいい。自分を第一に考えて、そこから少し余裕を持てたら他に目を向ければいいんだからさ」
俺はひなたに言った。
「おさむん」
「治」
「治くん」
そんな俺を三人が呼ぶ。
はー、言いたい事言えてスッキリしたぜ。