荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集   作:マガミ

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外伝集・TMID世界

「あ、いたいた、お久しぶりです」

「やあマコト君。久し振りという程、日数経ってる?」

「そういえばそうですね。今回はどんな用で?」

「まずは月読様の経過報告かな。向う数百年休眠するのが午睡で済むようになって、度々起きてる間に意思疎通はできたから」

「それは良かった…のかな?」

「あとこれだ、頼まれてた本。和食を活かす家庭料理と、世界の家庭料理と…」

「うわぁ、ありがとうございます!」

「江戸服飾入門と日本名刀目録」

「巴ぇ!」

「後は最新特撮ヒーローとアニメ名鑑」

「澪ぉ!?」

「書類整理の達人」

「あ、それは要ります。エマさんか識だな」

 

 

「しかし、懐かしい感じだがより殺風景だねここは。こんな所に人種以外を追いやるとか、やっぱあの糞神、場所を探り当てて一発ぶん殴らないと」

「やって欲しいですが、そこは自分でやりたいので勘弁して下さい。でも残念だな、亜空に招待できないのは」

「人間とはいえ、俺も異なる世界の異物だからな、その辺が影響してるのだろうさ。歓迎の意志が聞けただけでも嬉しいもんだ」

 

 

「…なれば、実際に歓迎してやらねばなぁ?」

「勘弁してくれませんかね、巴さんや。歓迎は歓迎でもカッコ物理でしょうに。か弱い初老のオッサンを虐めないで下さい」

「貴方をか弱いなどとは、巴さんの胸が大胸筋ではないと証明するような困難ですわ」

「こら澪!どう見てもやーらかい胸じゃろが!」

 

 

「はいはい二人共そこまで。あれ? 何を持ってきたの?」

「判定紙です。このミナセは若と同類かほど近い存在なのは前回まででよう解りました。一応の物差しというか好奇心です」

「判定紙? クラスとかスキルとかレベルとか解ったりするのかい?」

「ええ、素では美味しそうな…こほん、垂れ流しの若様とは異なり、魔力は一切感じられないのに、目前での気配は山のようでしたから、私達も気になって気になって」

「丁度いい機会じゃから、200紙、900紙と1600紙でと」

「成程。所でマコト君は?」

「…1です」

「ふむ、身のこなしも内包パワーも高いのに? あれか、レベル制の世界でアビリティ制みたいなイレギュラー」

「そうなんですかね? あー、そんな気がしてきたかも」

「ええい、若といちゃついてないでさっさと持て」

「勿体ないから最初は200で。…これでいいか?」

「レベル100…ぬう、なんでこう”にほんじん”はこう常識外れなんじゃ? お主が100とか詐欺じゃろ」

「拠点世界だと100扱いなんだよ。友人達も軒並み100だろうし」

「それで貴方が五分か僅差で負けるとか、恐ろしい友人達ですわね」

「どんな魔境じゃ…」

 

 

「さぁて、周りは本当に何も無し! 今度こそお主の本気を見せて貰わぬとな!」

「巴さん、あの約束は絶対ですからね!」

 

 

「…なあ、君の嫁さん達、好戦的すぎない?というか以前も同じような台詞、別世界の子に言った気がする」

「嫁さんじゃないですってば!? …いやほんとごめんなさい。適当に付き合って貰っていいですか?」

「止める気はないのね…いいだろう、荒野の災厄、彷徨う理不尽の暴力、とくとご照覧あれ」

「意外とノリノリじゃないですか…」

 

 

「なんでじゃー!? いつ武器を切り替えた!? いやブレた途端にこっちが地面とか!?」

「…私もかつては災害の黒蜘蛛などと呼ばれていましたが、これは理不尽です! 前も手加減していたのですね!?」

「もっと主を見習って精密な動作を心掛けるといい。古武術への理解もまだまだだ。マコト君と比べて、攻撃が結構大雑把だぞう」

「「若(様)と比べないでくれ(下さいまし)!!」」

「ヒューマン相手の手加減より、もう少しイメージの強化をして、無駄を無くさないと。まあこっちもなんだけど…」

「だな。さて、身体も温まってきたし、口上の呪いも解けた。そろそろ新技で行こうか」

「げ、お主、あれと同じ呪いを受けておるのか!?」

「呪いって!?」

「詳しく述べますと…」

 

 

「…あの糞虫、この世界の戦争のよくわかんないルールもそうだけど、場所が割れないからって自動発動の同じ呪いかけとくとかほんと腹立つ」

「ルール上は不法侵入もいい所だからな、この程度は甘んじて受けるさ。意趣返しに探知を偽装して色んな所に囮を飛ばしたけど、覗いた途端に神だろうと小指を角にぶつける程度の不運が襲う。因みに友人謹製の攻勢防御」

「ぷふっ、いい趣味してますね」

「だろ? 外見だけの性格不細工には丁度いい薬さ」

「その状態で二人に勝ったかぁ、精進しないとなぁ」

「若様、あの弓の鍛錬は駄目ですよ!?」

「わ、わかってるってば」

「若! 勝負の最中ですぞ!」

「すっかり忘れてた」

「もういいかな? さておじさん頑張るので…、折れてくれるなよ?」

「ぶ、物理的な意味で?」「せ、精神的な意味では?」

「両方じゃないかな?」

「正解!」

「「いやー!?」」

 

 

「ぬう、亜空の連中の気分が、少しわかりましたわい」

「何をやっても受け流されるとか、仕組みは解っても出来る気がいたしません」

「マコト君は時折使ってるらしいじゃない? それをよく見る事だね」

「「無茶を言わないでくれ(下さい)」」

 

 

「お疲れ様でした。…見事に更地になりましたね。元から岩とか砂地と丘ばかりでしたけど」

「元は全部、二人の攻撃力だからなぁ。適度に逃せばこうもなるだろ。マコト君だってちょっと慣らせばできる範囲さ」

「ううむ、いける…かな? あ、いけるかも。今度試してみるか。そろそろ起きろ二人共」

「荒野に倒れるあられもない姿の女二人、乱暴する気じゃろう!? エロどーじんみたいに! エロどーじんみたいに!」

「早く服を着直せよ! ていうか、どこでそんな言葉覚えた!?」

「若の記憶からですが?」

「シィット!」

 

 

「あの、えろどーじんとは何です?」

「俺やマコト君の世界にあった、個人制作の艶本(えんほん)だ。開いて二ページ目でそういう展開とかよくある」

「まあ」

「詳しく説明しないで下さいよ!?」

「わ、若も持っていたり?」

「それはしらん。ただ生物的に、人間は第二次性徴を迎えると性欲が出てくるから、世間では大っぴらには制限しても、普通の子は1冊や2冊は隠して持ってたりするもんさ。マコト君の場合、趣味の範囲からしてパソコンやゲームとかで…」

「「ほほう?」」

「わー!わー!?」

 

 

「あいつら、さんざん人を慌てさせて…あれ、エルドワさんも来たんだ?」

「ホコリまみれで着替えに戻られた巴様から気になる話を聞きましてな。ミナセ殿の持つ剣とナイフ、クロスボウを見せて頂けないかと」

「構いませんよ。素材の組み合わせと生成だけ特殊な物で、それほど珍しい物ではないでしょうし」

 

 

「ナイフは随分珍しい形だ。若様、ご存知ですか?」

「ええと、これってコンバットナイフ? かっこいいな」

「CQCナイフがデザインモチーフなんだ。ステルスアクションのあれさ。形が気に入ったなら一本進呈しよう。現地素材のは、エルドワさん作って貰うといい」

「頑丈な紐で編んだ柄といい、角度や溝、全てが意図を持った造りといい、道具の美としての極みじゃな…」

 

 

「ぬう、このカタナは、どのように作られたか見当もつかん。特にこの刃、素材の振舞いがありえん…」

「流石、鋼の秘密を知る種族。こいつは無重力空間で生成したアモルファス化合金を使って縮退炉の重力波で圧縮して作ったんだ」

「??? 若?」

「すいません、どこからどうツッコめばいいのかわかりません」

「元は航宙艦艇の…って通じないか。硝子のような固まり方をさせた合金の刃部分と、それを覆う靭やかな鋼で挟んだ後、重力魔法みたいなので圧力をかけ、加工したといえばイメージはできるか?」

「くっ、我らすら知らぬ手法をご存知とは…!」

「いやそれ、普通は刀剣作る方法じゃないから」

 

 

「こ、このクロスボウ、我らの祖先が導き出した黄金比を完璧に有しておる!? 失伝して再現できない部分があるというに…!」

「これはコンパウンドクロスボウだね。計算によって導き出した射撃の最適解をなぞって打ち出せるよう、梃子の原理を中心に、素材のしなりや滑車の大きさを調整した代物なんだ。非力でも使えるし、この弓部分だけでも、普通の強弓くらいの威力は出る」

「正解。マコト君は弓道だけど見たことはあるのか」

「ええ、こっちでも普通の弓は頻繁に使ってます」

「頻繁? 商人じゃなかった?」

「…商人の積り、です」

「うん、色々苦労を自分で背負い込む性格なのはよくわかった」

「ありがとうございます…」

 

 

「んじゃ、手合わせといこうか」

「何でそうなるんです!?」

「向うのお師匠さんが、色々察してな、鈍らないようにって頼まれてる」

「おうふ…」

 

 

「むう、加減されてるのがわかって凹む。界も万能じゃないのは解ってる積りだったけど…」

「あんまり地面に寝てると身体に悪いぞ。治癒系が効かないってから、くれぐれも加減してくれとエマ嬢にも言われてたからな」

「…規模も範囲も個人戦であるのに、音と大地で異様なのが良く解りますわい」

「次元を割る力までは百歩譲って理解するとして、動いて見えないのに力をほぼ返されるとか、流されるとか、どんな鍛錬積んだんですか…」

「凡人用の鍛錬だから、才能のあるマコト君にはお勧めはしないかな。まあ、君なら基礎もあるし、魔力の流れも見える筈だから入り口はすぐだ」

「ははっ、入ったら出口が見えなそうです」

「実際、上には上があるからな。今は友人に勝ち越すのが目的さ」

「人外魔境っ!」

「若様が敵わぬ御仁が負ける相手とは…、此方は巴様と澪様がたまにじゃれる程度。至って平和と思う他ありませんな」

「心底そう思うよ…」

「酷い評価だな君達!?」

 

 

「ミナセさんは帰ったよ」

「せっかちじゃのう。今回こそはいい一撃をと思ったんですが」

「いい所無しでしたわね」「うるさいわい!」

「さぁて、学園の手続きもあるし、今日は早めに休もう」

 

 

「…なあ若、若の時もそうでしたが、地球の人間とは皆、あんななのですか?」

「酷い評価だな!? 他は普通なんじゃないかな、勇者とか」

「そうだといいですがのう」

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