荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集   作:マガミ

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外伝集・MLAL世界 その2

 

 数を頼みにした力押し同士の衝突は、当然、有効な力をどれだけ投入できたかで勝者が決まる。一気呵成に、押し潰すのが定石だ。

 だがBETAは原生災害に対して圧倒的な戦力を有しているにも関わらず、あの不可解な機械群に対して有効な力を投入できていない。相手は同じ戦術を取っているが、撃破して調査をしようにも近づけもしないし、射界に入れば即座に氷結して砕かれるし、相手は明らかにおかしい生産量、物量を押し出してくる。

 BETA側の混乱は続いている。初期は有効だった光線級、重光線級も、全く解析も理解もできないエネルギー障壁で防がれる。存在意義が無くなった。

 そして小型だろうが大型だろうが、たった一発の不明レーザーで凍結、粉々に砕かれる。そこに突撃級の装甲殻の意味は無い。当たれば確率で、当たり続ければ確実に、脆く氷結する。他のエリアならば有効だった光線級が、元素消費に見合わないと生産計画を見直す事になった。

 突撃級は、氷結して勢いで脚が砕け、地面に氷結した構成物質をぶちまける。丁度良い砕け具合が災いして、後続が滑って転び、氷結して砕けるの繰り返し。大小問わず侵攻が阻まれる。

 要塞級はいい的で、長い脚部、高い本体が災いして氷結した途端に自重で砕け散る始末だ。

 母艦級も侵攻を察知され、ルートを制限され、地上に出た途端に出迎えられ、浮かばされて中身ごと凍結させられて地上に叩き落されて砕かれた。掘削した地下は逆侵攻され、殆どを制圧していた大陸方面に繋がる橋頭堡にされた。

 

 辛うじて計測できた氷結時の温度は、絶対零度+1だったが、全くもって有効な対抗手段が導き出せない事に、とあるハイヴの頭脳級が論理ループに陥り自壊、代わりを用意するまで侵攻が一斉停止した。

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 各ハイヴの頭脳級は重頭脳級と後に呼称される存在の指示の下、情報交換と戦力抽出を開始。大陸からの初期侵攻の5倍以上の戦力を集中させるも、海中と海岸線に配置された、原生災害による旧式の火砲と同じものや、発見、照準されたら負ける機械群に鎧袖一触と凍らされ砕かれ、稀に灰となり、海に文字通り溶けていった。都合3度、同規模の攻撃を行ったが全く同じ結果だった。この際は、大陸の2つのハイヴ内の頭脳級が論理ループで一度に自壊した。

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 戦術は同じ、だが物量は負ける、いくら対処を練ろうとありえない不明レーザーの一発で母艦級すら凍結する。そもそもレーザーに見えている別物の可能性すらある。収集情報も混沌とし、分析に関わった頭脳級が持ち回りで論理ループに陥り、自壊する状況に陥る。

 一度、レーザーを遮断する重金属粒子を散布したが、不明レーザーはそれを事も無げに貫通した。新たに製造した射出級は、一回でお役御免となった。

 大型BETAならともかく、母艦級の保有していた熱量的にもありえない凍結現象。BETAはこれまでの資源収集において、今迄遭遇した事のない大損害を蒙り続けている。

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 BETAの不可解な一時停止の繰り返しに、世界の対BETA戦線に変化が起きる。極東方面にBETAが戦力を多く割割いているため、世界各地で極僅かずつであるが人類側が勢力を盛り返し始めている。アメリカは全般に協力をしているが、それとは別に集中投入戦力を準備し、慎重な調査を行ってハイヴを発見、強襲し、かなりの被害を出しつつも頭脳級を撃破した。

 ハイヴの撃破に人類は沸き立ち、BETAは計画通りに進まず、とうとう重要拠点の一つを落された事に対して計画の大幅修正を次々と行う。一度に一つの頭脳級の論理ループが、一度に2つに増えた。

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 半年が経過した。トールが海中に放った対BETA用ドローンは、余暇に漁業をして人類の漁船に引き渡しつつ、海域を全て人類領域にすべく活動を継続している。

 日本本土は、米軍の戦略を研究して佐渡ヶ島のハイヴを攻略する事ができた。一緒に突入したロボット達は、損害も厭わず人類を守り、作戦は成功した。

 

 BETA側は頭脳級が捕獲した人間の思考パターンから謎の機械群を操る知性体を探ろうとしたが、元より外からの存在なので的外れである。BETAはとうとう朝鮮半島とユーラシア大陸の太平洋側沿岸を失陥、徐々に押し込まれていく。

 

「…平和維持機は自爆だったが、こいつらはSFの自動機械にも劣る糞だ、糞の山だ」

 

 トールにとって、生命体は入れ物の違いだけではなく、内包する意識体こそが重要だ。在り方は違えど、融和までは行かずとも、お互いの尊重と適切な距離を覚えることで共存は可能だと考えている。

 だがBETAは駄目だ、定義が固着した傲慢さが見える。迷惑さは同じだが、航宙自動機械などの狂った機械群の方がまだ潔い。まあ見かけたら滅ぼすが。

 

 尚、トールはBETAによる被害状況、潰したハイヴ内の状況、次元的、空間的遮断状態において頭脳級の一体をハッキングした結果から、BETAとの対話は根本的に不可能と判断し、地球からの駆逐、太陽系からの駆逐を決断している。

 

 この世界の遠い未来まで守り続ける揺り籠は、人類を鳥籠に保護するような事態になるだろうが、一瞬だけ接続して吸い出した「重頭脳級」と命名した上位存在は、太陽系も人類も資源に過ぎないという捉え方をしていると推測されるからだ。

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 創造主と同じ在り方以外は全て、生命体にあらず。

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 決着がどうつくかは解らないが、トールはこの宇宙と銀河系については、自重しない。久し振りの、銀河規模の撲滅行動は少し、時間がかかるだろうが、1つの惑星でたかだが1000兆。相手が多いなら此方も数を揃えればいい。

 それに拠点世界では一瞬の話だ。様々な世界で次元で、両手の指で数える程度にはやってきた事だ。

 

「この喧嘩、お前(BETA)が売った、俺が買った。

 殴ってきた以上は、殴られる覚悟はしておけよ?

 さあ、貴様らが今までに滅ぼしてきた命のように、今度は貴様らが破片に灰に、尽くすり潰されろ。

 無限に無尽に無意味に理不尽に、このセカイから一欠片残らず駆逐してやる」

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 トールはAOGの面々の前では一度も見せたことの無い暗い笑みを浮かべた。

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 まだ一桁ではあるが、ハイヴが次々と失陥し続けている。謎の機械群に対しては、もしかしたら「生命体」が背後に居る可能性から対話を呼びかけているが、前線に居る端末体でさえ強い明確な意志で拒絶を訴え、あまつさえ生命体ではない原生災害と共同歩調を取っている。

 頭脳級は対抗戦術の試行錯誤で稼働限界ギリギリが続き、どれもこれも同じ結末に陥って、論理ループからの自壊速度が速まって重要元素の浪費が早くなってしまった。

 重頭脳級と定義される存在は思考する。どうしてこうなったと。

 もし、トールの事を知っていて、その上でBETA側の思考に対して応えうる者が居たならこう応えただろう。

 

「荒野の災厄を怒らせた」

 

 それが、全ての元凶なのだと。

 

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