荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集   作:マガミ

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外伝集・MLAL世界 その3

 

 謎のロボットが人類に寄り添って共闘し始めてから数ヶ月が経過した。最初は極東方面だったが、徐々に世界中の戦線で確認されるようになった。どこからともなく現れ、BETAを生物資源として燃料にし、不眠不休で壊れ果てるまで戦う小さな相棒たち。

 短い休息の合間には、その場の兵士達の祖国の歌をスピーカーで流す。

 そして不運にも撃破された残骸からは、短いログデータとBETAにだけ有効な謎兵器の部品が残る。

 

「我々は人類の未来へ向けて、共に在る」

 

 我々というのは、ロボット達の事なのか、ロボット達を作った何者かはわからない。

 そして装備もそうだが不思議と、人類同士の争いからロボット達は遠ざかる。唯一行うとすれば、防護障壁で人命を守ろうとすることだった。

 今や兵士の隣だけでなく、戦うには不向きな人々の側にも増殖して寄り添い始めたロボット達。

 彼らに避けられる事は兵士の不名誉、あるいは軍や国の不名誉として伝わるようになった。

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 トールは人類の生存圏から遠い場所に次々と拠点を移動し、まるで機械のようにBETAを狩っている。標準の展開数で、周囲には数えるのも馬鹿らしい、ロボットが9で大地が1の比率で、視界を埋め尽くしている。

 地平線の向うに見えるBETAの砂埃。端が映ったと同時にロボットに寄る一斉掃射。同時すぎて一瞬、周囲の光景がレーザー光の色で染まる。BETAは接敵する間もなく凍り砕け散っていく。トールは知る由もないが、また今日も戦力担当のハイヴにある頭脳級が、論理ループで自壊する。

 

 現在トールが装備する高次素材とデータクリスタルを使ったT-60Fパワーアーマーは、大きさに対してありえない機動速度と出力を持ちパワーフィストの一撃で突撃級の甲殻を割り砕くのだが、日本本土と比べて出番が少ない。

 構築が進むとハイヴは周辺を平野化するのだ。大抵は遠距離攻撃で片が付くのだが、トールの戦力には重光線級のそれは無意味である。逆に、理不尽な不明レーザーで蹂躙される。

 

「Jr、現在の総合的な制圧状況を」

「人類側の番号付与を基準に、朝鮮半島の20、エヴェンスク26、ロヴァニエミ8、リヨン12を破壊完了。各ハイヴに向け出撃させた師団が、フェイズ5以降による投射体について全て、地上構造体内部か、近距離で撃ち落としています」

 

 BETAが生体型作業機械として、資源採掘をして本土か次の侵略先に向けて出来上がったものを打ち上げるのを、ハイヴの周辺を囲って事あるごとに撃ち落とす作戦を開始した。

 狙われたハイヴの頭脳級は、論理ループに陥ること無く自壊を起こし、資源を浪費して交換が繰り返される。

 

「構造体の遠距離破壊は?」

「ロボット群による攻撃では少々芳しくありません」

「やはり直接殴るか」

「上部構造体を破壊するなら、ついでに地下も掃除されては?」

「その方がいいか」

 

 この世界の人類側が聞いていれば狂気の沙汰である。

 

 尚、トールは未だ直接、この世界の人類に接触していない。交流に魅力が無い訳では無いが、一分一秒でも戦力を増加させ、BETA抑え込むのが優先されたのだ。

 BETA勢力圏各地に残る人類の遺体は殆どをBETAが持ち去り資源にしている。撃破された戦術機もコクピットが中身ごと食われている訳で、衛士強化装備の存在は知らなかったりする。

 

「損害の無い機体を手に入れるのは、目処がついてからでいいな」

「はい、派遣軍の背後に明確な形で居るとわかれば、各国のよからぬ勢力を刺激する可能性がございます。不必要な接触は避けた方がよろしいかと」

 

 トールの派遣軍ことロボット軍団には、人類の保護とBETAの迎撃、非戦闘時のジュークボックスの役割に加え、破壊時に対BETA用調整のレジェンダリ付きレーザー発振器を残すよう命令してある。

 初期展開の6万機を除き、以降の生産分は仮の要塞に縮退炉を複数、MOD由来の無限生産箱を設置して文字通り何もない所から自動的に生産している。

 

「さて、根比べだな」

「ご主人さま、辞書を引き直された方がよいかと。これはただの駆除、同情の余地は一切ございませんが」

「宇宙規模なら考えも同等な可能性がある。目的が達せられないなら別の手段に資源を浪費するだろうからな」

 

 トールの意図としては、今迄戦力の中核を担っていたBETAとは別に、特別仕様のBETAを生産させて潰し続ける事で、資源を浪費させたいという物がある。

 

 実際、BETA側は新型を投入しては失敗し続け、希少元素を浪費し続けている。ロボット軍団の行軍を鈍らせるには標準BETAの大量投入が必要だが、あくまでも鈍らせるのがせいぜいで、進みを止めるのは夜間の休息時だけであった。無論、夜襲をかけようと不眠不休のロボット軍団は待機しているだけなので、待ち構えられた分だけ余計に被害が大きい。今日もまた、複数の頭脳級が論理ループに陥って自壊する。

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 人類から重頭脳級と呼ばれる存在は、数少ない解析情報から謎の機械群の戦力分析を開始した。

 謎の重力炉による膨大なエネルギー、不明な性能を持つ連射レーザー、どう考えても埋蔵資源量と釣り合わない膨大な数の機械群、そしてそれらを設置したと思われる知性体…。

 可能性演算で、およそ半数の隷下頭脳級が論理ループから論理破綻で自壊した。どう演算しても、何の前触れ無く知性体が現れ、機械群の生産と攻撃を開始したとしか考えられない。

 

 それと最近は厄介な事態が発生している。投射予定の資源が尽く地上付近で撃ち落とされている。上部構造体内部のものは再度回収して内部生産に使えばいいが、打ち出した直後に撃ち落とされたものは、謎の機械群に接収されている。

 回収しようにもハイヴ近郊は謎の機械群に占有されつつあり、戦力を出しては即座に破壊される。そのまま攻めてくるでもなく、何かを待っているように推測できた。だが何を待っているか解らない。

 スケジュールの遅れの指摘と資源の催促が、同等存在から届いている。人類から重頭脳級と呼ばれる存在は、思考のブレを自覚しつつそれを無視した。

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 この世界の本来の流れでは、トールが降り立った1998年、日本はBETAの侵攻で本土の大半と国民を失う。佐渡ヶ島と横浜にハイヴが建造され、ある数奇な運命を背負った少年に関わる数々の悲劇が起きる。

 そして翌年、アメリカは日本の本土奪還作戦においてG弾という新型爆弾を無通告で使用する。

 この世界ではトールの介入により、G弾はアメリカ主導の別のハイヴ攻略で使用された。威力については既存のどれにも属さない重力異常を用いた代物だ。

 

 日本の人類生存圏から断片的に流れてくる情報や映像から、特殊元素…G元素と呼ばれるものを用いたその爆弾の威力は計算で導き出せる。

 だが、某世界で重力に関わる諸々の知識を授けられたトールとしては、特殊元素の使用は百歩譲っても、重力の振る舞いを制御するでもなく乱暴に放り込むG弾の存在は、どうにも乱暴な代物に見えた。

 

「…まあ、博士なら美しくないとか何とか言いそうだよな」

 

 そう言いながら、新たに準備した要塞の中に縮退炉を必要分、用意した。

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