荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集 作:マガミ
2000年に入り、トールはアフリカ大陸の制圧と砂漠の緑化を開始した、ユーラシア大陸がBETAの活動で平地化され、草木も無い土地の影響で大気の状態が非常に不安定化していたからだ。
「平和維持機のアレもひどかったが、BETA共はその星の環境保全なんぞ全く考えて無いな」
既にマイナスだが、トールのBETAに対する評価はさらに降下する。最終的にどのような形で決着が付くかは不明だが、創造主という輩が居るなら自分が砕かれて消滅する恐怖を味わって貰いたい所である。
そんな思考も無いなら、無理やり魔法か魔道具で人化させてからぶち殺すか、創造主自ら作った採掘機の前に放り出す積りだ。
「…サハラ砂漠の人達には悪いが」
自然界に存在する吸水ポリマーに似た特性の苔を南アフリカで発見しているので、それを活用して地中海までの砂地に一気に散布する結構大雑把な計画である。合成しても良かったが、生命の神秘というか同じ大陸内にあった事にトールはやはり地球生命は凄いと笑った。
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人類側は困惑している。
アフリカ大陸の砂漠、サハラ砂漠に異変が起きた。BETAとの戦いが始まってから用事が対BETA戦にしか無くなりつつあった地質学者が、概ねBETAが駆逐されたサハラ砂漠に調査に赴いた際、音楽を鳴らしながら等間隔で一斉に、何かを散布するロボットの姿を見た。執拗に、丁寧に、万遍なく。蒔かれたそれを確認すると、半ば乾燥した苔であった。
雨期の前に蒔かれたそれは、雨により一斉に芽吹いて広がり、砂漠地帯を薄い緑の絨毯で覆い尽くした。風によりめくれ、飛ばされもしているが、旺盛な繁殖力で砂地に広がっていく。
数ヶ月の間続いた雨期により、サハラ砂漠は表面上は緑地化した。無論、自然の繁殖ではありえない。ロボットの散布もあったが、サハラの均一な砂地に保水力を持った苔と栄養を含む土が増えている。
国際社会は、BETA戦線を支えるロボット達と同型機がいきなりしでかした事に困惑した。環境破壊だと訴える人間も居たが、元々砂漠の国に住んでいた人々は、この力技による緑地化を歓迎していた。
BETA側は錯乱している。
BETA側は、謎の機械群と起源を同じくする機械が行った行動に錯乱していた。何か、大規模な行動計画の一環では無いかと、頭脳級が分析を開始したが最終的に論理ループに陥り自壊を繰り返したので、調査と現状確認以外の行動を停止した。
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現在、海はロボットの領域だ。海底を進むBETAは、深海用ドローン搭載の音響兵器で内部破壊され、深度が深いほど危険と浅瀬や海上を選べば、防護障壁を展開した空中ドローンの攻撃で凍らされて粉々に砕かれる。多少潜った程度なら、最も数が多い海洋ドローンの餌食である。破壊後は有害な元素を回収し、残りは魚の餌になる。
かつて、滅んだ地球上で死んだ海を我が物顔で回遊する大型機動兵器母艦を、深海も含めて徹底的にバラして回ったノウハウが生かされている。
BETAは海を渡って戦力を差し向ける手段を失い、ユーラシア大陸に閉じ込められた。人類はかつての父祖の地、人類の生存圏を取り返すべく、徐々に包囲を狭めていった。
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2001年、本来であれば平和な世界に戻るはずの少年が、運命の日に戻ってきてしまっていた。
だが、変化している点にすぐ気付いた。幼馴染の少女が、半ばあれと化して死んでしまった彼女が、同じく困惑した顔で少年の顔を覗き込んでいる。部屋の天井は見慣れた自室だった。
お互いに話をして、情報交換。共通しているのは過酷な記憶と積み重ねた経験。
だが少女には不思議な力は何も無く、身体も生身であった。そして少年が確かめる為に色々なところを弄ったせいで少年の頬には赤い紅葉腫れができた。
BETAは存在すれど、人類は何故か優勢で、ユーラシア大陸側に逆侵攻しているとの事だ。だがそれを支える謎のロボットの存在が意味不明である。
少年の枕元にあった小型端末が呼出音を鳴らす。二人の共通の友人であり、向うで送り出してくれた人と同名の女性は、向うの記憶の有無を尋ねると、ため息を吐いた上で後で会おうと告げた。
希望を持つにはまだ不安で、それでも今までの全てに比べればマシな世界。前線に出る事を避けても生き延びられる可能性はあるが、二人はそれを選ばない。お互い距離が近づくが、今までの色々と、少年の頬の紅葉痕に少女が噴き出す。
少年は少し憮然とした表情。だが、すぐに年齢にそぐわない男の顔で少女の手を取った。
今日は転校となった衛士育成学校への二人の登校日である。お互いに不安を覚えつつも、変わってしまっている世界に踏み出した。
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「ラブコメの波動を感じる」
「いきなり何を仰るのですか、ご主人さま?」
トールは脳裏に何かが閃いたが、Jrは呆れた口調で返すと現在の状況を示す。
「全方位反物質投射装置の準備は15%ほどです。月面に対しては一気に集中させたい所ですね」
「バーゲンホルム機関の設計図を思い出せたのは行幸だ。地球の制圧完了後、一気に地球圏の安全確保を行う」
「マザーシップの量産でございますね、現在の備蓄だと72隻のご用意になりますが」
「施設に不足はあるが、地上で新型縮退炉搭載のマザーシップか、スペースノア級を建造するのは?」
「旗艦はスペースノア級として、随伴に新型搭載のマザーシップを用意するのは賛成です」
「設計案があったな、建造を開始してくれ。問題点は作ってから修正、マスプロに反映させる」
スペースノア級は、某OGな世界で設計図を入手した恒星間航行も想定した万能戦艦である。トールの持つ技術で艤装すれば、施設が多少足りないので多少時間はかかるが、原型艦と比べて異様なまでの性能アップが望める。具体的には改造段階30まで解禁済みと言った所だろう。
新型マザーシップについては、旧型縮退炉を外してウルデモン型縮退炉に交換。余裕ができたペイロードに防御装備と追加兵装を搭載させ、慣性制御装置の搭載により数キロの巨体で未確認飛行物体のような機動を可能にできる。
もし重頭脳級に人間のような感性があって、今交わされる会話を理解して聞いていたなら、ふざけるなと叫んで暴れまわる酷い内容である。
「サハラ砂漠地下、太古の河川跡の地下に現在はドックを増築中です。緑地化が目眩ましになっていればいいのですが」
「母艦級の追跡は?」
「滞りなく。強固な岩盤では迂回するケースも多いようですね。地上に出現次第、駆除しております」
「近似次元の封鎖は?」
「完了です。時折確認されていた干渉波は遮断されました。高次素材の消費量は28%、予定より多く消費しましたので、ドックにて生産を開始しました」
BETAについて、物理科学では認識困難な領域から次元干渉能力の疑いがあり、トール達は手持ちの高次素材で中規模の「対象:1ワールド」の空間防護フィールドを形成した。魔法のエキスパート達からすれば拙い出来だろうそれは、トールの想定では地球圏、実際は現次元を対象に外部からの干渉を遮断する。
奇しくも、完成と発動は運命の少年少女が意識を覚醒して程なくと言った時期だった。
BETA「ジャンル違う!?」