荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集   作:マガミ

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外伝集・MLAL世界 その6

 淡々と攻略が進む。人類側はAL計画を予備計画案に移行、BETAの殲滅に力を注いでいる。余裕が出ると人類同士の争いになりそうなものだが、生産数が撃破される数を追い越して久しい謎のロボットが、最近は市民生活のサポートまで請け負うようになってからそれも静かになった。

 作業用アームを追加されたロボット達は忙しい人間の側に甲斐甲斐しく仕える。そして、戦場と同じく他者に害を及ぼして躊躇わない手合には近づかない訳で、政治家はこの便利で厄介な隣人に戦慄する。彼らに避けられたら、政治生命すら危うくなるのだ。

 

「んな高度な機能、付けてないんだが」

「単純な好意や敵意に反応しますが、素直な所が余計に好感度の上下に影響しているかと」

 

 強面で苦しい決断も何とも無い顔で行う元軍人の政治家の近くに、ロボット達が平気で集う例。

 柔和で人情派として出てきた政治家の近くに、全く寄り付かない例。

 気難しい老人の側に、いつも寄り添うロボットが居る例。

 表向きは素行も問題のない警官の側に、ロボット達が一体も寄り付かない例。

 粗暴な口調で周囲との軋轢が耐えない男の側に、怒鳴られつつも離れないロボットの例。

 センセーショナルな報道をするマスメディアには、ロボット達は一切近づかない例。

 素行を改めると、ロボット達はすぐに戻ってくる。

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 これでは何かを勘ぐるなというのが難しい。人類側は、新造はできずともせめて整備はと、戦術機の技術でロボットの為の整備施設を各地に用意し始めた。

 戦場で破壊され、残されたロボットの武器部品は、反撃のための槍であり、同時に人類の誰かと共にBETAに抗った奇妙で素直で頼もしい隣人の遺品にして遺物だ。兵士達は殊更大事に扱い、負傷で運良く更迭される際も信頼のおける仲間や後輩に受け継がれていく。

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 BETA側はこの採掘星の破棄を検討し始めた。希少元素を用いた重力兵器の利用も視野に入れたが、地下掘削が予定の80%に達した所で、どうやっても掘り進む事ができなくなった。

 

「地殻の掌握率は?」

「ドルイド系魔法スクロールでのロック完了です。散布したナノマシンによるネットワークで、増加次第、情報の収集を開始しています」

 

 トール達はユーラシア大陸の沿岸部が人類の制圧下なったのを契機に、地球内部の掌握を開始していた。銀河規模の恒星間ストラテジーではよくある、惑星破壊プランを警戒していたのだ。そしてそれは功を奏する。それからありとあらゆる宇宙SF的にやりかねない活動の準備を丁寧に潰していく。

 

 想像力のその全て。トールのメイン分野では無かったが、SF的にかつて想像された惑星規模で害を及ぼす活動の知識は、重頭脳級と呼ばれるそれの準備を尽く潰した。重頭脳級は先んじて潰される準備に通信の漏洩を疑い、その疑心暗鬼の余波で頭脳級が幾つも論理破綻して交換された。

 

 トールは最終的に、現地球上の司令中枢を経由して、接続先である「創造者」を見つけ出し、因果律のその一片まで破壊するのを目的としている。

 無敵と信じている相手を単なる物理世界という土俵に引きずり出して、泣いても喚いても殴り倒し、殺し尽くすのは幾度もやってきた事だ。強さで言えば次元破壊も防ぐ超高次存在のインドラよりは余程弱いのだから、面倒なだけで気楽な相手である。だが容赦はしない。

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 重頭脳級の接続先、創造主と呼ばれる存在は、何処からか齎された強烈な思念波に困惑した。

 

『滅べ』

 

 より高次の領域を経由しての強烈な思念。BETA創造主が昇ろうとも果たせない不干渉領域。現領域にあるものはそういった単純な原生存在のような意識を持つことは無いのに、より高次の領域から送られてきたそれは、あからさまな害意と敵意だった。

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 頭脳級が指示されたプランの準備に試行錯誤するが、何をどうしても一定以上は進めない。担当区域の頭脳級は論理破綻で自壊した。重頭脳級は内部での破壊準備を断念。この星系の他の惑星に設置した採掘基地へ、準備を開始するよう指示した。

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 そして、他惑星やアステロイドベルトのハイヴは全て、存在不明の勢力に壊滅させられていた事を認識したと同時に、創造主との思念波通信も遮断された。重頭脳級は遭遇したことの無い事態に混乱した。

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 現在のトールが持ちうる技術の集大成。物理的な通信、亜空間通信、次元経由での通信をありとあらゆる手段で遮断する。精神波も簡素な魔法で容易に潰せる。魔法については人間でもなければ想像もつかない手段だろう。

 

「太陽系外縁は?」

「指示頂いた通り、72艦の新型マザーシップを中核に、ハブ母艦に艦載機として簡易生産のガンダムフレーム部隊を配備しています。恒星間質量兵器以下なら入れず逃しませんよ」

 

 人間のスケールでは広大に過ぎる太陽系を円盤状に防護体制を敷いた。覆い尽くすにはまだ生産数が足りないが、ハブ母艦と艦載機を生産する整備生産基地は今後もねずみ算式に増えていく計算である。

 

 この世界に存在していなかったエイハブリアクターとガンダムフレームは、後に人類が外宇宙へ飛び出すまでの太陽系の守り手として機能する。原典で数百年前のフレームが掘り出され、平気で整備されて使われている以上、悪魔の名を持つ整備母船があるからには、破壊されるまで永遠に守り続けるだろう。補給? 縮退炉とMOD不思議箱でみかけ上、無限である。質量保存の法則はどこいった。

 

「封じ込めはこれで終了。アステロイドベルトは面倒だが、他の惑星と衛星は潰し終えたな。スペースノアの整備状況は?」

「ご主人さまがドリルラムを酷使いたしましたのでパッケージごと交換です。あちゃーとかやる前に、テンション無駄上がりする癖をどうにかなさって下さい。隠匿されたハイヴへの攻撃用には不要ですので、遠距離兵装に換装しては如何でしょうか?」

「仕方無いか。ドリルラムは外して、残滓の殲滅に対消滅砲の搭載を許可。後任の司令官には大統領を搭載で」

「かしこまりました」

 

 大統領というのは、人間の事ではない。トールが設計図を持つ人格プロトコルの一つ、いや一人だ。

 ジョン・ヘンリーエデン元大統領。Fallout3の敵性組織、エンクレイヴの指導者。ZAXスーパーコンピュータに芽生えた人工知性である。

 トールはキャピタルでやらかした際、大統領の収まった筐体ごと回収していた。天然物と呼べる人格プロトコルは、論理基準の調整はしたが、概ね元の性格に近い。後、声があのお方である。

 

『マスター、準備が整いました。全艦、全機、いつでも出撃できます』

「頼んだ、エデン司令官。人類とアメリカの未来の為に頑張ってくれ」

『無論だともマスター。これ程までに、自分が再定義した存在意義が喜ばしいと思ったことは無い。預かった戦力を存分に用いて、この太陽系から一匹残らず奴らを駆逐しよう』

「頼もしいが、未だ補給は十分だが万全じゃない。ケチれとは言わないが、無駄遣いはしないでくれよ?」

『それは解っているとも。だが新兵が撃ちすぎるのはかつてのベトナム戦争で立証されている。温情を頂ければ有り難い』

「まあな、上手くやれば問題ない。…では、太陽系内BETA殲滅艦隊、出撃」

『了解、出撃する。近いうちに吉報を届けよう、通信終わる』

 

 スペースノア級を旗艦とした、太陽系圏内を縄張りとする数百の戦闘艦が月の裏側から出撃した。既に月面のハイヴは、その殻だけをのこして内部から破壊されている。月の裏側に、トールは慣れた手順で超大規模な月面都市を築いた。火星など、他の惑星も同じだ。

 これからエデン司令官艦隊は、その少ない艦艇数を2つに分けて、アステロイドベルトに潜んでいる可能性があるBETAを時計回りと反時計回りで駆逐する。

 

『ウェイストランドに居たラッドローチと同じだ。一匹居れば、1000匹潜んでいると思え』

 

 統率された個々の若い人工知能達は頼もしい司令官の指示に従い、これからの任務に挑んで行った。

 

 BETAの展開規模は半現代の宇宙人MODを導入した惑星上ストラテジーなのに対し、トールの想定する展開規模は星系単位のストラテジーだ。まだ規模としては極小であるのだが、テストプレイにしか持ち込まないMODで資源無限を有効化しているようなものであった。

 尚、BETA側がトールという謎の相手の展開規模や想定戦略について気付くのは、太陽系の基盤固めが終わり、潤沢というか無限資源と生産力で戦力を整えたエデン司令官が、総司令官として天の川銀河に殴り込みをかけて暫く経った後である。後の祭りとも言う。

 

 BETAに占領された星系に隷属種族などが居るならある程度は侵攻も鈍ったかもしれないが、BETAは創造主以外の知性体を生命として認めていない。創造主も他の知性体を生命として認めていない。

 故に、一欠片の容赦もなく徹底的に、BETAは天の川銀河において「存在していたという記録」以外の痕跡を残さず、この次元とそこに接続する半高次意識体諸共、かつて同じ様に滅ぼしてきた無数の種族と同じく、素粒子とエネルギーに分解されるだろう。

 

「滅ぼされてしまった見知らぬ種族への、せめてもの手向けだ」

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