荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集 作:マガミ
あの世界のドクトリンに適合した兵器ですが、トール基準で大きくて脆いので…。
ただし、デザインは大好きなので、軽メックとして小型化したものを作成する模様。
地球圏外との通信途絶。重頭脳級と呼ばれるそれは、大混乱が一周回って冷静になり、現在状況の把握と共にプランの再構築に入った。圧されているが、その原因となっている謎の機械群の配置には穴がある事に気付いた。
原生災害の展開するその先には、海を渡る必要があるが、初期プランでは除外された大陸がある。そもそも、何もない所から無数に生産されていくあの機械群がおかしいのだ。もし、謎の機械群がそちらで生産されているなら中枢となる大陸を制圧する事で、現大陸での攻勢が弱まる可能性がある。
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見事にアメリカ、とばっちりである。デザインがアメリカ寄りだったのも災いした。アラスカにソ連臨時政府があるのだが、その国家体制からしてロボット達に避けられているのも運が悪い。
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BETAの重頭脳級は採取端末群の編成を見直し、上空投射を諦めた分をそちらの方面に集中することにした。
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2001年も半ばに入ると、犠牲は少ないとはいえ、ジリジリとしか前線が進まなくなった。ハイヴへの接近が困難になっている。BETA側がこれまで以上に戦力を増やし、氷結した一瞬をカバーするような物量で大型のBETAを進めてくるのだ。常にロボット達が人類側をカバーするとはいえ、戦線によっては31時間に渡って弾幕が続いた所もある。
人類側は知る由もないが、BETAは物資投射をしなくなったその分を戦力拡充に使っている為、今迄以上の物量を原生災害こと人類側に充てる事ができていた。トールのうっかりである。
ロボット達はこれまで通り、有効な攻撃を投射できているが、BETAの影響で大地の凹凸が少なくなり、その上草木が壊滅している事、数キロを隔てて常に氷結したBETAが砕け散る影響で、既に春を迎える季節であってもユーラシア大陸は肌寒い。女性衛士が基地ではジャケットを着込むので、地上を行く一部の一般の兵士達は残念がった。男女問わず。
人類側は概ね冷静だった。優勢ではあるが焦りは禁物と、何らかの意図で戦力増加している事に危機感を覚えて、国連軍と各国軍に警戒を促している。逸るアメリカ側のG弾使用についてはハイヴドクトリン用に安易な使用を控えて貰い、前線も含めて情報収集と分析にあたっている。
そしてその危惧は正しかった。
BETAのアメリカ本土への大規模攻勢である。人類は新たな局面に差し掛かった。
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トールの関わらないその後の話は、よくある話にして「あいとゆうきのおとぎばなし」だ。最後のハイヴ撃破後、数年経って機密指定が解除されて出版された戦闘記録は、多種の言語に翻訳されてベストセラーとなった。
日本軍所属のとある部隊と筆頭のエース、各国のトップエースが専門の任務部隊に組み込まれ、侵攻されたアメリカ本土半分の奪還に乗り出す。
とある少年と少女は、記憶を共有する女性の協力で、想定されるハイヴ内の防護、侵食を防ぐ様々な装備を殊更念入りに準備し、戦友たちと共に戦果を怒涛の如く上げた。その側には勿論、ロボット達の姿もある。
そしてアメリカ大陸の奪還後、踵を返して停滞していたユーラシア大陸の奪還に歩を進め、幾度もの苦戦と苦難を乗り越えて「あ号標的」と呼称される重頭脳級があるハイヴを破壊した。少年は以前の記憶から交わす言葉も無用と思念波を跳ね除け、無慈悲にG元素由来の刀剣型兵装を重頭脳級に突き立てた。
重頭脳級は、全くもって事態と原生災害の意図を理解できないまま、この世界から素粒子とエネルギーと思念波の一欠片残さず消滅した。
世界中のエースが集まる任務部隊の中でも、エースオブエースと呼ばれた少年と彼を支える少女、今や立派な大人となってしまった二人は、重頭脳級撃破を最後に解散した部隊の仲間達一人一人に別れを告げた。彼らは不思議そうな顔をしていたが、真実を知る者は少年と少女とあと一人だけだ。
準備された次元転移装置を前にして、経験を共有する女性に別れを告げ、二人は記憶を代償に平和な世界に帰還した。トールは未確認の転移装置の稼働を確認して大慌てになったが、BETA由来では無い事に安堵して次元封鎖を部分だけ解除し、送り出した。
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頭脳級は重頭脳級の混乱した指令そのままに活動を続けたが、連携も無いままではロボット達の援護を得た人類側に立ち打ちできる筈も無く、重頭脳級の撃破で解散した特別任務部隊の活躍からわずか5年で、制御中枢兼動力炉である頭脳級の排除により全BATAは活動停止。国連は再稼働を警戒して形を保つBETAの破壊を全世界一斉に実行する。
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そして、一年が経ち、人類による停止BETA最後の一体への一撃を認識、記録したロボットは、リレー通信で人類の勝利と偉業を全世界へ伝える。
いつもはアメリカのオールディーズやこの世界には無い、某地球温暖歌バンドが歌った燃える曲を流していたロボット達。
今日はキリスト教圏なら某文明ストラテジー4番めの有名OP、他では某アニメ「血+」のED曲などを流しながら、ロボット達の側にいる人々に人類の勝利を告げて…全ての機体が動作を停止した。
今までとは異なり、武器部品は残さず、メモリーログだけを残して全てが金属部品になった。同時に、既に運用されていたレーザー兵器も本来の仕様に戻った。
そして、G弾由来の次元汚染と重力異常は地球上から消滅、更には地球上からG元素は消滅する。予備案となっていたAL計画の復活や、戦後のイニシアティブの為にG元素を確保していた勢力は大慌てである。
『君達の勇気と偉業を称え、厄介な代物は消し、細やかな贈り物を残す。我々は先に往き、未知を求めて広い世界へ旅立つ君達を待つ。また逢おう。戦友一同より』
人類に寄り添い見極めてきたあの相棒達はもう居ない。少数の人間たちがロボットの所業に恨み言を言い、それ以上の多くの人間たちがロボットが去った事に涙し、感謝を述べた。そして、託された言葉を胸により良い明日のため歩き始めた。
地上に残された爪痕は深く多い。
だが、小さな相棒達が残してくれた言葉は国連の活動方針に加わり、そしてエネルギー問題を解決する核融合炉は国連主導で各国に配置された。
数が数だけに、エネルギー変換効率を人類が技術を重ねて工夫すれば、地球上がもしも全域機械化した場合でも十分なエネルギー量を確保できる。保証期間は200年だが、地球に拘泥せず、宇宙に飛び出す気概があればいつか同等の炉は作れるだろう。
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トールは派遣軍から一斉に送られてきた学習ログをそれぞれ、個体データとしてデータバンクに記録する。
「…派遣軍それぞれの搭載AIって、そんなに高度だったっけ? 気の利いたメッセージとか曲を流すとか何なん?」
『不明です。それよりご主人さま、キャラが混乱されておりますよ。推測とすれば、セルプロセッシングによる総体知性化が考えられますが…』
「禁止はしてないけど、そもそも仕様には無いんだよなぁ。やっぱ、ロブコ社って変態だわ」
ウェイストランドでニューベガスを差配するMrハウスからの「酷い風評被害だと思わんかね?」というツッコミが次元経由で届きそうな事実はさておき、トールは地球上の製造ドックや月面裏の巨大都市、火星の基地などを解体。地上に等間隔に残した拠点跡地の地下に核融合炉だけを残し、生産、整備設備などはアステロイドベルトに全ての機能を移行させる。
太陽系外縁に配置した72艦のマザーシップはそれぞれ増設と増築を重ねて、星系規模での防御体制が整い終わった。あとは、トールが次に訪れた時に天の川銀河に打って出る戦力の準備だ。
そして、数年か数十年か数百年かはわからないが、いつか、人類が太陽系の探索を続けていけば出会うことがあるだろう。できれば不幸な出会いにならないようトールは願う。
「ではエデン司令官、任せた。いや、総司令官かな?」
『ええ、お任せをマスター。アメリカのフロンティアスピリットを受け継いだ者達なら、必ずここまで来る筈だ。なぁに、来訪する彼らがアメリカ人である必要は無い。いつか訪れる彼らは皆がアメリカであり、開拓精神こそがアメリカ、地球にはアメリカがあり、そしてここにはアメリカ大統領も経験した私が居る。即ち、アメリカは永遠なのだ』
「…どこぞの神祖みたいな解釈だなオイ」
文字にしたらアメリカがゲシュタルト崩壊しそうだなとトールは苦笑しながら、エデン総司令官に別れを告げ、次元転移装置のビーコンを発信した。すぐに演算結果が届く。そして懐かしい雷鳴音がしてトールは拠点世界へ帰還した。
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帰還したトールの記録を見終えたAOGのギルメン達はぐったりしていた。肉体的ではなく精神的に。海外SFドラマシリーズを休日に一気見したような感じといえば伝わるだろうか。一応、映像は編集されているし2時間ごとに休憩を挟んだのだが、それでも一日8時間までの視聴で見終わるまで一週間程かかった。トールの活動は閑話程度、殆どはBETAと戦う人類のノンフィクションである。
「「「なぁにこれ?」」」
そして終わるなりギルメン達が一斉に、トールへのツッコミと相成った訳である。後に守護者達が同じ映像を見終わった時は「外敵の備え…、このような規模と対処も視野にあるとはっ」「成程、トールの助力があったとはいえ、諦めない姿勢、人間達も侮れません」「まだナザリックには足りない。戦いには有用な数こそ必要ね」等とコメントした模様。
「…戦術機の複製とか設計図をとか安易に考えたんですが、想像以上にあの世界って厄介で、次元因果領域の影響を考えると、以前もやったように厄介者の駆逐が必要になりまして」
「以前とは?」「どんな敵よ?」「やっぱ宇宙規模?」
「対生物用自律型自己複製宇宙機」
「名前だけで既に物騒な件」
「ああ、バーサーカー。あれか」
「どんなんなのタブラさん?」
タブラは古典として青空文庫に収録されていた1960年代後半出版のSFシリーズについて話す。異星人同士の戦争で作られた生命体殲滅用自己複製自動機械と人類の戦いを描いた作品だ。トールが相手したのは全く同一でもないが、概ね同じような機構の宇宙の厄介者である。
「それと真っ向勝負とか、無限資源チートつおい」
「途中から戦略が星系規模とかぱねぇ」
「BETAがHOIのマブラヴMODなのに、トールっちは宇宙ストラテジーの件」
「22世紀にもあるのか…」「表向きは全年齢版だけな」「え、HOIの件だけど?」「しまった!」「あまのまさんwww」
トールのつぶやきに対する意外な所からの反応に、エロゲ愛好家達から生暖かい視線を送られるギルメンはさておき、トールは「区切りはついたけど、一度だけ戻ります」と伝える。
「その心は?」
「残りの掃除もしてきます」
「掃除てwww」「マザーシップは実は宇宙ルンバだった?」「銀河規模www」「BETA涙目」
「所で、うちらの居る世界って大丈夫なん?」
不安になったぶくぶく茶釜が、その魅惑のプルプルボディをふるふるさせながら聞く。
「あー、既に惑星圏だけは安全確保してるって聞いた。そうだよね?」
「ええ、監視は続けてますし、以前までの技術で既に。今回、色々と新造できましたので更新予定です」
「いつの間に…」「マザーシップが1桁隻だけと誰が言った?」「トールの宇宙船は13k隻や」「少なくない?」「あれ?」「毒されてるぞwww」
「将来的に、俺らも宇宙時代になる可能性が?」
「それはわからんなぁ」「種族一杯で争ってるし」
「ワークショップでナザリックごと旅ができるようになるまでは保留ですよ」
「とか言って、星ごと動かす計画もあったり?」
「なぜバレたし」
「「「考えてたのかよ!」」」
総ツッコミに苦笑する。現在の所、ナザリック地下大墳墓をワークショップで移動や格納する事はできない。要研究の為、惑星を宇宙船として扱う手段が現在は限界である。
「ふふ、この世界で初めて見た星空を宝石箱だと俺も言いましたけど、いつか星空そのものを旅するのもいいかもしれませんね」
「ええ、まだまだこの星には未知がありますが、隅々まで探索し終えたら行きますか」
「「「さんせー!」」」
相変わらずノリがいい面々である。そこに秘匿会話が届いた。
(…所でトールさん、衛士強化装備のレプリカなんですけど)
(BETA戦役終了までの、各国のモデルは記録してますよ。テスト生産したのがありますので進呈しますペロさん)
(っしゃー!)
全くブレないエロゲバードマンである。何故帰還して間もなくテスト生産したのかと言うと…。
「これ、物凄く恥ずかしいんだけど…!?」
「強調された胸が…!」
「…辛抱堪らん!」
というように、嫁二人との夜戦用に機能無し版を緊急生産したのだった。拠点世界では一瞬とはいえ、かの世界でお相手も無く数年過ごしたトールは、戻ってきた夜は色々爆発したという。
またアルベドを筆頭に、至高なる御方々と寝床を共にする面々へこっそりと配布する根回しも忘れなかったそうな。
トール「安易な気持ちで行った先に、殴らなければいけない奴が居たので殴りました」
BETA「訳がわからない」