荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集   作:マガミ

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G1ベースのユニクロン三部作要素強めのオリジナル世界になります。


外伝集・TF世界

>トランスフォーマーの世界

 トールは次元移動の際にプライマスの導きで資源枯渇による民心の不安定化と治安の悪化、一部地域で内戦が始まったサイバトロン星に現れた。サイバトロン星は、サイバトロニアン(サイバトロン人)と呼ばれる機械生命体の母星だ。その星は現在、不穏な雰囲気に飲まれつつあった。

 

 トランスフォーマー(TF)の世界は多元的宇宙で語られる。次元転移において記憶をアンカーとしなかった事から記憶を保持していたが、トールはどの設定世界なのか悩んだ事と、唯一の有機生命体であった事から潜伏しながら情報収集。言語の解析の結果、地球に文明が興る遥か数百万年前のサイバトロン星であると結論した。

 

「うげ」

「有機生命体?」

 

 情報収集の間暫くは平和であったものの、トールが潜む地域がディセプティコン(日本ではデストロン)結成の地、メガトロンがグラディエーターとして活躍していた都市ケイオンの近くであった為、意図しない遭遇と相成った。

 

 

 最初に出会ったのは何と、ディセプティコンのスカイファイアとスタースクリームのペア。トールがオートボット(日本ではサイバトロン)と接触しようと外に出た矢先の出来事だった。捕獲しようと襲いかかったスタースクリームだったが、トールは生身で投げ飛ばした後、顔面を素手で殴り続けた。

 

「…友人が失礼した。すまないが、その辺りで勘弁してくれないか?」

「そちらは理性的なようだ。ただ、友人であるならもう少し彼を諭してやってくれないか」

 

 指導者であるメガトロンに報告するかと思いきや、意外な事に二人はそれをしなかった。

 科学者でもあったスカイファイアと意気投合。スタースクリームも文句を言いつつ付き合い、二人の任務に補助として入る。スタースクリームは、トールが方向修正するので原典と比べてかなりマシな性格になる。

 

「スタースクリーム、慢心はするなと私もトールも言っただろう?」

「ふん、この程度は負傷にならんさ。だがスカイファイア、絶対にあいつに言うんじゃないぞ。バレた日には、あの不思議な動きで放り投げられるんだからな!」

 

 隠れ家ばかりに居るのも何だと、トールは自身の姿を偽る為、二足歩行作業重機にディセプティコン風の適当な装甲板を貼り付けた物を作成。それに乗った状態で出歩く事になった。内部はカプセルホテルの1部屋程度の居住・睡眠スペースとシャワールームを用意した。

 

 そして、その操縦技術は大きな体のサイバトロニアン達であろうとまるで生身で相対するように投げたり関節技を決めたりできる。指関節を決めて悶絶させるとか、どこの関節技系魔法少女だろうか。

 

「いだだだだだ! 頼む、もうやらんから! というか何で動けない!?」

「関節技だ。無理な方向に曲げて固める。投げ飛ばすのもこういった技術の一つなんだぞ」

「オーバーフローして意識がシャットダウンしたか。毎度、スタースクリームも懲りないな…」

 

 ディセプティコンという集団は他の地域で見かけたような暴徒などとは異なり、圧倒的なカリスマを持つメガトロンの下、一定以上の統制が保たれている。原典ではディセプティコンの先祖にあたる元々の戦闘ロボットが知能が低めに製造されていた上、メガトロンの独裁と言うかワンマン運営のため、彼の不在で組織自体が瓦解しかける事が多かった。

 

 尚、原典ではニューリーダー病をよく患っていたのがスタースクリームであるが、トップに立つ存在として必要な最低限を説明した所で顔を青くした。

 

「自由が無さすぎるだろ!?」

「そこはリーダーの負うべき責任だって」

「俺…、エースでいいや」

「いやいや、ニューリーダー目指せよ」

 

 スカイファイアは治安維持活動の傍らトールと意見交換をしたりエナージョン関連の技術について伝授をした。

 

「上手く説明できない所を察してくれて助かる。どうにも研究だけだと説明が苦手でな」

「なんでディセプティコンに居るんだよ」

「今の時勢だと、研究もろくにできないんだ」

 

 スタースクリームとは、素手での戦闘技術について模擬戦を通じて教え込む。射撃武器に頼りがちだったのが、幾度も投げられたり固められて覚え、それが他のディセプティコンとの試合で生かされて、慢心ではない自信につながった。

 

「一部都市同士では内戦すら起こってる。メガトロン様の圧政による平和も致し方なし…と思いたい」

「だがオートボットの奴らは、公正な分配をとか寝言を言ってるんだ。武器も無い癖に」

「エネルギーや資源の枯渇が問題なんだろう? サイバトロン星にエナージョンの大規模プラントができれば、解決できそうか?」

「構築資源が足りない。過去のゴミの山も増える一方だから、外部へ資源調査しなければならないのだが…」

「そこでメガトロン様の、圧政による平和さ。強い力で押さえつけなければ、どこもかしこも争いばかりになる」

「成程。所でスカイファイア、エナージョン生成プラントの技術について、続きを聞いていいか」

「げぇっ、また勉強かよ? 俺は巡回行ってくる!」

「あの勉強嫌いは全く…構わないが、どうするんだ?」

「後のお愉しみだ」

 

 スカイファイアは科学者ではあったが教師では無かった為に少し難航したが、無事エナージョン関連のPerkを生えさせたトールは、実験で手持ちのエナジーセルから無事にエナージョンの生成と、エナージョンキューブの製造に成功した事で、彼らの歴史に大幅な流れの変更をもたらした。

 

 

 

>オプティマスとメガトロン、トールの邂逅

 略奪をする武装勢力の鎮圧や、武装集団の制圧と吸収を現在の主な活動にするディセプティコンへ、治安維持活動の為にその力を用いてほしいと交渉に来たオートボット代表、それが私オプティマス・プライムだ。

 

 意を決してメガトロンとの交渉に臨み…乱入してきたスタースクリームとスカイファイア、そして見慣れないディセプティコンと遭遇した。

 

「…これがあれば、少なくとも儂らのエネルギー問題は解決できる」

「本当であれば、という但し書きが付くが…、これは目の前で見せられた以上、計画していた全体配給の目処が立つ!」

「オプティマス、貴様、まだそのような寝言を言っているのか? 今用意できたプラントが星全体に設置できるものか」

「できるぞ」

「…今なんと?」

「できるって」

「バカを申すな」

 

 騒然とする会談の席で、ディセプティコン…トールと名乗った一体は、睨みつけるメガトロンの目の前にコンパクトな機械を突如、出現させた。それは、内蔵した炉のエネルギーをエナージョンに生成する小型プラントだった。

 生成速度はそれほど早くは無いが、理論上はそれ一つでサイバトロン人が一体、十分に活動できるエナージョンを生成できる。燃料は希薄な元素だ。それこそ宇宙空間に無限に存在する水素を燃料とする。

 

「本当に複製できるのか…」

「これは試作の小型プラントだ。許可があれば、もっと大型の物を用意できる。素材は近所のジャンクだ」

「変換プラント自体は既存技術のようだな。だがこの炉心はなんだ? 基礎理論は理解できるが、今迄、サイバトロニアンの誰一人として成功したことが無いのだぞ!」

 

 目の前のそれは核融合炉だった。それも、宇宙船に搭載するような大きさではなく、標準的なサイバトロニアンなら持ち運べる大きさだ。我々の識るそれとは異なり、希少な触媒などは必要としていない上に出力も段違いのようだった。現在動いている理論は解るが、それを実現するための筋道が理解できない。

 

「俺はサイバトロニアンじゃないからな」

「何だと? おいスタースクリーム、此奴は何だ? どこの辺境から来た?」

「…有機生命体です。こいつの名はトール。数ヶ月前、私とスカイファイアが哨戒活動の際、出会いました」

「寿命の短い有機生命体ですが、これ迄に膨大な技術を修めているそうで、この核融合炉を使ったプラントも、その技術の応用です」

「ありえん! 記録媒体はあろうと、有機知性体が我々を超える技術を持つなどと!」

 

 激高しかけるメガトロンをオプティマスがやんわりと制した。

 

「待ってくれメガトロン、そう侮るのは早計だ。事実、この…「トールだ」トールは、見たこともない技術で、ここにプラントを出現させたんだ。そこに生命体としての優劣や寿命の長短は関係ない」

「ありがとうコンb…じゃなかった、オプティマス。まあ俺自身は特殊だが、修めている技術は俺と同じ有機知性体が構築し、磨き上げたものだ。寿命が短いからこそ、有用な技術の積み重ねを重視し、後の世代に伝えて積み上げたのさ」

「成程、寿命が短いからこそか…。儂らはこの頑丈な体による恩恵で発展できなかった分野があり、貴様らはそれらも使ってサイバトロンにも無い技術を完成させたのか」

「理解が早くて助かる。さて、プレゼンの掴みはいい感じだな? では本題に入ろう」

 

 その後、サイバトロニアンと比較して軽く背負えるようなプラントと、標準的な住居に収まる程度のプラントが用意された。背負えるようなプラントは、個々のサイバトロニアンが持つ事で、ほぼ永続して必要とするエナージョンを用意できる。大きなプラントに至っては、大きさはそれ程でもないのに数十から数百体分のエナージョンを生成できる。

 

 そして、私オプティマスだけでなく、メガトロンが驚愕したのは…、それらが無数に無尽に、サイバトロン星の埋もれたジャンクを使うだけで用意できると言う事だ。

 

「これで、不足により体が弱った者達も生き長らえる事ができる…」

「だが少し待て。ジャンクは数多くあるが、それでも無限ではない。儂らの星の構造上、鉱脈なぞ無いんだ、機械生命体として増える以上、そこはどうする積もりだ?」

「そこは、このプラントは延命措置であって完全な解決にはならない事はよく解る。だから、オートボットは星の復興とエナージョンの分配を、ディセプティコンには資源星の探索をして欲しい。主に金属資源があれば、サイバトロニアンが一人誕生する度に1つ、自動的に生成プラントを用意できる自動製造工場を建造できる」

 

 好みがあるだろうから、そこは別途、大型プラントを製造する工場を作るとトールは言った。私自身、サイバトロン星の現状を憂いて公正な分配を掲げたが、公正であっても平等ではない。

 

 罪を犯す者、他者を蔑ろにする者には分配はしないしさせない積りだった。オートボットとしては公正な分配を実施する積りだが、集団の存続に貢献や寄与ができず、罪無くとも分配を受けられない者が出てくる。

 

 トールからのプランでは、そういった者へ供給しても余りあるエナージョンが得られる。あまつさえ、今いるほぼ全てと、これから生まれるサイバトロニアン全てにエナージョンの枯渇に怯えなくて済む。

 

 それが実現するなら…なんと夢のある事だろうか。

 

「エナージョンそのものにはもう悩む必要は無い。オートボットには星の再生を。ディセプティコンにはプラントの防衛と治安回復をやって貰えば丁度いいだろ。あとは趣味の問題だが、そこは話し合ってくれ」

「趣味か」

「ああ趣味だ。味わいの違うエナージョンを摂りたいなら、そう言った生成法を識る者に大型プラントの優先使用許可を出せばいい。余分ではなく余裕がある生活は、思考に余裕を生むんだよ」

「…何故そこまで儂らを信用できる? 我らディセプティコンで独占すると考えないのか」

 

 私も懸念していた事をメガトロンは言い出した。グラディエーターであった事から、その長らくの戦闘経験とカリスマだけで性格的にも曲者揃いのディセプティコンを牽引していると見られているが、冷徹な思慮から来る政治家、戦術家としての面こそが彼の真骨頂だ。

 

「圧政による平和を掲げているが、目に見える圧政は悪手だよ。力はいざという時にだけ壁として立ちはだかる程度が、文明としては長く続くぞ」

「ふん、百年も生きない生命体が何を言うか」

「だからだ。俺自身は記録上数千年しか過去を辿れない星の出身だが、交流先には前の銀河から生きる知性体も居てな、起源は停滞せず穏やかに発展を続ける文明だったそうだ」

「馬鹿を申すな。それが虚言でないなら、粗奴らは数百億の寿命を持っている事となる」

 

 寿命が無いから、発展の度合いがとても緩やかになってしまった事を危惧していたがと肩を竦めるトール。

 

「メガトロン、貴方の言う圧政による平和は文明の発展を妨げる。ただ怠惰に長らえるだけの文明は衰退するのと同義で、外部からの変化に脆い」

 

 それはサイバトロン星で幾度も議論されてきた事だ。新しい発想は、分母が大きいほど数多くのきっかけを生み出すが、限られた中での発展は、全体にブレーキをかける。事実、資源枯渇からくる民心の荒廃は、余裕を奪い発展にブレーキをかけてしまった。

 

「…それは、君が見てきたものから、結論づけたのか?」

「破滅を導く技術というのは確かにあるが、その爆弾を間違った方向に蹴らなければいい。常に新しい技術と発想を取り込んで新陳代謝…ああこれは有機生命体の概念だな、古い部品を外し、より良い部品に交換し続けてこそ、積極的に新しい発想を対立する中で見出してこそ、全体を発展させるんだ」

「ディセプティコンでの独占では、偏るか」

 

 オートボット的思想、ディセプティコン的思想、それらは実際、傾向としてある。

 オートボットにも思慮が浅い短絡的な者も居るし、ディセプティコンにも思慮深い者も居る。グループから外れる志向がある場合、それは大抵、異端とされてしまう。

 

「まあそういう事さ。オートボットには文明復興と発展、ディセプティコンには戦いに対する技術の試行錯誤と、いざという時にだけ鉄の拳骨を振るう役を頼みたいというのは、そういう事なんだ。どうせ争いは起こるから、過激化する前に止めさせる程度が丁度いい」

 

 恒久平和なんてのは幻想で、文明の停滞だから止めろという。多少なり争いや競い合いが起こる事を許容しつつ、一定以下で収める努力をし続けるべきだと。

 

 個体数で言うなら、全面戦争が起きた出身惑星一つで数十億がかつて死んだという。訪れた星間戦争の銀河で数百億の犠牲が出る戦争を見てきたという彼の言葉には、私もメガトロンも絶句する。

 

「だが全体の指針を決める者が必要だ。議会制では意見統一に時間もかかるぞ」

「意見を吸い上げる為に議会自体は必要だ。だが、指導者については…メガトロン、そこは貴方に頼みたい。私のオートボット的な思想では、文明の発展が停滞する」

「本気かオプティマス? 儂の独裁となるぞ」

「副官、あるいは大臣として苦言を呈する立場に私がなろう」

「ほほう、それは厄介だな。だが、我らの星が先鋭化するより柔軟性は高くなる」

「多少は参考になるよう、俺の見てきた政治体制とその結末について情報を渡そう。大丈夫、そちらなら余程上手くやるだろうさ」

「ふむ、貴様…いやトール、お前の挑戦だな? いいだろう、お前達が羨むような素晴らしい文明を築いてやろうではないか。力を貸せオプティマス、嫌とは言わせんぞ」

「…ああ、望むところだ」

 

 この日は、私達オートボット…いや、サイバトロンに住む全ての住民にとって記念すべき日となった。

 

 

 

>内政の時間

 資源分配の為に軍事独裁を進めようとするメガトロン(G1の性格)と、あくまでも平和裏公正に資源分配と捜索を計画するオプティマスを仲立ちし、この世界に技術として存在しなかった核融合炉と縮退炉を設置、同時にエナージョン生成プラントを接続して大規模内戦の危機を回避させる事に成功した。

 

 星の復興や内政をオートボットに、エナージョン以外の資源探索と軍事をディセプティコンに任せ、メガトロンを首相に、オプティマスは大臣に就いて貰う。議会もあるが、最終判断はメガトロンが担う。

 

 メガトロンはグラディエーターになる以前は、研究者か教授になりたかったとの事で、オートボットから上がる直接は軍事に関わらない技術にも積極的に興味を示した。私にいい考えがあるとオプティマスが出すプランにツッコミを入れつつ、技術発展に寄与する。

 

「メガトロン様はもう、破壊大帝の名を返上すべきだな」

「モノ作り大帝?」

「成程、ぴったりだ」

「貴様ら、さっさと仕事に戻れ!」

 

 多少なりぶつかり合うのは致し方なしと言ったトールだったが、最初の頃はぶつけ合う意見そっちのけで殴り合いになる指導者と大臣に頭を抱えた。

 

「またか! 単に配分の比率であって、どちらも必要な事で順序の問題だけだろう!? 優劣は無いはずだぞ!」

「「うむ…」」

「最近はサウンドウェーブとブロードキャストが、どちらが勝つとか民衆に娯楽放送までして煽ってるんだぞ、もう少し落ち着いて話し合え! でないとまたぶん投げるからな!」

「「わかった」」

 

 脚部の関節部分に負担がかかる「セイザ」なる姿勢で説教を食らう最高指導者と次席。

 

「…なあオプティマス、何故、トールはあの大きさで我々を制圧できるんだ? 最近は操縦する外装も使わなくなった。訳がわからん」

「アイキドーという、戦闘技術だそうだ。自身の力を使わず流れを制御するとか…。説明はされたが、質量差と常に変化するベクトルを高速演算する能力、そして膨大な経験が必要だ」

「…有機生命体は、短いが故に我らよりも研鑽の量が異常だな。奴だけかと思いたいが、儂も他の知性体を侮る考えを改めねばならん」

 

 正面でくどくどと説教を続けるトールは、表情を動かさない二人に胡乱げな目を向けた。

 

「二人共、短距離通信で内緒話か? よろしい、武術の指導をまだご所望か」

「「ごめんなさい」」

 

 思想が強すぎる規律による圧政と軍事寄りになるメガトロンをオプティマスが修正するため、かなり上手く回った。まあオプティマスも結構血の気が多いので、意見交換という殴り合いも頻繁に起きたのだが、エスカレートする前にショックウェーブ等がトールを急いで呼び、鎮圧するまでが日常となった。

 

「君を連れてきた二人には感謝する他ない。少々無鉄砲だが、資源探査や警ら活動で目覚ましい活躍をしている」

「俄に信じ難いが、プライマスに導かれて儂らに道を示しに来たというのも、この現状を考えれば信じざるをえないな」

 

 行政府のタワー内で、眼下に広がる活気あふれるサイバトロン星の都市を見下ろす二人。以前は光すら疎らで少なかった都市が、宇宙の星のように輝き、民の営みを表していた。

 

 だが、トールは難しい顔をしていた。厄介事の気配を察し、メガトロンは少し浮ついていた気持ちを落ち着ける。

 

「二人に真意を伝えたい。プライマスは、この銀河が形成される発端となった存在…ユニクロンの出現を危惧している」

「詳しく話を聞こう」

 

 この銀河が新たに誕生する以前、銀河を喰らい滅ぼした破壊の神、ユニクロン。新たに生まれた今の銀河は、それに対抗する存在であるプライマスを生み出した。お互いは争い、ユニクロンは休止状態に陥り、プライマスはサイバトロン星に宿って眠りについた。

 

 はるか昔の出来事であるが、ユニクロンは既に目覚めている。プライマスの気配を探し、あるいは既に感知して、サイバトロン星に迫っているのだと。

 

 プライマスにより復活が予言されていたユニクロンの探知・発見及び対抗手段をサイバトロン星の全勢力を結集して準備を進めた。

 

「愚か者め。未だ支配者の立場が忘れられぬとは、現状を冷静に分析する知性すら無いか!」

「追放で済ますのは慈悲だと知れ」

 

 クインテッサ星人の妨害を退けつつ、トールは星一つを対象にするまで範囲が拡大したワークショップの能力で他次元のプライマスの力と形をサイバトロン星に適用させた。

 

「サイバトロン星が変形するとは、想像もつかない。だが必要な事なのだろう?」

「使わないならそれに越した事は無いんだがな。プライマスが本格的に復活するには、この規模の体が必要なんだ」

「オプティマス、変形開始時の退避プランは? 当然、用意を進めているんだろうな」

「抜かりはないさ。防御衛星の一つを非戦闘員の避難所に改造中だ、搭載されていた武器は新造のタイタン級に使って貰う」

「手持ちの技術で、アウトレンジもできるが…」

「いや、隔絶した異質な技術は儂らの発展を歪ませるだろう。必要ならば儂らで至らねばならん」

 

 付き合いが長くなり、気心の知れた仲になる頃には、トールがこれまで得てきた技術の異常さをメガトロンはよく理解していた。

 

「儂らは確実に勝利するんだ、戦後を見据えねばな」

「変わったなメガトロン」

「…やかましい。オプティマス、貴様こそもう少し落ち着いて考えを纏めよ。オートボット共が嘆いていたぞ」

「…努力する」

「約束せんか!?」

 

 星を喰らい、その星に生きる生き物も何もかも飲み込む巨大なトランスフォーマーにして破壊の神、ユニクロン。トールはプライマスから提供を受けていた、かのザ・ムービーの映像と同じ現実のそれを記録媒体に取り出すと、対策の為にと参考程度と前置きしつつも、サイバトロン星の最高幹部会へ提供した。

 

「このような恐ろしい存在が迫っているのか」

「成程、マトリクスとは単なる指導者の証ではなく、此奴に対抗するための叡智の集合体か」

「…いいのか、メガトロン」

「何をだ? マトリクスに頼り切りなのは好かん。受け継ぐ物も重要だが、儂はそれに頼らず、縋らずとも、サイバトロン星を良い明日へ導く最初の者となる」

 

 手段の一つに過ぎないが、安易にさらけ出す物でもないからさっさと仕舞えとオプティマスに告げるメガトロン。声も相まってまさに理想の上司である。

 

「アルファートリン、ベクターシグマの起動は必要な事なのだ。ディセプティコンも拡充は必要だが、それ以上に支援を担うオートボット達も足らない。プラントのお陰で余裕はあるとはいえ、平時の余裕はこの脅威の前には儚く消し飛ぶ代物でしかない」

「…相解った。鍵を開放しよう」

 

 サイバトロン星へのユニクロンの出現は、原典(G1)では数百万年後だ。地球に文明が興る遥か昔ではあるが、プライマスがトールを呼び寄せた為に流れが変わり、存在を気取られた以上は早い段階で現れる事が考えられた為、急ぎ、戦力を拡充する必要があった。

 

 地球単位にして100年。普通の有機生命体なら老いたり次世代に繋いでもおかしくない年月だが、次元渡りの理不尽は平気でトランスフォーマー達の側に居続けた。短命種が積み上げた文明の利点と欠点を広く識るトールは、頑丈な長命種であるサイバトロニアン達に様々な視点から見て考える大切さを説いた。

 

 そして更に30年が経過し、その日はやってきた。始めは資源惑星、次に狙われたのはサイバトロン星と同じ機械生命体が暮らす星だった。事前に近郊星系へ特使を派遣して協力体制を整え、監視網を築いていた中での襲来だったため、資源衛星は間に合わなかったが、監視網により知らせた事で他の機械生命体達は難を逃れた。

 

 

 

>混沌を齎すものに抗う

 遂に、サイバトロン星ことプライマスが宿るここに、銀河すら喰らい滅ぼしたユニクロンが迫る。

 

「培った力は今の為にある。征くぞディセプティコン!」

「私達も続く。オートボット、出撃!」

 

 戸惑ったのはユニクロンである。デブリ以下の存在と認識していたサイバトロニアン達が、小さくとも確実に有効打を与えてくる。

 

 ディセプティコンとオートボットがかつて争っていた頃の武器とは異なり、マトリクスの光を擬似的に再現した数多くの武器は、トランスフォーマー達には今迄と同程度でそれ程でも無い威力にも関わらず、ユニクロンには痛打となった。

 

 そして主な攻撃者であるディセプティコン達を薙ぎ払っても、即死しない限りはオートボット達がすぐに救助、回収しては修復させて復帰させてくる。

 

「ようやく掴みかけた復興と平和、そして発展が齎すこの素晴らしいサイクルを壊させはせんぞユニクロン!」

「たとえプライマスと対となる神がごとき存在だろうが、手を携えた我らは負けない!」

 

 惑星形態では分が悪いと変形したユニクロン。体表を覆う電磁バリアでダメージが防がれる。サイバトロニアン達が撤退を始めてほくそ笑んだが、その笑みは凍りついた。目の前に迫ったサイバトロン星が、表面の巨大砲台を一斉射撃しながら、変形を始めたからだ。

 

「ええい、比較的頑丈とはいえ本来は脆い生命体なのだぞ! 下がらぬかバカモノが!」

「俺は言い出しっぺだからな、傍観はガラじゃない。直接殴ってもいいよな!?」

「なら、私にいい考えがある」

「「失敗するからそれは止めろ!」」

 

 最終的に、ディセプティコンとオートボットの集中した総攻撃で固めた所に、トールがエネルギーで構築した腕と、TF化したサイバトロン星(=プライマス)とのラリアット・クロスボンバーでユニクロンの首を刈りよろめかせた。

 

 そして、真のマトリクスの光を纏ったプライマスと…同じ光を纏ったメガトロンのツープラトンキックが、もろくなったユニクロンの首をもぎ取って勝利を収めた。

 

 

 

>ユニクロンは一度倒したなら…

 

「…アンゴルモアエネルギーにダークエネルゴン、倒しても何ともまた厄介な奴だ」

「だが事前に識っているなら対策は取れる。残滓を滅ぼす為にも、広い範囲での探索が必要だな」

「一見、上手い話には裏があるという事か。警戒を怠る事は、ディセプティコンの恥だと厳命しよう」

「オートボットも同じだ。少し発展が減衰するだろうが、ユニクロンに踊らされぬよう研究も常に監視しなくては」

 

 ユニクロンは最初の身体を滅ぼしても、その欠片や細胞、あるいはエネルギーが色々と問題を引き起こす。既に対となるプライマスは休眠状態であるため欠片も休眠状態だろうが、野放しにすればいつか必ず問題を発生させる。

 

 メガトロンは、一つ一つを徹底的に消滅させるべく、合同で探索部隊を編成した。オプティマスは豊かになったサイバトロン星の生産能力により、派遣部隊への充実した支援を差配する。

 

 

 粗方復興を終え、新たにユニクロンの残滓の除去や封印監視の準備を整えたサイバトロニアン達は、ユニクロンの元身体から疑いのあるエネルギー類を隔離、消去しつつ、徐々に分解して最終的には宇宙から消し去る為の研究をすすめる事にした。

 

 エネルギー研究に用いる案もあったが、最終的には失敗しかありえない為、最終的には消去が選ばれた。

 

「惑星アンティラの調査? かつて入植した記録はあるが、確かに現在は交流が途絶えているな」

「プライマス絡みの知識だが、宇宙錆という金属製のボディをもつ機械生命体に致命的な病気が蔓延している可能性がある」

「何だと!? 対抗手段はあるのか?」

「今は無いだろう。接触感染で広がるタイプだ。治療薬の作成のため、チームを編成した方がいい」

 

 宇宙錆の他にも宇宙ペストやクインテッサ星人がかつて研究していた悍ましい成果の対処など、時には反発し、意見を戦わせつつ、オートボットとディセプティコンはより良い明日の為に活動を続けた。オートボットとディセプティコンという名が出自ではなく役割に、内政向きか外征向きかで判断されるようになるのも時間の問題だった。

 

 

 トールが去る際は、サイバトロン星の衛星軌道上に浮かぶユニクロンの頭と、分かたれてボロボロになった身体を(ワークショップで分解できなかったので)できる限りボコボコにした。強大で脅威の破壊者ではあったが、操り人形のごとく壊されていくその姿は、ある意味哀れみを誘ったという。

 

 望遠映像で辛うじて解る、デブリよりも遥かに小さい存在が巨大なユニクロンの胴体をくの字に曲げ、残骸をボロボロにしていくのを見て、スカイファイアとスタースクリームはぶるりと身体を震わせた。オートボットやディセプティコンでトールと訓練をした者は、極めた戦闘技術の一旦に喝采し、あるいは反骨心から襲いかかったり手合わせした経験のある者は、恐怖を思い出してガタガタと震えた。

 

 尚、新体制になった初め頃、説教をしょっちゅう受けていたメガトロンとオプティマスも、幻の膝関節の痛みに思わず膝を擦ったという。

 

 

>ヘッドマスターズ

 小さい身体の為に戦闘に向かなかった小型トランスフォーマー達とその指導者は、トールが小さい有機生命体であるにも関わらず、標準的なトランスフォーマーどころかユニクロンにすら痛打を与えた姿に感銘を受けた。彼は有志を募ってあえて環境の厳しいマスター星に修業の場を設けた。

 

 それを聞きつけたトールは修めていた武術や精神修行法を伝授し、指導者は小さいながらも他のトランスフォーマーをあしらう強さに加え、様々な超常的な力の他、ヘッドオンという特殊な能力でトランステクターというボディに変形するヴィークルと合体する能力を得た。他の小型トランスフォーマーも同様にヘッドオン能力を習得していった。

 

 

 その後トールはトランスフォーマー達の入植した惑星をいくつか経由しつつ、西暦開始以前の400万年前の地球へ旅立った。太古の生命が溢れる地球の上空に到着してから、拠点世界へ帰還した。

 

 

 

>拠点世界へ戻ってから

 トールが得た技術はそれ程は多くない。エナージョンの生成技術と、スキャン技術、疑似マトリクス光の生成技術程度で、あとは協力者や開発中のボディの基礎構造情報だけである。特筆する基礎構造情報は、オメガスプリームや前倒しで完成した調査前線基地であるスクランブルシティぐらいだろうか。

 

 サイバトロニアンこと殆どのトランスフォーマー達は、人間で言う魂となるスパークを中核として、エナージョン(=エネルゴン)という高次特性を持った高効率エネルギーを巡らせる事で機械の身体を維持、構成している

 

 そのため、エナージョンが無ければすぐに元の物理法則に則った構造になり、強度が落ちてしまう。トランスフォームコグによる変形もエナージョンによる強度維持が頼りだった。

 

 それに、魂の領域に位置するスパークの生成ができない。トールも魂については研究段階であるので将来的にはできるかもしれないが、自身の気分だとはいえ、友誼を結べた彼らに対する冒涜だと考えて研究は凍結した。

 

 また、プライマスやユニクロンの構造図は手に入れたが、中枢となるスパークの準備と莫大なエナージョンの消費を考えると人型に変形させる意味が無い。それに次元を渡って存在する高次特性存在は、近似であればあるほど因果を呼び込む為、下手をすれば2つの巨大な存在の闘争に拠点世界を巻き込み兼ねない。

 

 結局、惑星級トランスフォーマー型ロボットの建造は、マトリクスという積み重ねてきた叡智と尊い献身で込められてきたエネルギーが無ければ、とても厄介な事になる事が考えられた事、そして何より数万キロメートルの巨体を製造する資源の準備には相応の時間がかかる事から計画を見送った。

 

「構造や設計を変えれば、あとは時間さえあれば作れると?」

「ええ。それにルシに話したらノリノリでしてね、宇宙を旅する事があれば是非とも作って欲しいと」

「映像で完成予想図、見れます?」

「プランは2つありますが、外観の設計図だけはひいて貰ってあります。大型要塞型か巨大戦艦型からそれぞれが人型に変形します。エナージョン…エネルゴンを使わない設計ですね」

「え、奴がデザインかよ。俺、嫌な予感しかしないんだけど」

「どれどれ…」

 

 立体映像でるし☆ふぁーが設計したという巨大兵器の映像が映し出された。

 

「プラネット級ガルガンチュア…中枢にガルガンチュアが入るのか」

「でけぇ…一撃で惑星割るとか、ワールドイーターみたいなエンドレベルのレイドボスだなこりゃ」

「え、ユグドラシルのワールドイーターってそんなに?」

「設定上でしたが、イベントで実際に世界の一つを壊しました。伊達にワールドイーターなんて名称ついてませんよ」

「どうやって倒したんですそれ…」

「特別なイベントアイテムで相手を縮小、こちらを大きくして、その上でレイドバトルでした」

 

 1つ目のプラン。変形前は映像で見たプライマスに似た、機械惑星の姿である。

変形後の大まかな意匠はガルガンチュアに似ており、多数の砲台を収め折り畳まれた鈍い銀色の球体外装を背負っていた。

 

「うん、プラネット級ガルガンチュアは問題ない。問題ないけど…」

「だけどな!? これは無いだろ!

「どんだけ拘ってるんだよあいつ!」

 

 2つ目のプランを見た時、ギルメン達は一斉に頭を抱え叫んだ。

 

「「「惑星級Gとか悪夢じゃねーか!?」」」

 

 表示されたのは、地球直径の幅、その倍する体長がある巨大なG型の宇宙戦艦の姿だったそうな。

 

 作業用の巨大な足と広域探知器を兼ねた触覚があり、黒光りする甲殻はあらゆる攻撃を柔軟に受け止めて無効化できる。質量差から来る重力異常は、自身に内蔵された慣性制御装置と重力操作能力で、次元に毛ほどの揺らぎも起こさずに宇宙を旅する事ができる。

 

 悪ノリした運用プランでは、かのコックローチゴーレムを模した無数の小型艦や戦闘艦、そして艦載機が搭載される事になっていた。内部には当然、生産工場を備えており、Gの卵型母艦に積載して投入できる。因みに指揮は恐怖公が候補である。

 宇宙へ広がる黒光りの宇宙戦艦と宙域を埋め尽くす群れ…しかも、個々には恐怖公の眷属達が無数に詰められて運用される。悪夢でしか無い。

 

「ほら、変形すれば気にならないんじゃないかと」

「「「手足が生えただけで、頭と背負ってる部分がほぼゴキじゃねーか!?」」」

 

 全意見一致により惑星級兵器の建造は却下された。

 

 今もトールが次元を渡って技術を収集している以上、承諾したその日に突然、惑星規模のそれを出現させる技術を得る可能性があった為である。とても良くトールという存在を理解しているAOGの面々であった。

 




>Perkを取得しました。


:Energon Plant Builder
 エナージョン(Energon)と呼称される、半ば高次特性を持ったエネルギー物質の生成プラントを建造できるPerk。高密度にパッケージングしたものをエナージョンキューブ(Energon cubes)と呼び、ここから更に液体等へ生成する事ができる。元のエネルギー物質は何でもよく、石油、石炭、電気など幅広いエネルギーをエナージョンに生成できる。

 エナージョン(或いはエネルゴン)はサイバトロニアン(又はセイバートロニアン)という機械生命体が必要とするエネルギー物質。彼らはこれにより活動エネルギーの確保と身体維持を行う。摂取方法は様々だが、加工により感じ方や味わいが変わるらしく、人類のアルコールのような特性を持った液体形質に加工する事もできる。

 制御プログラムと併せ、機械構造体の強度増加とそれ自体を一種の蓄エネルギー機構にする事ができる。パワーアーマーフレームにレジェンダリとして付与する事で、フュージョンコアのエネルギー追加消費分だけエネルギー兵器のダメージ増加、全体パーツの耐久度に+Perkレベル×10%の一時的増加がされる。
 ロボット作成時、エネルギー兵器のダメージ増加、パーツの耐久度に+Perkレベル×10%のボーナス、自我プロトコルの発現確率が上昇する。


:Fake Matrix Field
 擬似的なマトリクスの光を身体や武器に纏わせるPerk。高次元存在の内、主にネガティブなエネルギーを媒介にする存在に対して、その防御能力を無効化、貫通させる。

 ユニクロン来襲に備えて、オプティマスが受け継いだマトリクスが放つ光を解析し、擬似的に再現する。これは装備ではなく、生命体が持つエネルギーの発露であるため、習得と使用には精神的な鍛錬が必要。

 光の波長に類するエネルギーが苦手な対象にPerkレベル分の装甲無視。レーザー兵器の場合はダメージボーナスが追加される。
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