荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集   作:マガミ

30 / 50
記憶アンカーで飛んだので原作知識なしスタート。
視点がネメシス氏とエルシス氏で言ったり来たり。


外伝集・NTSBW世界(長い)

 外の世界を見たいと友へ無理を言って旅に出た私ネメシスと家族だったが、いかに王国内が文化的で安定しているか、逆説的に証明される羽目になった。

 祖国の影響のある土地を抜けてヨーロッパ方面を望む地中海を目指していたが、途中で盗賊達に襲われたのだ。外の世界では19世紀というが、世代を重ねてもこの程度なのかと絶望と諦観に私は襲われた。

 

「無事か? そっちは家族みたいだが、怪我はないか?」

「ありがとう。私も妻達も無事さ、深く感謝する」

 

 目の前に現れた、恐らくは東方系と思しき男が居なければ、妻と子らは為す術もないまま殺されたか、悍ましい扱いを受けていただろう。

 

「周囲を見てくる。いざという時はこれで奥さんたちを守ってやってくれ」

 

 男は背負っていたライフル…確か、北米大陸で開発されたというレバーアクションライフルを私に押し付けると、手に持っていたリボルバー拳銃に再装填。怯えている我が子の頭を優しく撫でてからその場を発った。

-

-

 暫くして男が戻ってきた。弾を再装填している事から、私達を襲い、目の前の男に討たれた盗賊達はまだ残党が残っていたのだろう。

 

「戻ったよ。こっちは静かなようで何より。おっと、申し遅れたが俺はトール、しがない旅人だ。ちょっと手違いで来てしまってね、ヨーロッパへ行く途中なんだ」

「重ねて感謝を。私はネメシス、彼女は妻のモイラ、そして子のエリスだ」

「よろしく、Mrネメシスと御家族の皆さん。中々に怖い名前だが由来はギリシャ神話かな」

「ふふ、どうだろうね。まあ祖国での名前はそれらと関連する名も多いのさ」

 

 私の名を怖い名前と言った男、トールは外の世界で荒事に慣れているように見えて、冷静で理知的な人物であった。

 

「私達の目的地も、発展しているというヨーロッパなんだが、見ての通り馬がやられてね。途方に暮れているんだが、近くに取引のできる集落を知らないか?」

「すぐ近くには心当たりは無いな。よかったら俺のオートモービルに同乗する気は無いか? 少し現金な話、身なりがいいから護衛に雇って貰えないかと思っててね」

「ほう、自動車…オートモービルか。興味もある」

「宜しいのではなくて、貴方? 足も無く私とエリスが歩き通しというのはぞっとしませんもの」

「決まりだな。ではエスコートをお願いしよう」

「お任せを」

 

 トールは少し離れている所に隠してあるとその場を離れ、程なくして一台のオートモービルを持ってきた。友に聞いていた代物よりも洗練されていて、屋根もあり、王国内で使われている電気車両のように緩衝機構が備わっている。

 

「中々いい作りだろ? こっちではまだ新機軸の揮発燃料を使ったエンジンでパワフルに走れる。尻が痛まないようデコボコにも対応させてある」

「ほほう、トール、君の発明品かね?」

「そんな所。事業はやってないが」

 

 少し自慢げに話をした後、壊れてしまった馬車から荷物を移してオートモービルに乗り込んだ。

 運転席は金属網で囲われているが、恐らくは盗賊対策なのだろう。私達の乗る席は少し厚みにムラがある丸いガラスが窓になっている。

 中は3人乗る程度では広めだ。エンジンは外に機構を置いてあるようで、振動が来る以外は油臭さや排気の気配は無い。整備されていない道も、悪くない塩梅で走る素晴らしい出来だ。私達はこの出会いを祖先に感謝した。

-

-

 それからの旅は順調に進んだ。盗賊の襲撃で出鼻を挫かれた私達であったが、トールの存在がそれを払拭し、友から聞いた外の世界の憧れを十分満足させた。

 

 トールは体躯が大きいので最初は娘に怖がられたが、私と妻と打ち解けている事も含め、今は色々な神話やおとぎ話を寝る前にせがんでいる。

 

「いつも済まないな、夜の警戒は大変だろうに」

「やり方があるんだ。糸と鳴子で警戒網を作れば、うたた寝程度はできる。朝はネメシス、貴方が運転に慣れてくれたお蔭で仮眠も取れるしな」

「色々と知らない事ばかりだ。祖国ではそれなりの立場に居るが、こと、このような場所では国で数多くのものに守られていたことを実感するよ」

 

 貧しさが奪うことに躊躇いを無くし、それに慣れきって堕ちてしまえば、獣以下になり下がるのはよくある事と、トールは言う。

 

「よくあること、か」

 

 あの盗賊達も、奪うことが必要なければ我々も襲われなかったのだろうか?

-

-

 トールと共に私達一家は祖国のあるアフリカを抜けて、砂漠やオアシスと共に生きる人々の領域にたどり着く。トールはこの地域の文化も識るようで、建物や食べ物、文化や宗教などを説明してくれた。

 

「砂漠で生きる知恵が聖句に組み込まれているが、指摘はしないようにな。後に技術の発展で払拭されても、先祖への敬意か変えることへの忌避感か、まあ宗教ってのはそんなもんなんだが」

 

 ただ、教えてくれる内容は未知を知る楽しさばかりではない。これから向かうヨーロッパ圏で覇を争い合う国々が世界で植民地を作り、その国力の増加で様々な場所と軋轢がある事も教えてくれた。この厳しくも美しい砂漠の民の営みにもその余波が来ているという。

 

 既に識っている事ではあるが、あらためて聞かされると祖国に近い地域で起きた、英国による鎮圧行動なども含め、野蛮さが拭えない事に思わず顔を顰める。

 

「そんな訳で、有色人種の扱いがあいつら少々悪いからな。できる限りトラブルは避けるが、気をつけてくれ」

 

 地中海と呼ばれている海を渡り、イタリアへ。偏見の目で見られつつ、トールが前に立って我々をアフリカのとある国から来たお忍びのやんごとなき立場の方々と偽り(間違ってはいないのだが)、できるだけトラブルを避けながらイタリアから時計回りに国々を巡った。

 

「ローマか…。国体としては滅びてもなお、築き上げたものは失われていないのだな」

「傲慢さといえばそれまでだが、全ての道はローマに通ず、というのは単に道だけじゃないって事さ。人の歴史はおっかなびっくりの失敗集だが、未知を知ろうとする姿勢が今も人を突き動かしてるってのは変わらない」

 

 一緒に旅をしたのは2年弱の間だったが、私達家族は彼の手助けで今の世界というものを大まかに知り、各所に残る遺跡や文化に触れることができた。

 

「英国風の料理というのは、なんだか酷いな…」

「産業革命の影響で労働階級だと食文化に断絶が起きてるらしくてな…、当の英国人はモーニングを三度食べろと外国人に言うとか何とか」

「成程。…エリス、スターゲイジーパイは止めなさい、嫌な予感しかしない」

 

 トール自身は腕っ節や銃使いとしての技量の他、様々な料理等にも広い知識を持つが、基本的には旅人にして研究者であると言う。

 

「旅先で風呂とは、贅沢の限りだよ」

「蒸し風呂だけどな」

 

 旅路での野営も、彼の知識でトラブルも少なく、また、外での生活を知らなかった妻と娘が不便をあまり被らずに済んだ。

 

「ふむ、益々興味深い。これほどの距離を走っても故障らしい故障も少ないとは」

「手入れを怠らない以上に、色々と工夫もあるんだ」

 

 その恵まれた体躯にも関わらず長らく乗ることとなったオートモービルの発明者という知性や技術力は、列強と呼ばれるヨーロッパ圏の国の発明者のどれよりも一歩以上抜きん出た知識を持っていると密かに確信していた。

 その中には、祖国にしか無い技術の知識もあり、教師である妻も驚いていた。

 少し勉強が苦手な我が子も、妻の下から逃げ出しては、トールに諭され、その上で考え方を気付かせて貰っていた。

-

-

 ヨーロッパ圏を去り、地中海を渡った所で祖国の交易商と出会った為、トールは案内人役を辞そうとした。だが私としてはこの妙な男が気に入っていて、祖国に招待したいと考えていた。

 

 かつては他の人種については劣等種などと考えていたが、旅を続けるにつれてそれはお互いが何も知らない傲慢さだと気づき、一歩間違えればヨーロッパ圏の国々で出会った中の、傲慢で偏見に満ちた連中と大差ないことに私は気づいた。

 

「え、ネメシスの祖国へ? まあ、ヨーロッパには今の情勢や文化の調査だったから用事は済んだし、構わないが…」

 

 戸惑うトールだったが、おじさんおじさんと慕う我が子の攻勢に折れて招待を受けてくれた。

 問題は祖国の技術水準について彼がショックを受けないかという事だが、その件については別の意味で私と友が驚愕する事となった。

-

 

-

 私、タルテソス王国の国王であるエルシス・ラ・アルウォールは、旅に出ていた友にして宰相ネメシス・ラ・アルゴールが連れてきた男、トールと出会った。

 

「ご機嫌麗しゅうタルテソス王。お初にお目にかかる。私は旅の研究者、トオル・ミナセ。トールと呼んで欲しい。旅先でネメシス殿にお会いして暫くの間、同行させて貰った」

 

 庶民であると言う割に、英国式らしき略式の礼儀作法を多少崩した体で丁寧に挨拶をしてきた。

 

「顔を上げてくれ、この場は親しい者ばかりでそんな堅苦しい席では無い。私はこのタルテソスの王であるエルシス・ラ・アルウォールだ、友と同じく宜しく頼む」

「わぁおヤング大塚ボイス…こほん、わかりまし「頼む」わかった、エルシス王「エルシスだ」…問答無用だなおい」

「友よ、トールが困っている、少しは加減してくれたまえよ?」

「ずるいぞネメシス、こんな面白そうな人材と2年近く楽しくやってたなんて。私は君の居ない2年間、余計な事をしようとする連中を抑えて、執務三昧だったんだからな」

「君ならば問題なく差配できただろうに。まあ、帰ってきた以上は厄介事は任せたまえ」

 

 我が国は表向き周辺国や集落などより少しだけ発展している体を見せているが、王都地下ではヨーロッパ圏のどの国よりも高い技術水準を持ち、穏やかに繁栄している。

 

 面白い事に、このトールは外で使われている道具や王都の構造に何か気づいたようで、王宮に案内するまで質問し通しだったらしい。

 

「ネメシス殿が「ネメシス」…ネメシスが宰相だったのにも驚いたが、エルシス王「エルシスだ」…エルシスさんがこんな気さくだとは思いもしなかったよ」

「大まかに差配はするが、その実、お飾りに徹している所もあってな、危急の件以外はこんなものだ」

「成程ね、大日本帝国の天皇陛下みたいなもんか」

「ほほう、遠い国の事も色々と詳しいのか。聞いていた通りだな」

「何を聞いてたか不安なんだが…俺はしがない一般市民の出身だぞ」

「そう身構えずともとって食べたりはせんよ。ただこの国を紹介したいと思ってたのだが…」

「トール、単刀直入に聞こう。この国の何に気づいた?」

 

 穏やかで気さくな王としての仮面を取り、私は目の前の男に聞いた。隣のネメシスが息を呑んだことに気付く。

 

「…オーケー、誤魔化しは悪手っぽいな、いいだろう。このタルテソス王国だが、見た目以上に技術力があるな?」

「どこからそれを聞いた? あるいは感づいた?」

「どこからか聞いた訳じゃぁない。使われてる道具さ、鍛冶屋の金属加工では考えられない精度だし、ガス燈に見えた街頭も、何か素子を用いた電気灯だろう? それに時計台だって機械式に見せかけた電気補正型だ。あとは…」

「もういい、十分だ。それで、友に近づいて何を企んでいた?」

「何も? 出会ったのは誓って偶然なんだ。それに、既に言っている通り、俺は旅人にして研究者だ。ただ旅をするのは地上だけではなくてね」

「…星の海を渡ると?」

 

 友の問いかけはブラフであったのだろうが、トールはそれを否定しなかった。

 

「まあね、この星一つを世界とするなら、別の世界にも渡っている。何か証拠を見せられればいいが…武器はまずいな。これを見てもらっていいか?」

 

 緊張した私と友の圧もどこ吹く風と、トールはどこからか手元に板状の物を取り出した。王宮に上がる時点で武器を預けて身体検査も行っていたが、そのような板状の物を所持していた事に二人共驚く事となった。

 

「右の縁にスイッチがある。それは情報端末だ。言語は英語にしてあるが、英語は?」

「私も友も読める」

 

 ネメシスが恐る恐る端末を受け取り電源を入れる。覗き込んだ画面には…Android? オートマトン(自動人形)の別名だった筈だが…。

 

「操作は画面に直接触れて、画面上に表示された絵文字をタッチしてくれ。テスト端末だからそんなに色々とは入れて無くてすまん」

 

 ネメシスが震える手で色々と操作する。絵文字の下には短く、何の機能が画面に出てくるかというのを示しているらしい名前がある。だが詳細を知らない私達にはどんな機能についてなのかはさっぱりわからない。

 

「いじりながらでいいから聞いてくれ。俺は色々と旅をして、文化や技術を集めている。知識には重量は無いからな。その端末は、この世界の基準からすると、大体にして百年以上後の技術の果てに作られる代物さ」

 

 タルテソス地下に存在するオリハルコンは、光で稼働する演算装置だと伝わっている。祖先達が用いたそれに比べれば遥かに劣るであろう代物だが、手渡された端末は今の世界においてはありえない技術水準の代物だ。

 

「エルシス」

「ああ。…信じよう、疑って悪かったな」

「警戒して当然だ。まあその端末の技術を既に通り越した物もあるけれど、何か参考に聞きたい物はあるか?」

「実際、沢山ある。…ネメシス」

「あのリストか? いいだろう」

 

 トールに見せたのは、この王都の秘密とも言える発掘技術の一覧や、科学省でも古文書扱いの石版だ。今の我々では使うことはできても、修復はどうにか、新造など不可能といったものばかり。

 

「ふむふむ…。FTLではなくて、コールドスリープによる恒星間移民計画かな。技術はあったようだけど急いでた可能性があるな。確かこの時期は…M78星雲にある星系で大規模異常があった筈…」

 

 私とネメシスの額にたらりと汗が流れた。王家やそれに近しい者にしか明かされないタルテソス…いや、アトランティスの真実について、トールは数少ない断片からその太古の歴史までを大まかに把握してしまったらしい。

 

「成程な。恒星間国家からの移民だけど、大昔に内戦かなにかがあってかつての愚を犯さないよう、今はそれとなく存続して他の人類の技術水準や文化水準の向上待ちの状態か。正解だな」

「…そこまで解る物なのかね?」

「色々とズルをしているだけだ。ただ、ご先祖様達に申し訳ないが、この世界の大多数の人類はこのままだと厄介事が多いだろう」

「厄介事とは穏やかじゃないな。兵器技術関連か?」

 

 トールは「必要な事ではあるが」と前置きして、私達に爆弾発言を放り込んだ。

 

「今のこの世界の技術水準だと、あと60年前後で核兵器の基礎理論から開発される。戦争が起こればもっと早い」

「…それは困る。核融合炉や原子炉は我々も運用しているが、新規で作れる技術力は失った。放射線での汚染は目に見えないだけに厄介だ」

 

 核反応兵器。かつてのアトランティスですら、星を汚染する為に兵器使用や発電所への攻撃を忌避された技術だ。代わりにバベルの塔による攻撃は古代アトランティスを崩壊させたが。

 

「そこは事前に研究者として人員を送り込み、物理学方面で一定基準の発表をされた段階で、技術を知る我々が放射性物質の危険性について前倒しで発表してはどうか?」

「成程、事前に核汚染の恐怖を煽りに煽ってしまえば、使い方も多少は慎重になるかもしれない。それでも止められない可能性もあるが…」

「全面核戦争だけは回避させた方がいいな。…俺の元いた世界ではかつて、起きてしまったから」

 

 トールから語られたのは、大国同士がパイの投げあいのように核兵器を撃ち込み、既存の国家を崩壊させた話だった。どのようにこの地球に辿り着いたかは聞けていないが、アトランティスとも違う隔絶した技術の一端を見せていただけに、それは真実と信じられた。

 

「…そうか。トール、暫くの間でいい、古代技術の修復や解析に力を貸してくれ。私はこの国の民だけでも守らねばならん」

「おいエルシス、それは…」

「構わない。ただ軍拡などではなくて、いっそ空を目指さないか?」

「宇宙船を修復、あるいは作り上げて生存圏を用意しろというのか?」

「予測だが、古代アトランティスの技術にはそれを可能にする物がある。宇宙に逃れて高みの見物というのは少々趣味が悪いかもしれんが、厄介事が終わったら地上を修復するというのもアリだと思うぞ俺は」

 

 古代文明の技術に大いに興味が出てきたとトール。彼は恒星間国家の技術もあると言い、私とネメシスは提示されたそれらの、タルテソスですら遺失した技術に驚く。

-

 

-

 その後も会話は続き、いつしか私達は旧アトランティスの技術の復活と宇宙開発に夢を馳せ、語り合う。

 

「星一つ、今の身なら確かに大きいが、支配がどうのというのはシステムの違いだが、非効率な事この上ないんだ。それに拘ったり足を取られる位なら、とっとと旅立って高みの見物をする方が余程、楽しいぞ」

「なんとも壮大だな。だが確かに、文献に残る技術が復活すれば、我々は再び宇宙を飛べる」

「核関連技術はエネルギーとしては有用だが…、トール、先日渡した中に、核分裂反応を外部から抑制する技術は無かったか?」

「ある。流石は古代文明と言った所だな。元は核融合炉と対消滅炉の制御用技術だ。正確な追随照射をする必要はあるが、大雑把な電磁波の暴露で核反応が不活性化する」

「決まりだな。核兵器開発を監視し、使用の際は追随して停止電磁波を照射する新たな僕の星を作るべきだ。傲慢と言うならいいさ、だが、核関連技術を兵器に使うのなら、我々が止めてみせる」

「この星は我々の故郷だ。住まう者達の為、帰る場所を残すために、核兵器関連の技術者には少し泣いて貰おう」

-

 

-

 その後、ネメシスはトールを連れて改めて王都の地下を調査する。

 私自身、宇宙開発はともかく他の世界から来た事には懐疑的だったが、タルテソス地下、ブルーノアの格納庫廃墟への通路を発見し、そこに残る亜光速宇宙船の修復プランを示された。

 

「測定したがこの年数を経て残っているのはすごいぞ。これなら劣化部位の修復交換でどうにかなりそうだ」

「所で隣のこれは?」

「宇宙船には使えないけれど、海には使えそうだった部位を集めて船にした。まだ部品は足りないかな」

「エルシス、確か地下水脈は海に通じているという話があったな?」

「ああ、文献の調査が必要だが先祖が作り上げた物の可能性がある。これを潜水艦などにして、物資輸送をするのもいいかもしれない」

 

 ただ、トールはたまにとんでもないレベルでやらかす。いや実際に被害が出る前ではあるが、ネメシスがある日みつけたのは、宇宙開発はせずに世界征服する場合のプランだった。

 

「実際にできそうなのが悪辣だな? ん?」

「い、いやあ、考え始めたらできそうだなと」

 

 ネメシスに怒られる。当然、気心が知れた仲となった私も小言を言った。ネメシスは既に宇宙開発へ意識が行っており、他国の争いや支配に時間をかける位なら、宇宙でのびのびする方がいいと本気で考え始めていたからである。以前は少し危ういと思っていたが、トールという異分子で友が良い方向に変わった事は喜ぶべきだろう。

 

 さて、そろそろ足も辛いだろうし、助け船を出すとしようか。

-

 

-

 私ことネメシスは、トール基準で200年差(早い世界では蒸気機関の発明からその辺りでFTL技術に到達する)と言う事を聞き及んでいた。彼は現在のアドバンテージを持ってアトランティスの技術復活と宇宙開発を進め、まだ未熟な他国とは距離を置く方が、今の人間にとっても良いと言った。私もそれに同意だ。

-

 ただまあCIVがどうの宇宙勝利がどうのアルファ・ケンタウリ?というのは私も友も理解できなかったが。

-

 それから少しの間、私とエルシスはトールの協力で古代技術の修復や宇宙開発の段取りで我々は穏やかに過ごす。市民にも還元される部分が多いので歓迎された。

 国家機密ではあるが、タルテソスの土台となったブルーノア自体の復旧はブルーウォーターの製造関連技術が必要であり、完全修復はできなかった。

 

「光による三次元基盤の演算、記憶装置だな…。この形質は今の所、俺も手を入れられない」

「いかに技術を集めてきた君とはいえ、それ程か」

「ああ。高次特性…所謂、魂などの物理法則外の領域にも達してる可能性がある。俺もまだまだその分野は手探りでね、研究しがいがありそうだが」

 

 新規に演算装置としての機能に絞ったものができるかもしれないが、全く同じものは作れないとトール。現在の我が国でも、演算装置は歯車式と電気管のものが殆どだが、それを凌駕する機器を使っている彼をして隔絶しているとは、いやはや、古代アトランティス人の技術力は凄まじい。

 

 発掘できた古代の搭載艦艇は修復も並行して行っているが、修理や新規建造の技術も得る為、何隻かは除いて彼の持つ技術での直接修復は今は避け、新造に必要な技術の復活に私達は傾倒した。

 

 破損して宇宙船には使えないが船などには利用可能なものがあり、エルシスは地下水廊の発見と共に潜水艦に改造した。外の世界では外洋を航行可能な潜水艦は未だフィクション等にしか存在しない中で、破格の性能を持った船だ。

 

 元が宇宙船の為に専用の輸送艇などに比べて運搬量は多く無いが、それでも内陸に位置する我が国にとって、輸入に頼る物資の運搬が船で行えるのは喜ばしい。物資の調達を担っている国の部署が大いに喜んだ。

-

 

-

 だが、全てを台無しにする出来事が起きた。台無しどころか、全てに泥を塗るような事だ。

 

 私達の宇宙への準備は所々で失敗しながらも修正し、上手く行くかに思われたが、トールが修復させた技術でアトランティスの軍事技術の大規模な復活が見えてしまった事から、直接的に行政を差配していた大臣と将軍がクーデターを画策、同調する一部タルテソス住民と共に王宮を占拠したのだ。

 

 私は宰相としての立場で、以前から怪しい動きをしていた連中について注意していた。高い技術力を持つのに今の状態はおかしいと言い続けていた連中の集まりだ。だが私達の警戒も虚しく、奴らに王妃と王子、幼い王女を人質にされてしまう。

 

「エルシス、今動かなければ君の家族が…!」

「だが、優先すべきは民だ。幸い奴らが持つ技術は、バベルの塔を除けば開示していた物の1割にも満たない。近衛達で今の内に民を脱出させるべきだ」

「王子と王女はまだ幼いのだぞ!?」

「…わかってくれネメシス。ああ、トールが今居たなら、何か違う事ができただろうか」

 

 トールは潜水艦による定期輸送で外に出ていた。戻るのはまだ先だ。

 睨み合いの中、私は王族一家の救出に動こうとするも、エルシス王は国民を優先して密かに脱出させる。

 

「我々が脱出すれば独占できるというのも織り込み済みなのだろうな」

 

 忸怩たる思いで民の脱出を続けていると、トールが現れた。

 

「…どういう状況だ? 救助が必要なら当然手を貸す」

 

 本国との通信が途切れた事から異常を察したらしく、潜水艦による定期輸送から急いで戻ってきたトールは、状況を聞くなり技術復活の罪は自分にあるとして、逆賊達と交渉して人質交換するという。

 

「馬鹿な、それこそが奴らの狙いだぞ!?」

「お互いを思い合える家族は大事だ。王という機構に徹するなら仕方ない選択肢の一つかもしれんが、家族を蔑ろにしてしまえば、王でなくなった時、人は生き物としての意義すら失う」

 

 だから、任せろと。

 

「なぁに、ちょいと行って連中を殴ったら戻ってくるさ。二人には宇宙が待ってるんだ、こんな事で諦めさせてたまるもんか」

 

 そう言ってトールは、私と友のかけがえの無い友人は、夢を諦めない事を願ってタルテソス地下の、古代アトランティスの移民船そのものを暴走させた。バベルの塔が新造の制御装置を使って脱出した民達を狙っていたからだ。

 

 私とエルシスは荒れ狂うエネルギーの奔流の中、民達と共に祖国を離れ…そこに光の柱を見た。

-

 

-

 トールは戻ってこなかった。祖国の跡地は今もエネルギーが荒れ狂っている。ネメシスは怪我人の救助と共に、一定数ごとに護衛兵を付けて隠れ里に送り出す指揮を取っていた。今も、エルシスを除く王族と自身の家族が行方不明なのを歯を食いしばり、飲み込んで。

 

 部下の報告によればクーデター派は半壊しつつも生き残って、タルテソスから脱出したようだった。悔しい事に、新造したばかりのガーフィッシュ級潜水艇を奪って、我々も把握していない地下水路を逃走した。

 エルシスとネメシスはすぐにでも連中を追いかけて八つ裂きにしてやりたかったが、民の安全確保が第一だった。

 

 脱出した筈の家族が、事前に取り決めていた隠れ里へ向かっていればいいのだがと二人は口に出さずにただ思う。目の前の打ちひしがれる民の前で、弱音が吐けなかったのもあった。

 

「…全ては私の責任だ。必ず奴らを探し出し、滅ぼしてやる!」

「友よ…」

 

 こうして、世界を牛耳ろうとする自称アトランティスの後継者が解き放たれ、そしてそれを阻止するべく我々は復讐者となった。

-

 

-

 隠れ里。古代文明の技術を密かに受け継いでいたタルテソス王国が、物資の調達や周辺国の調査などに派遣する人員を住まわせている外部の居住区である。

 生き残ったタルテソス人は国の崩壊の混乱で散り散りになるも、王と宰相の指揮で周辺に存在する隠れ里へ移動する。

 

 タルテソス人がバラバラに逃げて隠れ里を目指す中、王妃と王子、宰相一家は逃亡の途中で、体制を立て直したクーデター派分隊の強襲を受け、幼い王女が行方不明になる。王子は意識不明の重症。宰相一家を守っての事だった。

 

 そこにひょっこり復活のトール。クーデター派を蹴散らして、王族一家、宰相一家とその同行者達を隠れ里の地下にVaultを建設して住まわせ、王子の治療にあたっていた。

-

 

-

 王エルシスは国を失った咎、友となったトールを殺してしまった(死んでない)罪を償うと、各地の隠れ里と調査員のツテを用いて、クーデター派の殲滅を決意する。

 

 宰相ネメシスはトールへの罪悪感から元国王を責められず、タルテソス跡地の再調査と旧アトランティスの遺跡を調査、確保してエルシス国王達の活動を支援する為の準備を開始する。

 

 二人は隠れ里各地をめぐりながら言葉少なに黙々と準備を進め、場所柄、あまり重要ではない最後の隠れ里に赴き、対クーデター派の戦いに同行する有志を募ろうとしていた。

 

「久し振り」

「「トール!?」」

 

 驚き固まる二人。そこに、幼い王女を除いた、王妃と王子、それに宰相一家の姿があった。エルシスとネメシスは膝から崩折れた。

-

 

-

 旧タルテソス人の生活基盤を固め、誰でもないという意味でネモと名乗るようになったエルシスと、魔を持って魔を払う石像の名前とガーゴイルを名乗るようになったネメシスから事情を聞くトール。

 

 二人がそれぞれ復讐の為に活動している事を知り、自責の念から世界に散らばるタルテソス人の隠れ里に赴いてVaultを建設する事を申し出た。

 無論、二人に続いて、有志達と共に対クーデター派の戦いに身を投じる事を約束した。

 

 元クーデター派にして、自称アトランティスの後継者と名乗るネオアトランティスは、トールの技術提供や古代技術修復の影響で、技術力のそれ自体は原典と同じでありつつも、生産効率の面で上回る。

 

「…くそ、隠蔽関係は優秀か。飛ばしている複数の探査機にひっかからない」

 

 現在主流の国々が混乱しないようにと、水中では使えないが、科学的な隠蔽装置を用意していたのが仇になっているとトール。

 

 トールをはじめ他の二人も知らないが、バベルの塔の暴発の影響で延命ポッド入りになった大臣と将軍は、それを機に名を捨てた影響でより非人間的な判断を下すようになる。また知略も二人分が掛け合わされて奇跡が起こり、より大胆で大規模、それでいて隠蔽の効いた世界の裏を牛耳る支配者の体制になる。

 世界の修正力というものなのかもしれないが、それを識る者はこの世界には居ない。

 

 ネモはサルベージしつつも封印、隠蔽していた亜光速宇宙船ヱルトリウムはそのままに、地下水廊を行き来させていた潜水艦を戦闘用に改造して、万能潜水艦ノーチラス号を建造開始。

 

 ガーゴイルはパリで大学教授の地位を得て、世界各地に眠るアトランティスの遺跡の調査と復旧に乗り出す。

 トールは隠れ里にVaultの設置を終えるとガーゴイルと再会。王国崩壊の原因は自分にあると再度伝えるも、ガーゴイルは首を振る。ネモの支援の為にパリを動けない自分の代わりに、行方不明になった王女、ナディアを探す事を依頼する。

-

 

-

 秘匿のため同じ所に長居しないネモとは再会できないまま、ナディアの行方も判らないまま時は過ぎ、1989年、世界中の海で謎の怪獣による船舶遭難事故が起こり始める。

 その事故の一つで父が行方不明になった発明好きの少年ジャンと、サーカスに所属し、自身のルーツを探す少女ナディアの出会いから物語が始まった。

 

 原典ではネモとガーゴイルの確執も織り交ぜ語られた物語は、ネモとガーゴイルのタッグに対して、原典世界以上に拡充したネオアトランティスが激しく争った。トールは王女ナディアを探して単独、ネオアトランティスの数多くの拠点調査という名の破壊工作を続けた。

 

 当然、話の大筋で一緒となればナディアはジャン少年と共にノーチラス号に居るわけで、灯台下暗しである。ネモと運良く再会した時も、二人が出払っている状態だとか間が悪いにも程がある。

 もっとコミュニケーションを取っていれば避けられた事態である。口下手かな?

 

 原典にあったアメリカ海軍の攻撃による皆のトラウマことフェイトさんの死亡エピソードは「は? 核関連技術使ってるのに防護服無いって?(ピキピキ)」という事で、補助機関室その他に備え付けられたRADスーツ(放射線防護に特化した装備)により他二名と一緒に命を繋いだ。ただ、被曝量から退艦を言い渡された事をとても残念がっていた。

-

 

-

 ネオアトランティスによる、人造オリハルコンならぬ新造オリハルコンの開発により、バベルの塔ならぬバベルの森という危険極まりない兵器が完成。それを確認するや否や虱潰しにするトールは、破壊工作跡が大抵更地になっていた事から「荒野の災厄」とネオアトランティスに畏怖された。世界や次元が変わっても扱いは同じである。

 

 そして、トールの預かり知らぬ所でノーチラス号を失い、ジャン少年やナディアと離れ離れになっていたネモ以下、ノーチラス号のクルーたちは沈みゆくノーチラス号が旧アトランティスの遺跡に偶然落ち、そこで「第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦ヱクセリヲン」を発見した。

 急ぎ、ガーゴイル経由でトールを呼び寄せ、修復を開始する。

 

「縮退炉と対消滅機関か。FTLも対応しているな。砲術長、火器の諸元だ、こっちは機関回りだから機関長に。出力が戻っても基礎は変わらないから今の内に確認してくれ。レーダー類はノーチラスと共通だが精度が違う。レンジ設定に注意を」

「こんな状況でなければ、宇宙の旅としゃれこみたいもんですな」

「ああ全くだよ」

「どの程度、修復できるのですか?」

「そうさな…飛ばす程度なら数日だが、基礎スペックからすると、多少戦闘ができるようにするには一週間、一割を引き出すには一ヶ月、解析が進めば2年で9割まではいけるか?」

「私らだけじゃ数%も行かなかっただろうな」

「船長、ネオアトランティスの周波数で…!」

「相手は待ってはくれないようだ」

「ああクソッタレめ、とうとう出てきたか!」

 

 人間の意識を吸い上げ、廃人化させる特性を持った新造オリハルコンにより、海を彷徨っていたレッドノアを我が物にしたネオアトランティスは、中枢に据えられ同化した将軍と大臣の頭脳が全世界に宣戦布告。

 

 別れていたジャン少年一行を回収した発掘戦艦はニューノーチラス号と呼称され、たった5%強の修復度で今やレッドノアそのものとなったネオアトランティスと交戦。パリから宇宙へお互いに被害を出しながら戦った。

 

 隠れ里に残る有志達は駆けつけるのは今だと、トールが稼働状態で封印していた、ノーチラス号の原型艦であるヱルトリウムを幾隻も発進させ、空中戦艦や空飛ぶガーフィッシュと孤軍奮闘するニューノーチラスの下に馳せ参じ、激戦を繰り広げた。

 

『この力は、使ってこそだ!』

「間違った使い方は自身も何もかも滅ぼす!」

 

 最終的に、ニューノーチラス号を大破させつつレッドノアに突入。ナディアを救助すると、新造オリハルコンごと元クーデター派を撃破。コントロールを失って地球へ落下するレッドノアからネモ達はヱルトリウム級宇宙船で脱出した。

 

 トールはちゃっかり、大破して動かなくなったニューノーチラスと、挿げ替えられて動かなくなったオリハルコンプレート並びレッドノアの構造解析データを取得し、共に脱出した。

-

 

-

 あの激しい戦いから数カ月後、地中海に浮かぶ客船偽装潜水艦の上で、ネモとガーゴイルはゆったりとした波間を眺めながらグラスを傾けていた。

 

「この場所から見る世界も美しいのだな…」

「あの時は私も楽しむ余裕は無かった。N-ノーチラス号を失っていなければ、いつかは恒星間の旅もできたのだが…」

「発掘戦艦か。だが、もしもの話は避け給えよ、ネモ。今はこの感動に浸りたいのだ」

 

 家族の前以外でも今やネモとガーゴイルと呼び合うので、すっかり周囲にも定着している。

 

「一歩、いや半歩、私がズレて居たなら、友よ、私達は袂を分かっていたのだろうな」

「そうかもしれん。君は危うい所があったから」

「危ういか…、そうだな。いやそうだろう。私も君も、とても幸運なのだろうね」

「ああ、幸運だ」

「何を二人、しみじみ語り合ってるかね?」

 

 そんな二人の前に小瓶と追加のグラスを持ってきたのはトールだ。

 

「ほほう、戦犯にして功労者がおいでなすったぞ」

「あまりいじめてやってくれるな、友よ」

「その節は本当に申し訳ございませんでした…!」

 

 見事なジャンピングDOGEZAである。

 古代文明の遺産やらがあったとはいえ、結構自重無く技術を使っただけに巻き起こった事態でもあるので、トールには結構な罪悪感がある。

 

「ふむ蜂蜜酒かね、これは?」

「二人の奥さん達が育てた、タルテソス国花の花畑の蜂蜜酒だ。ネオアトランティスの件が済んで、今でもあの日の夢を追いかけるなら飲ませてやって欲しいとさ」

 

 あの日の夢とは即ち宇宙開発である。現状のこの世界の技術力からは隔絶した代物になるだろう。

 

「…これでようやくスタートラインだ。あの日、いい歳した男共が目をキラキラさせて語り合った夢を、今こそ始めよう」

「私なぞ表ばかりだったからすっかり老人だよ。だが、諦めたりはしない」

「所で、あのパリでの戦いで、宇宙に関わる旧アトランティスの遺物は殆どが失われてしまったが…」

「ふふ、全てではないよネモ。私は諦めが悪い質でね、完全な物は確かに無いが、ここに一人、理不尽を体現する男がいる」

「…そうだったな」

 

 目線をトールに移すと、にやりと笑う。

 

「任せな。ネメシス教授の実験室レベルでの成功から、コストは度外視するなら実現可能と判断した。全く、何だよあの膨大な実証実験記録とロードマップは? コスト研究で時間はかかるかもしれんが、向う50年、真面目に研究すれば月程度にはすぐ届くし、100年以内にFTLにも届くぞ」

「それでも50年か。お互い、長生きせねばなるまい」

「打ち上げに耐えられるか心配だな」

「いやいや、そこまで意地悪はしない。この世界の人類用ヒントはフランスに残すが、タルテソスの人々は一足先に宇宙を存分に楽しんでしまえばいい。あの船、まだ沈めてないんだろ?」

「ああ、ガーゴイルの事を考えたら迷ってな。離島の隠れ里にある隠しドックに置いてある」

「本当かネモ!?」

 

 いつもの落ち着いた口調はどこへやら。ネモとトールは顔を見合わせてお互い吹き出した。

 

「いい話と、とてもいい話と、困った話がある」

「いい話から聞こう」

「太平洋の無人島に宇宙港と、完全状態のヱルトリウムを複数隻、修復できた」

「「は?」」

「…いつの間に? いや一体どうやって?」

 

 レッドノア以下、ネオアトランティスの戦力は原典の比では無く、倍とはいえ本来の性能からすれば1桁代の修復度にとどまって苦戦していたニューノーチラス号。それを支援したのは王子ビナシスと元王国民達だった。彼が指揮する複数隻のヱルトリウムは、父の乗るニューノーチラスを支援し、轟沈とは行かないまでも尽くが中破や大破して戦線を離脱していたはずだった。

 

「教授としての調査で、旧アトランティスの遺跡を調べてたら完全状態でモスボールされたヱルトリウム級と保守部品工場があってな。アトランティス人が宇宙開発を準備してたが内戦で諦めた、浮きドック型の宇宙港があったから移築した」

 

 ネオアトランティスの唯一の遺産として、連中が開発した作業用ロボットを使えば色々と捗るぞと言う。二人で変な笑いが漏れた。

 

「個人でできる規模では無いぞ…。とてもいい話とは?」

「完全な動作はしないが、代替手段でアトランティスを浮上させられる目処が立った。レッドノアを構造調査できたからな、問題点を洗い出して、浮揚に必要な箇所だけ代替手段でいじればいける」

「遺跡部分の影響は?」

「浮上する際の海水の流れかな。あと、中身へのアクセスは多分、ブルーウォーターが無いと無理だ」

「その点だけは心配は無いか…いや待て、この御時世にアトランティスが浮揚したら、世界が大混乱だ!」

「落ち着けネモ。大陸として浮揚させず、一段目程度なら島の扱いで…いや無理があるか」

「君こそ落ち着け。あそこは今、墓地でもあるから、そのままにしておいてくれないか」

「成程、それがいいのだろうな」

「わかった、そのままにしておこう」

 

 既にパリと衛星軌道上での出来事は世界中に広まっている訳で、落ち着き始めているとはいえまたぞろ巨大大陸が浮かび上がったなら大混乱間違いなしである。

 

「それで、困った話とは?」

「困ったというよりは、お別れだ。状況も落ち着いたからな、元の世界に帰る」

「…そうか。また会えるか?」

「10年以内には一度、訪れるよ。その間、この船やVaultにも設置した診断システムで定期検診してくれ。身体を健康体に維持すれば人間、長生きできるからな」

 

 この時代の人間なら頑丈だから、健康体にするだけで100は固いぜと笑うトール。

 

「無理は禁物か。そういえば、出会った頃から容姿が変わらないのだな」

「まあな、ある意味これは呪いで祝福だ。希望するなら、ちょっと老化を抑止して少し長生きするらしいアクセサリを贈呈するよ」

「科学の信望者としては眉唾物だが、有り難く受け取っておくよ。…この数は?」

「旧タルテソスの人達用。苦労しっぱなしよりは、多少は元気に動ける期間が追加される方がいいだろ」

「まるで魔法だな」

「その通り、これは魔法の道具さ。星の海を行けば、いつか、魔法文明で栄えた世界にも辿り着くだろう。これはそういう所の代物だよ」

「「…」」

 

 拠点世界では懇意にしている村人にも配ったありふれたアイテムで、フレーバーテキストに長寿を示す記載がある程度の代物。だが、この世界ではオーパーツである。

 

「まあトールだからな」

「そうだなトールだな」

「おい、形容詞扱いはどういう事だ」

 

 

 

-

>設計図を入手

レッドノア級移民船

アトランティス級移民船

空中戦艦

人間タンク

ガーフィッシュ級潜水艇

ヱルトリウム級宇宙船(第二世代型惑星間航行用亜光速宇宙船)

ヱクセリヲン級宇宙戦艦(第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦)

万能潜水艦ノーチラス号(ヱルトリウム級改造潜水艦)

グランディスタンク(カトリーヌ)

※一部技術解析が難航しているため、製造が不可能な物があります。

-

 

-

>Perkを取得

Honneamise Tec:

 古代アトランティス人こと、M78星雲にある惑星オネアミスの人々が生み出し、用いていた技術を解析し、修めた事を示すPerk。恒星間宇宙文明に到達していたオネアミス人による高度科学文明の遺産。恒星間時代の技術から遺伝子操作まで多岐に渡る。習得にはINT10、活用には他の技術系Perk群が必要。

 何らかの原因で数百万年以上前に地球に大規模移民をしてきた彼らは、乗ってきた移民船アトランティスを陸地とし、アトランティスという国を築き上げた。

 受け継いだだけとはいえ数百万年前から隔絶した技術力を持つ古代アトランティス人は、高度な文明を維持していたが内戦によりアトランティス大陸を失い、生き残りが不時着した移民船ブルーノアの上にタルテソス王国を築いた。王国もクーデターで滅びたが、世界各地には人間も含めて古代アトランティス人による高度文明の痕跡が残っている。

 トールが解析によって得た古代アトランティス人の技術は、恒星間国家世界ではありふれた物や陳腐化した物もあるが、特に優れていたのは代替手段の多さ。特に希少ではない素材で実現や再現できるものが多い。他に、科学技術による高次特性素材の利用が一部にされている。ウェイストランド産の技術や、トールの以前の研究ととても相性が良い。

 大型化する代わりに有り合わせの材料で高度科学技術の代替品を用意できたり、あるいは高次特性素材の特性を十分に引き出す事による科学技術のコンパクト化が行える。

-

 

-

Ultra Light Crystal:

 M78星雲にある惑星オネアミスに住んでいた人々が利用していた、3次元積層型光コンピュータ兼情報体の構造理論を修めた事を示すPerk。

 元となったブルーウォーターはおびただしい量の情報が、高解像度のまま折り重なったために境界を持ち、その内部に触れる事が出来なくなったもの。人間からすると質量を持つ美しい結晶として認識される。

 Perkの取得によりブルーウォーターがあればエネルギー体としての利用が可能になり、レベルが上がると内包する情報を取り出すことができる。ただし、翻案や解釈、解析に必要な機器は別途必要。

 Perkの取得で作れるのは、安全に稼働できる人造オリハルコンの製造まで。拠点に設置するZAXスーパーコンピューターの数百倍の演算能力を持つので、研究施設のそれらを置換した。解析、計算、試験における必要コストが数百分の1に減少する。




 ネモ船長のエレクトラさんとのフラグですが、家族が無事だった事もあって複雑な思いとかは無く、ストレートに好意をぶつけました。元とはいえ王なので奥さんに直談判して、戦後は第二夫人に収まりました。ナディアは物凄く複雑な心境だったようです。

 グランディスさんは原作通りですが、ギリギリまで第二夫人入りをするべきか悩んでいた模様。

 戻った後でトールも気付きましたが、ふしぎの海のナディア世界もスパロボ時空に関連しているので、頭を抱えました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。