荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集 作:マガミ
トールが訪れた、近似座標の19世紀地球で天才技師ハンソン氏の手によって作られた走行車両、グランディスタンクこと通称グラタン、あるいはカトリーヌ。
トールが遭遇したのは最終決戦時だったが、陸を辛うじて走るのが関の山だった19世紀世界の既存のオートモービルとは一線を画する性能を持ち、その上で陸海空に対応した万能戦車と呼べる代物だった。
オリジナルは残念ながら失われてしまったが、開発者であるハンソン技師の承諾を得てコピー生産、一部の超科学の産物は取り外した上で返却した。
拠点世界に戻ってから、まずは原型機と同じ設計で製造してテストした所、数々の機能がコンパクトに搭載されており、天才は存在するんだなと感心した。
頑丈な曲面の外殻に、上部へ6cm榴弾砲を搭載、油冷直列6気筒サイドバルブエンジン、ハイドロニューマチックサスペションで6輪駆動、車体前後に備えた2対の汎用シリンダーは4脚自立歩行も可能。
後部シリンダーは水中スクリューが格納され、水上航行も可能な上に、気球展開時はプロペラにもなる。
トールが確認した時点で海中航行能力を得ており、その水密構造は宇宙空間にも十分耐えられる。また前部シリンダーは破砕ドリル、後部シリンダーはジェットエンジンと、まさに万能戦車だった。
トールは基礎設計はそのままに、構成部材を高次特性素材以外の、手持ちの既存科学で製造できるもので再設計。恒星間国家宇宙時代の先進科学を用いた素材で強度は飛躍的に高まり、大幅な軽量化と搭載空間の確保に成功する。
エンジンはパラジウム触媒のアーク・リアクターを使用してコンパクト化し、同時に電力供給を担わせた。装甲部分は電力供給で硬化するエネルギー転換装甲にして更に強度を増した。
前後のシリンダー部分は宇宙戦艦の衝角にも使用されていた重圧縮合金を使用し、電磁収縮する特殊樹脂で作動させる。前部シリンダーはドリルの代わりに、振動破砕機を内蔵した。後部シリンダーはジェットエンジンの代わりに小型、大出力のアーク・リパルサーを組み込む。車体の各部にもアポジモーター代わりに小型のアーク・リパルサーを追加して姿勢制御に。
上部砲は撤去したが、余裕ができたスペースに格納式多目的グレネードランチャーを装備した。
気球が内臓されていたスペースにはバーゲンホルム機関を搭載し、慣性制御状態で大気圏内と宇宙空間での機動性能を確保した。
ヴェトロニクスはロブコ社のロボット系を応用したものを搭載。ランド・バイ・ライトで接続し、それとは別に予備として直接制御を行えるよう残した。内蔵の伸縮式マジックアームは素材系の強化とロボットアーム制御で、強度と膂力の強化に加えて作業精度が増した。
内装についてはトールの持つウェイストランドの科学技術と相性がとても良かったので、表示パネルにブラウン管モニターを追加した以外は、表向きはほぼそのままである。素材の入れ替えで強度が増した為、元設計より若干広くなった。海底での耐圧能力と同時に宇宙空間での気密確保と放射線防護措置を追加、その上で循環型酸素供給器により長時間の活動能力を付与した。
余裕ができた空間に生活スペースも確保。補給品を規定分搭載しておけば、水浄化機能もある為、宇宙空間に放り出されても定員3人が二週間は過ごせるようになっている。
改修後の各種試験は良好。操縦性も元のバランスがとても良い事もあり素直で安定している。特殊な機構を使う場合はサンソン氏のようなセンスが必要だったが、追加搭載の制御機構で統合制御され、誰でも使えるようになっている。
トールは改修したグランディスタンクを「4号」と呼んで、AOGの面々が余暇の際に乗り回す車両のラインナップに加えた。
レポートの一斉確認もたまにしかやらなくなったため、由来を聞かれた際に該当世界のレポートを上映したのだが、数少ないグランディス一行の姿を見終えた面々はポカーンであった。
「…こんなん、19世紀ちゃう」「教授が壊れた!?」「まあ古代アトランティスとか通常の世界じゃないよな」
「小悪党な美女に、ヒョロとマッチョの凸凹コンビ…」
「足りないのは謎の黒幕か」
「うちらだと…、誰が候補だ?」
「ねーちゃんは色気が足りないので、暴力担当か」
「くっそ同意する! だが弟、後で殴る! いやお前、スケベひょろ枠だ!」
「あ、私が小悪党枠で!」「餡ちゃん!?」「確かに美女だけど天然だろw」
「モモンガさんがおしおきだべーとか言うんだな」「やっべ合いそう!」
「え、え?」
「…ザ・ファイブズ辺りを候補にしてみるか」
この後、盛り上がってた面々はヒーロー枠が居ないことに後で気づきました。