荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集 作:マガミ
竜王国への遠征でスキーズブラズニルに搭乗しているモモンガさん一行とトールだったが、転移魔法並び転移装置があるため、ブリッジ要員と警戒要員、あとは暇してる面子を除いて、二日目の夜は殆どがナザリックに戻ってたりする。モモンガさん? アルベドの隣で寝てるよ。
あと半日もすれば竜王国に到着予定なのだが、実は飛行船スキーズブラズニルの能力からすれば、オートマ車でクリープ現象で前進するのをブレーキをかけて調整するような、とてもゆっくり目の移動速度だ。
先行した部隊を追い越さないようにというのと、日中は外の景色を楽しみたいとのモモンガさんのわがままというか、ささやかな要望を聞き入れた為である。
「「「それはわがままじゃないです」」」
「え、そ、そう?」
二日目の行程では、入れ替わりではあるが守護者達を招いて風景と共にお茶を楽しむそうな。優雅だなおい。
トールはトールで、転移実験の休止以外は場所だけ変わってもいつも通り、午前中は端末をいじったり装備をいじったりと変わらない。
「さて、遠隔でのやりとりもできた。お蔵入りしてた設計データを確認してみますか」
恐る恐るとわくわくを足して割ったような感覚で、とある転移先でまとめて入手していた機動兵器の設計データを確認する。理論が不明だったり整備時のデータからは判別できなかった一部の機体については肝となる部分のデータがないので、設計データとしては使えないようだった。
少々残念に思いつつ、リストの下の方を見ると、コーヒーを噴く羽目になったデータがあった。艦搭載のスターコアシステムで制御されているMrハンディが、黙々と吹き散らかされ、こぼれた液体を掃除する。
「可変爆撃機型モンスターと、ナインなボールのセラフ…」
百歩譲ってセラフな自動兵器はいいとして…よくないがいいとして、トールがとある惑星で防衛体制強化と資源生産の見返りに得た設計図になぜか紛れ込んでいたのが、マクロスシリーズに登場する「VB-6 ケーニッヒモンスター」を一回り大きくした機体の設計図だった。
元となるデストロイド・モンスターの本体重量285.5t、全備重量370tの超重量級砲撃機体を「自力で飛行・展開可能にしろ」という無茶振りに答えたのがVB-6の開発経緯であるが、実際にVB-6として量産、配備されたのは開発原型機を2/3にダウンサイジングしたものだった。
元のデストロイドモンスターと、大型原型機の開発を行ったティーゲル博士は、小型再設計したVB-6 ケーニッヒモンスターを決して認めず、晩年は唯一完成した原型機こそ「本物のモンスターなのだ」と言い、動態保存につとめて余生を過ごしたという。
閑話休題。
「…なんでこのデータがあるんだ」
トールはオータム・フォーから提供された数々の設計図データから技術情報を解析する傍ら、なんとも不思議な事になっているリストに首を傾げた。
ワンオフではない量産兵器(コストは別とする)として扱われた機体がリストに多いのはまあ解るとして、量産型であるVB-6がプレイアブル機体として出てくるのは覚えているが、可変型モンスター(ティーゲルモンスター)は、記憶にあるゲーム世界では出てこない。
「ああ成程、先進技術で拠点防衛機体にか」
いくつかのデータを確認してみると、実際にあの世界から繋がるマクロス世界のティーゲルモンスターそのものという訳でも無かった。データが幾度かのテストによるものらしい修正情報と関連付けられている。
考えられるのは、砲撃機体としてVB-6の配備の他、より遠距離への攻撃を想定して開発した結果なのだろう。あの惑星の無人兵器イコンにも砲撃機体はあるが、可変する事による自己展開力の高さが評価されたのかもしれない。
トールは設計図データから2機の試作実験機を製造するよう指示を出す。一機は設計図通りに、二機目はそれをダウンサイジングしたものを。
システムACEにより多少は手を入れられ、素材系と動力炉のアップデートの他は、主に自動化するための物で機体の基礎設計はほぼそのままであるか、元々の使用されている科学技術水準はかなり高い。
「VB-6は確かに完成度が高いな」
アクティブステルス、エネルギー転換装甲(電気エネルギーを流し装甲の分子結合を強化させる)、熱核反応炉、熱核タービンエンジンなど、可変戦闘機に用いられている技術は盛り込まれており、その堅牢な設計から完成度は非常に高い。
また電磁プラズマロケットエンジン・レールガン複合システムという、砲をファイター時の補助エンジンにするというのも画期的といえ、ついでに言えばオータム・フォーが確認していた機体は最新技術でアップデートされて軽量化が図られ、ピンポイントバリアシステムまで搭載されている。
「元の機体はS.M.Sのアップデートした奴だったか」
製作を指示したVB-6(モドキ)はダウンサイジングしただけではあるが、計算上のスペックは使われている技術の範疇ではとても高い完成度を持っている。
「こっちはこの大きさでこの完成度か」
対して、大本となる設計データの大型機こと通称ティーゲルモンスター(モドキ)だが、これもまた使われている技術からするととても高いスペックを持つ。自動化された際に、オータム・フォーによって手は入れられているが、元設計の優秀さとバランスがそれを昇華している。製造、運用コストを考えなければ、という但し書きが付くが。
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さて、2機の設計データからテストを継続している中、現在所有する技術で手を入れるとなるとVB-6(モドキ)はあまり設計に余裕が無いのに気付く。
余裕がないといってもかの世界の技術であればアップデート対応が十分可能な余地が残る範囲だが、根本的に異なるトールの所有技術群を詰めるとなれば、常識的範囲で…うん、常識的範囲で盛り込むとなるとティーゲルモンスター(モドキ)の方に軍配があがる。
「手持ちの技術を詰め込むには少し余裕がない」
想定しているのは、装甲と構成部材の高次特性素材全面的使用、主機の新型熱核融合炉(ウルデモン型核融合炉をベースとした新型動力炉)への換装、テスラ・ドライブの搭載、熱電・魔力変換器の搭載とそれに接続した魔力稼働装備類の搭載だ。トールは、今後を見据えて以降生産する機動兵器に、魔法を応用した機体を増やす目論見なのである。
トール拠点のリバティ・プライムシリーズは、基本的には科学技術の産物のため、超位魔法にすら耐えられる上に自己修復をするものの、攻撃装備や防御装置に魔力を用いる物を搭載していない。高次特性素材でパワーと装甲が大幅にアップしたが副次効果なので今は置いておく。
「エインズワース、追加発注だ。大型の方にこのリストを採用したものを製造してくれ」
『畏まりました。おや、随分と野心的ですね。先日に引き続いての、リバティ・プライムのアップデートですか?』
「そんな所。テスラ・ドライブの見極めもバラムとバルガ、重メックで大分把握できた。この設計なら余裕だろう」
これまでトールが思いつき、ZAXスーパーコンピューター群が試行錯誤を続けた様々な用途の高次特性素材と、全環境シミュレータによるシミュレーションで、原型に近い2機と、魔改造の1機は発注した数時間後に完成した。
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竜王国への移動中に完成したそれは、かの世界の可変戦闘機開発者達が見たら、白目を剥いて泡を吹くかもしれない代物に仕上がった。ティーゲル博士は次元を超えた草葉の陰で喜んでるかもしれないが。
「仮称X-VB-LX6 か。元が優秀な設計だけに、結構ポン付けでイケるもんだな」
大きさはかのティーゲルモンスターと変わらないが、全体に惜しげもなく高次特性素材を使っての軽量化で巨体にも関わらずS.M.S改修のVB-6と同程度の重量になった。
新型核融合炉の採用とテスラ・ドライブの搭載で重力制御、慣性制御も可能な上に、強化された出力でエネルギー転換装甲は更に強固になった。
設計に余裕があるので、対デブリシールドと統合したピンポイントバリアとフォールド機構ならぬFTLユニットとバーゲンホルム機関まで内蔵している。
バトロイド形態ではエネルギーを注ぎ込んだ魔法併用で射撃武器が逸れる(<矢避け>の魔道具)上に、ピンポイントバリアの制御プロトコルを利用した魔力強化済み対デブリシールドで殆どの攻撃が通らず、アクロバティックな挙動が可能で格闘も素早い。
VB-6より一回り大きいというか既存の機体より巨体なのにファイター形態でVF-171並に軽やかに飛ぶし、テスラ・ドライブにより慣性を無視した挙動すら取れる。機動慣性を一時的に異相空間逃すため、希少鉱物が必要なVF-25採用の「Inertia Store Converter(慣性蓄積コンバーター)」涙目である。
熱核タービンエンジンも強化されて砲併用の推進システムが無くとも十分な推力を得られ、補助エンジンであった砲推進システムで更に加速力を追加した。宇宙空間ではテスラ・ドライブの制御で航宙艦並の加速が可能な上に、追加でバーゲンホルム機関が搭載されているので亜光速戦闘まで対応できる。
ガウォーク形態に至っては重力制御と慣性制御で優雅にキビキビと地上を滑り、かつての40cmキャノン砲と同口径ながら威力を増した配列制御オリハルコン合金の400mmレールガン4門が他の火器と共に一斉に火を噴く。
追加武装なんぞ、元設計と同じ配置の装備の他に、莫大なエネルギーを魔力に変換して、その魔力を追加消費する事で射程距離と最大捕捉数、威力増加できる魔法の矢の射出装置を追加。星系内運用兵器として十分な飛距離と速度、威力を持っている。魔法的防護措置やエネルギー防御性能が無ければ、通常素材の装甲は意味を成さない。
更に、アクティブステルス機能に追加して幻影系と隠蔽系の魔道具を組み込んでいるので、大きな機体にも関わらず隠密性も抜群だ。
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こんな感じの、魔改造機体が爆誕したのである。
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火砲テストは演習場も狭すぎるし拠点世界ではできなかったので風洞実験と転送しての衛星軌道上での稼働テストのみだったが、トールは竜王国での後方支援で暇が出来た際、魔法も併用してステルスモードの自動操縦で後追いしてきた機体を飛ばして、性能ににっこりである。探知能力に優れたメンバーも多いAOGの男性陣に気付かれて「俺らも乗りたい!」と強請られた。子供かな?
ただ、外見と設計思想を除いて別物と化した魔改造も程がある機体は、名称についてはかのティーゲル博士に遠慮したのか「ヘクセライ・モンスター」(=妖術の意)と名付けた。
因みに、モモンガさんに「もし名付けるなら?」と聞いてみたらガウォーク形態が鳥に似てると言うことで「ふといとり」であった。無論、笑顔で断った。ついでにペロロンチーノが「ねーちゃんがバードマンだったら」とか宣って折檻を受けた模様。
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>おまけ
テスト生産したVB-6(モドキ)とティーゲルモンスター(モドキ)については、解体するのも何なので、人格サブルーチンを作動させて教育し、自我に目覚めたロボットの人工知能を搭載、やまいこがVB-6を「中ちゃん」、ティーゲルモンスターを「大ちゃん」と仮に名付けて演習場の管理者として配置した。
見回りの際は、何故かガウォーク(デストロイド)形態で重力制御しつつ歩くのを好んでいる。
後に、見回りの強化として人間サイズ大(とはいえ2m超え)タイプの生産が彼ら(?)から依頼され、バトロイド形態をオミットする事でダウンサイジングに成功した「キューケン」タイプがダース単位でロールアウト。地上哨戒や警備に既存のロボットの代わりに配備された他、地下演習場の機体には自我のある人工知能搭載型が配置された。
見回りの後は、地下演習場で使われていない区画をカルガモの親子のように列を作って散歩(?)する姿がみられるようになった。
「あ、なんだか可愛い」
「遠くから見ると、一見、ひよこがついてくように見える」「2m以上だけどな!」
「あれでもLV60位はあるからなぁ」「火力だけなら80換算だよ」「しかも広域連続攻撃」「回避型の天敵だな…」
「ナカちゃんとダイちゃんは?」
「どれどれ…90と100換算か。タンク兼ねた一点と広域の切り替えバ火力」
「90って…ユグドラシル勢でも無い限り弾が通り過ぎるだけで内臓というか中身ぶちまけますってか。ナカちゃんだけに」
「上手くねーよ!?」
「100って、ペロさんみたいな特化遠距離はやばいぞ? ギルド攻略戦の範囲砲撃とか、ダイちゃんならもう破片も残らないレベルだな…」
「Dieちゃんじゃねーか!?」
さらに後、キューケンタイプを参考に、拠点の防衛、砲撃戦力として可変機構をオミットして再設計した先祖返りとも言える魔改造のデストロイド・モンスターを生産する事になった。
もしもトブの大森林に大規模な敵性戦力が迫った際は、キューケンタイプ達が遠隔制御するダース単位の魔改造モンスターが頑張る事になる。首都ナザリックにも東西南北に格納トーチカとセットで一機ずつ配備された。元のデストロイド・モンスターが宇宙空間戦闘も想定しているだけに、対地攻撃と対空防御はさらに強化されたと言えよう。
「頑張る機会が無い事を祈ろう(震え声)」
「トールっちは一体、何を想定してるんだ(白目)」
「宇宙空間は別として…、別として、あの大攻勢の人数基準だ。二千人規模だがな」
「なぜ二回言った」「もう想像つかない単位だからな宇宙だと」「宇宙やばい」「それよりも五百人どこから追加したし」
「そも、あれって数百人の中核以外は大多数が非カンストだったろ」
「ガチ攻略勢の集団相手だと足りないっちゃ足りないかもしれんが…」
「多分、俺らのせいだな。基準がおかしくなってる」
「「「それな」」」