荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集   作:マガミ

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スランプに陥ると別の事がしたく…ごめんなさい!


夏の雪降る街

 魂の少女は、器の少女の未来を願った。

 器の少女は、魂の少女の選択を悲しんだ。

 そして、大切な人の事を思い出す。

 ぽっかりと空いた存在の空白。

 器の少女は自身の大切な人と共に、誰とも判らず知らず、それでも消えてしまった二人の為に祈った。

 神へは祈らない。

 ただ、救われて欲しいと祈った。

 同じ祈りは、二人の知らない所から、次元を彷徨う理不尽を呼び寄せた。

 

 偽りにほど近い救いの手であっても、確かに兄妹は救われた。

 

 

「なんだ…これは…」

 

 雪のような、灰のような。しかし、致命的な何かと共に白い物が舞う。確かにそれは見た目は雪だが、男の持つ時間軸同調計が正しければ、季節は2053年の夏の筈だった。

 ここは前世の記憶に近い新宿。だが町並みは古びたままで更新された気配はついぞなく、そして一人として人影はなく、所々封鎖された検問所、あるいは検疫所が無人のままに白い物に埋もれている。

 イオンセンサーの簡易調査では、舞うそれの主成分は塩であった。

 

『ご主人さま、推定クラス7の魔法的汚染が確認されました。呪詛耐性アクセサリの装着をご確認ください』

「…小指の先が塩になって崩れたのはそれか。持続型か?」

 

 クラス7。定義付けの元になった魔法が、生活用途の第ゼロ位階から第十位階がある中で、まともな存在であれば絶望的な強度の呪いだ。

 

 ただ、この場に居るのは本人としては誠に遺憾であるのだが、通常の人類ベースであっても人類の枠をとっくの昔に飛び出している男である。

-

 彼の名はトール。文明崩壊後の世界に一度転生した後、幾度の旅と経験を経て、次元世界を彷徨く男だ。先程から受け答えをしつつも姿が見えないのは、アシスタントの人工知能こと「Jr」だ。

 

 第十位階の呪いも素の状態で数秒で払い除けるため、被害らしい被害は人差し指がグローブで覆われていなかった指先であった。

 

『恐らくは。汚染除去後、速やかにスティムパックの…生体反応、2ブロック先に生存者です。恐らくは未成年、既に危険領域です』

「情報収集は後回し。治療は移動がてらだ」

 

 白塩化症候群。事実を識る者に言わせれば「神の呪い」が、男…トールに降り掛かっている。

 

 人を殺せ、力を授ける、言語化すればそんなありきたりな呪いだ。押し付けがましいその呪いは、断れば塩とされてしまう理不尽な呪い。

 別世界とはいえ神の力である以上、分類としては人類のトールは、断れば塩の柱と変わってしまうだろう。

 

 …何もしなければ。

 

 ただ、何もしないという選択肢はトールには存在しない。まずは素の状態で呪いに抗い、小指の先を塩に変えられるもこれを体内から排除して遮断。次に対抗したパターンから身体全体を呪いを跳ね除ける構造に強化。Perkが生える。既に意識していない最適化だが、結果だけは把握できる。

 

 できればこの呪いの根幹を生み出した神とやらをぶん殴る所まで行きたいが、決定事項であっても今は優先順位は下だ。トールは急いで生体反応のある方向へ向かう。

 

 

「…大丈夫か?」

「誰だ…!」

 

 向かった先、元はスーパーマーケットであった廃墟の片隅で鋭い目つきをした、だが本来は優しい目をしているであろう少年と、壁に凭れ掛かり弱々しく咳をして、息を吐く少女がいた。

 少年は少女を守るようにトールを見ている。手には太い鉄パイプが握られている。

 

「オーケー、そのままでいい。俺も状況がわからんでな、生存者を探していた。…そっちは妹さん?」

「…そうだ。何者だあんた、こんな壁の内側に居るなんて。施設から…あの化物共から逃げてきたのか?」

「施設? 壁? 化物? …ああそんな顔しないでくれ、いきなり新宿に現れたらこの状況でな。情報源を探していた」

 

 訝しがる顔の少年。だが背に守るために負う妹をちらと見て、すぐに向き直った。

 

「…なら、俺の知ってる範囲で話す。その代わり、食料品と水、できれば医薬品があればくれ」

「商談成立だ、手付に栄養ジェルと水だ。俺はトール、君達の名前は?」

「俺はニーア、妹はヨナ」

「グッド、いい名前だ。それじゃもう少しマシな所に移動しよう」

 

 咳き込むヨナを背負うニーア少年。トールは手持ちから適当な武器を取り出す。一応、日本であるからして銃器ではなくニーア少年に倣って小振りの鉄パイプだ。

 

「なんだよ、化物が彷徨く中でそんなので行けるつもりか?」

「見た所なんの変哲もないそれで大丈夫なんだ、こいつは特別製でね」

 

 そう言って、視界に表示された反応に対して踏み込み、軽く振るう。主な付与レジェンダリは、ユグドラシルのデータクリスタルを解析した「神聖な」「魔法の」鉄パイプである。

 

「…知り合いか?」

 

 トールの目線の先に、帯で形作られた出来損ないの人型が現れ、振るわれたそれを恐れるように下がる。

 

「違う、バケモノだ」

 

 少年の声が強張っている。トールは前に立ち、観察する。視界の表示では中立だ。敵意は何故か感じられない。何語か不明な呟きをしている。

 

(Jr、言語解析)

(高速圧縮された日本語です。状態については調査継続中)

 

 情報解析から高次特性の…歪んだ失敗作と判断。手持ちの近接武器で「神聖な」と「魔法の」が付与されているのが鉄パイプだけだった。

 

 床も含め、一度ここで交戦が在ったかのような状態。対峙が続くが、少女の容態を考えれば悪手と、少し迷ったが装備を持ち、振るってみれば効果は覿面であった。

 

「うん、悪くない」

 

 少年にバケモノと言われたそれらは、鉄パイプを受けると光に包まれ、消えていった。

 

『解析結果から、カテゴリは生霊に近いかと』

「これが生霊? 生身の方は?」

『アストラル体に著しい損傷。推測ですが、共鳴現象によりとても宜しくない状態かと』

「…そうか」

 

 トールは知る由もないが、目の前に現れた存在は魂をエンコードして失敗したものであり、それでいて少年の鉄パイプに攻撃を受けるほど脆い物だった。

 トールの攻撃では血は撒き散らされない。半ば崩壊し、助けを求めるように人に近づいてきた化物は、神聖な鉄パイプで齎された、自身を導く穏やかな声に従い、歓喜の声で消え去った。床の古い残滓も消え去った。

 

「…すげぇ」

 

 ニーア少年には、視界にあの化け物の影が現れ始めたかと思ったら一瞬でトールに殴打され、消え去ったように見える。

 

「妹さんの状態が危うい。邪魔されず治療できる場所が必要だ」

 

 朦朧としているヨナの様子を見て、移動を促す。ニーア少年も覚悟を決めたか首肯する。

 

「先行する。妹さん、背負えるか?」

「大丈夫」

 

 立ち去ったその場所には、以前の兄妹が契約した本はどこにも無い。トールも二人も、知る由もない。

 既に終わった話であり、過去であり、これからの話なのだから。

 

 

 近くのオフィスビル廃墟に移動してワークショップを起動。組み込まれたアイテムで第九位階までの魔法を弱め、第五位階以下なら遮断する領域を用意。さらにビルまるごとにアンデッドや魔法生物を寄せ付けないフィールドを張ると、一室を掃除して綺麗にし、用意した毛布で簡素な寝床を作る。

 

「狭いが一室を用意した。疲れただろう? 食べやすい物と水を用意してある」

 

 テキパキと用意を進めるトールにニーア少年は唖然としている。

 対価は後だと言って、トールは二人の状態を確認。保存食の中から胃腸の弱った者が食べられる物を用意する。

 

「まずは食べろ。友人曰く、生きているなら飯を食え、だ。俺はしばらく周囲を警戒する、一休みして落ち着いたら話をしてくれ」

「…ありがとう」「おじさん、ありがとう」

「子供がそんな顔してるもんじゃない。さあいいから食べて休め」

 

 トールは神聖な鉄パイプの中から長いもう一本取り出すと、片方を少年の側に置いて、元は会議室であっただろう部屋から出た。オフィスビルは、窓ガラスの一部が破れていて、入った直後は白い物が吹き込んでいた。

 バリケードをワークショップで簡易的に築き、屋内に吹き込んでいた物を除去。トールの取った措置で古びたままではあったが、以前の様子にほど近いデスクや椅子が並んでいる様子がよく見えた。

 

「Jr、お前とは別にMsナニーを準備。オートドクの診断で思った以上に女の子の具合が悪い。試製の因果律解析にも異常があった。遺物からの情報収集は?」

『各所の端末からデータを抽出してみましたが、停止してから長く、サルベージに時間がかかっております』

「やはりニーア君に聞いてみるしかないか。見た目も名前も日本人ではないようだし」

 

 トールは会議室の外の廊下でJrの端末となるMrハンディと、医療用プロトコルを導入しているMsナニーを準備。ナニーの方は、トールが呪詛侵食を受けた際に治療にあたったデータを搭載している。

 広範囲に撒き散らされた分、超位魔法ほどではないが接続、拡散先があれば伝播し続ける特性が厄介だ。

 

 まあ、たかが神程度の高次特性存在の呪いの残滓であれば、特定でき次第速やかに治療できるだろうとトールは楽観的であったが。

 

 

 ロボットの準備を終えると、二人が休んでいる部屋に戻ってくる。

 

「トール、いやトールさん、ちょっといいk…って、何だそれ?」

「アシスタントロボットだ。こっちがJr、こっちが医療用のナニーだ。妹さんの状態が思ったより悪いようだな?」

「…ああ、少し食べて横になってるけど、咳がひどいんだ」

「優先して治療する。その間に…」

「わかってる。今の時点で貰いすぎだ、知ってることなら全部話すよ」

 

 そして語られる、この地球で起きた出来事。

 白い巨人、赤い竜、白塩化症候群とレギオン、新宿を囲む壁、そして人類とレギオンの壮絶な戦争、政府の施設の偽り、化け物。

 まだ十代の少年が妹を抱えて生きていくには過酷な世界の話。トールは表情をできるだけ抑えて、ぽつりぽつりと語られる少年の話を聞き続けた。

 

 

 話し疲れた少年に今日はここまでと寝るよう促す。トールはバッテリー式の電気ストーブを用意した上で、毛布を二人にもっさりとかけて、自分は自律的なスリープ状態に。オフィスビルのフィールドを突破する化物が居れば対応する為だ。

 

「Jr、周辺状況は?」

『仮称、化物ことゴースト体は、我々の気配を察してビル周辺に集まっています』

「放水タレットを準備。聖水を積んでばらまいてやれ」

『横転した消防隊の車両にインパルスの部品がございましたので拝借いたしました。そちらを使っても?』

「いいぞ。飛距離と消費量の効率が良さそうだからな。シエラマドレで拾った噴霧装置も使え」

 

 Jrは近くで横転していた消防車から、インパルスシステムの系譜にある消防セットを拝借していた。構造解析後、コピーをしてMODの放水銃タレットに適用。炎上を消す、相手をノックバックして転倒させる程度のそれが、相手を吹き飛ばす性能に変化し、装填した聖水の効果でゴースト体を昇天させる。

 キャピタルで使ったことのあるインシネレーターは着火と射出周りで燃料以外の液体には不向きだったので、丁度いい。

 シエラマドレの噴霧装置は、身体を害する霧を放出する機器のコピーだ。微粒子化して広範囲に撒くのに適している。

 これにより、清浄な霧の結界に覆われ、浄化の水を撃つタレットを無数に備えた簡易的な要塞が完成した。だが見方を変えれば、バケモノ…崩壊体と化した元人間を苦痛から開放し、新たな輪廻へ導く救済の神域でもあった。

 

「Jr、時空間通信。舞子に接続してくれ」

「一分ほどお待ち下さい」

 

 程なくして、拠点世界に残した妻からメッセージ。まだ音声通信はできないが、ショートメッセージのやりとりは行えるようになっている。時間加速状態に意識を切り替え、思考操作でメッセージを送信する。

 

『どうしたの?』

「…崩壊した世界で、身寄りの無い兄妹を見つけた。周囲の状況が悪くて、継続した生活基盤の構築も難しい、それで…」

『いいよ。ゼロバンカーで引き取るんでしょ?』

「ありがとう。戻ったら紹介する」

 

 向うの感覚からすれば、転移して姿が消えた直後にメッセージが届いて、それが終わったらすぐにトールが戻ってくるので忙しない。

 トールは相応に時間を過ごしているが、メッセージの送受信の際に時間軸同調が行われて、それが終了したら転移先だけ物凄く時間が過ぎるので仕方ない。

 

 

 ビルを拠点に兄妹の健康状態を回復させる。可能な範囲でこの世界の状況を聞き出したが、既に人類がどこまで勝ったか、あるいは負けたか、そういった情報も不明だった。

 大気中の魔法的気配から通信状態も悪く、哨戒ドローンやアイボットも遠くに飛ばせていない。

 コンソールと統合しているワークショップも、魔法的か呪詛の影響か拠点としたオフィスビルより一定範囲以上を操作できなかった。

 無理やり押しやってもいいが、生き残っている人類側への悪影響を考えるとそれも憚られた。尚、トールは考え違いをしているが、本来のこの世界にはすぐに影響を及ぼせる魔法的な因子は存在していない。

 

 少女の方は回復してきてはいるが、時折起きて飲食と軽い会話をする程度で、殆どは眠ったままだ。魔法アイテムも併用した治療を続けている。

 周辺のゴースト体は、感知範囲の連中は殆ど昇天したか、ここ数日は静かなものだった。

 

『マスター、ヨナさんが目を覚ましました。容態も安定しています』

「わかったナニー。Jr、状況変化があるまでは現状維持、邪魔な奴が来たら無制限対処」

「かしこまりました」

 

 トールは治療室になっている会議室へ。

 

「ヨナ、ヨナ…!」

「お兄ちゃん…」

 

 部屋に入ると、起き出した少女とニーア少年の姿がある。ナニーは治療の片付けを終えて、用意していた保存食の準備を始めている。

 

「調子はどうだ? 既にニーア君には対価は貰っている、腹が減ってるなら食事にしよう」

 

 礼を言おうとする二人を再度押し留め、トールはナニーから手渡された食事用プレートを二人に差し出した。

 

「あの、トールさん」

「何だ? すまん、嫌いな物でもあったか?」

「…我侭なのはわかってるけど、クッキー無いかな」

「あるぞ。食べ終わったなら用意してやる」

 

 

 食事を終え、最初と比べれば顔色も良くなった二人。横ではJrとナニーが片付けと共に食後のお茶の準備。お茶請けにクッキーを用意している。

 目を輝かせたヨナの様子を見て、成程なと微笑むトール。一口、紅茶を啜った所でトールは兄妹に問う。

 

「これからどうする?」

「…わからない。なあトールさん、頼みがある」

「聞くだけ聞こうか」

「妹だけでも、安全な場所に…」

「お兄ちゃん!?」

「それは無理だな」

「う、そうだよな…虫のいい話」

 

 項垂れるニーア少年にトールは続ける。

 

「聞いた範囲からして、この地球上には安全な場所はほぼ無いだろう。今使ってる道具も消耗品だ、いつかは効果が消える」

「そうなのか…」

 

 落胆するニーア少年。トールは続ける。

 

「二人がよければ、俺のいる拠点に連れて行く事ができる。この世界に、未練はあるか?」

「それってどういう事?」

「俺はこの世界の住人じゃない。別の世界というか星の住人でね」

 

 ぽかんとした表情になる兄妹。証拠にと、トールはインベントリからいきなり物を取り出し、格納する。

 

「…ほんとなのか? いや、こんなになっちまった世界に未練なんかない、妹と一緒に穏やかに暮らせるなら!」

「ニーア君の意思はわかった。ヨナちゃんは?」

「私も…お兄ちゃんと一緒に笑って暮らしたいです」

「よろしい。向うだとびっくりする事がいっぱいだろうが、慣れてくれると嬉しい」

 

 

 トールの拠点とそこに暮らす住人達、そして友人だというお伽噺や物語に出てくるような怪物の姿をしたAOGの面々に、二人はびっくりを通り越してちょっとだけハイライトが死にかけた。

 初顔合わせが映像だったのが悪かったのかもしれないが、ノリノリの異形種連中も悪い。

 

 ただ、一番びっくりしたのはトールに綺麗な奥さんが二人居た事だったとニーア少年は呟いた。

 

「解せぬ…」

 

 因果律から消えてしまったその先、誰かの、そして多くの願いが夏の雪が降る新宿から、一度は消えた二人の兄妹の運命をかき集めたのは誰の意思だったのだろうか。

 

 方や因果律から、方や魂すら、世界に生きた証が消えた兄妹を、観測者達の願い(救えやエニック○…orz等)が塊になって一時的に兄妹を契約直後の時間軸に呼び戻し、呼びつけられた(無自覚)トールが回収する事となった。

 

 ただ、その事実にはトールも誰もたどり着いていない。

 

 

「さて…、去り際の例のテストは上手く行ったか?」

『残念ながら、標的がかの時間軸にはございませんでした』

「ちっ、ハズれか」

 

 例のテストというのは、ユグドラシル勢なら基本の一つである遠距離監視に対するカウンターを、低レベルではあるが再現して行う高次特性…魔法的手法によって行う実験だ。

 今回は監視へのカウンターではなく報復手段として「呪いをかけたであろう存在に条件が満たされるまでコンボ形式で連続ヌカパンチ弱(当社比)」である。

 

「手応えはあったんだがなぁ…勘違いか?」

『この時空間は随分と入り組んでいるようです、次回はもう少し安定した世界が宜しいかと』

 

 残念そうに言ったトールではあるが、トールが使用したカウンターは、本人も知らぬ間に何の因果か時を遡り、一つの戦果をあげた。

 

 

 トールのたどり着いた新宿時空の過去(DODのEエンド)において、新宿上空に出現した「母体」…巨人は、世界の境界から頭を出した直後にまず左右から一撃ずつ攻撃を受けた。

 

 胴体がまろびでて背中と思しき場所が出てきた所で更に一撃が入り、轟音を立てて新宿御苑上空へ吹き飛んだ。

 

 そのままの勢いで落下し、土砂や木々などを吹き飛ばすかと思いきや、速度を殺すかのようにもう一発。

 

 落下しつつ、左右に連続して殴られたようにぶれ、執拗に腹部であろう場所に打撃を食らい、落下速度が一定に保たれた。落下直前にみぞおち辺りにもう一発。見えない巨人に殴られたかのようだ。

 

 最後には落下事故での頚椎損傷まったなしの姿勢で落下した。頭と尻が上下逆で落下した姿勢である。

 

 ウス=異本やアダルトビデオならよくあるかもしれない姿勢だが、残念ながら生気の無い不気味でハゲた巨人のそれには殆ど需要は無かろう。

 

「何なのだ、これは…?どうすればいいのだ?」

 

 追ってきた一人と一体は困惑した。

 

 少し先で緑がある場所、そこで無様な姿勢から立ち上がろうとした巨人が、突然膝カックンでの足腰の弱りからまるでデンプシーロールからの連打を食らったかのように無様に踊り狂っているのだからその困惑もよくわかる。

 

 

 鬼畜音ゲーのタイミングは維持しているのはラスボスの矜持かそれとも意地か。

 だがたまに「がちん」と音を立てて口を閉じさせられていたので舌らしき部分を噛む羽目になった。

 

 そして、一人と一体は間延びしたタイミングのそれを乗り切り、何とか歌を止めさせた。

 

 結局、巨人は最後まで人への呪いを停止させなかったので、均整が取れていたであろう姿は見る影もなくボコボコ。消滅する最後まで何かに殴られ続けた。顔は無表情だったものが、苦悶に喘ぐかのようだ。

 

 崩壊し始めたらものすごい勢いでひび割れ砕け散った。欠片それぞれを念入りに消滅させるべく、世界が悲鳴を上げるような音が暫く響き続けた。

 

 そして最後の余波でドラゴン…アンヘルが体勢を崩し、自衛隊のミサイルは煽られて直撃せず、近接爆破で尻尾の一部がもがれるも、一人と一体…カイムとアンヘルは生きて元の世界へ戻った。

 

 ただ、呪いの残滓は消しきれなかった。原典よりかは遥かにマシな速度ではあるが文明崩壊の歯止めは効かず、1つの計画は素体候補だった人物達のクローンを生成する事で同じ流れを辿った。

 

 

 

 

>Perkを取得

Counter of genocide curse:

 夏の雪、と表現された白塩化症候群の要因となった呪いに対抗するPerk。

 Perkの取得により該当現象の効果を一切受けなくなる。副次効果として、Perkレベルごとに高次特性による害意ある干渉に耐性を得る。また反撃時にダメージボーナス。

 

解説:

 ニーアゲシュタルト、ニーアレプリカントの発端となる新宿、そこに出現したトールが白塩化症候群に罹患して即座に対応する事で生えたPerk。神の呪いを拒否する。

 尚、白塩化症候群の呪いに屈するとレギオンと呼ばれる、人類を滅ぼす怪物と化す。呪いを拒否すると塩の柱に変えていく理不尽。

 原因となった場所である新宿には色濃く未だ残っていた為、神の呪いを拒否するトールは侵食を受けた。




>その後の兄妹

 二人共、黒の書への適正以外は本当に普通の人間。戻された場所には既に黒の書が無い状態で、記憶などもありません。
-
 転移後、異世界とAOGの面々にはびっくりしましたが、ニーア少年は化物(崩壊体)と殴り合ってきたのもあって、それよりは恐ろしくあれども理解できる、話す事もできる、しかも優しいと(シモベ達は近寄り難いが)兄妹ともども早い段階で慣れた模様。

 初顔合わせの際も、モモンガさんが魔王ロールながら優しい感じで声をかけた事や、ギルメン協力により呪い除去の医療手段が確立していたと聞き及んでいたため、ニーア君とヨナがナザリックのすごい人達と称賛するのでシモベ達の印象も良好。

 かの世界では動物に触れられる機会が無かったのもあり、兄妹揃って「猫さま大王国」の面々やヒュージをモフモフするのが大好きです。

 尚、世話になってるだけではいかんと、ニーア少年は元ドール組に戦闘訓練を受けています。元ドール組は、頭脳と神経回路をネクロマンシー技術で、それ以外を魔法的サイバネティクスで構築した少女義体に置換しています。それに勝てないまでも平気で食いついて来るニーア少年がちょっとおかしい。

 またヨナに適正があったのか、ゼロバンカーを主な生活空間にしているたっち・みーのご家族、るっく・みー、きゃっち・みーの親子に神聖魔法と支援魔法の手解を受け、着々と身につけています。

 ただ、きゃっちちゃんが(年上だけど)ニーアお兄ちゃんと懐くため、たっちさんは気が気でない模様。

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